トップ理科総合B 改訂版3部 人間の活動と地球環境の変化>第1章 人間の活動と環境の課題>4節 大気汚染を探る

4節 大気汚染を探る

 

調査 二酸化窒素の測定

<参考> 濃度の正確な測定方法について

T.植物による浄化作用

U.自動車排気ガス中の二酸化窒素濃度

V.植物を用いた大気中の浮遊物質の測定


 

B 二酸化窒素の測定による大気汚染の調査

 

   教科書の内容の解説                           

調査 二酸化窒素の測定

◆準備上の注意

@測定原理:大気中のNO 2が,採取びん内ろ紙中のトリエタノールアミンと反応し,亜硝酸となってろ紙に吸収される。この亜硝酸を水中に溶かし出し,その濃度を測定することで間接的に大気中のNO2濃度を知る。

A亜硝酸濃度の測定:教科書では,パックテストを用いた簡便法を紹介している(精確な測定方法は,<参考>に後述)。複雑な操作や機器を必要としないので生徒実験には適切であろう。パックテストのかわりに簡易水質検査試験紙(ニューメディカ・テック株式会社製)も利用できる。

B採取びんについて:ろ紙に含ませるトリエタノールアミンは,やや廉価な(モノ)エタノールアミン(500ml1000円程度)でも代用できる。作成した採取びんは,蓋をしたままで1週間程度もつ。また採取びんを自作せずに,NO2測定用の市販キット(パッチテスト:東洋アドバンテック社)を用いてもよい。

 

◆方法上の留意点

@測定地点には,交通量の多い道路や交差点沿い,交通量の少ない住宅地や学校敷地内,樹木の多いところや少ないところを混在させる。

A採取びんの放置時間によって,ろ紙に吸収されるNO2量が変わってくるので,びんによる差が出ないように注意する。大気中のNO2濃度は低い上,時間帯によって(交通量等の影響を受けて)濃度が変わりやすいので,24時間放置して測定する。

B本方法は風の影響を受けるので,びんを上下さかさまにして測定を行う。びんの設置場所は,地上1.5m(胸の高さ)が基準である。

Cろ紙にしみこませる4滴のトリエタノールアミンは,相当量のNO2を吸収するに十分な量なので,その量は大体でよい。一方NO2採取後に加える蒸留水の量は,測定する濃度に影響を与えるので正確に測りとる。

D作業を,採取びんの設置,回収,測定などに分割すれば,通常の授業時間内に実施することも十分可能であろう。

 

◆結果・考察

@多くの調査結果が得られれば,地図上にその結果をまとめさせる。

ANO2濃度については,多くの調査結果がホームページなどに紹介されているので,自分たちの得たデータと比較させるのもよい。

Bここでは蒸留水中の亜硝酸濃度を測定しているが,この値は大気中のNO2濃度に比例していると考えられるので,それらを換算することもできる。市町村等が公定法とよばれる方法で測定を行っている地点(交差点付近に設置された電光掲示板に,リアルタイムで値が表示されている場合もある)において本方法を実施し,両データを比較して換算のための係数を求めればよい。ある報告によれば,以下の通りである。

大気中の二酸化窒素濃度(概数)0.08×本方法による亜硝酸濃度

 

◆考察

@交通量の多い場所や工場の近くなどでは,NO2濃度は高いという結果が得られるだろう。

ANO2についての以下の知識もふまえ,その防止対策についても考えさせたい。

ものが燃えて高温になると,主として空気中のN2O2が反応し,NOが生じる。NOは不安定な物質なのでさらに酸化され,NO2となる。高温になる状況としては,発電所や工場のボイラー,自動車のエンジン,暖房器具などが考えられるが,大都市におけるNO2発生源としては,自動車が圧倒的に大きな役割を果たしている。NO2は他の汚染物質のように,特定の原料から発生するものではないため,その発生を防止するのが難しい。NONO2をあわせて,窒素酸化物(NOx:ノックス)とよばれる。

NO2は酸性雨や光化学スモッグの原因物質であり,人体に対しては呼吸器に悪影響を与えるとされる。国の環境基準が0.040.06ppm以下であり,大阪府では自動車排出ガス局の平均値が0.04ppm程度,大気汚染一般局の平均値が0.025ppm程度である。したがっておおまかな目安としてはつぎのように表現できるだろう。

0.02ppm以下:あまり汚れていない

0.020.04ppm:少し汚れている

0.040.06ppm:汚れている

0.061.00ppm:大変汚れている

1.00ppm以上:深刻な汚染

 

<参考> 濃度の正確な測定方法について

 亜硝酸の正確な濃度を知るには吸光光度計を用いて発色度を測定し,その値をあらかじめ作成しておいた検量線(発色度と亜硝酸濃度との関係を示すグラフ)にあてはめる。

@ 次の濃度の亜硝酸ナトリウム溶液を調製して,それぞれの545nmにおける吸光度を測定し(濃度:0.000,0.200,0.400,0.600,0.800,1.000μg NO2/ml),検量線を描く。

A 調査で得られたザルツマン試薬の発色度を,同じく545nmの吸光度で測定し,検量線にあてはめる。

 

 

   発展実験                           

T.植物による浄化作用

樹木の多いところではNO2濃度が低いことから,植物に大気浄化の作用があることを知る。

 

U.自動車排気ガス中の二酸化窒素濃度

作成した採取びんを入れたビニール袋を自動車のマフラーに近づけ,排気ガスを直接採取する。ビニール袋の口をしばって24時間放置し,採取びんを取り出して上と同様の方法で亜硝酸濃度を測定する(NO2の存在を確認するだけなら数十分の放置でよい)。ガソリン車とディーゼル車で比較すれば,ディーゼル車の方が高い濃度となる。

 

V.植物を用いた大気中の浮遊物質の測定

 空気中に浮遊している汚染物質は,植物のガス交換にともなって孔をふさぐので,その程度を調べることにより大気汚染の状況を測定することができる。この調査には,気孔がくぼみとなっていて汚染物質がたまりやすいマツなどの葉を用いるのがよい。

 <方法>

@交通量を考慮して設定した数カ所の調査地点からマツの葉を採取する。同時に,それぞれの地点の交通量についても記録しておく。

Aマツ葉の上部(凸部)を薄くかみそりではぎ取り,はぎとった切片を,凸部を上にしてスライドガラスにのせ,検鏡する。

B1試料につき30100個の気孔を観察し,その詰まり具合を判定する。詰まり具合は,

++「まったくまたはほとんど詰まっている」,

+「やや詰まっている」,

−「詰まっていない」

3段階に分け,気孔1個ずつについて判定する。

 

C調査結果をまとめ,地点ごとに汚染率(++および+の個数/調査した総気孔数())を求め,交通量との関係を比較する。

 

 

<関連リンク>

おもしろ実験「マツの葉で大気汚染調査」

 http://www.kenis.co.jp/experiment/environment/002.html

千葉県環境研究センター「松葉の観察マニュアル」

http://www.wit.pref.chiba.jp/_kikaku/matuba/manual/manual.htm

研究紀要第17集 環境学習ガイドブック「マツの葉の気孔で大気の汚れを調べよう」

http://www.biwa.ne.jp/~kita-jhs/kankyo/environ/env_003.htm

 

 

 

 

 

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2008 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.