トップ理科総合B 改訂版2部 生物の変遷と自然のつり合い>第1章 生物と遺伝>探究1 キイロショウジョウバエとメンデルの法則

探究1 キイロショウジョウバエとメンデルの法則

 

 

<教科書の内容について:ドライラボ>

【指導目標】 

キイロショウジョウバエの眼色および体色が,メンデルの優性・分離の法則に従って遺伝することを,交配実験のデータから理解させる。実際の授業では♂♀のことは考えずに,1または23または4のいずれか一方の実験結果だけから考察させても構わない。

 

 

雌雄の形質を入れ換えた交配(正逆交雑)の結果から,眼色や体色が,常染色体の遺伝子によるのか,性染色体の遺伝子によるのかを考えさせることもできる。常染色体上の遺伝子によるものであれば,(教科書の交配1234のように)正逆交雑を行っても同じ結果が出る。

ちなみに,メンデルもエンドウを使った実験で正逆交雑を行ったが,それは当時,子が親と親の双方から,等しく遺伝子を受け取るということが明らかにされていなかったからである。

(3) キイロショウジョウバエは,モーガンが染色体説を提唱するきっかけとなった実験動物である。発展12などを行いながら,実験動物としてのハエの特徴についても学習させたい。

・よく用いられるのはなぜか・・・飼育・繁殖させやすい,1世代が短く10日ほどで交配結果が確認できる,比較的観察しやすい変異型が何種類も存在する。

・どのような変異型があるのか・・・本文中のもの以外に,白眼,朱色眼,棒眼,黒体色,痕跡翅など約3000種類。

【仮説・考察】

◆実験2の仮説「メンデルの優性・分離の法則は成り立っている。すなわち,黄褐色(野生型)と暗黒体色の個体をPとして交配すると,@F1世代は野生型と暗黒体色の比が10となる。 AF2世代は野生型と暗黒体色の比が31となる。」

◆実験2の考察

@F1の結果より,暗黒体色は劣性形質だといえる。

AF2の分離比より,メンデルの優性・分離の法則は成り立っているといえる(仮説は正しい)

 

<発展1:ショウジョウバエの観察>

【指導目標】 

エーテルで麻酔したハエを時計皿にのせ,ルーペ(×10程度)で観察する。遺伝分野は知識だけの学習になりがちなので,さまざまな形質のハエの観察実習を行い,生物現象としての実感を抱かせたい。

【方法】 

(1) さまざまな形質(変異型)のショウジョウバエを用意する。50分で観察・記録できるのは,35種類であろう。

(2) ハエを飼育びんから空びんに移し,エーテル蒸気を吹き込んで麻酔する(発展2参照)。あらかじめ空びんにエーテルのしみこんだ脱脂綿を入れ,蒸気を充満させておいてもよい。

(3) しばらくするとハエが麻酔されて動かなくなるので,時計皿に移してルーペで観察する。麻酔が強すぎると翅が反り返ってしまうので,肢や翅を動かさなくなる程度で(軽めに)切り上げる。

(4) 多人数で実習を行うときには,麻酔されたハエをシャーレに入れ,各自で取りに来させる。この際,少量のエーテルを染み込ませた脱脂綿を入れてふたをしておくと,実習途中で麻酔が醒めて動き出すことがない。

(5) ハエを移動させるときは素手やピンセットでつまむのではなく,絵筆の穂先でつつくようにすれば傷つけずに捕捉できる。

(6) 実習レポートとして,ハエの線画を与えて,色鉛筆で実物に忠実に色を塗らせるのも一案である。

(7) 本実習は,色覚異常の生徒については注意を要する。

 

<発展2:ショウジョウバエの飼育・交配実験>

【指導目標】

準備等に手間はかかるが,できれば実際に交配実験を経験させたい。ハエを飼育することを通し,昆虫の生活史を知ることもできる。

【準備・方法】

(1) キイロショウジョウバエ 野生型と変異種(赤眼とセピア眼など)

(2) 飼育用培地

(3) 管びん,綿栓,ピンセット,ろ紙片など

 

 

【準備上の留意点】 

(1) キイロショウジョウバエ(野生型,褐色眼とも)は,教育センターや大学など継続的に飼育している機関から分けてもらう。その場合は交配する親を得るのに約2週間必要なので,実験の23週間前に入手する。

(2) ここで紹介した培地では,殺した酵母(ドライイースト)と糖がハエの栄養源となり,プロピオン酸がバクテリアの繁殖を防ぐ。伝統的な培地は,糖だけの培地に生きた酵母を加えて作るが,酵母の繁殖状況にハエの生育状況が左右されるので,ここに示した培地の方が安定した結果を得られる。

(3) 培地作成後すぐにハエの成虫を入れると,羽がぬれて飛べなくなることがある。12日後にハエを入れるように準備する。

(4) なお,41班となって交配AB2本の実験をするならば,40×8クラスの学校では,2×10×8クラス=160本の飼育びんが必要となる。

【方法上の留意点】 

(1) ここに示した25での発育速度を参考に,実験計画を立てる。 F2を得たい日の4週間前に親の交配を行う必要がある。

(2) 交配に用いる雌は,必ず未交配のもの(処女雌)を使う。なぜなら,キイロショウジョウバエも含めた多くの昆虫では,一度交尾した雌は貯精のうに精子を貯えて少しずつ受精に使うので,以後交尾をしないからである。

未交配の雌を得るためには,羽化が近くなって黒くなったさなぎを,1匹ずつ小さい管びんに隔離しておく。殺菌した柄つき針かピンセットを使うとよい。また,親を得たい日の朝までに生まれている個体を飼育びんからすべて追い出し,午前中に生まれてきたものを交配に用いてもよい。

(3) ハエを麻酔びんに移すときは,まず飼育びんの底をトントンたたいて側壁等にとまっているハエを下に落とす。その隙に栓をとり,ふたをあけた麻酔びんの上にさかさまにのせて,数回たたく。

【実験の経過】 

(1) 親の交配:♂♀()を一緒のびんに入れると,しばらくして交尾をする。

(2) F1の誕生:交尾してから約1週間後に,培地上に小さな幼虫か卵があるのを確認すれば,親は追い出す。生まれてくるFlと親が交尾してしまうのを防ぐためである。

(3)  F1の交配:Flの成虫が羽化すれば,78時間後(羽化後約8時間は交尾しない)に軽く麻酔し,形質と性別を確認して,新しい飼育びんに移す(1本のびんに雌雄12対ずつ)

 F1の分離比を確認するだけで実習を終わる場合は,この段階まで。

(4) F2の誕生:やがてF1の交尾・産卵を経てF2が羽化すれば,それぞれの形質を調べる。その際は,強く麻酔してから白い紙の上に広げ,細い筆やピンセットで形質・雌雄別に分類してから,それぞれの個体数を数える。

 

実際に実験をしたときのスケジュールを下にまとめてみた。これは室温2025で飼育した場合であるが,実験の進行が遅れてくれば加温し,速すぎれば低温にするとよい。

 

 

 








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