トップ理科総合B 改訂版1部 地球の誕生と地球の姿>第3章 大気と地球の熱収支>第2節 大気と水の循環

2節 大気と水の循環

 

10 気圧と大気の動き

11 大気の大循環のモデル

12 日本付近のジェット気流

13 季節風

14 海陸風の例  

16 水の循環

大気の大循環

転向力(コリオリの力)

地上の風

季節風 

局地風

水の循環

風の吹き方

ジェット気流

17 雲のでき方

18 上昇気流と下降気流 

19 温暖前線と寒冷前線

20 基本10種雲形

21 暖かい雨と冷たい雨

空気の動き

フェーン現象

前線帯と前線

雲と雨

トピックス 都市周辺の雨が増えている?

実習 雨粒の大きさ調べ

23 日本付近の気団

24 西高東低型

25 温帯低気圧と移動性高気圧

図26 梅雨前線

図27 南高北低型

29 秋雨前線と台風(可視画像)

図30 台風の平均的進路

31 台風の通過と風向の変化

冬の天気

春の天気

梅雨の天気

梅雨と高層のジェット気流

夏の天気

台風の進路

秋の天気


 

A 地球をめぐる大気 B 水の循環

 

   教科書の主な図表の解説                           

10 気圧と大気の動き

 日中,陸地は熱せられ大気が膨張し地表付近の気圧が低くなる。一方,海は温度が陸より低く,気圧は高い。このような気圧差が生じると,大気は気圧が高いほうから低いほうへ移動する。これが風である。

 

11 大気の大循環のモデル

 Aの図は地球が自転していないと仮定した場合で,転向力がはたらかないため赤道と極方向の間の対流による循環のみである。

Bの図は実際の地球の場合で,転向力がはたらくため,北半球では赤道付近でできた上昇気流は圏界面で南北に向かうが,北に向かった風は右にそれていくため北極まで移動できず中緯度付近で冷えて下降気流となり,中緯度高圧帯を作る。地上の風は北東貿易風と極偏東風が東風で,偏西風が西風であるが,上空の風はいずれも西風である。

 

12 日本付近のジェット気流

 ジェット気流には北のほうにある寒帯前線ジェット気流と,南のほうにある亜熱帯ジェット気流がある(下図)。この2つのジェット気流が11月ころには日本付近で合流し,風速120m/sにもなる世界でも最も速いジェット気流となる。

図 ジェット気流

 

13 季節風

 冬は太平洋の水温が大陸の地温より高いため,海洋が低圧部になり,大陸が高圧部になる。そのため大陸から海洋にむかって吹く風が冬の北西季節風である。

 夏は逆に太平洋のほうが大陸より水温が低いため,海洋のほうに高圧部ができ,大陸に低圧部ができる。このため夏は南東の季節風が吹く。

 

14 海陸風の例  

 海岸付近では,日中は地温の方が高く,水温の方が低い。そのため陸のすぐ上にある空気は陸側では膨張し陸側に低圧部ができる。海の方は逆に高圧部となり,海から陸に向かって風が吹く。これが海風で,夜はその逆になり,陸風が吹く。

 

16 水の循環

 地球をめぐる水の循環を模式的に表したものである。水は大気圏,水圏,岩石圏,生物圏の間をいろいろな形で循環している。図中の河川水,湖水,地下水,氷は海水に対して陸水とよばれる。陸水の大部分は降水によって供給される。

 

   教科書の内容の解説                           

 水平方向に気圧差があるとき,2地点間の空気にはたらく力は,気圧の高い方から低い方に向かい,その大きさは2点間の気圧差に比例する。そこで,水平面内での等圧線に直角な単位距離あたりの気圧変化を気圧経度とよび,風を起こす力のめやすとしている。ふつうは等圧線に垂直な方向の一定距離における気圧の差で表される。たとえば,緯度1°の長さ(111km)について何hPa,または100kmについて何hPaと表される。地形図において等高線が密であれば傾斜が大きいと同様に,等圧線が密であれば,気圧傾度は大きい。

 この気圧の差によって,空気を押し動かす力を気圧傾度力という。気圧傾度力は,

等圧線に垂直に,気圧の高いほうから低いほうに向かってはたらき,気圧傾度が大きいほど気圧傾度力は大きくなる。

 

大気の大循環

<貿易風>

 熱帯東風といわれ,赤道と緯度30度付近の間を吹く東風である。貿易風はもっとも穏やかな風で,コロンブスがアメリカに航海したときにも利用した。

<極偏東風>

 平均緯度60度より高い緯度の寒帯域を吹く東風である。高さ平均13 kmの薄い気流で,変化が激しい。寒冷な気流で偏西風との境界は寒帯前線をつくる。

<偏西風>

中高緯度地域の西風。高さは北半球の夏で20km,冬には50kmを超える。上空には狭い帯状のジェット気流とよばれる西風帯が存在する。

<ジェット気流>

 中緯度の偏西風帯には,寒帯前線ジェット気流と,亜熱帯ジェット気流の2種類のジェット気流が存在し,圏界面付近に最大風速(120m/s)をもち,はちまき状に地球を周回して波状にうねりながら流れている。

寒帯前線ジェット気流(周極ジェット気流)は,寒帯圏界面と中緯度圏界面の境目に吹き,高さ810km付近で風速が最大になっている。毎日蛇行しながら流れているので,地表の低・高気圧と密接に関係し,天気の変化を支配している。このジェット気流は寒帯前線をともなうのが普通であり,寒帯前線の移動にともなって時間的にも空間的にも位置の変動が激しい。さらに,日本付近やアメリカ東岸のように,大陸の東岸では低緯度へ南下している。

 亜熱帯ジェット気流は中緯度圏界面と熱帯圏界面の境目を帯状に地球をとり巻いていて,あまり蛇行しない準定常な流れである。その中心は高さ1012kmにあって,寒帯前線ジェット気流にくらべてやや高いところを流れている。なお,このジェット気流は前線をともなわないのが普通であり,このことが寒帯前線ジェット気流にくらべて,その位置の変動が小さい理由でもあろう。

 

亜熱帯ジェット気流は,冬季に北緯2030°,夏季に北緯4050°の上空を流れており,毎日の天気変化にあまり関係しないが,季節の移り変わりを左右している。

特に梅雨と関係が深いとされている。冬季,亜熱帯ジェット気流はヒマラヤ山塊の南を流れるが,春になると北上し,6月にはヒマラヤ山塊に衝突するようになる。この位置にくるとオホーツク海に高気圧が形成され,冷たい北東風が日本海付近に吹き出す。このころ,優勢になってきた小笠原高気圧からは,暖かい湿った空気が日本付近へ送り込まれ,この2つの気流がふれあい,梅雨前線が形成される。7月上旬から中旬,亜熱帯ジェット気流がさらに北上し,ヒマラヤ山塊の北を流れるようになると,オホーツク海高気圧は消滅し,梅雨明けとなる。

大陸の東岸で亜熱帯ジェット気流はやや北上し,南下してきた寒帯前線ジェット気流と合流して風速が著しく大きくなる。日本付近上空では,冬季間100m/sをこえる風速が観測されることも珍しくない。

 

転向力(コリオリの力)

 フランスの物理学者・土木工学者であるコリオリ(17921843)が提唱した。

地球の表面やメリーゴーラウンドのように,一様に回転している座標系で,制止している物体には遠心力が現れるが,一定速度で運動する物体には,遠心力以外に速度に垂直方向で速度の大きさに比例する力が現れる。地球上の場合,プレート運動のように速度の小さい運動では無視できるが,大規模な空気の流れ()や海流,高速で飛翔する物体など,速度が大きい場合はこの影響が大きく現れる。フーコーの振り子の振動面が回転するのも,地球の自転によるコリオリの力によるものである。 たとえば,下図のように地球を北極上空から見た場合,同一経線上のAB間でお互いに大砲を撃ったとすると,弾丸が着地するまでに地球がθだけ周り,AA΄まで,BB΄まで進む。Aの方がBよりも自転による慣性力が小さいため,A΄から見ればB΄の右側に着地することになる。また,B΄から見ればA΄の右側に着地してしまう。すなわち,AからBに向かった弾丸も,BからAに向かった弾丸も,右に曲げられたことになる。このように,地球が回転しているために起こる見かけの力を,転向力またはコリオリの力とよんでいる。

 地球の自転の角速度をΩとすると,緯度ψの地表において,そこでの鉛直軸のまわりの角速度ωは,ωΩsinψである。これは,自転の角速度ベクトルの,その点での鉛直成分である。鉛直軸のまわりの回転の角速度は,極では自転の角速度に等しく,赤道ではゼロであり,地球の自転の影響を受けない。

 転向力を理解するには,図IIIのような3つの場合について考えれば十分である。

 

(a) 回転する板の上を運動する物体が,半径方向の速度成分をもつ場合

(b) 回転する板の上を運動する物体が,円周方向の速度成分をもつ場合

(c) 回転の中心を通る場合

である。(a)の場合は,角運動量保存の法則を使ってうまく説明できる。また,赤道断面で落下する物体にはたらく転向力も,これで説明できる。

 

地上の風

 地面付近で,直線状等圧線で定常な風が吹いている場合には地衡風の向きからはずれて,実際には風向と等圧線とのなす角度は2035°で,風速も地衡風速よりはずっと小さい。これは地面と空気の間に摩擦力がはたらくためである。

転向力は北半球では,運動方向に対して右向きにはたらく。したがって,風はまず気圧傾度の方向に吹きはじめようとするが,同時に転向力がはたらいて,しだいに右へ右へと向きを変える。摩擦のはたらく層では,転向力のほかに,地表面の影響による層全体にはたらく摩擦力を考えなければならない。摩擦力としては,空気が地球の表面に沿って運動するとき,空気と地球の界面で起こる表面摩擦だけでなく,運動している気層中に無数の小さな渦動が発生し,その垂直運動のため上下の気層間で空気の混合が起こり,運動量の交換が行われることにより,流れの速い上の気層はひき止められ,流れの遅い下の気層はひきずられることに由来する流体摩擦も同時に考えなければならない。このようにして,地表面との摩擦の影響は,高さ1kmぐらいにまで及ぶのである。結局,空気塊には気圧傾度力と転向力および摩擦力がはたらき,これら3つの力がつり合って定常な風が吹いていることになる。したがって,風は等圧線にθの角度をなして低圧側に向かって吹くわけである。普通,地面付近ではθ2535°を示すが,摩擦力が大きいほど大きくなるから,陸上のほうが海上より大きい。また上空にいくにしたがってθは小さくなり,摩擦層の上限(地上約1km)では定常な風は等圧線に平行に吹くことになる。

 

季節風 

 1年のうち決まった季節に規則的かつ持続的に吹く風を季節風という。英語でモンスーン(Monsoon)というが,その語源はアラビア語のMausim(季節)である。季節風の顕著な地域としては,インド,日本,東南アジアなどが知られている。日本付近の季節風の特徴は次のようである。

<冬>

 大陸でできた寒冷なシベリア高気圧から,日本の北東洋上に発達した低気圧に向かって,日本では北西の強い季節風が吹く。風力は68に達することもある。この風は日本海の水蒸気を運んで日本海側に雪を降らす。乾燥した風が太平洋側に吹き抜けると太平洋側に快晴とからっ風をもたらす。また,東シナ海・台湾・南シナ海では,高気圧の南東端にあたっているため北東季節風となる。台湾の北東岸やフィリピンの北東岸は,山岳地帯がせまっているので,不安定になった空気が雨を降らせ,冬の雨期をつくっている。冬の季節風の最盛期は,123月である。

<夏>

 夏季には発達した小笠原高気圧から吹き出す南東〜南西の南よりの風が吹く。そのため気温の高い湿った空気が流れ込むことにより,蒸し暑い日本の夏となる。東シナ海や日本付近で風力は24で冬より弱い。東南アジアから南シナ海にかけては,インドの場合と同じように南東貿易風の侵入による南西季節風で,風力は35となる。夏の季節風は68月が普通である。

 

局地風

 海陸の分布や地形の影響などによって,ごく狭い範囲に吹く特殊な風を局地風とよんでいる。海陸風,山谷風,フェーンなどがこれにあたる。

海陸風

 昼は陸のほうが海に比べて早く暖まり,夜は陸の方が海に比べて早く冷える。海岸付近では,日中は地温の方が高く,水温の方が低い。そのため陸のすぐ上にある空気は陸側では膨張し陸側に低圧部ができる。海の方は逆に高圧部となり,海から陸に向かって風が吹く。これが海風で,夜はその逆になり,陸風が吹く。

海陸風は弱い風であるため,季節風,低気圧,高気圧などの風が強いときは目立たない。

[山谷風] やまたにかぜという。山は,夜間の放射で頂上の部分は谷の部分にくらべて冷えるから,その上の空気も冷えて,谷へ向かって流れ下り山風となる。昼の間は日射によって山腹が暖まるので,上昇気流が生じ,谷から山頂に向かって谷風となる。

[海風・山風と地衡風とコリオリの影響の時定数]  海風について風向と気圧との関係をみると,日中の陸地は気温が上がり,空気の密度が小さくなり,低気圧となる。この低気圧に向かって海から流れ込んでくるのが海風であって流れの方向は気圧勾配の方向である。海風・山風のような局地風の場合には,なぜ地衡風のように,気圧勾配と直角に風が吹かないのであろうか。これは,地衡風となるにはある程度の時間を必要とするからである。気圧勾配が発生すると,気圧傾度力が生じるが,これによる空気の運動の向きは力の向きである。時間が経過して,空気の運動の速度が大きくなってからコリオリの効果が現れる。このために必要な時間(時定数)1日くらいである。したがって,日変化するような気圧変化に対してはコリオリの効果は現れない。

 

水の循環

 地球上の水は大まかに塩水と淡水に分けられる。これをさらに,塩水は海水と湖沼中の塩水に,淡水は地下水,湖沼水,土壌水,河川水などに分けられる。この他に氷や雪(固体),大気中の水蒸気(気体)もある。

<大気中の水>

 大気中の水蒸気が雨として地球の表面に一様に降ったとすると,その高さは約25mm,体積は約12600km3である。地球上の年間降水量は約1000mmであり,大気中の可降水量は約25 mmであることから,約40回循環している,つまり年降水量の約40分の1が大気中に水蒸気として溜まっていることになる。

<河川の水>

 河川の水の総量を直接知ることは難しい。年間の降水量を720 mm,年蒸発量を410 mmとし,その差が河川を通じて流出するものと仮定すれば,河川によって1年間に流出する量を求めることができる。地球の陸地の表面積は1.5×108 km2で,これに720-410310mm/年をかける。その40分の1が河川の水として存在すると仮定すると,1.2×103km3の河川水が存在する計算になる。

<湖沼水の総量>

 湖沼水は,その体積が河川ほど複雑には変動しないので,湖沼の底の地形を調べることによって,その総量を推定することはできる。

<海水の総量>

 全海洋の面積,その平均の水深から,1.35×109 km3と求められている。

 

[古代人は水の循環を知らなかった]

現在ではだれもが,水が循環していることを知っている。古代の人は,雨や雪の量と湖水や川の水との関係がわからなかったので,水の分布が均等でないことがなぞであった。砂漠のように乾いたナイル川周辺に住む人々にとって,毎年起こる洪水が,何千kmも離れた山に降る雨や雪のためであるとは,とうてい考えられなかった。

水は,海や陸から蒸発して大気にもち込まれ,雨や雪となって降り,川の流れとなって,再び海にもどるという水の循環論は,一部の研究者に注目され,支持されていたが,それを証明することがむずかしかったので,一般には受け入れられていなかった。

 17世紀の中頃,フランスの科学者が,川の流域の降雨量と,一定の期間に海に注ぐ水量を測定し,川の流れが降雨によって生じることを示した。

 この後,イギリスのハレーは,実験によって得た水の蒸発率を地中海の推定水量にあてはめて,地中海からどのくらいの水が蒸発するかを正確に求めた。その結果,蒸発量は各地の川から地中海に注ぎ込まれる水量にほぼ等しいという答えを得た。水が循環するという考えは,こうして一般にも認められるようになった。

 

   発展の解説                           

風の吹き方

風の吹き方には,教科書の図の(a)地衡風(b)地上風以外にもう1つ「傾度風」がある。

傾度風は,大きく曲がった等圧線に沿って吹く風で,気圧傾度力と転向力に加えて,円運動による遠心力がはたらく。この3つの力の関係は以下のようになる。北半球では,中心の気圧が低い場合(台風や低気圧)は反時計回り,中心の気圧が高い場合(高気圧)は時計回りに風が吹く。南半球の場合,風向はそれぞれ逆になる。

 

ジェット気流

12の解説の図のように,ジェット気流は2つある。つまり,寒帯圏界面と中緯度圏界面の境目に寒帯前線ジェット気流(周極ジェット気流)が吹き,中緯度圏界面と熱帯圏界面の境目に亜熱帯ジェット気流が吹いている。いずれも圏界面付近で最大風速(120m/s)になり,はち巻き状に地球を周回して波状にうねりながら流れている。

寒帯前線ジェット気流は蛇行しながら西から東に進んでいる。地表の低・高気圧の動きと密接に関係し,天気の変化を支配している。亜熱帯ジェット気流は,冬期に北緯2030°,夏期に北緯4050°の上空を流れており,毎日の天気変化にあまり関係しないが,季節の移り変わり,特に梅雨と関係が深いとされている。

冬期,亜熱帯ジェット気流はヒマラヤ山塊の南を流れるが,春になると北上し,6月にはヒマラヤ山塊に衝突するようになる。この位置にくるとオホーツク海に高気圧が形成され,冷たい北東風が日本海付近に吹き出す。このころ,優勢になってきた小笠原高気圧からは,暖かい湿った空気が日本付近へ送り込まれ,この2つの気流がふれ合い,梅雨前線が形成される。7月上旬から中旬,亜熱帯ジェット気流がさらに北上し,ヒマラヤ山塊の北を流れるようになると,オホーツク海高気圧は消滅し,梅雨あけとなる。

 

C 気象変化の要因

 

   教科書の主な図表の解説                           

17 雲のでき方

地表の一部が暖まるとその上の空気も暖まり,1つの性質をもった空気の塊ができる。この空気の塊は上昇すると膨張し100mで1度の割合で(乾燥断熱減率)温度が下がり,次第に露点に近づき,露点になると凝結し空気中に水滴ができ,これが雲の発生になる。雲ができてからは,下がる割合は100m0.5℃になる(湿潤断熱減率)。これは凝結するときに熱が出るためである。

 

18 上昇気流と下降気流 

上昇気流は雲を作り,天気が悪くなり,下降気流は雲が消え,天気がよくなる。

 

19 温暖前線と寒冷前線

 暖かい空気に冷たい空気がもぐりこんできたとき,その境界にできるのが寒冷前線面である。温暖前線は冷たい空気に暖かい空気がのりあがっていくとき,その境界面をいう。それぞれの前線面が地表と接している線が前線である。寒冷前線付近には積雲系の雲ができ,温暖前線付近には,層雲系の雲ができる。

 

20 基本10種雲形

積雲のような上昇気流で垂直方向に発達する雲の中で圏界面まで発達し,雲頂が水平方向に広がりだしたものを積乱雲という。俗名は入道雲,かなとこ雲。

層雲は水平方向に広がる雲。巻層雲,高層雲,乱層雲,層積雲がある。積雲は垂直方向にひろがる雲。巻積雲,積雲,高積雲,積乱雲がある。

 

21 暖かい雨と冷たい雨

<冷たい雨>

地上で観測される雨粒は雲の水滴よりずっと大きく,霧雨の場合には直径が0.010.1mmの程度,雷雨の場合には15mmの程度である。これより大きい水滴は落下の途中で小さい水滴に分裂してしまう。夏の雷雨などでは,雲が発生してから数時間の後に大粒の雨が降る。強い雨を降らせる雲は図のように上部は氷晶からできていて,中ほどに過冷却の水滴の層があるのがふつうである。氷晶が落下してきて,過冷却水滴の中に入ると急速に成長する。雲の温度が低く,成長した氷晶が解けずに地上まで落下すると雪になる。途中に温度の高い層があると,雪はとけて雨粒となる。この雨粒は水滴からできている雲の層を通過する間に,併合作用によってますます成長する。このように降る雨を冷たい雨という

<暖かい雨>

 熱帯地方や夏の中緯度地方では,温度が0度よりも高く氷晶を含まない雲からでもかなりの雨が降ることがある。この場合は,直径0.0010.01mm程度の特に大きな海塩の粒子が凝結核となって初めから大きな水滴ができ,併合作用で成長したのである。このように降る雨を暖かい雨という。

 

   教科書の内容の解説                           

空気の動き

気温減率は,季節や場所によって変化する。気温減率が乾燥断熱減率や湿潤断熱減率より大きければ,空気塊はどこまでも上昇するので,大気の対流が発生しやすく,大気は不安定であると言われる。一方,気温減率が乾燥断熱減率や湿潤断熱減率より小さければ,空気塊の上昇はある高さで止まって,元の位置に戻ろうとする。この場合には,大気の状態は安定であると言われる。

 図中の実線は,大気の高さによる温度変化を表している。両方とも,地上での温度は20℃で,露点も同じであるが(a)(b)より上空での温度が低い。図中の破線は,上昇する空気塊の温度変化を示している。2つの空気塊の地表での温度は25℃で,水蒸気の量も同じだから,凝結する高度も同じである。

 

すると,図(a)では,空気塊の温度がいつも大気の温度より高く,周囲より軽い空気塊はさらに上昇して積乱雲をつくる。この場合,大気は不安定であるという。図(b)では,空気塊の温度は高度1kmあたりで大気の温度に達し,それ以上は上昇せず層雲を形成する。この場合,大気は安定であるという。地表での条件が同じでも,上空の気温は気温減率から単純に割り出したようにはならないことが多いので,雲の形も変化する。

 [乾燥断熱減率] 不飽和空気塊が大気中を上昇する場合,断熱膨張によって100mにつき約1℃ずつ温度が下がる。これを乾燥断熱減率という。乾燥断熱減率は空気塊が理想気体であるとすると,熱の仕事当量(1/J),重力加速度および空気の定圧比熱だけで決まる値で,温度や空気の密度には直接関係のない値である。大気中の水蒸気が飽和するまでは,水蒸気が含まれていても,比熱の変化が少ないことや潜熱の出入りが少ないことなどから,その温度変化はほぼ乾燥断熱減率に従うものと考えてよい。

[湿潤断熱減率]  飽和した空気塊が大気中で断熱的に上昇するときの冷却率を湿潤断熱減率という。この場合は水蒸気の凝結によって気化熱を放出し,これが空気を暖めるので湿潤断熱減率は乾燥断熱減率より小さい。また,乾燥断熱減率のように定数ではなく気温と気圧に関係する。温度が高いときは多量の気化熱を放出するので温度減率は小さく,温度が低くなると水蒸気の含有量は少なくなり,水蒸気の凝結による影響は小さくなるので乾燥断熱減率に近づく。また,湿潤断熱減率は気圧の減少とともにわずかながら減少する。その値は表IIに示すとおりである。

 

フェーン現象

本来は局地風の一種で,アルプス地方の北斜面を吹き下りる温暖な降下風をいうが,一般には,低気圧の通過などに際して海洋上にあった湿潤な空気が山をこえて反対側に吹き込んだとき,風が吹き下りる側の山麓で異常乾燥・異常高温の風が吹く現象をいう。アルプス北側のスイスの谷間とかアメリカのロッキー山脈の東側山麓(これはチヌークとよばれている)などで顕著にみられる。

 日本では温帯低気圧や台風が日本海を通過するときなどに日本海沿岸でフェーン現象が起こり大火の一因となっている。1933725日,山形市では,気温40.6℃,

湿度26%を記録した。フェーン現象にともなう大火としては,1955年の新潟の大火,

1966年の三沢市の大火,1976年の酒田市の大火などがある。

 日本海を渡ってきた空気は水蒸気で飽和している。この空気の塊が中央山脈を越すとき,水蒸気の凝縮が起こり,雨や雪を降らせながら,温度は湿潤断熱減率に従って下がる。そしてこの空気の塊が山の東側へ吹き降りるとき,空気が乾燥しているので,温度は乾燥断熱減率に従って上昇する。そのため同じ高さの地点でも,日本海側より太平洋側の方が高温になる。

 

前線帯と前線

前線および前線面(前面)の概念は,温帯低気圧の研究に関連して,1918年にノルウェー学派のビヤークネス(Bjerknes)によって初めて導入され,気象学に一大転機をもたらした。当時,自由大気中の観測がなかったが,海面天気図を解析した結果,温帯低気圧中で空気の密度,気温・露点・風向・風速などの気象要素の分布が一様でなく,冷たい空気が暖かい空気の下にゆるやかな角度をなしてもぐり込んでいて,その境界面を境として各種の気象要素が不連続的に分布していることを見いだしたのである。そこで密度(したがって気温)の異なる2つの気団を分離する傾斜した面または転移層を前線面(前面)と名づけた。前線面と前線とをあわせてフロントまたは前線とよぶことも多い。前線はいうまでもなく幾何学的な線ではなくて,普通,数kmの幅がある。この幅が数十km程度のとき,これを前線帯という。気団・前線帯・前線はいずれも静止したものではなく,発生すると移動して他の場所に移っていくが,それらが発生しやすい場所はほぼ決まっている。寒帯前線帯は寒帯気団と熱帯気団の境界にできる前線帯であり,北極前線帯は中緯度の寒帯気団と北極地方の極気団との境界にできる前線帯であって,およそ海陸の境界に位置している。これらの前線帯にできる前線が,それぞれ寒帯前線および北極前線である。中緯度地方の天候を支配する温帯低気圧は,寒帯前線上に発生した波動擾乱である。

[温暖前線]  冷たい空気の上に暖かい空気が押し上がって進むとき,その境界面と地面との交線を温暖前線という。温暖前線にともなう雨は持続性で雨量も多い。雨域は主に前線の前で,前線通過後は気温が上昇する。前線面の傾斜は1/2001/300とゆるやかである。

[寒冷前線]  冷たい空気が暖かい空気を強制的に押し上げながら突進する場合が寒冷前線である。寒冷前線はくさび形をしていて,その傾斜は温暖前線にくらべ急で,その進行速度も一般に温暖前線より大きく,前面の暖気は急激に押し上げられるので,厚い積乱雲を形成し,暗灰色のものすごい雲堤をなして進んでくる。雨はしゅう雨性で,前線通過後,気温が下がり,急激に移動する場合は雷雨,突風をともなう。前線面の傾斜は1/251/100と温暖前線にくらべて急である。

[閉塞前線] 

 

 低気圧がしだいに発達し最盛期に達すると,中心付近では寒冷前線が温暖前線に追いつき,暖気を地上から押し上げて冷気どうしが接触するようになる。

このようにしてできた前線が閉塞前線である。この場合,後側の冷気のほうがより冷たいときは寒冷前線型閉塞前線(XIII (a))といい,前側の冷気がより冷たいときは温暖前線型閉塞前線(XIII (b))という。

 [停滞前線]  暖かい空気と冷たい空気の勢力がほぼ等しいとき,前線はほとんど動かない。このような前線を停滞前線といい,この前線上に低気圧性擾乱がしばしば発生する。6月初めから7月中旬頃まで,日本の南岸に停滞する梅雨前線はこれである。

 

雲と雨

 雲の形成には,大規模な大気の運動にともなう水蒸気の輸送や,水蒸気が凝縮するための大気の上昇運動などが関係する。しかし,大気の力学的・熱力学的条件が整って雲が形成されたとしても,その雲から必ず降雨・降雪が起こるとは言えない。降雨・降雪が起こるためには,雲粒から雨粒・雪粒への成長がなければならない。いま,直径0.005mmの雲粒が集まって,直径0.5mmの雨粒になるとすると,1粒の雨粒ができるには,実に100万個の雲粒が集合しなければならないことになる。その成長機構はまだ十分解明されていない部分があるが,次の二通りの成長過程があると考えられている。

<冷たい雨>(雲の温度が0℃以下の場合)

 0℃の雲の中には,氷晶と氷になっていない小さな水滴(過冷却水滴)が混在している。このような場合,水に対する飽和水上気圧は,氷に対するそれよりも大きいので,水滴に対しては飽和であっても,氷晶に対しては過飽和である。そのため,水蒸気は氷晶の周りに昇華し,氷晶は成長する。昇華した水蒸気と同量の水分が水滴からの蒸発によって補われるので,水滴は小さくなり,水滴から氷晶へ水分が移動したことになる。成長した氷晶が,とけずに落下すると雪であり,落下の途中でとけて水滴になると雨になる。このしくみは1930年,ベルシェロンにより提唱された。

<暖かい雨>(雲の温度が0℃以上の場合)

 温度が0℃以上の雲から降る雨を暖かい雨といい,熱帯地方の雨はほとんどこれである。また,中緯度地方でも,夏などにはこの雨が降ることがある。これを説明するために,暖雨説が考えられた。

 大気中には,海の波のしぶきが乾いてできた塩化物の微粒子など,さまざまな大きさの粒子が含まれているから,このようなものを凝結核として水蒸気が凝縮すると,いろいろな大きさの水滴ができる。これらが上昇気流によって運ばれる間に,小さい水滴どうしが衝突して大きくなっていく。このようにして大きくなっていった水滴は,落下しながらも小さい水滴を取り込みながら,雨の粒となっていくと考えられている。冷たい雨の場合にも,水滴の成長後期には,小さい水滴を併合して大きくなっていくのがふつうである。

 

[凝結高度]  水蒸気を含んだ不飽和の空気塊が上昇すると,断熱膨張によって乾燥断熱減率,すなわち100mにつき1℃の割合で冷却していく。このため湿度はしだいに増加し,ある高さに達すると飽和する。この高さを凝結高度という。凝結高度以上では水蒸気が凝結して湿潤断熱的に冷却していくが,実際には,飽和の状態に達したとき直ちに凝結が起こるとは限らない。空気中の塵挨(凝結核)がない場合は,過飽和の状態になるのがふつうである。しかし,大気中では通常十分な凝結核があるので,あまり大きくない過飽和状態で凝結が起こると考えてよい。

 空気塊を一定圧力のもとで冷やしていき,水蒸気が飽和に達するときの温度を露点という。したがって,露点温度は水蒸気の出入りがないかぎり,一定圧の下での気温変化に対して,その空気塊に固有の量であって変わらない。ところが大気中で空気塊が断熱的に上昇する場合は,上昇とともに気圧が減少するので,空気塊の露点も変わっていく。空気が上昇すると体積が膨張し,その水蒸気圧は小さくなる。したがって,露点は低下するはずである。計算によれば100m上昇するごとに露点はほぼ0.17℃ずつ低下する。上昇気塊中で水蒸気の凝結が起こらない間は,その温度は100m上昇するごとに0.97℃ずつ低下する。そのために,温度と露点との差(ttd)は,100mにつき0.970.170.8℃ずつ減少するわけである。そこで,この差が0になる高さ,すなわち上昇気塊中で凝結の始まる高さh〔m〕は,

   

で表される。なお,露点温度が空気塊の上昇によって変化しないと仮定すると,この式の右辺の係数は100になる。

 

トピックス 都市周辺の雨が増えている?

最近,東京などの都市とその周辺で雨がよく降るという報告が多くなっている。この原因はいろいろ考えられるが,1つは都市の熱汚染で,都市には熱を出すものが多くある。たとえば道路舗装で地表が暖まりやすくなっていることや冷房からでる廃熱などがある。これらの熱で都市の空気の温度が上がると上昇気流ができ,雲が発生する。

また,高層ビルは風をさえぎるため都市の空気が停滞し,都市に向かって吹いてくる風がこれに邪魔をされて上昇気流となり雲ができる。

このような原因で,都市に上昇気流が発生して雲を作り,雨が降りやすくなっていると考えられている。

 

実習 雨粒の大きさ調べ

<指導目標>

(1)雨が実際にどれくらいの大きさがあるかを実感させる。

(2)雨でできた小麦粉の粒は実際の雨に近い大きさを表していることを知らせる

(3)雨粒にはいろいろな大きさがあることを知らせる。

 

<準備>

小麦粉 1kg,メチレンブルー 5g,トレー(トースター用など),ふるい(100メッシュなど)

 

<方法と留意点>

@ 小麦粉はよく乾いたものを用いる。

A 青い色素のメチレンブルーは乳鉢でよくすりつぶしておく。

B 小麦粉1kgに対してメチレンブルー5gの割合でよく混ぜ,100メッシュのふるいでペトリ皿に落とす。

C トレーに粉の厚さが2cmくらいになると,1cmの高さからトレーを数回落として,粉を落ち着かせる。

D 雨の中にさっと出すと青い団子状の粒ができる。

E この粒が十分乾くまで待ち,いろいろな粗さのふるいにかけると,大きさの割合を調べることができる。

F 雨は降り始め,途中の雨,降り終わりによって粒の大きさの割合が違うので,降っているいろいろの時期に試みる。そのために粒の大きさをランク分けしてそれぞれのランクの割合を求める(たとえば5mm以上,52mm2mm以下など)る。

ふつうの雨は直径1mmくらいで,大粒の雨は直径3mmくらいである。直径が5mm

を超えることはあまりない。

 

<別の方法1

@ 小麦粉はよくふるった乾燥したものを使う。

A トースター用のトレーに1cm位の厚さに小麦粉をしく。

B 上にカバーをかけ,雨のとき外に出し,いくつか雨が重ならない程度に入った時,再びカバーをして室内へ取り込む。

C カバーをはずして,そのままオーブントースターに入れて焼く。

D 表面がうっすら焦げてきたときに,取り出すと,雨の部分だけがクッキーのように固まっている。

E ふるいで雨の固まりを取り出す。

F 取り出した雨粒を大きさ別にランク分けしてみよう。

 

<別の方法2

@ エオシン1gとタルク10gを混ぜ乳鉢でよくすりつぶす。

A これを和紙などの吸湿性のいい紙の上に薄く塗る。

B 上にカバーをかぶせて雨の中に出す。10粒ほど赤いしみ跡がついたときに再びカバーをする。

C しみ跡の直径を計る。

D しみ跡と雨の直径は異なる。しみ跡の直径は雨粒の約5倍くらいになっている。

雲の中にある雲粒は,1cm3あたり1001000個,雨粒は1m3あたり1001000個である。

そのため100万個の雲粒が集まって,1個の雨粒をつくっているといえる。

 

D 日本の天気

 

   教科書の主な図の解説                           

23 日本付近の気団

 日本の四季の天気を左右する気団は,シベリア気団(大陸性,乾燥,寒冷),オホーツク海気団(海洋性,湿潤,寒冷),小笠原気団(海洋性,湿潤,温暖)である。季節によってこの中のどれかが日本に影響を及ぼす。

 

24 西高東低型

 冬型の気圧配置である。北西の季節風が大陸から冷たい空気を日本に送り出している。日本海に筋状の雲が多く見える。

大陸から乾燥した空気が日本海の暖流に接して水蒸気を吸い,積雲が次々と発達していく。日本海側の山地でこの雲が雪や雨となって降る。一方太平洋側は雲がないようすが画像からわかる。

 

25 温帯低気圧と移動性高気圧

 ひまわり画像の黒っぽい部分が高気圧のところである。この黒い部分が西から東に移動していく。この高気圧と高気圧の間に低気圧がある。低気圧と前線付近に雲ができているようすが画像でもわかる。

 

26 梅雨前線

 日本列島の上にあるのが梅雨前線で,ひまわり画像でも雲の帯としてわかる。またこの梅雨前線は西に伸び,インド洋付近まで確認できる。前線の南西側の黒い部分が小笠原高気圧で,北海道の北の黒い部分がオホーツク高気圧である。この二つの高気圧に挟まれて梅雨前線ができている。

 

27 南高北低型

 梅雨前線が日本の北に上がり,太平洋から小笠原高気圧が日本に張り出してくる。

太平洋の黒い部分がこの高気圧である。

 

29 秋雨前線と台風(可視画像)

 白い反時計回りの渦の部分が台風である。日本列島には秋雨前線が停滞している。

台風の水蒸気がこの秋雨前線に供給され前線上の各地で大雨を降らしている。

 

30 台風の平均的進路

 台風は太平洋の高気圧の縁に沿って移動するため,この高気圧の日本への張り出し方でコースが決まる。台風は1月からすでに生まれているが,そのころは大陸の高気圧が日本に張り出しているため,日本にはこない。5月頃までは移動性高気圧が日本付近を通過しているため,この頃も日本にはほとんどこない。7月頃から太平洋の高気圧が日本付近に張り出し始めると,その縁に沿うように台風が日本付近に近づいてくる。そのため79月が日本に最も上陸しやすい状態になる。1011月は移動性高気圧が日本付近にあるため,日本にはあまり台風はこない。122月は大陸の高気圧が日本に張り出しているためやはり日本にはこないで低緯度を西のほうに進んでいく。

 

31 台風の通過と風向の変化

 台風は反時計回りの渦を巻いて風が吹いている。そのため風の方向を調べると台風の位置が推定できる。図のように台風の右側では風が東よりから南よりに変化していく。一方,台風の左側では,北よりから西よりに風向が変化する。

 このことから,台風の中心方向を知るには,風を背に受けて,左手を斜め前に出すとその左手の延長方向に中心があることになる。 

 

 

   教科書の内容の解説                           

冬の天気

 一般に日本列島は南北に伸びる等圧線が何本も横切り,各地とも北西の季節風の吹くことが多い。気圧傾度も大きくシベリアの高気圧が本州南方海上に膨らんで広く張り出す。日本海側は雪,太平洋側は晴天となる。西高東低型が緩んでくると日本海側の海岸線に大雪が降る恐れがある。大陸の寒気が激しく,充分蓄積された状態になって日本に流れ込んでくると寒波襲来となる。日本付近を低気圧が一時的に通過し,発達しながらアリューシャン列島付近に達したとき,季節風は一段と激しくなる。

 

冬の中休み 西高東低型がゆるんで,日本海に低気圧が発生すると,日本海側は雪

がやみ,晴れ間がのぞく。太平洋側は季節風がやみ,南風となり暖かくなる。これ

も一時的で低気圧が北日本に達するころには冬型にもどる。

 

台湾坊主 シベリア高気圧が日本の南東まではり出し,季節風が弱まると,その南側の南西諸島方面で風が南寄りとなり,台湾北方の東シナ海に低気圧が発生することがある。これを台湾坊主とよぶ。この低気圧は急速に発達することが多く,九州方面では12時間後に,関東方面では24時間後に天気がくずれるとみてよい。台湾坊主が日本の南岸沿いに東北東に進むとき,日本の太平洋側に雪を降らせることがある。

 2月中旬になると等圧線の間隔も広まり,西高東低型の季節風も弱まり長続きしない。そして低気圧と高気圧が周期的に日本を通過し南風も吹き始め,しだいに春の天気に移っていく。

 

春の天気

 春の天気は4日周期とも言われ,天気の動きが速い。これは次々に西からやってくる移動性高気圧とその間にある低気圧による。5月に入ると帯状の高気圧が東西に連なったりして,いわゆる「五月晴れ」の好天も現れる。

 

春一番 日本海で急速に発達する低気圧によってもたらされた南の強風を,春一番という。早い年で2月下旬,普通は3月下旬に発達する。低気圧が日本海に入って発達するかどうかは,日本海西部に小低気圧が出たとき,朝鮮方面の気圧の低下が激しいこと,日本の上空に南風が卓越するなどおよそ予想がつくが,発達が非常に早いので予想が遅れることもある。そのため春一番を「立春から3月彼岸中日頃までの期間で日本海に発達した低気圧により最初にもたらされる南よりの強風」と暫定的に定めている。

 

春雷  日本海で低気圧にともなう寒冷前線が発達すると,前線に発達した積乱雲によって雷が起こる。これを春雷とよんでいる。

 

北高南低型の天気  高気圧のはり出しや,通過が北緯40°より北の場合は,北高南低型の気圧配置となるので,本州南岸に前線が停滞する。梅雨と同じ状態になり,ぐずついた天気が3月中旬〜4月中旬にかけて見られることがある。これを「菜種梅雨」という。

 

晩霜  移動性高気圧におおわれて穏かな日の夜は霜が降りて,農作物に被害を与えたりする。この晩霜は,春の終わりから初夏にかけて見られるもので,昔から「八十八夜の別れ霜」(55日頃)といわれ,この頃を境にして以後,霜が降りることもなかろうというもの。

 

梅雨の天気

 北のオホーツク海高気圧から冷たい気流が北東の風となって日本付近に流れ込み,南の太平洋高気圧からの暖かい湿った南西風となる気流と激しくぶつかり合うことによって,梅雨前線ができる。この前線の北側は悪天で梅雨空となる。前線上には小さな低気圧が数珠つなぎになって東進し,前線を刺激して集中豪雨をもたらすときがある。梅雨現象が顕著なのは東北地方南部から九州までである。

 梅雨の前期は,オホーツク海高気圧の勢力が強く,寒気団が日本を支配している。したがって,気温が低く薄ら寒く,雨もしとしとと降り続く。梅雨の後期になると,小笠原高気圧が強くなって暖気団がしばしば日本に侵入してくるようになる。気温も上がり,蒸し暑さを感じさせる。また,前線上を東進する低気圧に吹き込む南風や,接近する台風の南風が暖気を前線に押し上げ,前線の活動を活発にさせる。そのため局地的な豪雨をもたらすこともある。この現象を「低気圧が前線を刺激する」という。

 梅雨期間中,前線は1か所に停滞しているわけではない。つねにわずかずつオホーツク海高気圧が勢いを増したり,小笠原高気圧が勢いを増したりしていて,それにともなって前線の位置も,南下あるいは北上する場合がある,このとき,一時的に晴れ間がのぞくことがあって,これを梅雨の中休みとよんでいる。

 

[から梅雨と冷夏] 年によっては,はっきりした梅雨を見ないで夏に入る,いわゆるから梅雨となることがある。1つは,例年より小笠原高気圧が強く前線が弱かったり,いきなり前線が北に上げられるときで,最初から暑い日照りが続き,干ばつで水不足の恐れがある。

 もう1つは,例年よりオホーツク海高気圧が強くて,梅雨前線がはるか南方に押し下げられたまま季節が進み,やがてオホーツク海気団が変質して,小笠原気団と同化してしまい夏になるような場合である。このようなときは,オホーツク海気団による寒冷で多湿な気団が日本を支配し,雨量は少ないがすっきりしない,薄ら寒い陽気となる。東北以北では冷害の恐れがある。このときの夏は,冷夏になることが多い。

 

梅雨と高層のジェット気流

 梅雨は,オホーツク海高気圧から吹き出す冷湿な北東気流と,小笠原高気圧から吹き出す高温多湿な南西気流とが衝突して日本の南岸沿いに梅雨前線を形成すること,およびこの前線上に小波動が発達して低気圧が梅雨前線をレールにして次々に日本にやってくることによって起こる。

 第2次大戦後,高層資料が世界的に整備されるにつれて,高層気象の立場から,あるいは地球的規模の大循環の変動の立場から,あらためて梅雨現象が見なおされるようになってきた。

梅雨期,日本付近の上層偏西風中には2本のジェット気流が認められるが,その1つは北緯30°付近を通っており,梅雨前線に沿って南西から北東に流れている。また,別の1つははるか北方,北緯5060°を通っており,両者はアリューシャン付近で合流している。

前者は亜熱帯ジェット気流であって,インド・ビルマ方面から,高温多湿な空気を日本付近に送り込む管のはたらきをしているものと考えられる。また,高緯度のジェット気流の一部は,本流から分かれて南下し,東シナ海で亜熱帯ジェット気流と一部合流していることが多く,これは北方から寒気を送り込むので大気は非常に不安定となり,梅雨前線を活発化させるのに役だっている。7月に入って,日本付近を通っていた亜熱帯ジェット気流がなくなり,北方のジェット気流1本になると梅雨が明ける。

 

夏の天気

 梅雨が明けると,小笠原高気圧が南方から張り出して日本を覆い,日本の気候を支配する。気圧配置は南に高く北に低圧部がある南高北低型が代表型である。太平洋を渡ってくる高温多湿の南西風のため,日本の夏は蒸し暑くしのぎにくい。

 年によっては小笠原高気圧が北に偏り,勢力が異常に強いことがある。そのような年は晴天が続いて雨が降らず,水不足が生じ,農作物に大きな被害をもたらすことがある。逆に小笠原高気圧が発達しないで,オホーツク海高気圧の勢力が強いと東北地方や北海道ではいつまでも低温が続き,稲作などの大減収をもたらすことがある。

 

雷雨 強い日射のために,陸上では日中,積乱雲が発達し,それにともなって夕立ち,雷雨が見られる。雷雨は,山岳方面で顕著で,特に多い地方は北関東の山沿いから中部山岳部,鈴鹿山脈付近,九州の日田盆地である。

 

夏の台風 夏の台風は東シナ海から日本海にぬけるものが多い。盛夏に台風が通りぬけた後に小笠原高気圧がさらにはり出してきて,夏型の気圧配置は安定し,蒸し暑い晴天が続く。小笠原高気圧のはり出しが北に片寄り,東高西低型になると,赤道前線も北上してくるので,日本の南方海上で豆台風がたくさん発生しやすくなる。

夏も終わりに近づく頃,台風が日本付近を通過すると,シベリア高気圧が引き出されて南下し,日本は涼しく急に秋らしい陽気になることもある。

 

台風の進路

台風の進路は大別して2つの場合がある。1つは南洋で発生して西または西北西に進み,フィリピンを襲って南シナ海にぬけるもので,他の1つは発生してから西北西に進み,その後転向して日本付近を通過するものである。ときにより不規則な曲線を描きながら異常進路をとるものもあるが,南洋付近で発生した台風は初め西北西に進み,しだいに進路を北に向けて,北緯25°付近で進路を北から北東に変えながら放物線軌道を描くことが多い。

 台風は,発生後,低緯度上層の偏東風ないしは太平洋高気圧の周辺に沿って流れる大気の大きな流れ(一般流)にのって北上し,中緯度上層の強い偏西風に流されて向きをしだいに北東に変える。この場合,放物線の頂点を転向点という。転向点は普通北緯2230°の間にある。転向後は急に速さを増し,遅いものでも毎時40kmぐらい,早いものでは毎時100kmに達することがある。一般に,秋遅くなってからの台風は移動速度が大きい。台風が南洋で発生して日本に到達するまでには1週間ぐらいかかるのが普通である。

 

秋の天気

 後退していく小笠原高気圧とオホーツク海高気圧,あるいは,シベリア高気圧との間の停滞前線が,再び日本付近にとどまるようになり,天気はぐずつく。梅雨は前線帯の北上にともなって,南から北に移っていくが,秋の場合は前線帯の南下にともなって北から南に移っていく。移動性の高気圧と低気圧が交互に通過するため天気の変化が速く,春に似た天気になる。さらに,台風が日本を襲うようになるのも秋の天気の特徴である。

 

秋の長雨  秋は北高型の天気になりやすい。北高南低型になると,停滞前線(秋雨前線)が日本列島南岸に停滞して梅雨に似たぐずついた天気が続く。これを秋の長雨とか秋霖とかいう。そのため,9月ごろから10月の半ばまでは天気は不安定である。ただ梅雨ほど明瞭ではなく,年による違いは大きい。ときには,春と同じ移動性高気圧→低気圧の周期的な天気変化を示す。

 

秋晴れ 1010日頃を過ぎると,それまでの変わりやすい天気も,前線が南下し移動性高気圧がすっぽりと日本をおおうようになるので秋晴れの日が多くなる。低気圧が後に続いてくると天気が崩れるが,春ほど発達せず,すぐ第2の高気圧によって回復する。また,しばしば帯状高気圧型となって移動性高気圧が東西に連なるので晴天が長続きする。1120日頃には,低気圧の通過後大陸の高気圧が南下してきて季節風第1号が吹き,初雪や初霜,初氷などが見られ冬のはしりを経験するが,まだ本格的でなく長続きしない。

 

<参考リンク>

●「気象の話III」 技報堂出版

●「大気科学講座4」 東京大学出版会

●「新地学教育講座15」東海大学出版会

●気象庁 http://www.jma.go.jp/jma/index.html

JWA(日本気象協会)ホームページ www.jwa.or.jp/ 

●高知大学気象情報頁 http://weather.is.kochi-u.ac.jp/

 

 

 








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