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1節 物質中の電子のエネルギー

 

導体・半導体の伝導機構

真性半導体

 

導体・半導体の伝導機構

まったく自由な電子は,任意の値のエネルギーをもつことができるが,原子に束縛された電子では,とびとびのエネルギー準位の値しかとることができない。結晶内の電子は,これら自由電子と束縛電子との混合状態と考えられる。したがって,結晶内での電子のエネルギー準位は,とびとびの値をとる量子数と,ある範囲でほとんど連続的な値をとるもう1つの量子数との2つで表すことができる。このようにして,あるnの値に対応するエネルギー準位は,図のように,ある幅をもったものとして表され,これをエネルギー帯(エネルギーバンド)といい,nのいろいろな値に相応しているエネルギー帯の集まりを帯構造という。

 

この場合,図にも示してあるように,異なるエネルギー帯は重なり合うということともある(図のn45)。また,異なるエネルギー帯の間に,エネルギー準位のない範囲があるとき,これを禁止帯という。なお,エネルギー帯の幅は,低い準位のエネルギ一帯ほど狭い。結晶内の電子は,パウリの排他律に従って,この最低のエネルギー帯から順次満たされていくが,電子を含む最高のエネルギー帯が,電子によりいっぱいに満たされるとき((a))と,途中までしか満たされていないとき((b))とがある。この電子を含む最高のエネルギー帯が電子で満たされているとき充満帯,途中までしか満たされてしないとき価電子帯ともいう。

 

絶縁体では充満帯の上に禁止帯があり,その上に電子の入っていない空のエネルギー帯(これを伝導帯という)がある。金属では,価電子帯の電子が,電場によりその属しているエネルギー帯内で,より高い順位に連続的に移動できる。絶縁体では,ある相当大きなエネルギーを得ない限り,充満帯の電子は伝導帯に移動できない。このようにして,絶縁体と金属の電気伝導についての違いが説明できる。

さて,半導体は,図の(a)の禁止帯の幅が狭いものであって,充満帯の電子が,低い温度では伝導帯に移るのに必要なエネルギーを得ることができなくても,温度が高くなると,伝導帯に移動できるようになり,電気の伝導性を示すようになる。このような物質では,温度がある程度以上に上がると,急に伝導帯に上がる電子の数が増加し,金属とは逆に,温度の上昇に伴い伝導性がよくなる。

実際に電流が流れる様式には,次の2つがある。すなわち,

@ 正イオンや共有結合結晶の1原子が余分に電子を得,その電子が次々と原子をわたり歩く場合(伝導帯に電子が発生する)

A 負イオンや共有結合結晶の1原子が1つの電子を失うとき,その所属電子を失った状態が,次々と原子間を移動していく場合(充満帯にホールが発生する)

なお,この@およびAのような電気移動は,それが起こる原因によって,3種類に区別されている。

その第1は,真性半導体とか,固有半導体とかいわれるもので,熱擾乱により,充満帯の電子が伝導帯に励起される((a))

2のものは,n型にドープされた半導体の場合で,不純物原子の電子が熱的に励起されて,次々と伝導帯に上がり@となる((b))

3の場合は,p型にドープされた半導体のときで,第2の場合とは反対に,不純物原子に充満帯の電子がトラップされてAのホールになる((c))

これらのことは,不純物によるばかりでなく,原子配列の不規則な部分,すちわち,格子欠陥のある場合にも起こる。

 

通常,イオン結晶に属している酸化銅Cu2Op型,酸化亜鉛ZnOn型とされ,共有結合結晶であるケイ素SiやゲルマニウムGeは,不純物原子の種類によって,p型,n型のいずれにもなるし,少し温度が高くなると,真性半導体となる。

 

真性半導体

半導体では,充満帯と伝導帯の間に禁止帯があっても,その幅が狭ければ,熱運動のエネルギーによって充満帯の中の電子のいくぶんかは禁止帯を越して上の伝導帯に入る。したがって,電気伝導を示すが,伝導帯に上がる電子の数が少ないから,固有抵抗の値は大きい。

III

IV

V

 

5B

6C(7eV)

7N

13Al

14Si(1.2eV)

15P

31Ga

32Ge(0.75eV)

33As

49In

50Sn(0eV)

51Sb

 

温度が高くなれば伝導帯に上がる電子の数が増すので抵抗は小さくなる。このように,伝導帯の電子がすべて下の充満帯から上がったものであるような半導体を真性半導体という。電子が伝導帯に上がると,充満帯にはそれと同数のホールができる。

共有結合結晶では,価電子はすべて結合に用いられていて動かないから,温度が低ければ一応絶縁体である。この禁止帯の幅は表に示してある。ダイヤモンドは禁止帯の幅がきわめて大きいので,かなり高い温度まで絶縁体であるが,SiGeはこの幅が割合に狭いので,室温でもごくわずかの伝導性があり,Geのほうが少し伝導率が大きい。Geでは6070℃以上,Siでは百数十℃以上で真性半導体の性質を示す。Snは伝導帯と充満帯とが重なり,禁止帯はなくなって良導体になる。したがって,半導体として利用される元素はSiGeである。これ以外にはGaPGaAs等の化合物の半導体も広く利用されている。

 

 

 

 

 








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