トップ理科総合B 改訂版2部 生物の変遷と自然のつり合い>第3章 生物と環境>第3節 生態系の変化

3節 生態系の変化

 

日本の植物分布

森林(照葉樹林)の階層構造

湖沼の環境と季節

植物群落の遷移と日本各地に見られる極相

遷移と動物相の変化

極相林の判定規準

観察 池のプランクトンを調べる

実習 溶岩上での植物群落の遷移


 

   教科書の内容の解説                           

日本の植物分布

 日本の森林を区別すると,トカラ列島以南の亜熱帯多雨林帯,関東以南の照葉樹林帯(常緑広葉樹林帯),中部地方の高地から東北地方,北海道の西南部までの夏緑樹林帯(落葉広葉樹林帯),北海道中部以北の常緑針葉樹林帯となる。

 また高度が上がるにつれて,植物分布が異なる。植物の垂直分布に最も大きく影響するのは温度である。気温は,高度が約100m上がるにつれ約0.5下がる。本州中部の太平洋側の高山を例にとると,高度500m700mまでは照葉樹林帯で,これより上で1500m1700mまでは夏緑樹林帯である。この地帯の1200m付近まではクリ,それより上はブナが多いので,それぞれクリ帯とブナ帯に分けることもある。さらに上の2500m付近までは,シラビソ・コメツガ・トウヒなどの針葉樹林帯である。これより上は森林が成立せず,針葉樹林の上限が森林限界になる。森林限界以上は,ハイマツ群落や高山草原が占めるハイマツ帯である。

 垂直分布は緯度により変化し,分布の高さは高緯度ほど低くなる。

 

 

森林(照葉樹林)の階層構造

  生物群集の形や構造からみた様相を相観とよぶ。森林では階層構造を構成する生物群集の形は,当然ながら構成する生物の形によって大きく支配される。基本的には高さ,木本と草本,樹幹の形とか落葉と常緑,着生植物とつる植物などであり,ホイッタカーによると次のように分類されている。

高木 (3m以上) 針葉樹 ,広葉樹 (常緑照葉樹・夏緑樹),とげ植物,ロゼット形植物 (ヤシ・木生シダ),つる植物

低木 (3m以下) :広葉樹 (常緑照葉樹・夏緑樹),ロゼット低木 (アロエ・ユッカ),多肉茎植物,とげ低木,半低木 (生活に不適な時期に茎や枝の上部が枯死する),亜低木 (25cm以下)

着生植物:地上の植物や岩石に付着して生活する植物

草本植物:シダ類,イネ科植物 (イネ・スゲ),草 (草原のほか森林の下草)

葉状植物:地衣類,コケ類

 

湖沼の環境と季節

 水中では,太陽から届く光の強さはしだいに弱くなり,ある深さで補償点となる(教科書の注参照)。そのときの深さを補償深度といい,海(外洋)では約100m,湖沼では数m(透明度による)である。

 湖沼では水量が海に比べて少ないので,季節による水温の変動がやや著しい。水の密度は4のとき最大で夏季には水の移動は生じないが,秋季になると表水層の水温は下がり,やがて4に近づくと深水層より水の密度が大きくなり,水の移動が生じて深水層の栄養塩類が表水層に押し上げられる。冬季は水の移動はないが,春季は表水層の水が暖められ,水の移動が起こりやすくなる。

 

植物群落の遷移と日本各地に見られる極相

 群集が時間の経過に伴って変化していく過程を遷移 ( サクセッション ) という遷移のうち,海洋に生じた新島や溶岩によって裸地になった場所に起こる遷移を一次遷移とよび,山火事とか洪水によって多くの生物群集が消失したあとに起こるのを二次選移とよんでいる原生林は一次遷移を経て極相に達したものであるのに対して,多くの社寺周辺の原始林は二次遷移を経た場合が多いとみてよい

遷移は必ずしも最終的に森林を極相として終わるわけではない教科書p.122図9に示した群系それぞれが極相のすがたとみることができるわけであるから,サバンナやステップとか荒原・砂漠などの状態で,その地域の遷移が止まるこれら群系では,この状態が極相ということになる

わが国は温・暖帯で雨量も多いので,極相を夏緑樹林(冷温帯ブナを中心とする),または照葉樹林(西南部シイ・カシ・タブノキ類が優占する)とする遷移がふつう見られる亜寒帯では,本州ではアオモリトドマツ (オオシラビソ)・シラビソが,北海道ではエゾマツ・トドマツなどの針葉樹が優占する森林となるしかし,照葉樹林の極相が成立するような気候条件下でも, 山の尾根筋や,風あたりの強い場所などでは ,草地や低木林のままにとどまることもあるまた,森林になってもカシやシイで構成された標準的な照葉樹林にならず,モミやツガなどの針葉樹林を多く含んだ森林として安定することも多い二次遷移が多いが ,火山噴火後の一次遷移も少なくない近年では,桜島の大噴火 (大正3年,1914)で流出した溶岩により桜島が大隅半島と結びつき半島となった一帯で,溶岩と火山灰でおおわれた裸地から遷移が出発し,一次遷移の記録として知られているこのように裸地から出発する選移は乾性遷移で,このほか伊豆の大島でも乾性遷移の各段階が残されているしかし昭和新山 ( 昭和18~23 年,407mの山ができた) はまだ遷移の初期しか見られない一方,湖沼が沼沢化・草原化しやがて森林となる湿性遷移は,多くの沼沢地とそれをとりまく山地との問で観察される尾瀬や八甲田地域にこの遷移の各種段階を示すものを見ることができる

 

遷移と動物相の変化

 動物相も遷移にともなって変化する草地ではスズメ,ヒバリなどの草食性あるいは雑食性の小鳥が多いが, 陽樹林のあたりにはヒワ,ウグイスなどの小鳥や,ヒグラシ,カミキリムシなどの昆虫類が多く見られるようになる極相ではミミズク・モズ・ツグミや,スズメバチ・ミヤマカマキリやクモ類,ムササビなどが比較的多く見られるしかし,一般に動物は食料や気温などに応じてすみかを変えるので,植物ほど明確な分布状況は見られない

 

極相林の判定規準

 伊豆大島の新しい溶岩上につくられつつある荒原土壌中の窒素はほぼ0%だが,古い噴出物上に発達した極相林と考えられるタブノキ・シイの林のそれは 1kg/m2 に達するこの量を硫安に換算すると 47 トン/ha にもなる

 それでは,森林が極相に達したことはどのようにして判定されるのだろうか

 @ 陰樹が上層木を占め,樹高・現存量が遷移相に比べて大きい

 A 優占する陰樹の芽生え・幼木・枯木・倒木が見られる

 B 階層構造が発達しているが,種類数は陰樹・陽樹混交林よりも少し減る (耐陰性の少ないものが消失する)

 C 土壌の厚さ・含水量・保水力・含有機窒素量が増す

 D 根・幹・枝の割合が増すので呼吸量が増え, 純生産量≒落葉・落枝などの枯死量となるので現存量の増加量は少ない

 

観察 池のプランクトンを調べる

《準備上の留意点》

 市販のプランクトンネットがあれば使うとよいが,シームレスのストッキングを切って自作のネットを作って使うのもよい

参考リンク>

●「プランクトンネットを作ろう」http://imasy.or.jp/~saexa/Lab/petbotle/net_plnk.html

《方法上の留意点》

(1) 出現するプランクトンは,種名まで同定させるのが困難なので,ケイソウ類,ミジンコ類,ケンミジンコ類,ワムシ類等の大まかな生物群に分けるだけにとどめてもよい

(2) プランクトンネットの扱いに事前に習熟しておくことコックを閉めてから,ひもをしっかり持って投げ,水面付近を水平に引く引き上げる際にはネットの内側に付着したプランクトンがガラス部分に集まるように何回か水面で上下させる

(3) 採集したプランクトンは,管びんに移し,必要なデータ(調査場所・日付など)を記入しておくすぐに観察しないときは,約5%のホルマリンで固定しておくとよいホルマリンが皮膚に触れた場合は,すぐに水洗させること

(4) 顕微鏡で観察する際は,管びんの底部に沈殿している部分をスポイトで吸って,ホールスライドガラス等に入れ,カバーガラスをかけて観察してもよいが,見つけにくい場合は,手回しの遠心分離器を使ってプランクトンを遠沈管の下部に集めてから,同様にして観察するとよい

 

 

 

実習 溶岩上での植物群落の遷移

《指導目標》

  植物群落の遷移については,数百年という極めて長期間の継続観察が必要であるため,実証が困難であるここでは,裸地になってからの時期が推測できる場所の植物群落を調査し,それらを年代順に並べることによって,植物群落の遷移の様相を見ている

  火山噴火時の溶岩流出によってできた裸地からの植物群落の遷移をデータに基づいて推測し,遷移の現象について考えさせたい

 

《準備上の留意点》

  実習をより効果的に行うために,スライドや写真を使って,それぞれの群落やその中にある植物について,予め見せておくとよい

  また,伊豆大島,三原山について,地図や文献,インターネットによる情報などを用いて,生徒に事前に学習させておくことも大切である

 

《方法上の留意点》

  教科書に載せたデータは,手塚泰彦氏の調査によるグラフから読みとったものであるグラフ化させることから,傾向を読みとることに重点を置きたい

  また,この場合,極相に達するまで1000年以上かかっているが,このことは他の地域における遷移にあてはまるものではない伊豆大島が海洋に囲まれた孤島であるため,他からの種子の供給が少ないことや,溶岩という土壌も種子も全くない裸地から始まる遷移(一次遷移)であるからである

 

《結果》省略

 

《考察》

(1)遷移の進行(裸地からの年代の経過)にともなって,群落内の植物の種類は増え,やがて一定となる植物群落の高さ,現存量も同様の推移となる群落内の照度は,まったく逆の推移となる

(2)荒原に初期に出現する植物は,「乾燥に強い」,「火山ガスにも耐性をもつ」,「種子の散布力が大きい(風散布)」といった特長をもつ草本であるシマタヌキランは伊豆大島に多いカヤツリグサ科の植物であり,ハチジョウイタドリとともに多年生草本である

(3)極相林の性質としては,「光補償点が低い(陰樹)」,「高木に成長する」,「寿命が長い」,「種子の散布力が弱い」,「成長が遅い」などがあげられる

 

<参考文献>

Tezuka.Y.,Development of vegetation in relation to soil formation in the volcanic island of Oshima Izu, Japan,Jap.Jour.Bot.17(1961)

●吉田竜夫,「原生林保護とその生態的意義」,日本生態学会誌6(1961)

●沼田 真編,「群落の遷移とその機構」,植物生態学講座4,朝倉書店(1977)

 

 

 

 


 

 

 








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