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2節 研究の進め方

 

測定の基本

データの解析

安全への注意

 

測定の基本

測定とは,「ある量を,基準として用いる量と比較し,数値または符号を用いて表すこと。物理量の測定では基準として単位が用いられる」(『物理学辞典』(培風館))。この定義の中で,“数値を用いて”という部分,つまり定量的な測定について,基本的な知識を以下に述べることにする (定性的な測定もあり得ることを注意しておく。たとえば,鋼材をグラインダーにかけたときの火花の色や様子から,鋼材の材質を判定することが昔から行われてきた。これは火花試験法といって,パターン認識に基づいているが,やはり一種の測定であるといえる)

直接測定と間接測定:測定量と同種類の(同次元の)基準量を比較して行う測定を直接測定という。これに対し,測定量と一定の関係にある別の量q1q2q3,……などを(直接)測定し,それから計算で測定量を求めることを間接測定という。単振り子の周期から重力加速度を求める実験を例にすると,振り子の長さや周期の測定はいずれも直接測定であるが,重力加速度の測定は間接測定になる。

絶対測定と比較測定:間接測定において,q1q2q3,……が全て基本量(長さ,質量,時間など)であって,基本量の直接測定から導かれる場合を絶対測定という。これに対し,同種類の量と比較して行う測定を比較測定という。比較測定では,高感度の比較器を使うことにより,精密な測定が容易である。しかし,結果の正確さは基準の大きさの正確さに依存するという問題がある。たとえば,可逆振り子を使って重力加速度を精密に決定する絶対測定も,107ぐらいの正確さが要求されると,主要国でも滅多に行われないぐらい大仕事になる。しかし,スプリング式の重力計を使う比較測定ならば,相対精度106が容易に得られるので,重力異常の検出などに広く用いられている。

偏位法と零位法:測定器には,たとえば可動コイル型電流計のように,測定量(電流)の直接の結果として生じる指示値を示すものがある。この方式を偏位法といい,もっともふつうに使われているが一般に精度はそれほど高くない。これに対して,天秤とか電位差計のように,大きさを調整できる既知量(分銅とか標準電池とすべり抵抗器の組み合わせなど)を別に用意し,これを測定量と平衡させて測定量を求める方法があり,零位法とよばれる。敏感な検出器によってわずかな不平衡が検出できるようになっていれば,偏位法よりはるかに高い精度で測定ができる。しかし,平衡を実現するにはフィードバックの操作が必要で,時間や手間がかかるという欠点がある。サーボ機構を使って,この過程を自動的に行う技術が進歩し,現在の自記記録計などはどこかでこの機構を採用している。

このほか,実際の測定に当たっては,検出(センサー),変換,増幅,指示とか,システムの時間応答性の問題,記号/雑音比(S/N)の問題などが付随する。

 

データの解析

データは,それが何の目的で,何を測定したものであるかを明記し,表の形式で記録させる。結果が予想と異なることが早くわかれば,それだけ早めに新しい実験の方向を検討し,発生した問題に対処することができる。そのためにも,データをとったらなるべく早くグラフ化を行い,測定の有効性を確認するように指導する。時間がたつほど測定時の条件が忘れられたり,状況が変わったりして,実験の再現が困難になる。予期しない結果を生む実験こそ,本当に興味ある実験といえる。実験が何らかの原因で予想と違った結果になったときは,1つの条件だけを変え,他は同一にして実験する。複数の条件を同時に変えると,何が原因なのか判断できなくなる。データは客観的に扱い,目的とするデータだけを有意的に集めることがないように指導する。問題を明確にし,解決のために努力し,工夫を重ねることにより,創造力や問題解決能力を養うことができる。実験と並行して,表計算ソフトに読みとったデータを入力し,グラフ機能を用いてすみやかにグラフを作製したり,コンピュータを用いた自動計測により,リアルタイムにグラフを作製し,データの解析を行うのもよい。また,文献のデータや,別の実験データなどと比較することも必要である。手足や目だけでなく,絶えず頭を使って実験させる。また,データ収集にばかり気をとられ,実験方法や操作,装置の不備を見逃して,時間や労力を無駄にしてしまうことがあるので注意する。

<誤差の伝播> たとえば3辺がすべて異なる直方体の体積を求める場合,3辺の長さはいずれも同一の精度で測定すればよい。しかし2辺が等しいときは,等しい辺の長さをa,他の辺の長さをbとすると,体積はa2bとなり,aの誤差はbより大きく影響する。計算式の中に2乗を含むときはその量は2倍,3乗のときは3倍の精度が必要である。

Va2b とおき,VabにそれぞれΔVΔaΔbの誤差が含まれるすると,ΔaΔbは十分小さくΔaΔb(Δa)2は省略できる。したがって,

VΔV(aΔa)2(bΔb)(a22 aΔa)( bΔb)a2bb2 aΔaa2Δb

∴ ΔVb2 aΔaa2Δb

両辺を Va2bで割ると,

 

となり,2乗されるaは誤差が2倍になるため,2倍の精度で測定する必要が生じる。これを誤差の伝播という。

このように測定値は,計算式によってそれぞれの量をどの程度まで測定すればよいかが決まってくる。細い円筒状のガラス間内の体積を求めるような場合,筒の長さは定規で測っても,内径はノギスでより正確に測らなければならない。

<グラフの描き方> グラフを描くときには,軸の表す物理量とその単位を必ず明示する。直線のグラフを描くときは,直線の上下に同数の測定点がくるようにする。横軸と縦軸の目盛りは測定値の分布を確かめてからとり,グラフ全体が偏らないようにする。測定点は半径1mmの円で囲む等,引いた線で見えなくならないようにする。また,いつでも強引に原点を通るように直線を引いてはいけない。原点を通るはずのグラフは,通らないことの原因(たとえば記録タイマーでは,通過するテープが初速度をもつ場合が多い)を考えるべきである。全体的傾向から大きくはずれたデータは,測定条件やそのときの状況をよく検討し,グラフを描くときに省くこともある。yabcxyanのグラフでは,適宜片対数や両対数グラフ用紙を利用するとよい。表計算ソフトやグラフ専用ソフトを用いて,コンピュータでグラフを描かせると,素早い処理が可能になる。

 

安全への注意

これからの科学教育には,安全教育と環境教育が不可欠である。実験・観察を通じて安全の確保と環境の保全に心がける態度を養いたい。また,教師はもちろんのこと,生徒一人一人が諸規則を遵守し,互いに協力して未然の事放防止策を講ずることが必要である。事故は自分だけでなく,他の生徒にも災害を及ぼすことになる。つねに安全に対する十分な認識と責任感の育成,周到な準備が要求される。研究計画書にも事故防止策を盛り込ませ,必要に応じて安全教育や訓練を行う。

@ 実験での心構え 教師の指示をよく聞き,諸法規を守る等の,基本的な生活習慣を徹底させる。実験は興味深く楽しい活動であるが,気がゆるんで一歩誤れば,ささいな不注意から事故が生じる。待望の結果が出てくるときはわくわくするし,締め切りが迫ってくると精神的ゆとりがなくなる。しかし,どんなときでも実験は余裕をもって落ちついて行う。急いだりあせったりしては,正しい操作や観察ができなくなる。いつも真剣な態度で臨み,遊び半分の気持ちをもってはいけない。

A 実験の基本的態度を守る 実験中は計器の目盛りをにらんでいる者や記録者以外は,動きやすいように立って行い,また安全な身なり(長い髪は束ねる等)や服装(実験着等)を心がける。退室するときはガス栓やマッチの燃えかす,電源等を確認し,清掃・戸締まりに努める。機器や薬品が無造作に置かれたままだと,実験の妨げになったり,身体があたって破損したりすることがある。長期間の実験では,他の班や他のクラスの授業と機器を共有することがあるため,機器や薬品はていねいに扱い,使用後は決められた位置へ返却させる。

B 基本操作に習熟させる 自分の使う機器については説明書を熟読させ,基本操作に習熟させる。特に電流計は,測定レンジをよく確認し,回路に直列に入れた抵抗の値を十分大きくしてから,瞬間的に電流を流し,電流計の針が振り切れないことを確認して本実験にかかる。スライド抵抗に流す定格電流にも注意が必要。使用する機器の操作が複雑であったり,スイッチ類に順番が決まっているときは,操作手順を機器につけたり,ノートに操作チェック欄を設けさせるとよい。

C 危険な装置や薬品を使用するとき X線,高電圧発生用の誘導コイルや,引火の危険性がある薬品,強酸・強塩基類を用いた実験を行うときは,必ず教師が立ち会う。薬品に関しては,保存量の定期的チェックが必要である。高温物体やレーザー光線,紫外線を使用する際,あるいは飛沫の恐れがあるときは,保護めがねを着用させ,皮膚への付着や感電防止にはゴム手袋やアースを利用させる。

D 破損や修理の報告 装置や器具が破損したり,調整済みの装置に触れたときは,すみやかに教師へ報告させる。すぐ補充や修理,再調整が必要になることがある。他の班や他のクラスにも迷惑がかかる場合がある。ある程度見通しが立つものは生徒に修理させると,機器の内部の構造がわかり,次からの実験への意識変化が期待できる。

 

 

 

 

 

 








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