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2節 状態変化とエネルギー

 

分子の運動と固体・液体・気体の状態

(1) 固体

温度が下がって粒子の運動エネルギーが小さくなり,粒子間に働く結合力で粒子が規則正しく密に並んだ状態。したがって,一定の形,体積をもつ。この状態で粒子が行う運動は,一定位置を中心にした振動に限られる。

(2) 液体

固体の加熱により,温度が上昇して粒子の運動エネルギーが大きくなり,粒子間に働く力による束縛を振り切って一定位置から離れて動けるようになった状態。まだ粒子間の引力が多少残っており,粒子はほぼ密着しているが,一定位置に固定されないので,一定の形を示さない。

(3) 気体

液体を熱して更に温度を上げると,粒子の熱運動に比べて粒子間の引力が殆ど無視できるようになり,粒子が自由に運動できるようになった状態。気体では,物質の種類や分子量に関係なく,一定体積中の粒子数がほぼ似た状態になる。

 

参考 結晶と無定形固体

(1) 結晶

単結晶は,外見的に明瞭な結晶形を示すことが多いが,狭い意味ではこれを結晶という。広義には,外見上結晶の形が明らかでない小結晶の集まり(多結晶)も結晶という。核酸やタンパク質のような高分子物質でも部分的には結晶構造をもつものが多く,結晶は,一般的には固体の正常な状態ということができる。

(2) 無定形固体(非結晶固体)

塩化ナトリウムやナフタレンのような結晶に対し,ガラス,ゴム,寒天,樹脂等は無定形固体である。このような無定形固体は,一定の形をもたず,一定の融点をもたない。

水晶を高温にして液体にした後で冷やすと,非結晶性の石英ガラスが得られる。水晶は1550℃で融けるが,石英ガラスは熱すると次第に軟らかくなり,いつとはなしに液状になってしまう。

水晶の結晶ではSiO2が網目構造の規則正しい配列をつくっているのに対し,石英ガラスは網目構造はつくっているが,それが極めて不規則であって,結合の強さもまちまちである。したがって温度を上げていくと,弱い部分から結合が切れて軟らかくなっていくので,明確な融点を示さない。

無定形固体は,状態は固体だが,粒子配列の上では液体に近く,液体状態の物質をそのまま固化させた物質とも考えることができる。

 

参考 液晶(液晶ディスプレイ)

一般に,「液晶ディスプレイLCD」のことを「液晶」とよんでいる。厳密には,「液晶」とは,液体と固体の中間にある物質の状態(例えば,イカ墨,セッケン水等)を指す言葉である。見た目にはほぼ透明な液体で,少し粘りがある。液晶は,1888年にオーストリアの植物学者ライニツァーによって発見された。1963年,RCA社のウイリアムズは,液晶に電気的な刺激を与えると,光の通し方が変わることを発見し,5年後に同社のハイルマイヤーらのグループが,この性質を応用した表示装置をつくった。これが液晶ディスプレイの始まりである。

液晶物質の殆どは,細長い棒状の分子からなる有機化合物で,自然状態では分子が緩やかな規則性をもって並んでいる。この液晶に電圧を掛けると分子の並び方が変わり,その結果,光の通し方が変わることになる。TN型液晶とよばれるものでは,電圧を掛けていない状態では光が通り,電圧を掛けると光が遮断されて画面は黒くなる。つまり電圧が引き金となって,液晶が光のシャッターの機能を果たすことになる。これが原理である。(シャープ先端技術ライブラリーより)

LCDの長所は,薄型で低電圧作動,低消費電力だが,欠点としては,光に弱く,応答度が遅く,表示密度が小さいことが挙げられる。しかし,目下急ピッチで改良が進められている。(化学大辞典より)

 

昇華

固体から気体,気体になる変化を昇華というが,逆の状態変化も昇華ということがある。ヨウ素,ショウノウ,ナフタレン,二酸化炭素等の無極性分子からなる物質に昇華がよく見られる。固体は液体と同じように,一定温度で物質の種類により定まった蒸気圧を示す。昇華性物質は,室温付近でもその蒸気圧が大きい。普通は昇華しない物質でも,外圧を極端に小さくすると昇華する。氷も,その三重点以下の圧力にすると昇華する。

氷の蒸気圧

温度

蒸気圧

〔℃〕

Pa

0

6.13×102

5

4.01×102

10

2.60×102

15

1.65×102

20

1.02×102

 

 

参考 状態図と相律

物質の状態と,温度・圧力の関係を示した図を,物質の状態図という。下に水の状態図を示す。

図のように,状態図は横軸に温度,縦軸に圧力をとって示す。各状態間の境界線は,昇華曲線,融解曲線,蒸気圧曲線と呼ばれていて,この線上の条件では2つの状態の間で平衡が成り立っており,2つの状態が安定に共存している温度と圧力を示す。3つの境界線が交わる点Tは,固体・液体・気体の3つの状態が共存している圧力と温度であり,特に三重点と呼ばれている(水では6.1×102Pa0.01)

 

ギブスGibbsの相律によれば,成分物質の数n,共存する相の数Pのとき,平衡系の自由度Fは,次式で表される。

Fn2P

水の相平衡では,成分は水だけだからm1になり,自由度F(3-P)となる。したがって,水の状態図の各点において,自由度は次のようになる。

() 各曲線の間の部分

全て1つの状態(氷,水,水蒸気のどれか1)だから相の数P1となり,F312となる。したがって,圧力と温度は両方とも自由に変えられる。

() 各曲線上の部分

2つの状態が共存するから,相の数P2となり,F1となる。したがって,温度と圧力の一方は自由に決められるが,それに伴って他方は決まってしまう。

() 三重点上

3つの状態が共存するから,相の数P3となり,F0となる。したがって,温度・圧力は共に一定値で決まってしまう。

 

水の状態変化

固相から液相に変わる場合,一般には密度の減少を伴うが,氷の融解の場合は逆になる。これは,氷が水素結合により隙間の多い構造をとる為で,液体ではその隙間が水分子で満たされる。したがって,状態図の融解曲線も多くの物質と異なり,傾きが負の値をとる。

また,気体中の分子間の平均距離は,下表からわかるように液体の12倍になっている。他の物質でも同様であり,およそ10倍となる。

 

水の密度,体積,分子間距離(常圧)

状態

温度

〔℃〕

密度

g/cm3

1molの体積

cm3

1分子が占める体積

cm3

分子中心間の平

均距離〔cm

固相

液相

液相

気相

0

0

100

100

0.917

1.000

0.958

5.954×10-4

19.6

18.0

18.8

30600.0

3.3×10-23

3.0×10-23

3.1×10-23

5000×10-23

3.2×10-8

3.1×10-8

3.1×10-8

36.9×10-8

 

氷の中の酸素原子は,0-H0のような水素結合によって4つの酸素原子で正四面体状に囲まれている。したがって,1つの水分子は4つの水分子と水素結合で結ばれ,ダイヤモンドに似た結晶構造をしている。このときの酸素原子の間の距離(0-H0)0.276nmで,液体の水に比べて体積が大きく,密度は0.917g/cm3と水よりも小さい。

 

粒子の熱運動

気体,液体の粒子の熱運動は位置の変化であり,気体や液体の拡散から理解できる。一方,固体中の粒子の熱運動は,振動である。固体の温度を下げると熱運動は小さくなり,振動も小さくなる。0 Kでは,結晶中の原子(格子)が不確定性原理のために静止せずに振動しており,これを零点振動という。

 

粒子の熱運動と融解熱,蒸発熱

「物質の状態と粒子の熱運動」は,化学Uで扱う内容だが,粒子の熱運動を理解した方が,蒸発熱,融解熱を理解し易い。

 

状態変化とエネルギー

粒子間に働く力(詳しくは化学U)以上に熱エネルギーが加わると状態変化が起こる。本来,状態変化の熱量は,温度と圧力で変わるが,一般に,高校では,状態変化の熱量が温度と圧力で変わることを隠しているので,

融解熱+蒸発熱=昇華熱

となる。

 

 

 








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