トップ理科総合A 改訂版1部 物質と人間生活>第1章 物質の構造>第4節 物質の量

4節 物質の量

 

原子量

原子量の概念は,1803年ドルトンによって導入され,1805年に最初の原子量表が発表された。これは誤差の大きなものだったが,彼の原子説を支持する上で大きな役割を果たした。初めて精密な測定を行い,原子説に実験的支持を与えたのは,スウェーデンの化学者ベルツェリウスだった。彼が1826年に発表した原子量表は,現在と大差のない立派なものだった。しかし,同位体がまだ知られていない時代であったため,その後,原子量の基準は二転三転することとなった。

原子量は,長い間,天然の酸素原子の相対質量,即ち16O17O18O3種の同位体が一定の割合で混合しているときの平均相対質量を16として,これを基準に定められてきた(化学原子量)。天然に存在する同位体同士の割合が,世界中どこでも不変であると考えられていたので,この方法で国際的に同一の原子量を定めることができた。しかし,同位体の研究が進みその知識が増すにつれ,質量数16の酸素原子16Oだけをとり出し,この相対質量を16とする基準(物理原子量あるいは同位体原子量)も必要となってきて,2種の原子量が用いられる時代となった。

しかし,2種の原子量が存在することは不便であるという声も大きくなり,IUPACで種々検討の結果,質量数12の炭素原子12Cを基準にとり,この相対質量を12とする新基準の国際原子量表が1961年に発表された。

新基準に従えば,ある元素の原子量は,12C12g中に含まれている原子の数(アボガドロ数に等しい)と同数のその元素の原子の集団(1mol)の質量を,グラム単位で示したときの数値であると定義される。従来の化学原子量は,新基準による原子量の1.000043倍に過ぎず,実用的には旧来の原子量を用いてもよい。

自然界に存在する各元素の同位体の割合はほぼ一定だから,各元素の原子量は,その同位体の相対質量に存在比を掛けたものの平均値として算出される。

12Cを基準に選んだ理由は,従来の原子量値を大きく変えないで済むことや,他の同位体との質量比較が正確であること等だった。1H160を基準とする案は従来の化学原子量を大きく変える点で不合格であり,19Fは天然同位体をもたない点では優れているが,他の原子との質量比較が不正確になる点で不採用となった。

 

ドルトン

イギリスの化学者・物理学者で,1766年に寒村の織物工の子として生まれた。小学校教師,専門学校の教師を経て,個人教師となる。気象学,気体の物理学・化学の研究に没頭した。混合気体における分圧の法則(1802),定比例の法則,倍数比例の法則,ヘンリーの法則等を特に研究した。1808年に原子仮説に基づく化学体系を発表し,今日の原子の概念を確立した。生涯,気象学への興味を失わず,1844727日に没する前日まで観測し,観測回数は20万回にも及んだ。また,彼自身が色盲であることから,色盲についても研究している。色盲のことをdaltonismとよぶことがあるのはこのためである。

 

分子量

原子量の基準(12C12)に合わせて,各分子間の相対質量を表す量として分子量が用いられる。分子量は,分子を構成している各原子の原子量の総和と定義されている。実測法としては次のような方法がある。

(1) 気体物質の分子量は,アボガドロの法則によって,同温同圧の気体の密度が分子量に比例することを利用して求められる。

(2) 不揮発性の固体物質の分子量は,希薄溶液にしたときの浸透圧から求めることができる。また,沸点上昇や凝固点降下を測定して求めることもできる。

(3) 巨大分子(高分子)の分子量は浸透圧,光の散乱,粘度,拡散等の測定結果を利用して求められる。巨大分子は精製しても,一般に種々の大きさの分子の混合物であることが多いので,求められた分子量は平均分子量であり,測定方法によって数値にかなりの違いがある。沸点上昇法や凝固点降下法では,高分子の場合温度変化が小さ過ぎて,実際上測定は難しい。

 

アボガドロ数

アボガドロ数は,]線による結晶格子の研究と密度の測定,単分子膜の測定,電解における析出量と電気素量,α線の放出量と発生しHeの量の測定等の方法で,実測されている。その値は,1875年には30%の誤差で知られていた。1909年になるとミリカンの油滴実験によって誤差1%までに縮められ,19301940年の間の実験物理学者の研究によって誤差0.1%まで精度が高められた。現在,最も精密な値は6.0221367×1023とされている。異なった方法で求められた値がほぼ一致するという事実は,物質の原子・分子的構造の理論が単なる仮説ではなく,十分な実験的根拠をもつものであることを説明している。

塩化カリウムの単位格子はKClをそれぞれ4個含む。その1辺は,]線解析から0.629nmと求められている。一方,密度は1.99g/cm3と測定され,式量は74.6だから,アボガドロ数をNAとすると,

 

 

 

原子説と分子説

物質が粒子から構成されているという考えは,古代ギリシアの時代から始まっている。しかし,それらは哲学的な思索によるもので,実証的なものではなかった。むしろ,アリストテレス達による,物質構造の連続説が中世ヨーロッパを長く支配し,粒子説は日の目を見なかった。しかし,18世紀になると,いろいろな実験事実が積み重ねられ,物質観もそれらの基盤の上に立つようになった。特に気体の化学反応の研究が進み,その量的な関係についての法則が数多く発見されるに至って,粒子説が連続説にとって代わるようになった。

定比例の法則》 天然にはクジャク石として産し,また銅の緑青として知られている水酸化炭酸銅CuCO3Cu(OH)2をプルーストは研究していた。彼はこれを熱すると,まず水が得られ,強熱すると二酸化炭素が得られ,後に酸化銅(II)が残ることを知った。プルーストはこれらを正確に分析して,天然のものでも人工のものでも,組成は全く同じであることを発見した。

倍数比例の法則》 ドルトンは,メタンCH4とエチレンC2H4について研究しているとき,一定量の炭素に結合している水素の量が21になっていることに気づいた。その後,炭素・硫黄・窒素の酸化物についても検討し,倍数比例の法則を導き出したといわれている。この法則は,定比例の法則と共に,物質構造の不連続性を示しており,ドルトンは,これらを背景として原子説を提唱することになった。

気体反応の法則》 ゲーリュサックの第二法則ともよばれ,実験的に導き出されたものである。反応に関係する物質が全て気体でなくても,反応に関係する気体の相互間に当てはまる。例えば,Fe2O33CO ―→ 2Fe3CO2の反応においてCOCO2の間には,体積比が11であるという気体反応の法則が当てはまる。

気体反応の法則を原子説で説明しようとすると矛盾につき当たる。このため,ドルトンは気体反応の法則を否定したといわれている。しかし,この矛盾は後にアボガドロによって見事に解決され,原子説・気体反応の法則のどちらにも矛盾しない,分子説がうち立てられることになった。

アボガドロの法則》 アボガドロは,原子説と気体反応の法則を結び付ける試みとして,分子仮説を提唱した。例えば,水素や酸素の単体では,同種原子2個が結合して1分子ができるとした。しかし,化学結合の考え方がまだ定着していなかったため,2原子が結合する必然性が説明できなかったので,この仮説は当時なかなか認められなかった。彼の死後,1860年になって,弟子のカニッツァローが再びこの説を提唱し,実験事実を満足に説明できるただ1つの考え方として,ようやく認められるようになった。

 

溶解の機構

イオン結晶の溶解 塩化ナトリウムは水によく溶けるが,ベンゼンには溶けない。NaClの結晶中では,Na+Clが静電気力で強く結ばれている。これに対し,Na+Clとベンゼン分子との間にはこのような力は働かない。その為,結晶から溶液中へこれらのイオンが移るのは容易でない。一方,これらのイオンが水の中に入ると,イオンの静電気力によってイオンの周りに水分子が強く吸引される(水和)。その為にこれらの結晶は水によく溶ける。

一般に,ある物質が1つの液体によく溶けるかどうかということを考えるには,次の点に基づかなければならない。

(1) 溶質物質の粒子間に働いている力

(2) 溶媒分子間に働いている力と溶媒の液体構造

(3) 溶質粒子と溶媒分子の間の力

分子結晶の溶解 ナフタレンのような固体がベンゼン等に溶ける無極性物質相互の溶解の場合には,固体内の分子間の力,固体の分子が液体中に溶けたときの溶質分子と溶媒分子の間の力,および溶媒分子間の力は,同じような性質のもので同程度の大きさである。このような場合には,分子がよく混じり合って乱雑さの大きい状態に移っていこうとするのでよく溶ける。

 

溶液の濃度の表し方

目的により,いろいろな表し方がある。

(1)  

 

直観的に判るので便利だが,化学変化の量的関係を考えるには不向きである。水溶液では無水物の溶質について示す。

(2) 

 

体積モル濃度ともいう。cmol/Lの溶液がV mLあれば,溶質はcV×10-3mol存在することになるので,溶液に関する化学反応では量的計算を行うときモル濃度を用いると便利である。

 

参考 その他の濃度の表し方

(1) ppm  微量の成分を体積や質量の百万分率で示す濃度である。

 

ppmparts per millionの略。mg/kgcm3/m3等の単位で示すこともある。他に千分率(パーミル,0/00),十億分率(ピーピービー, ppb)等も特別な場合に用いられる。

 

(2) 

 

温度により値が変わらないので便利である。

溶媒の質量をその分子量で割れば溶媒の物質量が求められるから,この濃度表示は,溶質〔mol〕/溶媒〔mol〕 と考えることもでき,換言すれば,溶質粒子の個数/溶媒分子の個数 ということもできる。もし,溶媒の物質量に対し溶質の物質量が極めて小さく,溶媒〔mol〕≒溶液〔mol〕とみなせるときは,次に示すモル分率と同じ意味になる。

(3) モル分率  溶質の物質量を溶液全体の物質量で割ったものを,モル分率という。無名数で単位はない。液体同士や気体同士の混合物を表すのに用いられる。

 

 

 

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2008 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.