トップ理科総合B 改訂版1部 地球の誕生と地球の姿>第3章 大気と地球の熱収支>第1節 大気と地球の熱収支

1節 大気と地球の熱収支

 

 

1 高度と気圧

2 大気の層構造

3 大気の組成〔体積%〕

気圧と水銀柱

気圧

大気圏の層構造

対流圏

成層圏

オゾン層

トピックス オゾン層

中間圏

熱圏

大気の成分

高度計

4 プリズムによる可視光線の分光

5 太陽定数と直達日射量

6 太陽放射の受け方

7 温室効果

8 地球の熱収支

9 緯度による日射量と地球放射の違い

太陽放射

地球放射

温室効果

地球の熱収支

緯度による日射量と地球放射量の違い 

太陽系の惑星の熱収支

オゾン層とオゾンホール

実験 日射量の緯度による違い


 

 

A 大気の層構造

   教科書の主な図表の解説                           

1 高度と気圧

 気圧は高度が高くなるにつれて小さくなる。たとえば,地表面1cm2の上にできる空気の柱の重さだと考えるとわかりやすい。しかし大気の層は下のほうが濃い。そのため高度が高くなるにつれて気圧は低くなるが,その変わり方は地表付近で大きく,上空にいくほど小さくなる。

2 大気の層構造

大気は,温度変化によって4層に分けられる。

対流圏は気象現象が起きているところで,上空に向かって温度が下がる。大気が垂直方向に運動して対流をしている。雲はこの範囲にできる。最上部は圏界面で成層圏と接している。

成層圏は大気が成層状態(水平に層状に重なっている状態)にあるところ。この層の中にオゾン層がある。上空に向かって温度が上昇する。

中間圏は上部に電離層を伴い,温度は上空に向かって下がる。流れ星はこの層で大気との摩擦で発光している。

熱圏は上空に向かって温度が上昇する。温度の値は大きな数値になるが実際には空気の分子が非常に少ないので,熱く感じることはない。太陽からの紫外線を吸収して温度が上がっている。オーロラはこの層に出る。

 

3 大気の組成〔体積%〕

 大気は78%が窒素で,21%が酸素でできている。残り1%の中にアルゴン,二酸化炭素などが含まれる。この割合は変わらないが水蒸気は最大でも3%くらいまでで変化する。このように酸素を含む大気をもつ太陽系の惑星は地球だけである。

 

   教科書の内容の解説                           

気圧と水銀柱

 1気圧は水銀柱で76cmになる。上部にできる真空はトリチェリーの真空とよばれている。水銀柱は傾けても高さは変わらない。この高さが気圧をあらわしている。気圧が高くなれば水銀柱の周りの水銀を大気が押すため,水銀柱の水銀がつりあうように上昇する。この実験を行うには,片方が閉じた1mのガラス管に水銀を満たし水銀の入った入れ物の中で,水銀柱の水銀が出ないようにして立てる。立てると水銀柱の水銀が下がるが,76cmくらいの高さで水銀が止まり,上部に真空の部分ができる。

 

気圧

 大気は重力によって地球の重心に向かって引きつけられている。単位面積に加わる大気の重さが気圧である。1963年イタリアのトリチェリーが約76cmの水銀柱の重さが同じ断面積の空気柱の重さに等しいことを発見した。この水銀柱76cmの圧力を1気圧という。

1気圧=760mmHg1013.25mb1013.25hPa(ヘクトパスカル)

ヘクトパスカル(hecto Pascal)hecto100の意味。パスカルはフランスの哲学者・科学者であるBlaise Pascal(16231662)にちなんでつけられた名。パスカルの原理は,液体内の圧力に関する著名な法則である。世界気象機関(WMO)は,1984年7月1日以後,Pa(パスカル)を気圧表示の単位として用いることを決めた。気圧は圧力であるから,単位としては圧力の単位が使用される。気象学ではこれまでmbを使ってきた。1mb1/1000barで,1bar12あたり105N(cm2あたり106dyne)の力が及ぼす圧力をいう。1Pa12あたり1Nの力が及ぼす圧力である。したがって,1bar105Paであり,1bar103mb103hPa105Paとなるので,mbhPaに変えても数値は変わらない。

 水銀柱ミリメートルは,標準重力加速度9.80665/s,標準温度0℃のもとで,密度が13.5951×103kg/3の水銀柱1mmが底面に及ぼす圧力と定められている。すなわち,1mmHg1.333224hPaである。水銀柱が0.760mの高さに相当する気圧を標準気圧といい,これを1気圧と定めている。

 

大気圏の層構造

 大気の高度領域を温度構造に着目して区分したのが,対流圏・成層圏・中間圏である。温度構造以外,大気組成・運動の形態・電離度などによっても大気を区分けすることができる。中間層の上端(高度約80km)は,電離層の始まる高さで,温度分布から決めた熱圏と重なっている。

 最近では,大気中のさまざまな物理過程を総合的にとらえて,その特色によって,大気の高度領域を3つにわけて,下層大気・中層大気・上層大気とよばれるようになってきた。下層大気は対流圏,中層大気は成層圏・中間圏と熱圏下部に相当する。

 

[大気圏の温度分布]   1月の大気の高さ方向の温度分布を経度方向に帯状に平均したのが図Iである。

 

1) 緯度にかかわりなく,温度の高度分布をみれば,地上約11km(赤道域では約16km)まで気温は高度とともに減少している。その割合は,5060K/10km程度である。それより上では,高度とともに気温が上昇し50km付近で最大となる。それより高いところでは,再び減少し,8090kmに低温の層が見られる。このような気温の高度分布を基準に大気を区分したのが,対流圏・成層圏・中間圏という区分である。

2) 高度11km以下の下層大気では,赤道域が高温で,南北両極が低温で,ほぼ同じような温度傾度をもっている。赤道と両極の温度差は約40Kである。夏半球と冬半球との間に定性的な差はない。

3) 高度2060kmの領域では,夏極が高温,冬極が低温で,その差は両極間で約50K70kmより高いところでは逆に夏極が低温,冬極が高温で,その差はやはり約50Kである。

 

 2)3)は次のことを示している。地軸と公転面との傾きによって生じる季節が,気温という形ではっきりと見えるのは高度が20km以上の領域(成層圏・中間層)であり,それにくらべると,対流圏の夏冬の差は無視できるほどに少ない。「対流圏には季節がない」ということは,四季の変化に富む地表に住むわれわれの感覚からは,異常にみえるけれども,地球規模で,気温という観点からみるとこのようになっている。

 季節の現れ方が,対流圏と成層圏・中間圏とでこのように違うことは,太陽から受けとる放射エネルギーを受け入れた結果として気温の分布が決まるメカニズムが,下層と上層では異なっていることを示すものである。

 

対流圏

 地表から高度約11kmまでの大気は平均して0.65/100mずつ気温が減少する。日々の大気の変化は,対流圏の大気の運動による。大気中の水蒸気のほとんどは,対流圏に存在する。対流圏と成層圏の境界を圏界面という。高緯度では約8kmであるが,赤道付近では約16kmになる。

 

成層圏

 上空に向かって高度約50kmまで温度が上昇する。この範囲を成層圏とよぶ。オゾン層がこの中に含まれる。オゾン層(O3)が大気の紫外線を吸収して温度が上がる。

 

オゾン層

 酸素分子に紫外線が作用してできるので,紫外線の強い低緯度のほうが多く生成されるが大気の循環で高緯度に運ばれる。そのため高緯度ほどオゾン層が厚くなる。近年フロンガスなどがオゾン層を破壊することがわかり,冷蔵庫やクーラーなどに使われることが規制された。しかし規制されるまでに大気中に出たフロンが現在でもオゾン層に影響している。

 

トピックス オゾン層

 オゾンは波長200300nmの紫外線を強く吸収するので,生物細胞中の核酸を破壊する太陽紫外線が地上に侵入するのを防いでくれる。オゾン層は地上生物の生存にとって不可欠な存在である。オゾン層の紫外線遮蔽効果は300nm付近から長波長側では不完全となり,太陽紫外線(波長域305±10nm)がわずかに地上にもれだしてくる。この紫外線はUV-Bとよばれ,生物機能に損害を与えるが,これに対して地上生物は進化の過程で種々の防御機能を獲得している。UV-Bの地上照射量はオゾン量の変動に敏感であるから(変化率にして約2倍の増幅度がある),オゾン量の長期変動は地上生物にとって重要な環境パラメータである。

大気中のオゾンO3は酸素原子Oが酸素分子O2と結びついてできる。酸素原子は太陽紫外線(波長242nm以下のエネルギーの高い部分)の解離作用によって,大気の主成分である酸素分子からつくられる。地球大気の酸素分子は光合成を行う生物によってもたらされたものであるから,オゾン層は生物自身がつくり出したものだといえる。オゾン層が貧弱で紫外線遮蔽効果の弱かった初期段階では,生物は水中でのみ生存可能であった。水中で光合成を行う生物が現れ,大気中の酸素分子濃度をしだいに増やしていった。こうして古生代の中頃(約4億年前)には,大気中の酸素濃度が現在の値になった結果,現在と同程度の紫外線遮蔽効果をもつオゾン層ができ上がり,陸上に生物がすめるようになったと推測されている。こうしたことから,オゾン層は他の惑星にはない,地球大気に特有の存在であることが理解できる。

 オゾンは太陽の紫外線により速やかに分解されるが,この際生じた酸素原子がオゾンを再生するので,この分解過程では正味のオゾン消失はない。オゾンの消失につながる反応としては,オゾンと酸素原子との反応がある。また,大気中に微量に存在する水素酸化物,窒素酸化物,塩素酸化物などの気体が触媒反応サイクルを形成しており,これによって効率よくオゾンを壊す。オゾンの生成反応は,最終的にはこれらの消失反応とつり合いを保ち,安定したオゾン層が保持されている。

しかし近年,超音速航空機の排出する窒素酸化物,スプレー缶や冷凍機などに使われ大気中に棄却されたクロロフルオロカーボンなどの塩化炭素(別称フロン)などがオゾンの消失反応を高め,その結果オゾン層が侵食されるのではないかと懸念されている。

 成層圏の中にオゾン量の多い領域があることは,1880年から1882年にかけて,M.J.シャビュイ(フランス)W.N.ハートリー(アイルランド)により独立に発見された。この層は高度20kmないし25kmを中心に,厚さ約20kmにわたり分布する。中心付近の密度はおよそ5×1012分子・cm-3で,全体の量は平均8×1018分子・cm-3で,0℃,1気圧において,0.3cmの厚みに相当する。オゾン層のレベルが長期的に低下した場合,UV-B地上照射量の増加により皮膚癌の発生率を高める。また作物収量減などに加えて生態系に種々の影響を与えるものと予測されている。

 オゾン層は,日により季節により変化する。この変化のしかたは地球上の場所によって異なっており,とりわけ緯度・季節変化に際だった特徴がある。太陽直下の低緯度上空で多量につくられたオゾンは,成層圏大気の動きによって高緯度上空に運ばれる。このためオゾン量は,低緯度よりも高緯度で多く,また季節では春に極大,秋に極小となる。こうした変動は,大気の大規模な運動に原因がある。

 一方,オゾン層の吸収する太陽紫外線のエネルギーは大気を暖める熱源として,成層圏形成の主要因ともなっているが,同時に大気の大規模運動もひき起こすので,オゾン層は上空における大気の運動と密接な関係にある。大気の大規模な運動は地球全体の気候と深いつながりがある。また,オゾンは赤外線を強く吸収・放出するので,大気の熱放射にも影響を与える。これらの点からオゾン層は気候を左右する因子として重要である。

 

中間圏

 高度約50kmより上空では,温度は高さとともに低下し,高度約8090kmで最小になる。中間圏の上部には電離層がある。

電離層は太陽からの紫外線によって大気の分子が電離した結果生じたもので,電波を反射するため長距離無線通信が可能になる。

 

熱圏

 高度80500kmまでをいう。高度とともに温度が上昇する。大気の分子は一部が電離し,オーロラが出る。

 

大気の成分

 水蒸気と二酸化炭素は大気の成分としては少量であるが,地球環境に大きな影響がある。大気は混合気体で,いろいろな気体が含まれているが,高度約80kmまでの下層の大気について水蒸気を除いた乾燥大気でみると,最も多いのは窒素で全体の約78(体積%),ついで酸素の約21%であり,これら2つの気体だけで大気の99%を占めている。残りの1%の中にアルゴン・二酸化炭素・オゾン・ネオン・ヘリウム・クリプトン・キセノン・アンモニア・過酸化水素・ヨウ素などが含まれている。80kmより高くなると軽い原子分子の割合が増加し,170kmより上空では酸素原子が,1000kmより上空ではヘリウムが多くなる。

 地球をとり巻く大気のようすは,電波などによる地上からの観測のほか,気球や人工衛星からの直接的な観測によっても知られる。

 気球に温度計をつけて飛ばすことによって成層圏の存在が見いだされたのは20世紀初頭のことである。高度約30km(気圧約10hPa)までの気球観測が地球規模で組織的に整備されたのは19571958年のIGY(国際地球観測年)からである。同じ頃,小型ロケットを打ち上げ,観測機械を積んだパラシュートを落下させて気温・気圧・風向風速の高度分布の観測が始められた。この気象ロケットは,普通は高度6070kmまでの観測を行うが,90100kmまで観測できるものもあった。1970年代に入ってからは,人工衛星によるリモートセンシングでの地球規模の観測が始められた。

 天気予報に用いられている「ひまわり」は,静止衛星で,赤道上高度約36000km,可視光線および赤外線を利用した雲の画像をつくることが主な仕事である。中層の大気観測に用いられる衛星は,高度約1000kmの極軌道を周期約100分で,太陽について回る。高度が低いので,いろいろな波長での分光測定ができる。特に,赤外線の15nm付近でのCO2吸収帯の分光測定結果から,大気温度の鉛直分布を求めることができる。

 近年は,地上からVHF電波を発射する大型レーダを用いて,衛星観測では不可能である大気の時間変化,高度による変化が測定されている。

 地表から80km付近の高度までは均質圏とよばれ,大気を構成する分子がよく混合していて,太陽光の散乱を生じている。80kmから600km付近までは,非均質圏で,酸素が解離し,気体分子特有の性質が失われている。

 

高度計

最近デジタルの腕時計で時計機能以外に温度,気圧,高度が表示できるものがでている。校舎の1階と4階などで気圧の変化と高度などの変化を見ることができる。エイペックス製,115000円など。針で高度と気圧を表示するものでは,13000円ほどであるが,1目盛りが20mであるため,6階以上の建物などでないと街中では利用が難しい。

 

B 太陽からの日射

   教科書の主な図表の解説                           

4 プリズムによる可視光線の分光

プリズムで光を分けるときは,細くスリットで絞って光を入れる。波長の長い赤はあまり屈折せず,波長の短い紫はよく屈折するので7色に分かれる。

 

5 太陽定数と直達日射量

 太陽放射は,さまざまな波長の電磁波から成り立っている。大気圏上面1m2の単位時間の日射量が太陽定数で,太陽のエネルギーを計算する時の基礎になる数値である。地表で受ける日射が直達日射量で,太陽定数の約半分である。

 

6 太陽放射の受け方

 地球は球面で太陽放射を受けるが,太陽エネルギーは光線に垂直な方向での面積,すなわち地球の断面積で受けていることになる。

地球の半径 r,断面積 πr2 太陽定数 Eとすると,地球が受ける太陽放射量は

 

E×πr21.4×3.1×(6.4×106) 2

1.8×1014 kW

 

7 温室効果

 大気は太陽からの放射を通すが,地表からの赤外放射は大気で吸収し,再び地表に放射する。このため地球は温暖な気候を保っている。

 

8 地球の熱収支

 太陽放射を100として熱収支を説明した図である(IPCC=Intergovemental Panel on Climate Change 1996年による)。このうち,地面に吸収される49単位の内訳は,地表への直達日射量(一部は反射によって宇宙空間へ逃脱)と,空気分子や浮遊粒子状物質や雲による散乱によるもの(一部は宇宙空間へ逃脱)である。空気分子による散乱はレーリー散乱とよばれるものである。散乱光は昼間の白昼現象を形成する。この現象では短波長の光が長波長の光よりも多量に散乱されるために青色が卓越している。

地面に吸収された太陽放射エネルギーは,長波(赤外)放射や熱流量(水蒸気の蒸発による潜熱流量と乱流伝導)によって地表面から正味出ていくものとつり合っている(地球からの放射=100)。長波放射で地面から放射されるものは,太陽放射で得たうちの14を加えて114が地球放射として大気へ向かうと見積もられる。これは,288Kの温度での黒体放射に対応するものとして推定される量である。このうち12単位は大気の窓を通して直接宇宙空間へ逃脱するが,残りの102単位は大気中の水蒸気,二酸化炭素や雲によって吸収される。大気自身もその中の水蒸気,二酸化炭素や雲から長波放射を放出している。すなわち,57単位は宇宙空間へ,95単位は地表に向かい地面で吸収される。地面からの正味喪失量は11423+7−9549単位となり,地面が短波放射で獲得した49単位とつり合っている。地面からの長波放射の得失による正味の喪失量は1149519単位である。19単位のうち12単位は直接宇宙空間へ逃脱するものであるから,残りの7単位が正味大気による長波放射の吸収量である。長波放射による宇宙空間への逃脱部分の57単位は,大気中での短波放射の吸収,すなわち成層圏のオゾンや対流圏の水蒸気,塵挨や微細な浮遊粒子状物質が吸収した20単位と,長波部分での大気の正味獲得量723737単位の和からなるものである。

 

9 緯度による日射量と地球放射の違い

緯度約40度を境にして低緯度側では,地表面と太陽光線の角度が大きいために日射量が放熱量より大きくなり,放射エネルギーが過剰になるが,それより高緯度では日射量より放熱量の方が多いため放射エネルギーが不足している。地球はそのアンバランスを解消するように熱を低緯度側から高緯度側にいろいろな方法で運んでおり,地球全体では熱の出入りのバランスが保たれているから,2つの曲線の下側の面積は互いに相等しく,緯度40°を境とする熱の過不足は相等しい。

 

   教科書の内容の解説                           

太陽放射

 太陽から放射されている電磁波の波長別のエネルギー強度は下図のように可視光線の部分がもっとも強く,それより波長の長いところも短いところも急激に弱くなっている。

 グラフAは人工衛星によって直接太陽からの放射を測定したものであり,6000Kの物体の理論的な放射エネルギーのグラフBとよく合っている。しかし,紫外線の部分では実際の放射は弱く,約5000K程度である。

 太陽からの放射は,地球大気に入ってから地表面に達するまでに,吸収されたり散乱したりする。そのため,グラフCのようになり,グラフAとくらべると大きく減退しているのがよくわかる。また,このグラフの中で谷状に下がっている部分は,

H2OO2O3CO2などによってエネルギーが吸収されて生じたものである。

 リスト(R.J.List)は大気の影響を無視した入射放射量の分布を計算し,図Iのような結果を得た。北極付近で67月頃,南極付近で121月頃最大量を示しているのはいわゆる白夜の現象で,日照時間が長いことに関係している。

 

 

地球放射

 太陽放射で暖められた地球は,平均15℃になり,この温度の赤外放射をしている。各波長別の強度は下図のようになる。赤外線を主体とする地球放射のある波長領域は,大気中の水蒸気や二酸化炭素によってほとんど吸収される。そのため,実際に大気を通り抜けて宇宙空間に放出されるのは,吸収を免れた部分だけである。この領域を地球放射の窓という。

地球が受ける太陽放射と,それによって暖められた地球が行う放射とが平衡の状態にあると考えると,シュテファン・ボルツマンの法則から

  (1A) πa2I04πa2σT4

 ただし,Aはアルベド(反射能)aは地球半径,I0は太陽定数,σはシュテファンの定数,Tは地球の温度である。これから

が得られ,A0.34I01.94 1y/min(1ycal/cm2)とすると,T250K(23)になる。これが地球全体の平均温度である。地球大気の実際の温度は,200300Kの範囲にある。黒体放射に関するプランクの法則(II)によると,T200Kでは4120μmの間にほとんどのエネルギーが含まれ,15μmのところに極大波長があり,T300Kでは380μmの間にエネルギーの大半が含まれ,10μmのところに極大波長がある。T6000Kの太陽放射が0.5μm付近に極大をもつのにくらべて,地球が行う放射は,波長の長い放射(赤外線での放射)であるので長波放射(赤外放射)ともよばれる。

 太陽放射(6000K)にくらべて,地球放射(288K)は,ずっと長い波長帯にずれているから,赤道のような平均地表温度より高温と考えられるところでは,放射の波長帯は平均地球温度に対する放射の波長帯より短い波長の側にずれ,反対に,高緯度や高空のような平均地表温度より低温と考えられるところでは,放射の波長帯は平均地表温度に対する放射の波長帯より長い波長の側にずれると考えられる。

 

温室効果

地表から放射される赤外線のほとんどは大気圏下層の水蒸気や二酸化炭素に吸収される。この赤外線を吸収して暖められた大気からも赤外放射が行われるが,その約3分の2は地表に戻って地表を暖めている。そのため地球の表面温度は高くなる。このように大気は可視光線を主体とする波長の短い太陽放射は通すが,赤外線を主体とする波長の長い地球放射はよく吸収するために,地球が大気圏外へ放出する熱を抑制して地球の気温を保つはたらきをする。これを大気の温室効果とよんでいる。

 

たとえば,温室の窓ガラスは,太陽放射の可視光線の部分はよく通すが,赤外線のうちで波長の長いものほど通しにくい。温室では太陽放射はガラスを通って内部の物体に吸収され,物体の温度は上昇する。ところが暖まった物体の出す放射は,赤外線のうちでも主に波長の長い部分のものであって,ガラスで有効に断たれる。そのために,温室内に熱が蓄積されて温室内の温度が上昇する。温度の上昇とともに温室内からの放射が短い波長の赤外線をより多く含むようになり,それとともにガラスを通して外へ逃げるエネルギーも増加する。この逃げるエネルギーの量が,可視光線として入ってくるエネルギーの量とちょうど等しくなったときに温室内の温度は一定になる。

 

地球の熱収支

 太陽放射は,その半分が大気によって反射吸収される。特に雲が強い反射を示す。地球表面に吸収された太陽放射エネルギーは,赤外線放射と熱伝導で運ばれる顕熱,水蒸気によって運ばれる潜熱として,大気中に移動していく。地球表面から直接宇宙空間に放出する量がわずかなことが地球放射の特徴である。

 

緯度による日射量と地球放射量の違い 

地球は球形であるため,緯度別の熱収支は一様ではない。図Vの日射量は緯度別に平均した1年間の平均値であり,地球放射量は人工衛星の軌道上で測定されたものを緯度別に平均し,さらに1年間で平均した値である。また,地表および大気の温度に対応して上空に向かって放射される長波放射量も,各緯度ごとに観測値として与えられる。緯度0度から37度までは,日射量のほうが地球放射量より多い。すなわち低緯度地域では熱収支は過剰であり,高緯度地域では不足となる。

赤道側と極側の熱の過不足をどう解釈するかが,大循環の議論の本質である。もし,大気の運動による熱の南北のやりとりがないと仮定したとき,緯度別の熱の過不足はどうなるだろうか。短波入射は基本的に太陽定数と地球の幾何学的な形で決まる。したがって極側の気温が下がり,赤道側の気温が上昇しなければならない。図Vのグラフで2本の線が一致するような温度分布を計算してみると,長波放射の曲線に示される現実の大気の温度にくらべ,極で30度低く,赤道で約30度高い分布となる。つまり,現実の地球での極と赤道での温度差は約40度であるのに対して,南北の熱の交換のない地球での南北の温度差は約100度という大きな温度差となる。

 多くのテキストは現実の地球での温度分布を出発点とし,低緯度側と高緯度側との熱の過不足を解消するために(あるいは解消するような)大規模な運動が生じるとの見方で大循環を論じようとしている。その方法は必ずしも間違いではないが,それだけでは完全ではない。大循環がある結果として現実の温度分布が存在しているからである。観測される長波放射分布は「出発点」ではなくて,「到着点」なのである。

短波放射と長波放射がちょうどつり合うような,南北の温度差が100度の大気を考える。地球の自転と重力の作用のもとで,このような温度差をもつ大気は力学的に安定でない。南北方向の運動が生じると,その運動は赤道から極へ熱を運ぶから,短波放射と長波放射との間にずれを生じる。運動が原因で生じた熱の過不足の大きさが,運ばれてくる熱量とつり合ったところで南北温度差の解消が止まる。この状態が図Vなのである(詳細は,広田 勇「グローバル気象学」東京大学出版会,参照)

 

太陽系の惑星の熱収支

地球以外の惑星の探査が無人探査機で進められ,多くの情報を得ることができるようになった。

 

   サイエンスBOXの解説                           

オゾン層とオゾンホール

オゾンホールは,拡大するとニュージーランドや オーストラリア南部まで広がる可能性がある。また,オゾン層が減少すると,地表に届く紫外線が強くなり,生物の遺伝子に与える影響が心配されている。気象庁では,地上の観測機のほか,オゾンゾンデ(観測機器をつけた気球)などを用いてオゾンの詳しい高度分布についても観測している。またオゾンの量と密接に関係している有害紫外線(UVB)量も観測している。これらの観測は,札幌・つくば・那覇・南烏島及び南極昭和基地で実施している(南鳥島地上からの観測のみ)

なお,気象庁のウェブサイトで紫外線情報が公開されている。1時間ごとの予報を毎日掲載しているので役立てたい。(http://www.jma.go.jp/jp/uv/)

 

 

実験 日射量の緯度による違い

<指導目標>

(1) 緯度によって太陽からの日射量は異なることを知らせる。

(2) 地球儀を日なたに出して地球儀が実際の地球と同じように日があたっている

ことを確認する。

(3) 太陽光線との角度が変わることにより太陽電池の発電量がどのように変わるか

を確認させる。

 

<準備>

(1) 地球儀,太陽電池セット(太陽電池と電流計)

(2) 市販のもので代用できるものもある。「地球の自転と四季の変化説明器」(マリス株式会社,35000)は地球儀(直径20cm)に赤道と北半球,南半球にそれぞれ1セットずつ太陽電池が取り付けられていて,電流計もセットされている。

 

<方法と留意点>

(1) 太陽の出ている日を選んで,地球儀を日なたに出す。

(2) 教科書の図のように,緯度03060度で球面に接線になるよう,地球儀の表面に太陽電池を取り付ける。太陽と直角になっていることを確かめる。

 

(3) ちょうど赤道に置いた太陽電池に直角に太陽があたるようにしたとき,それぞれの緯度の発電量の違いを発電メータ(電流計)で読み取る。

(4) 測定例

 直径30cmの地球儀に太陽電池を次の各緯度にセットした場合の測定例を下に示す。太陽光線は赤道に置いた太陽電池と直角になるようにして測定した例である。

赤道

0.6V 

緯度30  

0.56V 

緯度60

0.45V

* 太陽電池を使って測定すると,太陽光線と平行になっても電圧は0Vにならない。これは実際の地球と違いまわりからの散乱光や反射光が入るためである。

 

<参考>

大気上面で人工衛星によって測定された緯度別の日射量は以下のようになる。

緯度0

320 W/m2

緯度10

310 W/m2 

緯度20

290 W/m2

緯度30

250 W/m2

緯度40

200 W/m2

緯度50

150 W/m2

緯度60

110 W/m2

緯度70

90 W/m2

緯度80

60 W/m2

緯度90

40 W/m2

 

 

<参考資料>

●気象の話III(技報堂出版)

●大気科学講座13(東京大学出版会)

●新地学教育講座15(東海大学出版会)

広田 勇「グローバル気象学」(東京大学出版)


 

 

 

 

 








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