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3節 いろいろな遺伝

 

 

中間雑種

ABO式血液型(複対立遺伝子)

ABO式以外の血液型

致死遺伝子

多性雑種と独立の法則

ヒトの性決定

【発展】 伴性遺伝


 

A 複対立遺伝子

   教科書の内容の解説                           

中間雑種

 対立遺伝子の優劣関係が明確ではなく,そのため両形質の中間型が表れる遺伝様式である。不完全優性ともよばれる。マルバアサガオの花の色(赤・桃・白),ニワトリの羽毛の色(黒・灰=アンダルシアン・白),キンギョソウの花の色(赤・桃・白),サクラソウの花の大きさ(大・中・小)などの例が知られている。ヒトにおいては,生物Uで登場するかま状赤血球貧血症がある。この遺伝病に関して,ヘテロ接合の人は異常な赤血球(かま状)と正常な赤血球を50%ずつもつため,マラリヤにかかりにくく(感染しても症状が出にくい),かつ,そこそこ長生きできる人々である。

 

ABO式血液型(複対立遺伝子)

ヒトのABO式血液型では3種類の互いに対立する遺伝子ABOのうち,2個の組み合わせによって形質が決定される。ここではO型が劣性ホモであり,その存在はいろいろな家系における血液型の遺伝を解明する際の鍵になる。

ABO式血液型の遺伝様式は,輸血の際の血液型不適合から,1901年にランシュタイナー(Landsteiner)によって発見されたが,その遺伝様式はなかなか解明されなかった。ここに示したような複対立遺伝子の存在を唱え,遺伝様式を明らかにしたのは,法医学者でもある古畑種基(1925)であった。

 

   トピックス                           

ABO式以外の血液型

1MN式血液型 1926年ランドシュタイナーによって発見された。あるヒトの血液をウサギに注入すると,ヒトの血球に含まれる一種の抗原に反応して,ウサギの体内にその抗体が生じる。このウサギの血清を採り,調べようとする人の血液を混ぜてみると,その抗体によって凝着される場合と,反応しない場合とがある。これによってM型・N型・MN型と3種を区別する。MN型とは,どんな人から採ってつくった血清にも反応する型であり,M型とN型とは,それぞれ別種の血清に反応するものである。この区別は遺伝子LMLNによって発現され,M型はLMLMN型はLN LN MN型はLM LN であると考えられている。

2Q式血液型 ブタやウマなどの血液にある抗体によって,一部のヒトの赤血球に凝着が起こる。この抗原のあるものをQ+,ないものをQといい,それぞれ完全優性を示す1対の遺伝子Qqにより支配決定される。

3Rh式血液型(Rh blood groups)  1960年ランドシュタイナーとウイナーによって発見され,その抗原がアカゲザル(Macacus rhesus)の血球とヒトの血球とに存在することからRh因子(Rh factor)と名づけられ,その有無によってRh+型とRh型に分けられる。その分布は,欧米人は約85%,日本人は約99Rh+型である。抗Rh抗体は,正常なヒトの血清には原則として存在しない。

 

致死遺伝子

致死遺伝子とは,その遺伝子本来の働き(体色を決めるとか,翅の形を決めるとか)のほかに,持ち主の個体を死に至らしめる働きをもつ遺伝子のことである。致死遺伝子はふつう,致死作用に関しては劣性である。すなわち2個そろわなければ死に至らない。なぜならば,もし優性の致死遺伝子というものが出現したとしても,その持ち主はヘテロであっても死んで子を残さないから,この遺伝子が後世に伝わることはない(一代限り)からである。

劣性致死遺伝の例としてよく取り上げられる黄色のハツカネズミ(下図)では,黄色個体どうしを交配すると,F1は黄色のものと他の色(ねずみ色)のものとが,常に21の割合に出る。黄色は他の色に対して優性であるからヘテロどうしの交配と考えると,F1では31に現れるはずであるが,黄色の遺伝子に致死作用が伴っているためホモ個体は胎死するため,F1で出現する表現型と分離比が乱れてくる。つまり,黄色のハツカネズミはヘテロでしか存在しないとすると,説明がつく。

 植物の白子(アルビノ)もクロロフィルを有しないために生育できないので,一種の致死形質と考えられる。

 致死作用の原因はいろいろあると想像されるが,アカパンカビにおける数多くの代謝異常の株が,特定の物質を補給しなければ死に至ると同じように,重要な代謝系の機能を遺伝的に阻害されるものが多くあると考えられ,発生現象を解くためにも重要な手がかりを与える。

 

多性雑種と独立の法則

教科書に登場する遺伝形質は,ほとんどが1対の対立遺伝子によって発現するものである。しかし実際には,生物の形質発現には,何対もの遺伝子が複雑に関与していることが多い。前者についての雑種を一遺伝子雑種とよぶのに対し,幾組もの対立遺伝子に着目した場合の雑種は,多性雑種とよばれる。

n対の対立遺伝子に着目した場合のF2では,表現型の分離比は,次表のように (31)nの展開式で表される。ただし,対立遺伝子間の優劣関係が不完全な場合や,遺伝子の相互作用がみられたり,遺伝子が連鎖している場合には「独立の法則」があてはまらず,単純にこのような展開式では表せない。

 

各種雑種におけるF2の表現型分離比

雑種の種類
(
遺伝子の対の数)

F1の遺伝子の
組み合わせ

F1の配偶子の種類数

F2の組み

合わせ数

 F2の表現型分離比と〔種類数〕

一遺伝子雑種(1)

Aa

21=2

22=4

(3+1)1=31+1

2

二遺伝子雑種(2)

AaBb

22=4

42=16

(3+1)2=9+3+3+1

22

三遺伝子雑種(3)

AaBbCc  

23=8

82=64

(3+1)3
=27+9+9+9+3+3+3+1

23

多遺伝子雑種(n)

AaBbCcDd・・・

2n

(2n)2

(3+1)n3n+n3n-1

 

2n

 

   サイエンスBOXの解説                          _

ヒトの性決定

ヒトの性は,第1段階として受精の瞬間に遺伝子の組み合わせが決まり,第2段階としてそれらの遺伝子が発現することで(例えば男性ホルモンがしかるべき時期にしかるべき量だけ分泌される)決定される。性染色体にはXYがあり,そのうちY染色体には,未分化の生殖腺を睾丸に変える遺伝子や精子を作る遺伝子が存在する。このYをもつのが男性,もたないのが女性となる。このことは,ヒトの体の基本形が女性型であり,発生途中でのホルモンのはたらきかけ等により男性型になるということと対応している(未分化の外生殖器は女性のものに似ている)

理論的には男性と女性は11の比率で生まれるが,実際には男性の出生数の方がやや多い。ところが男性の方が死亡率が高く,生殖年齢に達する頃にはその比はほぼ11になる。女性のもつ2本のX染色体は,通常,一方が不活性化されはたらいていない。したがってX染色体上の遺伝子に異常がある場合,男性では100%その影響を受けるのに対し,女性では50%の個体は影響を受けない。つまり男性の方が異常形質が発現する可能性が高い。このようなしくみも,男性の死亡率の高さに関係していると考えられる。

 

【発展】 伴性遺伝

 ショウジョウバエの性決定様式は,雄ヘテロ型でXY型とよばれ,性染色体がXYの場合が雄で,XXの場合が雌となる。

 性染色体のXYは,減数分裂のとき相同染色体としてふるまう。しかし,X染色体にある遺伝子に対立する遺伝子がY染色体にない場合,この遺伝子に支配される形質の現れ方は,雌雄によって異なる。このような遺伝を伴性遺伝という。

野生のキイロショウジョウバエの眼は赤いが,まれに白眼のものがある。白眼のものどうしを交配させると白眼の子孫ばかりが現れる。白眼と赤眼の交雑では,雌雄のどちらを赤眼に選ぶかによって,F1F2の形質の現れ方に大きな差がでる。

この眼の色の遺伝は,X染色体に赤眼と白眼の対立遺伝子のどちらかがあって,Y染色体にはなく,しかも,赤眼が白眼に対して優性であると仮定すると,うまく説明ができる。

 

 

 

 








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