トップ理科総合B 改訂版3部 人間の活動と地球環境の変化>2章 課題研究のテーマ例テーマ例3 水生生物による河川の水質調査

テーマ例3 水生生物による河川の水質調査

 

準備上の留意点

方法

結果

考察


 

   教科書の内容の解説                           

準備上の留意点

(1) 調査地点については,河川の下流域から上流域まで510地点を設定するとよい。また,比較的流れが速く,石やレキの多い地点を選ぶ。

(2) 指標生物調査時の準備物:台所用ザル(目の細かいもの),白いバット,ピンセット,管びん,環境測定用具(温度計,pH試験紙など)

(3) 指標生物観察時の準備物:双眼実体顕微鏡・ルーペ,ピンセット,ペトリ皿,図鑑(川合禎次 編「日本産水生昆虫検索図説」東海大学出版会など)

(4) 物理化学的調査の準備物:採水用のポリバケツ・ポリびん(よく洗っておく),簡易水質検査器(パックテスト:株式会社共立理化学研究所など),環境測定用具。

                                        

方法

(1) 水生生物の採集:片手または両手で動かせる大きさの石に目をつける。石の下流側にザルを立て,石の裏側にいる生物が流されてもザルに入るようにしてから,石およびその下のレキ・砂をザルにとる。

(2) 採集生物の同定:採取した石等を少量の水を入れたバットに移し,石とともに採取した生物を観察する。特に石表面に付着して離れにくい生物は,見落とさぬよう注意してピンセットなどではがす。その後,採集した生物の種類を調べる。

(3)  (1)(2)を繰り返す。

(4) 化学的水質調査:ポリバケツに河川の水を採取し,ポリびんに移した後,市販のパックテストを用いて,pH,リン酸イオン,アンモニウムイオン,硝酸イオン,CODなどを測定する。各自治体の環境白書などに出ている前年度の測定結果を利用してもよい。

(5)       河川内環境の記録:川幅や流速,気温・水温などを調べる。

(6) 人間活動の影響:調査地点周辺の,人間による土地利用状況,河川利用状況(特に川底の状態),家庭廃水や工業排水の流入状況などを調べる。

 

結果

調査結果は,表にまとめたり地図に記入する。データ例として,大阪府中・北部の河川での3種類の生物の調査結果を示す。

出典:大阪府高等学校生物教育研究会環境教育研究部会

(1997)「生物から見た大阪の陸水」

 

考察

@指標生物調査上のデータ例から,上流域はサワガニに代表されるきれいな水質,中流域はミズムシが多く中程度の汚染,下流域はイトミミズに代表される汚染のすすんだ水質,さらに下流で排水の流入も多い流域では,イトミミズすら見られない劣悪な水質という状況がよくわかる。

A物理化学的調査:植物は,窒素・リン酸・カリウムを3大栄養素とするが,そのうちカリウムはふつう水中に豊富に存在する。したがって,何らかの原因により河川の窒素とリン酸が増えると(富栄養化),植物プランクトンが増殖することになる。その程度がひどいと,赤潮やアオコなどの現象となる。さらにそれらプランクトンの遺体は分解する際に多くの酸素を消費するため,魚介類の死滅へとつながる。富栄養化に関しては,窒素とリン酸の量が重要となる。

水中の窒素は,プランクトン等の排出物や遺体の分解などによって供給され,アンモニウムイオンや硝酸イオンとして測定される。リン酸については,プランクトン等の分解の他,最近増加している家庭排水や工場排水などから供給される。pHは,富栄養湖ではさかんな光合成のために高い値を示す。COD(Chemical Oxygen Demand)は水中の化学物質(主に有機物)を酸化するのに必要な酸素量であり,汚れた水ほど高い値を示す。

B指標生物調査と物理化学的調査

 物理化学的調査では水質を定量的に測定できるが,一時的な環境の変化を反映しやすい。例えば渇水時には物質濃度は高くなり,大雨の後では低くなる。工場からの一時的排水直後には,その影響も受ける。それに対し生物学的調査は,水質を数値化するにはやや難点があるが,長期間の平均的な環境を反映するため,環境を評価する方法として適している。両方法の結果が矛盾するような結果が得られた場合は,上のような原因を考えてみるとよい。

 

<発展>

詳細な調査をするときには,一定面積(例えば25×25cm)の方形枠を設定し,その中の生物すべてを採集し,種名と種ごとの個体数・生重量などを調べる。採集場所で生物をホルマリン浸けにし,種の同定や測定は,持ち帰った実験室で行う。

 

<参考リンク>

●川の生きものから水質を調べよう! http://www.kai.ed.jp/webkyou/suisitu/TOP.htm

 

<指標生物について>

 指標生物として調査対象となるのは,何も水生生物ばかりではなく,鳥類や哺乳類にも存在する。また,それらの生物は環境汚染の指標となるものばかりではなく,その環境の持つ他の特徴を示す場合もある。以下に例をあげる。

・アブラコウモリ=人家に住処を求めるため,住宅の多さの指標となる。人家に住む野生生物は少なくないが,たいていのものは森林等にも住み,アブラコウモリのように種全体が人家に適応している例は珍しい。

・アシナガバチ=巣材は木,エサはイモムシ(植物食性)なので,植物の多さの指標となる。エサが豊富だと巣が大きくなるので,巣の大きさを調べるのも有効。

・ダンゴムシ=セビロコシヒロダンゴムシは落ち葉の下などで暮らし,オカダンゴムシは公園や海岸などでも暮らせる。両者の個体数比は,森林的環境の指標となる。

・その他=メダカ,スズメ,クマネズミ,セミ,ツバメ,アカガエル etc.

 

 

 








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