トップ理科総合B 改訂版2部 生物の変遷と自然のつり合い>第1章 生物と遺伝>第1節 親と子のつながり

1節 親と子のつながり

 

表1 体細胞の染色体数

1 ヒトの染色体

相同染色体

染色体数の異常

2 動物の体細胞分裂のようす

減数分裂の過程

体細胞分裂と減数分裂 

生殖方法

配偶子をつくる減数分裂


 

A 染色体

 

   教科書の主な図表の解説                           

表1 体細胞の染色体数

動物

(2n)

ウマノカイチュウ

2

キイロショウジョウバエ

8

アマガエル

24

ヒト

46

カイコガ

56

植物

 

エンドウ

14

タマネギ

16

イネ

24

ムラサキツユクサ

24

ジャガイモ

48

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1には,染色体の性質を理解しやすいように,染色体数が2n (偶数)の生物をとりあげてある。3倍体の生物(ヒガンバナ 33)や,性決定様式がXOまたはZO式の生物(♂またはが性染色体を1本しか持たない生物)では染色体数は奇数である。例としては,♂2n57 XO♀2n58のアカウミガメがあげられる。これらの生物でも,常染色体については偶数本となっている。

 

1 ヒトの染色体

 図は分裂中期の染色体である。この時期に染色体は最も短く太くなるので観察しやすい。各染色体の形がアルファベットのXのようになっているのは,棒状の染色体の両端から縦裂が始まっているからである。

 染色体の形は,全長と動原体の位置(右の図の横線)で区別され,長いものから順に番号がふられる。さらに,さまざまな薬品処理後に染色を行ってバーコードのような濃淡の縞(バンド)を染め出し,これによって染色体を正確に識別することができる(染色体分染法)。このバンドは遺伝子の存在位置と密接な関係にある。

 男性の細胞に存在するY染色体はX染色体よりはるかに短く,第20染色体と同じくらいである。その分,Y染色体をもつ精子は軽い。また,Y染色体長腕の端から2/3付近にはキナクリンマスタード染色で蛍光を発する部位があるので,ある細胞が男性由来のものか女性のものか判定することができる。この方法は,かつてオリンピックのセックスチェックに応用されていた(現在はPCR法による)

 

   教科書の内容の解説                           

相同染色体

1からは体細胞中の染色体数が偶数であることが,図1からは姿・形の同じ染色体が2本ずつ存在する(相同染色体)ことが見てとれる。これらのことは,生物が染色体および遺伝子を,父(精子)・母()いずれからも同量ずつ受け継いだ結果である(2節 C遺伝子と染色体 参照)。この一対の染色体を相同染色体という。生殖細胞が形成されるときには,染色体数が半減する減数分裂が生じ,相同染色体は1本ずつ別々の生殖細胞に入る。

染色体数の異常

ヒトのダウン症候群(2n47)は,21番染色体を3本もつことで生じる。精神発育遅滞や独特の顔つきを示し,心臓の先天異常なども併発する率が高い。ターナー症候群(2n45 XO)は,性染色体がX1本だけになることで生じ,著しい低身長や内生殖器の発育不全を示し,第2次性徴もみられないことが多い。

このように染色体数が異常になると,異常な形質が見られる。このような例は,染色体数の重要性を理解する助けになろう。染色体が足りなければ遺伝子不足により形質発現がうまくいかず,多すぎれば,遺伝子2個で形質を発現するというシステムが混乱するのである。

ちなみに,1人のヒトがもつ遺伝子の数は約34万個と推定されている。これが46本の遺伝子に散らばっているわけだから,単純計算すれば,1本の染色体には700900個近くの遺伝子が存在していることになる。上のダウン症候群では,第21番染色体に乗っている複数の遺伝子に関係する形質に,異常が現れると考えられる。

 

<参考リンク>

生物別ゲノムデータベース  http://www-bird.jst.go.jp/wing/DBcreature.html

●ヒトゲノムデータベース(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター)

http://www.hgc.ims.u-tokyo.ac.jp/japanese/database.html

国立遺伝学研究所 日本DNAデータバンク http://www.ddbj.nig.ac.jp/

国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター http://www.cib.nig.ac.jp/

●科学技術振興機構(JST) http://www-alis.tokyo.jst.go.jp/HGS/

大阪大学・東京大学 (ボディマップ)  http://bodymap.ims.u-tokyo.ac.jp/

 

B 体細胞分裂  C 減数分裂

 

   教科書の主な図表の解説                           

2 動物の体細胞分裂のようす

左から,間期,前期,中期,後期,終期,間期に相当する。細胞壁の存在と,終期に細胞板が見られることから,植物細胞の分裂を示す図であることがわかる。各期に要する時間()の一例を示す(ソラマメ根端細胞)。間期=981,前期=170,中期=51,後期=59,終期=59,合計1320分。

【体細胞分裂の過程】 

@ 間期 核内で染色体が複製されて2倍となる。

A 前期 核膜が消滅し,ひも状の染色体が現れる。間期に複製された染色体は接着されている。 

B 中期 染色体が赤道面に並ぶ。

C 後期 染色体が接着面から2つに裂け,両極に分かれる。

D 終期 2つの核ができるとともに,細胞質が分裂する。細胞質の分裂のしかたは,植物細胞の場合,細胞質の中に仕切り(細胞板)ができて広がり,細胞質を内側から分ける。動物細胞の場合は細胞膜がくびれるようにして,細胞質を外側から分ける。

E 間期 元の細胞と同じ染色体構成の2個の細胞が完成。

 

   トピックス                           

減数分裂の過程

配偶子形成の際には,染色体数が1/2に減るような特別な分裂=減数分裂が起こる。減数分裂では,2回の分裂が連続して起こること,1個の細胞が4個に分裂すること,非分裂時の4本分の太さをもつ染色体(二価染色体)が出現すること,などが特徴的である(体細胞分裂との相違)。減数分裂の過程は生物の種類によって差が見られるが,一般的な過程をややくわしく示すと次のようになる。

@間期 核内で染色体が複製されて2倍となる。

A第一分裂前期 減数分裂は引き続いて起こる2回の分裂からなっている。減数分裂にもっとも特徴的な出来事は第1分裂前期に見られる。この時期に出現するひも状の染色体は,間期に複製された染色体(染色分体)が接着し(これで2本分の太さ),さらに相同染色体どうしも接着(対合)している(これで合計4本分の束)。この状態の染色体を二価染色体という。このような染色体の束は,他の時期にも,体細胞分裂のどの時期にも観察されない。核小体と核膜は消失している。

B第一分裂中期 二価染色体が赤道面に並ぶ。この時,上図Bのように接着した状態となり,一部で図Cのような染色分体の交さ(キアズマ)が生じ,遺伝子の組換えが行われることが多い。

C第一分裂後期 それぞれの相同染色体が分離して,両極に移動する。各染色体は2本分の束となっている。

D第一分裂終期〜第二分裂前期 相同染色体を1つずつ含む細胞が2個できるが染色体はあまり変化せず,間期をはさまずに第二分裂へと移行する。

E第二分裂中期 第2分裂は基本的に体細胞分裂と同じである。各染色体はふたたび赤道面に並ぶ。

F第二分裂後期 染色体は接着面から縦に裂け,両極へ移動する。

G第二分裂終期 染色体が染色糸にもどり,核膜と核小体が形成され,核が現れるとともに,細胞質が分裂する。

H生殖細胞 元の細胞の半分の染色体をもつ4個の生殖細胞が完成。

 

体細胞分裂と減数分裂 

減数分裂によって配偶子は,親のもつ各相同染色体の一方だけを受け継ぐ。したがって,たとえば2n4の場合,分裂後の細胞では,224種類の染色体の組み合わせが考えられる。このように減数分裂では,細胞中の染色体数が半減するだけでなく,その構成に多様さが生じることに注意したい(下図)。なぜならそのことは,次世代が多様な個体の集団であることを意味するからである。

 

 

体細胞分裂と比較して,減数分裂の特徴をまとめると,次の表のようになる。

 

体細胞分裂

減数分裂

目  的

体細胞の増殖(生物体の成長)

生殖細胞(卵・精子等)の形成

染色体数

変わらない(2n→2n)

半減する(2nn)

分裂回数

1(2個の娘細胞)

連続した2(4個の生殖細胞)

染色体の組合せ

まったく同じ(娘細胞は同質)

(交さが生じないとして)2n種類

 

体細胞分裂の場合は,分裂前後で細胞内の染色体数もその構成も変化しない。したがって体細胞分裂を基本とする無性生殖で増える生物では,親と子は同じ遺伝形質をもつこととなり,均質な集団となる。このことは,病気などに対し,集団全体が壊滅的打撃をうけやすいことを示している。

減数分裂の場合は,分裂前後で細胞内の染色体数のみならず,その構成も変化することが,分裂の過程を知ることによって理解できるであろう。多くの生物では,第一分裂で,二価染色体は対合面から2分される(前減数型分裂:後述)。この際,父親(または母親)由来の染色体が,どちらの娘細胞に移動するかは偶然に左右される。いずれの二価染色体についてもそうなので,父親由来の染色体ばかりを持つ娘細胞ができたり,父親由来と母親由来の染色体が入り混じった娘細胞ができたりする。このようにして何種類もの配偶子が生じるため,その組み合わせである受精卵()には,さまざまなタイプのものが見られることになる。

ヒトを例に取ると,染色体は23組あるから,配偶子(娘細胞)中の染色体の組合せは223 すなわち8,388,608通り生じる。さらに受精卵では,223×223 通りの遺伝子構成が考えられる。同じ親から生まれた兄弟姉妹でも,形質に違いがみられるのである。このことは進化上,大きな意味をもつ。有性生殖をする生物では,このように多様な個体が生じるため,種が絶滅しかねない程の危機が訪れてもそれを生き延びる「変わり者」が混ざっている可能性が高いということである。

<参考>前減数型分裂と後減数型分裂

 第一分裂において,多くの生物では二価染色体が対合面から二分されて染色体数が半減する「前減数型分裂」(第一分裂娘細胞の核型はn)が起こるが,バッタ,セミなど一部の生物ではそれぞれの二価染色体の縦裂面で二分され,染色体数が不変の「後減数型分裂」(第一分裂娘細胞の核型は2n)が起こる。

「前減数型分裂」では各染色体に見られる動原体は1個(局在型動原体),「後減数型分裂」では複数の動原体が見られる(分散型動原体)。なお,「後減数型分裂」でも第二分裂で染色体数が半減し,第二分裂娘細胞の核型はnとなる。

 

生殖方法

  生物が新しい個体をつくるはたらきを生殖という。一個体から新個体がつくられる無性生殖と二個の細胞が合一して新個体ができる有性生殖に分けられる。

@無性生殖…一個体から親と同じ遺伝子をもつ新個体ができる。

分裂…一個体がほぼ同じ大きさの二個体となる。(細菌類,アメーバ,ゾウリムシ)

出芽…一個体が大小差のある二個体となる。(酵母(こうぼ),ヒドラ)

胞子生殖…多数の生殖細胞(=胞子)ができ,それらがそのまま新個体となる。(カビ,キノコ)

栄養生殖…植物の栄養器官(=根,茎,葉など)から新個体ができる。(オリズルラン,ジャガイモ,オニユリ)

A有性生殖…二個の生殖細胞(=配偶子(はいぐうし))が合一することで,親とは異なった遺伝子の組み合わせをもつ新個体ができる。合一することを接合といい,特に合一する二個の配偶子に形や運動能力に著しい差のある場合(卵と精子)を受精という。

一般に動物では減数分裂で直接,配偶子が形成されるが,植物では減数分裂でつくられた胞子(花粉四分子,胚嚢(はいのう)細胞)から配偶子ができる。

 

   発展の解説                           

配偶子をつくる減数分裂

 減数分裂によって配偶子は,親のもつ各相同染色体の一方だけを受け継ぐ。したがって分裂後の細胞の染色体には青長,青短,緑長,緑短から3つを選ぶ,計8通りの組み合わせが考えられる。このように減数分裂では,細胞中の染色体数が半減するだけでなく,その構成に多様さが生じることに注意したい。なぜならそのことは,次世代が多様な個体の集団になることを意味するからである。

 

 

<参考文献>

中込弥男「遺伝子できまること,きまらぬこと」裳華房(1999)

 

 

 








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