トップ理科総合A 改訂版1部 物質と人間生活>第1章 物質の構造>第3節 物質の構成粒子

3節 物質の構成粒子

 

イオン化エネルギー

気体状態の単原子または分子の基底状態,即ち最もエネルギーの低い状態から,電子1個を無限大の距離に引き離して陽イオンにするとき必要なエネルギーを,原子または分子のイオン化エネルギーという。

このエネルギーを電子ボルト単位(eV)で示して,イオン化ポテンシャルと呼ぶこともある。また,これを第一イオン化エネルギーといい,更に電子を次々に引き離していくとき必要なエネルギーを,第二イオン化エネルギー,第三イオン化エネルギー,とよぶ。第一イオン化エネルギーは,元素の周期律を考察するよい例である。



イオン化エネルギー(eV) 1eV23.06036kcal/mol96.48455kJ/mol
IIIは,第一イオン化エネルギー,第二イオン化エネルギー・・・を示す。

原子

番号

元素

I

II

III

 

原子

番号

元素

I

II

III

 

1

H

13.598

 

 

 

36

Kr

13.999

24.359

36.95

2

He

24.587

54.416

 

 

37

Rb

4.177

27.28

40

3

Li

5.392

75.638

122.451

 

38

Sr

5.695

11.030

43.6

4

Be

9.322

18.211

153.893

 

39

Y

6.38

12.24

20.52

5

B

8.298

25.154

37.930

 

40

Zr

6.84

13.13

22.99

6

C

11.260

24.383

47.887

 

41

Nb

6.88

14.32

25.04

7

N

14.534

29.601

47.448

 

42

Mo

7.099

16.15

27.16

8

0

13.618

35.116

54.934

 

43

Tc

7.28

15.26

29.54

9

F

17.422

34.970

62.707

 

44

Ru

7.37

16.76

28.47

10

Ne

21.564

40.962

63.45

 

45

Rh

7.46

18.08

31.06

11

Na

5.139

47.286

71.64

 

46

Pd

8.34

19.43

32.93

12

Mg

7.646

15.035

80.143

 

47

Ag

7.576

21.49

34.83

13

Al

5.986

18.828

28.447

 

48

Cd

8.993

16.908

37.48

14

Si

8.152

16.345

33.492

 

49

In

5.786

18.869

28.03

15

P

l0.486

19.725

30.18

 

50

Sn

7.344

14.632

30.502

16

S

l0.360

23.33

34.83

 

51

Sb

8.641

16.53

25.3

17

Cl

12.967

23.81

39.61

 

52

Te

9.009

18.6

27.96

18

Ar

15.760

27.629

40.74

 

53

I

10.451

19.131

33

19

K

4.341

31.625

45.72

 

54

Xe

12.130

21.21

32.1

20

Ca

6.113

11.871

50.908

 

55

Cs

3.894

25.1

 

21

Sc

6.54

12.80

24.76

 

56

Ba

5.212

10.004

 

22

Ti

6.82

13.58

27.491

 

57

La

5.577

11.06

19.175

23

V

6.74

14.65

29.310

 

58

Ce

5.539

10.85

20.20

24

Cr

6.766

16.50

30.96

 

59

Pr

5.464

10.55

21.62

25

Mn

7.435

15.640

33.667

 

60

Nd

5.525

10.72

 

26

Fe

7.870

16.18

30.651

 

61

Pm

5.582

10.90

 

27

Co

7.864

17.06

33.50

 

62

Sm

5.644

11.07

 

28

Ni

7.635

18.168

35.17

 

63

Eu

5.670

11.25

 

29

Cu

7.726

20.292

36.83

 

64

Gd

6.150

12.1

 

30

Zn

9.394

17.964

39.722

 

65

Tb

5.864

11.52

 

31

Ga

5.999

20.51

30.71

 

66

Dy

5.939

11.67

 

32

Ge

7.899

15.934

34.22

 

67

Ho

6.022

11.80

 

33

As

9.81

18.633

28.351

 

68

Er

6.108

11.93

 

34

Se

9.752

21.19

30.820

 

69

Tm

6.18

12.05

23.71

35

Br

11.814

21.8

36

 

70

Yb

6.254

12.17

25.2


尚,溶液中で金属が陽イオンになるときは,イオン化エネルギーの他に,金属から原子を引き離す昇華熱や溶媒和のエネルギーも関係してくるので,金属のイオン化傾向とイオン化エネルギーを混同しないよう注意が必要である。

イオン結合

電荷Q1C〕をもつ陽イオンと電荷Q2C〕をもつ陰イオン間の引力は,イオン間距離をrとすると,クーロン力Q1Q2/r2またはポテンシャル(エネルギー)Q1Q2/rに比例する。また,イオンが相互に接近し過ぎると,原子核間の反発力が目立ってくる。この反発ポテンシャルは,ber /aの形で表される(abは定数)。したがって,引力と反発力の和を計算すると,イオン結合のポテンシャルエネルギーが求められる。

気体状のNaCl分子についてポテンシャルエネルギーを計算すると,下図のようになる。図の曲線の極小点が,安定な核間距離を表す。共有結合によるポテンシャルエネルギーも同時に示したが,その値はイオン結合より大きく,イオン結合の方が安定であることがわかる。

NaCl分子のポテンシャルエネルギー(ムーア著,新物理学より)

 

イオン結晶のイオンのつまり方

イオン結晶では,陽イオンと陰イオンが規則的に配列され,クーロン力で結合している。各イオンは,反対電荷をもつイオンに囲まれている。この取り囲むイオンの数を配位数といい,主として陽イオンと陰イオンの半径比によって決まり,結晶型も変わってくる。

(1) NaCl型結晶 NaClの結晶は, Cl-がつくる面心立方格子の八面体間隙にNaが配置された構造をしており,それぞれのイオンは異なる6個のイオンに取り囲まれ,配位数は6である。この構造でCl-が互いに密着しているとするとき,Cl-がつくる八面体間隙よりNaが小さいときは,Naは全てのCl-と密着できず,不安定となる。したがって,安定な結晶をつくるには,Cl-に対してNaの半径が一定以上の大きさでなければならない。

NaCl型結晶の陽イオン半径をr,陰イオン半径をrとして,r/ r -限界値を計算すると,三平方の定理より,

(2 r -)2(rr -)2×2

2 r -=√2(rr -)

したがって, r/ r -=√210.414

つまり,r/ r -0.414であれば,NaCl型結晶は安定となる。

 

(2) セン亜鉛鉱ZnS型結晶

S2-が面心立方格子をつくり,その四面体間隙の半分(8個のうち4)Zn2が配置された構造である。それぞれのイオンは4配位で,SZnを区別しなければダイヤモンドと同じ構造となる。

NaCl型と同様の考え方で,半径比を考えると,

 rrr

したがって,r/ r -10.225

つまり,r/ r0.225であれば安定となる。

(3) CsCl型結晶  Cl-が単純立方格子をつくり,その立方体の中心にCs1個が配置される構造である。それぞれのイオンは8配位である。

NaCl結晶型と同様に半径比を考えると,

したがって,10.732

つまり,0.732であればCsCl型結晶は安定となる。

ここまで説明した3つの結晶型以外にもいろいろな結晶型があり,配位数にも212までいろんなものがある。そして,それぞれに適当な半径比がある。

ここで説明した3つの結晶型について考えると,r +/ r -の半径比の値で可能な結晶型は次のようになる。

半径比0.2250.414  ZnS

半径比0.4140.732  ZnS型,NaCl

半径比0.732以上   ZnS型,NaCl型,CsCl

また,イオン結晶では,配位数の多い程安定である。したがって,半径比が0.732以上では,ZnS型やNaCl型の結晶型も可能だが,配位数の多い方が安定であり,CsCl型となる。勿論例外もあるので,単純には結晶型が決まるものではない。実際に,r +/ r -を計算してみる。

NaCl  NaCl

CsCl  CsCl

 

イオン結晶の格子エネルギー

イオン結晶のイオン間の結合エネルギーは格子エネルギーとよばれ,結晶1molをばらばらの構成イオンにするとき必要なエネルギーで表される。

格子エネルギーの大きさは,当然,結晶の融点に関係する。下表にその値を示し,格子エネルギーの比(NaCl1とする)を示す。

イオン結晶の溶解熱は,その結晶の格子エネルギーとイオンの水和熱の差として,大まかな値を知ることができる。

 

格子エネルギー〔kJ/mol〕と融点〔°C 全てNaCl型結晶

化合物

イオン

イオン半径

中心間距離

格子エネルギー

とその比

融点

°C

〔×10-1nm

〔×10-1nm

NaCl

Na+
Cl-

1.16
1.67

2.827

771

1

801

KCl

K+
Cl-

1.52
1.67

3.138

701

0.909

770

NaI

Na+
T-

1.16
2.06

3.421

697

0.904

651

MgO

Mg2+
O2-

0.86
1.26

2.016

3760

4.877

2826

CaO

Ca2+
O2-

1.14
1.26

2.330

3371

4.372

2572

BaO

Ba2+
O2-

1.49
1.26

2.738

3019

3.916

1918

 

共有結合

H2分子が形成されるとき,H原子は電子を1個しかもたない1s電子軌道を互いに重ね合わせて,2個のH原子間で電子の行き来ができるようになる。このようにして,2個のH原子はより安定なH2分子をつくる。この際,原子が結合して生じる安定な分子の結合や性質を解明する為に原子間に跨った分子軌道を考える。電子は分子軌道に従って両原子の間を行き来し,原子同士を結び付ける。このように,電子を共有することによってできる結合が共有結合である。

水素分子の解離エネルギーは436kJ/molであることが知られている。

H2()2H()436kJ

2個のH原子が完全に離れているときのポテンシャルエネルギーを0とすると,この2原子が互いに近寄って共有結合を形成する場合のエネルギー変化は下図のようになる。2つの原子核間の距離がr(0.074nm)になったとき,2原子は最も強く結合して安定になっていることがわかる。この場合,H2原子が完全に離れているときに比べ,D (436kJ/mol)だけエネルギーを放出している。H原子の共有結合半径と呼んでいる。

分子軌道が形成される場合,その形と電子密度の関係をH2分子について考えてみる。Heの電子配置は1s2である。1s軌道の形は球状で,下図(A)のようになっている。原子核を通る直線を横軸に,直線に垂直な面内の電子密度を縦軸にとって図示すれば,図(a)のようになる。そこで,Heの原子核を二分し,それぞれの+eの電荷を少しずつ離していくと考える。+e2つの核が十分に離れた状態では,2個のH原子が離れて存在しているのと同じ状態と見なすことができる。そのような状態になるまでの軌道の形は,下図の(A)→(B)→(C)→(D)を辿る。実際のH2分子の核間距離は0.074nmであり,この場合の分子軌道は(C)に相当する。この分子軌道は元々1個のHe原子核を包んでいた1s軌道だから,2個の1s電子は2個の核電荷から同じ影響を受けている。

1sの電子配置のH原子2個が,(D)の孤立した状態から近づいて接触した場合,2つの1s軌道は単に重なり合うだけでなく,436kJ/molもの熱を放出することによる安定化で大きな影響を受ける。(C)の状態では,どの電子がどの核に所属するかが決められなくなっている。即ち,2個の電子は2個の原子核に一様に束縛されている。これが分子を安定にしている主要な原因と考えることができる。即ち,2個の電子は2個の原子核に共有され,2つのH原子は共有結合によって強く結び付けられている。

2分子の分子軌動

 

分子の構造と結合  主な分子の構造定数を次に示す。

H2

直線形

H-H 0.07414nm

 

CO2

直線

C-0 0.11600nm

 

H2O

折線

0-H 0.09579nm

HOH 104.50°

NH3

三角錐形

N-H 0.1012nm

HNH 106.7°

O2

直線形

0-0 0.12075nm

 

N2

直線

N-N 0.10977nm

 

 

金属結合

ナトリウムを例に,金属結合を考えてみる。隣接するNa原子2個の間では,それぞれの3s軌道から分子軌道2個がつくられる(一般に,分子軌道は用いられた原子軌道の数だけできる)。そして,それぞれの3s軌道の電子は対となって,エネルギー準位の低い分子軌道に入る。更にNa原子が増えて3個,4個,5個,となると,Na原子の3s軌道からつくられる分子軌道の数も345と増加する。そして,Na原子の3s軌道の電子は,エネルギー準位の低い分子軌道から順に2個ずつ配置される。

ナトリウムの単体1molでは,原子の3s軌道から6.02×1023個の分子軌道がつくられ,その数が多いので各エネルギー準位の間隔は極めて小さくなり,事実上連続した帯のようになる。このような帯をエネルギー帯やバンドとよんでいる。エネルギー帯を構成する全ての分子軌道は,全原子に行き渡っている。したがって,どの電子も特定の原子に属することはないので,金属結合は,全原子が全電子を共有する1種の共有結合であるといえる。

ナトリウムでは,3s軌道から構成されるエネルギー帯の半分が空なので,電圧を掛けると電子は容易に移動し,電流が通じる。Mg3s軌道に2個の電子をもち,3s軌道から構成されるエネルギー帯に電子が充満するので,Naとは電気伝導の仕組みが異なる。この場合は,3p軌道から構成されるエネルギー帯の一部が3s軌道によるエネルギー帯と一部重なり,電子は空の3p軌道を使って移動でき,電気が流れる。

 

金属の結晶構造

(1) 面心立方格子(面心立方構造,立方最密構造)

大きさの同じ球を,なるべく密に規則正しく並べる方法の1つに下図のような方法がある。第2段の球Bは,第1段の球Aがつくるくぼみに1つおきに入る。第3段の球Cは,球Bが埋めた球Aのくぼみのうち,残ったくぼみの真上にくるように配置される。第4段は,第1段の上にくる。このようにABCの順に次々と球を重ねた構造が面心立方格子である。単位格子を構成するのは,第1段のA1個,第2段のB6個,第3段のC6個,第4段のA1個の14個の粒子で,2個のAを結ぶ線が格子の対角線にあたる。BCの球は,それぞれ3個が格子の頂点,残りの3個が格子の面の中心に配置される。

この構造では1個の球は12個の球と接し,球は空間の74%を占めて最密構造となる。

面心立方格子の球の詰まり方

 

(2)  六方最密構造

上図で,第3段を第1段と同じ位置に配置したのが六方最密構造である。単位格子は,第1段および第3段の球A4個,第2段の球B1個で構成される。

この構造も,球は他の12個の球と接し,球は空間の74%を占めて最密構造となる。

六方最密構造の球の詰まり方

 

(3)  体心立方格子(体心立方構造)

下図のように,同じ大きさの球をABの順に次々と積み重ねた構造が体心立方格子である。ABの球は接しているが,A同士やB同士の球は接していない。したがって隙間が多く,球は空間の68%を占める。1つの球は8個の球と接し,次に近い球は6個である。

体心立方格子の球の詰まり方

 

単位格子の大きさと,粒子半径,体積比,密度

半径r,質量mの粒子を,互いに接するようにして単位格子に配置したときの,格子の辺の長さや粒子の占める体積,物質の密度との関係を示す。acは結晶格子の辺の長さである。

 

 

(1) 体心立方格子

粒子数=8×(頂点)1(中心) =2()

 

(4r)2=a2(a)2 より,a=4 r/

単位格子の体積=a3=64 r3/3

粒子1個の体積=4πr3/3

 

(2) 面心立方格子

粒子数=8×(頂点)(中心) =4()

 

(4 r)2=2a2 より,a=2r

 

(3) 六方最密構造

 

 

    =2()

  

六方最密構造のcの長さは,球4個がつくる正四面体の高さの2倍に等しく,acの比は,

 

 

 








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