トップ新編理科総合A 改訂版2部 エネルギー・資源と人間生活>第2章 資源の開発と利用>第1節 エネルギー資源の利用

1節 エネルギー資源の利用

 

石油,原油

石油の成因には種々の説があるが,プランクトンや陸上の有機物等が海底に沈み,そこに土砂が堆積して,その下でこれらが複雑な変化をして生じたといわれている。

油井からくみ上げられたままの石油を原油という。原油の主成分は炭化水素だがその種類が多いので,組成を完全に知ることはできない。また,産地により組成が大きく異なる。アルカンとシクロアルカンが主で,芳香族炭化水素が多く含まれているものもあるが,アルケンは殆ど含まれていない。

炭化水素以外の成分として硫黄や窒素,酸素,金属等がある。硫黄は0.17.5%含まれ,13%のものが多い。窒素は0.050.4%程度含まれている。酸素は有機酸やフェノール類として含まれている。灰分は0.010.05%で,その中ではバナジウムとニッケルが多く,次いで銅や鉄が多い。

 

原油の分留

原油を処理して各種石油製品をつくることを石油精製という。石油精製の工程の初めに,原油中の各種成分を,その沸点の違いを利用して蒸留により分離する。これを分留(分別蒸留)といい,沸点の低い方からガス,軽質ガソリン,重質ガソリン,灯油,軽質軽油,重質軽油,残油の各留分に分けられる。残油は更に減圧蒸留され,減圧軽油と減圧残油に分けられることもある。各留分の沸点範囲はガソリン180°C以下,灯油250°C以下,軽油320°C以下,残油320°C以上である。

ガスはC3C4の炭化水素が中心で,液化石油ガス(LPG)として使われる。軽質ガソリン留分は,自動車ガソリンの混合基材とされる他,石油化学用原料のナフサとして使われる。重質ガソリン留分は,オクタン価が低く,接触改質されて自動車ガソリンに混合される。灯油留分は,灯油や航空タービン燃料として用いられる。軽質軽油留分はディーゼル軽油として利用される。重質軽油留分は重油の混合基材としたり,接触分解用の原料となる。減圧軽油は,接触分解でガソリン留分や軽油留分を採取する。減圧残油は重油の基材やアスファルトとして用いられる。

 

◆火力発電の燃料

1.LNG

LNGによる発電量は,全発電量の24%を占め,火力発電の中では46%を占める(電気事業連合会1998)

LNGは天然ガスを液体にしたもので,Liquefied Natural Gas(液化天然ガス)の頭文字である。天然ガスの主成分は無色無臭のメタンで,その燃焼で発生する二酸化炭素の排出量は,石炭や石油に比べて3040%も少ないクリーンなエネルギーであるといわれている。それでも空気中の窒素を高温で熱してしまう為に窒素酸化物はできてしまうが,除去装置で減らす工夫がなされている。

日本では1950年代に,石油に代わるエネルギーとして天然ガスが注目され始めた。採取された天然ガスは,液化工場でまず,塵が除かれ,更に硫黄分,炭酸ガス,水分等が取り除かれる。そうして精製された後,45気圧を掛け,−162℃まで冷やして液体にする。

埋蔵量は現在のペースで使い続けると,後62年程で枯渇すると試算されている(Oil&Gas Journal 1997)。しかし最近では大量の天然ガスが,泥状に固まったメタンハイドレートとなって,海底や地下に眠っているのではないかといわれている。メタンハイドレートは,世界中の海底に存在し,そのエネルギー量は今までに見つかっている石油や石炭,天然ガスの合計よりも多いといわれる。新たな技術で利用可能になれば,200年分以上はあるともいわれる。

2.石油

石油による発電量は,全発電量の13%を占め,火力発電中では25%を占める(電気事業連合会1998)。日本の火力発電所で多く使われるのは重油で,その燃焼によって排出される硫黄酸化物は,通常のガソリン等よりずっと多い。二酸化炭素の排出量もLNGよりずっと多い。

1960年頃までは,水力発電が発電の中心だったが,その後の電力需要の急増と水力発電開発の限界により,一基当たりの発電量の大きい石油火力発電が多くつくられるようになった。しかし,1970年代に起きた2度の石油ショックによる石油の輸入の減少と価格の高騰により,発電量に占める石油の割合は石油ショック前の60%から20%程度と減少した。

埋蔵量は現在のペースで使い続けると,後43年程で枯渇すると試算されている(Oil &Gas Journal 1997)。しかし一方では,新たな技術が可能になると数百年はもつともいわれる。

3.石炭

石炭による発電量は,全発電量の15%を占め,火力発電の中では29%を占める(電気事業連合会1998)

石炭の中に含まれた微量物質により,石炭はそのまま燃焼させると,様々な公害物質を放出する。産地によって硫黄含有量は違うが,石炭の燃焼によって出る硫黄酸化物等,大量に燃料として使えば様々な汚染物質が放出されることになる。大型の火力発電所1基あたりに対して,トン単位の量が放出されるともいわれる。しかし,低硫黄石炭(クリーンコール)を使うことで,環境への影響を減らす工夫や,更に将来的には石炭をガス化し,環境汚染物質を出さないように利用しようとする試みもある。

石炭はかつて,燃料及び鉄鋼の原料として,産業の原動力として非常に重要な役割を果たしてきた。しかし,1960年代の石炭から石油・天然ガスへの移行,いわゆるエネルギー革命によって,その役割を石油に譲ることとなった。ところが,1970年代の2度にわたる石油ショック (1973年中東戦争,1979年イラン革命)を契機に,世界的に石炭の見直しの気運が高まり,石油代替エネルギーとして石炭の生産・利用の拡大を進める動きが出てきた。石炭は埋蔵量が豊富で,また経済的にも優れている。

石炭の埋蔵量は,現在のペースで使い続けると,後231年程で枯渇すると試算されている(世界エネルギー会議 1995)。また一方では,使い方によっては1000年以上もつともいわれる。

 

50Hz60Hzはなぜ生まれたか?

1888(明治21),日本国内の配電方式に関する直流・交流論争が東京電燈会社(現・東京電力)と大阪電燈会社(現・関西電力)で起った。東京電燈会社は直流方式,大阪電燈会社は交流方式を主張した。1891(明治24)にはドイツのAEG社が交流の遠距離送電に成功した。

日本の電気事業は火力発電で始まった。1895(明治28)に東京電燈会社がドイツのAEG (アルゲマイネ・エレクトリチテート社)から50Hzの交流発電機を購入し,日本で初めての火力発電所である浅草発電所をつくり送電を開始した。続いて1897年に大阪電燈会社がアメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック社)から60Hzの交流発電機を購入し,幸町発電所をつくり送電を開始した。それ以来日本では静岡県の富士川と新潟県の糸魚川付近を境に,東日本(東京電力・東北電力・北海道電力)50Hz,西日本(関西電力・中部電力・北陸電力・中国電力・四国電力・九州電力)60Hzの系統になり,1つの国の中に2つの周波数が存在するという変な電力システムとなってしまった。

 

◆太陽光発電

太陽から降り注ぐエネルギーは膨大である。1年間の世界のエネルギー消費量は石油に換算して約100tといわれるが,これを地球に入射する太陽エネルギーに換算すると,たった1時間分でしかない。太陽光発電は,この太陽エネルギーを電気エネルギーに換える太陽電池である。

最初の太陽電池は1954年,ピアソン(アメリカ)らによって発明された。現在の太陽電池はP型半導体とN型半導体を組み合わせたPN接合型の太陽電池が主流である。

 

太陽電池

特  徴

変換効率

()

主な用途

単結晶シリコン太陽電池

変換効率が高く,利用実績がある

1620

住宅用

公共産業用

多結晶シリコン太陽電池

変換効率が高く,大量生産に適している

1317

住宅用

公共産業用

アモルファスシリコン

太陽電池

製造の原料やエネルギーが少なくて,安価

813

生活用

(電卓・時計)

単結晶化合物半導体

太陽電池

GaAsInP等)

変換効率が非常に高いが,高価

1824

人工衛星用

多結晶化合物半導体

太陽電池

CdS/CdTeCIS等)

資源量が少ない

1016

材料によって用途はさまざま

 

アメリカには,カリフォルニア州に7200kWの商業用発電所がある。また,気象条件がよいサウジアラビアでは,太陽光発電による電力で水を電気分解して水素を作るプラントの計画がある。日本では,19973月末で全国の電力会社が2844kWの設備を設置し,家庭用等で電力会社と連携している設備容量は13644kWに達している。

総合的な発電効率が10%の太陽電池を30uの屋根に敷きつめれば,最大3kW程度の電力が得られ,春〜秋にかけてなら,これだけで住宅1戸の消費電力をまかなえる。

太陽光発電の設備は可動部分をもたないため,騒音や振動がなく静かであること,故障の可能性も少なくて保守が容易であること等の利点を生かして,遠隔地での電源として,また今後は住宅・工場等での小規模分散型電源としての利用が中心になると考えられる。

 

◆原子炉

(a) 原子炉の構成要素と型 原子炉は,核燃料(核分裂し,熱エネルギーを出す),減速材(核分裂で出る高速中性子を減速し,次の核分裂を起こし易くする),冷却材(核燃料を冷却し,熱を炉心から外部に取り出す),制御棒(余分な中性子を吸収し,核分裂の度合を調節する)等で構成される。

日本の原子炉は主として,減速材と冷却材を兼ねて普通の水(重水に対して軽水とよばれる)が使われている軽水炉で,沸騰水型(BWRboiling water reactor)と加圧水型(PWRpressurized water reactor)がある。BWRは,原子炉内で水を沸騰させて蒸気をつくり,それを直接発電機のタービンに送る方式で,米国ゼネラルエレクトリック社が開発したものである(下図)PWRは,水に150気圧の圧力を掛けて300℃でも沸騰しないようにして蒸気発生器に送り,そこで別の系統の水を蒸気にしてタービンに送る方式で,米国ウェスチングハウス社が開発したものである。東京電力はBWR,関西電力はPWRを設置している。尚,蒸気でタービンを回して発電する仕組みそのものは,火力発電と全く同じである(但し,蒸気の温度は火力が600℃,原子力が300℃で原子力の方が低く,熱効率は火力が40%なのに対し,原子力は33%程度)

 

(b) 核燃料 酸化ウランの粉末を円筒状に焼き固めたペレットを,ジルコニウム合金の棒状の被覆管に入れている。酸化ウランは融点が高く,水に溶け難く,金属ウランより化学的に安定で頑丈である。ジルコニウムは強度があり,放射線に強く,中性子の吸収が少ない。核分裂で生じる放射性物質の大部分はペレットの中にとどまり,ペレット外に出る少量の放射性希ガスは被覆管で閉じ込めている。

(c) 減速材 主として中性子を原子核と弾性衝突させて減速するので,原子量の小さい元素が利用され,軽水,重水,黒鉛,ベリリウム等が用いられる。日本最初の原子炉である東海発電所第1号炉や事故を起こした旧ソ連チェルノブイリ発電所の原子炉は,減速材に黒鉛を用いている。

(d) 冷却材 冷却能力に優れ,中性子吸収の少ない材料が利用される。空気,炭酸ガス,ヘリウム,軽水,重水等が用いられる。尚,蒸気タービンを回した蒸気を冷やして水に戻す復水器は,大量の冷却水を必要とするので,日本の原子力発電所は全て海沿いにあり,海水を利用している。この冷却水は,使用後に7℃程温度が上がり,温排水として再び海に戻される。

(e) 制御棒 原子炉の起動時に引き抜き,停止時に挿入する。中性子を吸収し易いカドミウムやホウ素等でできている。

(f) 臨界 天然ウランは,遅い中性子で核分裂する235U0.72%しか含まず,残りは核分裂をしないウラン(238U99.275%,234U0.0055)である。原子爆弾では,235Uがほぼ100%になるように高濃縮したものを材料にするが,原子炉では天然ウランまたは235U24%程度の低濃縮ウランを用いる。核分裂で発生した中性子が次の核分裂を生み,連鎖反応が持続して進む為には,核燃料にある程度の大きさ()が必要である。核分裂で生じる中性子の数が一定で,核分裂が拡大も減少もせずに安定して起こり続ける状態を臨界という。臨界を越えて連鎖反応がねずみ算的に拡大していく場合が,原子爆弾である。

(g) 原子炉の安全対策 異常や事故の発生を未然に防止する為,@安全上余裕のある設計および高性能・高品質の材料使用,A誤操作によるトラブルを防止するインターロックシステム(:運転員が誤って制御棒を引き抜こうとしても引き抜けない)や,システムの一部に故障があってもその機能を別の機構で代用するフェイルセーフシステム(:制御棒駆動装置用の電源が故障しても制御棒が自重により炉内に落下して原子炉を停止でき),B十分な点検や検査,C余裕のある耐震設計と地震に対する原子炉自動停止装置等の対策がなされている。また,異常が起こってもそれが大きな事故に拡大しないようにする為,@異常を早く発見する自動監視装置,A原子炉を緊急に停止する装置,B冷却材が喪失する事故に備えた緊急炉心冷却装置 (ECCS),C放射性物質の漏出を防ぐ原子炉格納容器等を設けている。

 

大気の温室効果

地球の温度が次第に上昇することによって,赤外放射の最大強度の部分を地球放射の窓の波長帯に一致させるようにするのが大気の温室効果であり,これは温度調節器の役目を果たしている。例えば,温室の窓ガラスは,太陽放射の可視光線の部分はよく通すが,赤外線のうちで波長の長いもの程通し難い。温室では太陽放射はガラスを通って内部の物体に吸収され,物体の温度は上昇する。ところが暖まった物体の出す放射は,赤外線のうちでも主に波長の長い部分のものであり,ガラスで有効に断たれる。その為に,温室内に熱が蓄積されて温室内の温度が上昇する。温度の上昇と伴に温室内からの放射が短い波長の赤外線をより多く含むようになり,それと伴にガラスを通して外へ逃げるエネルギーも増える。この逃げるエネルギーの量が,可視光線として入ってくるエネルギーの量とちょうど等しくなったときに温室内の温度は一定になる。

 

酸性雨

酸性雨の被害として最も一般的なものは建造物に対するものである。人体への直接的な影響はないと考えられている。酸性雨の生態系への影響としては,湖沼の酸性化と土壌の酸性化とが,主に北欧で指摘されているが,日本では明瞭な影響は認められていない。日本の土壌は酸性雨を中和する能力が大きい為である。

湖沼に酸が付加され酸性化が進むと,湖底堆積物等から金属イオンの溶出が進み,pHが4以下になるとAl3+イオンが溶出する。Al3+は魚類の生殖機能を弱め,湖沼の生態系を破壊する。

土壌の場合も栄養塩類の流出や金属イオンの溶出によって,植物の生育に障害を引き起こす。

 

 

 








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