トップ理科総合B 改訂版2部 生物の変遷と自然のつり合い>第2章 生物の変遷と多様性>第2節 動物の多様性

2節 動物の多様性

 

 

23 ハワイミツスイのいろいろ

28 体節と繰り返し構造

種の定義

島は進化の実験場

脊つい動物と無脊つい動物

脊ついと筋肉のはたらき

外骨格

動物の形

フィンチのくちばし

巻貝と対数螺旋

なぜヒトデは5放射相称か?

生態的地位


 

   教科書の主な図表の解説                           

23 ハワイミツスイのいろいろ

ハワイミツスイの仲間(ハワイミツスイ科)は食性の違いにより,さまざまなくちばしをもった種へと分化した。現在28種知られているが,すべてはもとになった1種から種分化をとげたものだと考えられている。AはハワイマシコPsittarostra konaで,頑丈なくちばしでハマジンチョウの仲間の実をくだいて食べている。BカワリハシハワイミツスイHemignathus wilsoniで,この鳥は上下のくちばしの長さが極端に異なっており,下の短くて頑丈なくちばしをのみのように使って樹皮をほぐし,上の長い曲がったくちばしで虫をほじくり出す。CはベニハワイミツスイVestiaria coccineaで,説明にあるように,蜜を吸うために適した構造のくちばしをもっている。

      

28 体節と繰り返し構造

 体の長軸方向に同じ構造が繰り返して体ができている場合,これを体節構造とよび,繰り返しの単位を体節とよぶ。体節構造を示すものの代表が環形動物と節足動物であり,これらはそれゆえ共通の祖先をもっていると考えられてきたが,最近の遺伝子を使った系統の研究によると,そうではないようである。

 

   教科書の内容の解説                           

種の定義

ここでは種を,生物学的種概念で定義してある。種とはほぼ形態的に共通したつくりをもつ個体の集まりで,同一種を構成する個体は,遺伝的に安定した一定の形態的,生理的,生態的特徴をもち,同一種内では,自然の状態で交配が行われ,次の世代へと形質を伝えていく。

 

島は進化の実験場

 大陸から遠く離れた島(ハワイやガラパゴス諸島など)では,競合する他種がいないという環境ができやすい。そのような場合には,一つの種が多様な環境に進出し,進出した環境に適応した多様な種に分化する。例にあげたハワイミツスイや,ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチの例が有名である。

 

脊つい動物と無脊つい動物

動物をグループ分けする際の最も大きなくくり方として「門」という単位がある。絶滅したものを含め,約50の動物門が知られており,われわれ脊つい動物が属する脊索動物門は,その中の1つである。脊索動物門以外のものは背骨をもたない。脊索動物門には,脊つい動物の他に,半索動物(ギボシムシの仲間),尾索動物(ホヤの仲間),頭索動物(ナメクジウオの仲間)があるが,背骨をもっているのは脊つい動物だけである。背骨をもっていない動物をひとまとめにして「無脊つい動物」とよび慣わしているが,これは自分たちの仲間だけを特別扱いし,残りを十把ひとからげにした便宜上のよび方で,無脊つい動物に対して失礼なよび方だと言っていい。

 

脊ついと筋肉のはたらき

脊ついは脊つい骨という硬い骨が関節で連なった細長い硬い棒で,骨格系の主要部分をなしている。骨格系には,自分の重量や外からの力が加わってもつぶれないように体の形を保つ役割がある。

筋肉による力を外界に伝えるのも骨格系の役割である。筋肉と骨の関係は(腕の関節を思い浮かべるとわかりやすいが),筋肉は関節部に付着点をもち,屈筋と伸筋の2種の反対方向に縮む筋肉がペアになって骨についているのが原則である。これは筋肉の性質を考えると理解できる。筋肉は縮むことはできるが,自力で伸びることができない。そのため,いったん縮んだら,別の筋肉によって元の長さまで引き伸ばされないと,再度収縮できない。筋肉による運動には,逆方向に縮む筋肉のペアが必要なのである。

しかし筋肉のペアだけでも十分ではない。われわれの腕の例で考えると,硬い骨でできた関節をはさんで両側に,腕を曲げる筋肉(屈筋)と伸ばす筋肉(伸筋)とがペアになって配置されている。骨の役割は,筋肉が縮んでも全体の長さが短くならないように保持することである。関節によって曲がることはできるが全体の長さが変わらない骨があり,その両側に逆向きに曲げる筋肉が配置されることによってはじめて,筋肉による効率良い運動が可能となるのである。

脊ついを最初にもった動物は魚であった。脊ついをもつ利点はすばやく泳げる点である。脊ついの両側に筋肉が配置されているが,脊ついとは,曲がりはするが長さの変わらない硬い棒(脊つい)であり,この両側にペアになった筋肉を配置することにより,魚は体を左右に振って水を強く押して進むことができるようになった。

 

外骨格

外骨格は体の外側を覆う硬い骨格である。外骨格は内骨格と同様,外力に抗して形を保つはたらきや,上で解説した背骨同様,筋肉のペアが外骨格に付着し,運動性を高めるのにもはたらいている(たとえば昆虫の脚)。外骨格は体をすっぽりと外側から覆うことにより,体の内部を保護するという役目もはたしている。

外骨格をもつ代表的な動物は節足動物門(昆虫,エビ・カニの仲間)と軟体動物門(貝の仲間)である。昆虫の外骨格はキチンが主成分であり,貝の外骨格(貝殻)は炭酸カルシウムが主成分である。どちらも細胞の作用により,細胞の外側につくりだされたものであり,いわば体外の死んだ部分である。

このような硬い骨格に体がすっぽりと覆われていることの問題点は,成長の際にあらわになる。硬い殻で覆われていると成長できないからである。そこで昆虫は殻を脱ぎ捨てて新たに殻をつくって成長するという,手間のかかるという作業(脱皮)をする。巻貝の場合には,殻の入り口を開けておき,ここに新たに殻を付け足すことより成長する。このようなやり方だと,成長とともに体のプロポーションが変わっていくのだが,貝は殻を対数螺旋(トピックス参照)の形にすることにより,この問題を回避している。

 

動物の形

動物には細長い左右対称形をしているものが多い。この形は効率よく移動運動するのに適した形である。左右非対称であればまっすぐ進むのが難しい。水や風の抵抗が左右で異なると曲がってしまうからである。私たちの体も左右対称である。ただしこれは外見の話。体の内部は,心臓や胃腸を考えればわかるように,必ずしも左右対称ではない。外形が厳密に左右対称なのである。これは,筋肉により外界に力をおよぼし,逆に外界から力(風や水の抵抗力)を受けるという,外界とのやりとりが形の左右対称性に影響しているからだと考えられる。

 固着して移動運動をしないもの,たとえばイソギンチャク(刺胞動物)やウミユリ(棘皮動物)は放射相称をしている。水中をただよっているクラゲ(刺胞動物)のようなものも放射相称である。ゆっくりとしか移動しないヒトデ(棘皮動物)も放射相称である。自力で運動する場合は方向性が重要であるが,そうではない場合には,どの方向にも均等に対応できる放射相称がより適した形なのであろう。

 

   トピックス                           

フィンチのくちばし

 ガラパゴス諸島のフィンチ類には,くちばしの形がさまざまに違った種がいる。くちばしの形はおのおのの種の利用しているエサを食べやすい形になっている。グラント夫妻らはガラパゴス諸島において長年継続してフィンチを観察した。その結果,環境の変化に対応して,ガラパゴスフィンチという同一種内でも,くちばしの形が変わっていくことが観察された。干ばつになると草の種子が実らないため,くちばしが大きくて大きな種子を割って食べることのできる個体が生き残る。20年の間に干ばつが3度起こったが,そのたびに,くちばしの大きな個体の割合がふえ,逆に湿潤年にはくちばしの大きな個体が減った。これはくちばしの大きさに自然選択がはたらいた証拠となる結果である。

 

巻貝と対数螺旋

 巻貝は螺旋に巻いており,左右対称でも放射相称でもない。この形には理由がある。貝の螺旋はすぐ内側の螺旋との距離が一定の比率で増加していく対数螺旋である。このような螺旋に巻きながら成長すると,貝は体のプロポーションを変えずに成長することが可能となる。

 

なぜヒトデは5放射相称か?

ヒトデは人手。5本の腕がある。ヒトデを含む棘皮動物の仲間は5放射相称の形をしている。動物で5放射相称のものはこの仲間しかいない。植物の場合は,サクラやウメ,キキョウなど,5弁の花びらをもったものはよく見かける。なぜ花びらに5弁のものが多いのだろうか。花びらが,飛んでいる昆虫を柱頭へと導く滑走路だと考えてみよう。5弁の花は5本の滑走路をもつ。6弁のものは,向かい合った花弁は同一方向の滑走路なのだから,結局滑走路が3本しかないことになる。4弁なら2本。だから5弁が良いのだという考えがある。

同様の考え方を棘皮動物にあてはめて,5放射相称を説明しようとするアイデアがある。棘皮動物はもともと,流れの中に腕をのばし,流れに乗ってくる有機物の粒子を濾し取って食べるという生活をしていた。正6角形の体をしていて,そのおのおのの角に腕があったとしよう。ある腕が流れの方向に向かうようにすると,対角線上の反対に位置する腕は,流れのまっすぐ下流の位置になり,ここには,すでに反対側の腕が濾し取ってしまった残りかすしか流れてこない。これでは腕が6本あっても,摂食に参加できる腕は実質上半減し,3本しかなくなってしまう。ところが正5角形なら,どの腕も流れに対して一直線上に並ぶことはないので,腕をすべて有効に摂食につかうことができる。正4角形では有効な腕は2本。だから,456の中なら5が良い。それがなぜヒトデが5角形かに対する答えではないかという説である。

もちろん進化の過程でどのような要因により形が決まったのかを実証することはできない。だが,このようにあれこれ考え,形に意味を見いだそうとするのは,知的におもしろい作業ではないだろうか。

 


図 5角形がよいという考え方。腕を丸で表し,陰になった腕は黒く塗ってある。

矢印は水流の方向を示す。

 

   発展の解説                           

生態的地位

p.1071~4行は生態的地位が違えば違った種が共存できるということを述べている。生態的地位とは群集のなかでそれぞれの種が占める場所や役割のことである。

同じ場所にすんでいても食べるものが違えば異なる2種は共存可能である。また同じえさを利用するもの同士であってもすみ場所が違えば(たとえば木の上のほう中程根元近く)やはり共存できる。えさや空間(すみ場所)は生物にとって資源である。資源を分割することたより生存条件が重なり合わないようにすればたくさんの種が共存可能になる。

 

<参考文献>

●エリック・R・ピアンカ,「進化生態学」, .267-303p.358-362, 蒼樹書房(1980)

●橘川次郎, 「なぜたくさんの生物がいるのか?」, 岩波書店(1995)

●ジョナサン・ワイナー,「フィンチの嘴」,早川書房(1995)

●本川達雄,「生きものは円柱形」,NHKライブラリー(1998)

●白山義久,「無脊椎動物の多様性と系統」, 裳華房(2000)

●本川達雄,「ヒトデ学」,p.18-24 東海大学出版会(2000)

●本川達雄,「ナマコガイドブック」,阪急コミュニケーションズ(2003)

 

<参考リンク>

●かたち・あそび(貝の螺旋を調べる) http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/2607/index.html

●貝の博物誌 http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/2002Shell/02/02100.html

●インターネット生物図鑑 http://www.knowledgelink.co.jp/

京都大学白浜水族館 http://www.seto.kyoto-u.ac.jp/aquarium/index.html

 

 

 

 








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