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第5節 状態変化と熱・仕事

 

定積変化

定圧変化

等温変化

断熱変化

気体の比熱とエネルギー等分配の法則

熱機関と不可逆変化と熱力学の第2法則の関係

 

定積変化

定積変化では,気体のする仕事W0になり,もっとも単純な変化で理解しやすいと思われる。そこで,教科書では,この変化から学習するようにした。

定積変化は,固体や液体に熱を加えた場合とほぼ同じで,加えた熱Qがすべて内部エネルギーの増加ΔUとなり,内部エネルギーが増加するから温度も上昇する

という単純な関係が成り立つ。

 

定圧変化

大気中で,ピストンが自由に動けるようにして気体を変化させると,圧力が大気圧とつり合って一定に保たれ,定圧変化となる。したがって,定圧変化は,実際にもよくある変化である。

体積を一定に保って加熱すると圧力が上昇してしまうので,加熱して定圧変化になるようにするには,気体の体積が増加するようにしなければならない。したがって,定圧変化では,加熱すると否応なく気体は外部に仕事Wをすることになる。気体には,気体の温度を上げるために必要なエネルギーΔUにプラスして,気体がする仕事Wの分も,熱量Qとして気体に加えなければならない。このことを生徒によく理解させたい。

 

等温変化

等温変化では,生徒は温度が変わらないということで,固体,液体と同様に,熱の出入りがないと単純に判断してしまい,気体の変化が理解できなくなることがある。この等温変化は,生徒の常識に反するので,逆に,温度の変化がないにもかかわらず,体積が膨張するときは気体が仕事をすることになり,その分,熱を加える必要があることを納得させて,熱力学の第1法則,エネルギー保存の法則をふまえた気体の変化のより深い理解に導きたい。

 

断熱変化

一般に,ある系の状態が変化するとき,外部との熱のやりとりを行わない場合,

この変化を断熱変化という。いま,1molの理想気体が準静的かつ断熱的に変化するとしよう。熱力学第1法則により

QΔUpΔV

ところで,断熱変化の場合,Q0であるから,

ΔU=−pΔV  ……………@

すなわち,ΔV0ならばΔU0。つまり,断熱圧縮するときは内部エネルギーは増大し,気体の温度は上昇する。

ところで,CvΔU/ΔTより,ΔUCvΔT  ……………A

@Aより,ΔT  ……………B

一方,理想気体の状態方程式は,pVRT  ……………C

であるから,Δ(pV)RΔT

∴ ΔpVpΔVRΔT  ……………D

BをDに代入して,ΔpVpΔV

∴ 

 

ところで,であるから,

  ∴ 

両辺を積分して,logp=−γlogV+定数

または,logpVγ=定数 すなわち,pVγ=一定  ……………E

CとEより,TVγ-1=一定  ……………F

一般に,2γ1であるから,断熱変化の場合,Eにより,p-V曲線は,等温変化の場合よりも急減少であることがわかる。

 

 

気体の比熱とエネルギー等分配の法則

気体のモル比熱の項で求めた定積モル比熱や定圧モル比熱の値は単原子分子の気体について成り立っても,2原子分子以上の多原子分子の気体については成り立っていない。その理由は,上の結果を得るための前提がもともと単原子分子の理想気体についてであったからで,それ以外のものについては次のようなエネルギーの等分配の法則に基づいて,内部エネルギーの式から求めなおす必要がある。

1つの力学系において,その配置を決めるのに必要な座標の数を自由度という。単原子分子の運動は,xyz3つの自由度を有するが,H2N2O2などの2原子分子の運動は,分子の重心の運動と原子を結ぶ軸に垂直な2つの軸のまわりの回転運動が考えられ(下図),その自由度は並進運動の3つの自由度に,回転の自由度2つが加わり,自由度は5となる。H2OCO2のような3原子分子の場合は,並進運動の3つの自由度に,3つの回転の自由度(2つの原子を結ぶ軸のまわりの回転も考慮に入れるので)をもつので,自由度の数は6となる。

 

ところで,気体分子1個の平均の運動エネルギーは,

 

と表されるが,であることを考えると,

 

と結論される。このことは,気体が熱平衡にあるとき,1つの分子のもつ並進運動のエネルギーが,分子の質量や種類に関係なく,並進運動の1自由度ごとに,平均として1/2kTずつ分配されていることを示している。分子の回転運動もやはり1つの自由度の運動であるから,回転の自由度に対しても,1/2kTの運動エネルギーが分配されることが期待できる。すなわち「気体が絶対温度Tで熱平衡にあるときは,それぞれの分子には,おのおのの自由度ごとに均等に,平均として1/2kTずつの運動エネルギーが分配される。」

さらに一般に,分子に位置エネルギーのある複雑な場合(たとえば液体とか固体の場合)でも,互いにほとんど独立なすべての自由度に対して,そのもつ運動エネルギーおよび位置エネルギーが等しく1/2kTであることが,統計力学の立場から導かれる。このことを,エネルギー等分配の法則という。

以上のことより,自由度fをもつ分子は,1/2fkTのエネルギーをもち,したがって,1molについて考えた内部エネルギーUは,

U

 

となる。それゆえに,定積モル比熱Cvは,

 

定圧モル比熱Cpは,

CpCvR

 

と表される。

単原子分子の気体については,f3の場合に相当し,この場合は実測値とほぼ一致することをみた。次にf5 とおくと,

 

 

となる。22などの2原子分子の気体は,室温においてだいたいこれらの値に近い。CO22などの3原子分子の気体ではf6と考えられ,多原子分子の気体ではもっと複雑になる。

 

熱機関と不可逆変化と熱力学の第2法則の関係

(熱エネルギー)を仕事(力学的エネルギー)に変換することが可能であることを述べたのが熱力学の第1法則である。また,具体的に熱を仕事に変える機械が熱機関である。しかし,熱力学の第1法則やエネルギー保存の法則は,エネルギーの総量が不変であることを述べているにすぎない。したがって,熱をすべて仕事に変換することができれば,空気や海水がもっている熱エネルギーを無料で有効に利用して仕事ができることになる。しかし,実際には,熱をすべて仕事に変換することは不可能であることがわかった。このことは,エネルギー保存の法則の一部である熱力学の第1法則とは別の,熱現象特有の基本的な原理であると考えられ,熱力学の第2法則として法則化された。

熱機関と不可逆変化と熱力学の第2法則には密接な関係がある。熱力学の第2法則の表現にはいろいろなものがあり,熱機関や不可逆変化と関係づけた表現がある。それらの表現は,一見無関係に見える。しかし,そのうちの1つが成り立つとすれば,残りを証明することができ,互いに同等であるといえる。

代表的なものとして,不可逆変化との関係を表した表現(A)と熱機関との関係を表した表現(B)について説明する。

(A) 熱はひとりでに高温部から低温部に伝わるが,その逆は起こらない。

(B) もらった熱をすべて仕事に変える熱機関は存在しない。

 この2つの表現が同等であることは,以下のように論証できる。

まず,(A)ならば(B)であることを証明するために,その対偶である(B)でないならば(A)でないということを論証しよう。

もし,もらった熱をすべて仕事に変える熱機関が存在したとすると,その熱機関を使ってある温度T1の所から熱をもらって仕事をして,それをすべて物体の運動エネルギーに変え,それをさらに摩擦熱に変えると,T1よりも高い温度を作り出すことも可能であるから,T1よりも高い温度T2の所へ熱を移動させることが可能になる。全体としてみれば,他に何の影響も残さず,低温の所から高温の所へ熱を移動することができたことになって(A)でないことになる。

次に,(B)ならば(A)であることを証明するために,その対偶である(A)でないならば(B)でないことを論証しよう。

もし,熱量Qがひとりでに低温部から高温部に移動するならば,その高温部に移動した熱量Qよりも多い熱量Q1を使って熱機関を動かし,低温部に熱量Qを放出し,その差に等しい仕事W(=Q1Q)をしたとすると,系全体としてみれば,熱機関は低温部に熱量を放出しなかったのと同じになり,実質的には高温部からもらった熱量のすべてを仕事に変えたことになる。したがって,(B)でないことになる。

 

 

 

 








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