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3節 火山との共存を探る

 


13 雲仙普賢岳の火砕流,

15 雲仙岳の噴火による火砕流でなぎたおされた林と火山灰に埋もれた畑

火山砕屑物

岩なだれ(岩屑流)

火砕流

土石流,泥流

溶岩流

火山ガス

考察


 

 

   教科書の主な図表の解説                           

13 雲仙普賢岳の火砕流,

15 雲仙岳の噴火による火砕流でなぎたおされた林と火山灰に埋もれた畑

 火砕流ということばが一般的に使われるようになったのは,1990年から1995年にかけての雲仙普賢岳の噴火以降である。普賢岳は火砕流という現象を間近に観察できた最初の火山であったといえる。

 

   教科書の内容の解説                           

火山砕屑物

 噴火口から放出される火山岩塊,火山礫,火山灰などを総称して火山砕屑物という。このうち,火山ガスの発泡により多孔質となったものを軽石とよぶ。また,玄武岩質火山の噴火で噴出する黒っぽい多孔質の小さな塊をスコリアという。

 火山砕屑物のうち大きなものは火山の近くで堆積するが,細粒の火山灰は上空に運ばれて広範囲に堆積する。1815年のインドネシアのスンバワ島タンボラ火山の噴火では,多量の火山灰が放出され,火山周辺では20mの厚さに堆積し,140 km西方に離れたロンボック島でも50 cmの厚さがあった。このため,広範囲の農作物に被害が出て,8万人が餓死した。

 また,細粒の火山灰は成層圏に達して,長期間地球を覆い,地球的気候変化をもたらす。1783年には,アイスランドのラキ火山や浅間山が大噴火し,日本でも農作物の被害が出て天明の飢饉が起きた。

 

岩なだれ(岩屑流)

 18887月磐梯山の山頂部が北側に崩れて広範囲に土砂を押し流した。また,1980年,北米のセントヘレンズ火山の噴火では,噴火後59日目に膨大な量の山体構成物質が崩れ落ちて磐梯山と同様に馬蹄形の火口を形成した。磐梯山やセントヘレンズ火山の山体崩壊では激しい爆風が先端部に発生し,高速で巨大な岩石を含む土砂と共に雪崩のように流れ下り,大きな被害をもたらした。

 

火砕流

 火砕流は,高温の火山砕屑物が高温の火山ガスや空気と共に高速で山腹を流れ下る現象で,火山災害の中でも最も恐ろしい現象の1つである。

 火砕流という現象が火山学者に認識されたのは1902年のカリブ海マルティニク島のモンプレ火山の噴火であった。この噴火では,発生した火砕流によってサンピエール市は壊滅し,28000人の市民のうち生き残ったのは2人だけであった。

 火砕流は,発生機構から3つのタイプがある(下図)。普賢岳はメラピ型(ジャワ島メラピ火山)の火砕流であったといわれている。

 

土石流,泥流

 土石流は大小の岩塊が泥水によって低地に運ばれる現象で,泥流は多量の泥水が下流に流れ下る現象である。これらは火山活動と関係なく大雨などによって起こるものもあるが,火山活動と関係深いものも多い。

 火山によって起こる土石流や泥流の災害には2種類ある。1つは,噴火が直接の引き金になって起こるもので,もう1つは火山砕屑物の堆積と降雨による二次災害である。

 日本での泥流災害としては,1926年の十勝岳噴火によるものが有名である。1926524日,十勝岳は第1回の水蒸気爆発があり,小規模の泥流が麓の白金温泉を襲った。その4時間後,大きな水蒸気爆発が起こり中央火口丘の半分が崩壊して,岩なだれや泥流が北西斜面を流れ下り,泥流は30分たらずで麓の上富良野町に達した。泥流災害としては日本最大のものであった。十勝岳は,1年のほとんどの期間,雪で覆われていて,噴火があると,雪が急に解けて泥流となって下流に流れるのである。

 

溶岩流

 日本の伊豆大島や三宅島,ハワイ島のキラウェアなどの溶岩は玄武岩質で粘性が小さく,流動性に富んでいる。したがって,薄く広く流れるのが特徴である。一方,桜島や浅間山のような安山岩質の溶岩は粘性が大きく,狭い範囲に厚く流れることが多い。1983年の三宅島の噴火では阿古集落の家や学校が溶岩流に埋まり,現在は違う場所に新しい集落ができている。溶岩流が人の住んでいるところに流れてくることは少なくない。しかし,火砕流などと違って,流れる速度が遅いので,人工的に流れを止めたり,方向を変えたりする試みもされたことがある。

 

火山ガス

 1986年,アフリカ,カメルーンのニオス湖でガスが噴出して1700人以上の死者が出た。これは湖底から二酸化炭素が多量に噴き出し,それが谷に沿って流下し,集落を襲ったと考えられている。

 日本でも火山ガスによる死者は多い。1件あたりの被害者数は少ないが,1年に1人くらいの割合で犠牲者が出ている。その原因は硫化水素(H2S)によるものが多い。

 

考察

(1) 過去の災害のようすから,どのような防災対策が必要か考えてみよう。

 各火山についての噴火の特徴を学び,ハザードマップの作成や避難対策を考えておく。また,予知の研究も重要である。

(2) 近年の日本の火山活動が,人間生活にどのような影響を与えたか考えてみよう。

 火山活動は,美しい景観や温泉など観光資源として利用され,生活に潤いを与えてきた。一方,火山噴火は,大きな人的被害や物的被害を与えている。災害を最小限におさえる工夫が火山との共生を可能にする。

 普賢岳や桜島,三宅島,有珠山などの恩恵と噴火による災害を調べさせるとよい。

 

<参考資料>

下鶴大輔,「火山のはなし」,朝倉書店

<参考リンク>

●内閣府防災担当ホームページ(火山対策情報,ハザードマップ作成など) 

http://www.bousai.go.jp/

●国土交通省ホームページ(過去の災害情報など) http://www.mlit.go.jp/

●磐梯山噴火記念館ホームページ(「こどもの部屋」では火山について詳しく楽しく解説)

http://www.bandaimuse.jp/

●アジア航測株式会社 防災関連情報

http://www.ajiko.co.jp/bousai/index.html

 

 

 

 








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