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1節 燃焼とエネルギー

 

化学反応式

両辺を結ぶ記号は,矢印()を用いるので,一見,質量保存の法則を表す意義が失われているように見えるが,化学式の係数で両辺の各原子の数が等しくなるようにしているので,両辺の質量の総和が等しくなり,本来の意味は保存されている。化学反応式は,反応が始まる最初の物質種の量と反応が終わった後の最後の物質種の量との量的関係を示すものであり,反応の途中の様子は省かれている。

 

イオン反応式

イオン反応式は,反応の実質が何かを示そうとするものである。そのため,反応に関与しない部分(イオン)は書かない。

亜鉛や鉄が強酸と反応して水素を発生するのは,強酸中にHが生じており,このHに亜鉛や鉄が電子を与えてH2にするからである。当然,金属はZn2あるいはFe2に変わる。したがって,Hが存在することが重要であって,酸の陰イオンが何であるか,即ち酸の種類はこの場合関与しない。

Zn2H―→ Zn2H2

Fe2H―→ Fe2H2

塩酸に水酸化ナトリウムを加えて中和させるとき,化学反応式は次のように書く。

HCl+NaOH ―→ NaClH2O

ところが水溶液中では,HCl(HCl)NaOH(NaOH)NaCl(NaCl)のように電離して溶ける。したがって,中和反応の本質は,酸性を示すHと塩基性を示すOHが中性のH2Oになる変化なので,イオン反応式は次のようになる。

HOH―→ H2O

 

化学変化の量的関係の計算

化学Iで学習するmol,アボガドロ数との関連を図り,この単元で発展的に扱うこともできる。その際は,化学変化の係数比は,反応物と生成物の物質量比に相当するので,「物質を全てmol単位で換算し,それを係数に比例させて計算するのが量的関係の原則である」と指導することが望ましい。mol単位で解を求めた後,題意に応じて質量なり体積なりに換算すればよい。このような方法をとれば,化学変化の量概念を正確に捉えることができ,複雑な反応についても理解できる。

 

反応熱・発熱反応・吸熱反応

化学反応に伴って物質系に出入りする熱量を反応熱という。反応が等温等圧で行われた場合は定圧反応熱,等温定容で行われた場合は定容反応熱という。前者は反応物と生成物とのエンタルピー変化で,一般にDHの記号で表され,後者は反応物と生成物との内部エネルギー変化で,一般にDEの記号で表される。

通常は,1×105Pa下で測られたエンタルピー変化DHを,単に反応熱と呼ぶ。反応で熱が吸収されると,生成物の方がエンタルピーが大きくなるので,DHは正になり,吸熱反応と呼ばれる。一方,逆に反応で熱が放出されると,生成物の方がエンタルピーが小さくなるので,DHは負になり,発熱反応と呼ばれる。反応熱は,反応の種類によって,燃焼熱・中和熱・溶解熱等と呼ばれる。

 

ヘスの法則(総熱量不変の法則)

この法則は,エネルギー保存の法則が物理変化のみならず化学変化にも適用できることを示した科学史的意義をもつ法則で,その発表はエネルギー保存の法則に先立ち,1840年スイス系ロシア人G.H.ヘス(18021850)によって行われた。

ヘスの法則の内容は,「反応熱は,その反応の初めの状態と終わりの状態で決まり,途中の経路には関係しない」というもので,化学反応に伴う熱現象を扱う熱化学の基本法則である。また,エネルギー保存の法則を化学変化に適用したものであることから,「総熱量保存の法則」とも呼ばれている。

ヘスの法則により,直接に測定することの困難な反応熱を,別の反応の反応熱から計算により求めることができるようになった。

 

ヘス

1802年,スイスのジュネーブで生まれ,1850年,ペテルスブルグで没した。化学者にして医者。父は教師で,1805年,ロシアのペテルスブルグに連れていかれた。1822年〜1825年,ドルバトの大学で医学教育を受け,その他化学と地質学を学んだ。スウェーデンの化学者ベルツェリウスと1か月過ごした後,ウラル山脈の地質探険隊に参加し,その後イルクーツクで医師となった。1830年には再びペテルスブルグに戻り,2年後にペテルスブルグ工科大学の教授となった。1838年まで,主として鉱物と有機化学の研究を行い,1840年と1842年に熱化学の古典的論文を出版した。これが有名なヘスの法則の発見である。

彼の著書純粋化学の基礎は,ロシアの代表的教科書として使われたが,1860年にメンデレーエフの著書にとって代わられた。

 

 

 








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