トップ物理II 改訂版3部 原子・分子の世界>第1章 原子・分子の運動>2節 気体の状態方程式

2節 気体の状態方程式

 

気体の圧力

ボイルとボイルの法則

 シャルルとシャルルの法則

アボガドロの法則

ファン・デル・ワールスの状態方程式

van der Waalsの状態方程式

 

 

気体の圧力

気体は液体に比べてたいへん軽く,液体のように自由表面をつくらないで,容器全体に広がる。また,気体は液体と違って,力を加えると体積が小さくなる性質(圧縮性)が著しい。

このように,気体は液体と同じように,形の変化に対して抵抗を示さず,静止している限り物体との接触面に平行な力を及ぼさない。また,容器の壁に垂直な圧力を及ぼし,その内部の任意の面を通して,両側の気体が面に垂直に圧力を及ぼし合っている。気体の内部の1点における圧力は,これを受ける面の方向によらず同じ大きさである。

地球を取り巻く大気のように,その厚さが厚くなると気体の重さは無視できなくなる。地上における大気圧は,液体と同様,底面積が1cm2で,はるか上空まで立っている空気柱の重さである。ただし,この空気柱の密度は高さによって変わるから,液体のときのように,簡単には計算できない。

大気の圧力を初めて測定したのは,イタリアのトリチェリー(E.Torricelli1608-1647)である(1643)。トリチェリーが実験で示したように,大気圧は水銀柱の高さで測ることができる。

 

ボイルとボイルの法則

ボイル(R.Boyle1627-1691,イギリス)は,トリチェリーの真空やマグデブルグの半球で有名なゲーリッケの研究を聞いて空気について興味をもち,後に有名になったフックを助手にして排気ポンプの改良を手がけた。排気ポンプのはたらきをよりよく理解するには空気の圧力と体積の関係を知る必要があることに気づき,初め大気圧より大きな圧力にした場合について,その後大気圧より小さな圧力にした場合について,空気の体積はどのように変わるかを調べた。

最初1660年に『空気の弾性についての新しい実験』と題して発表したが,さらに詳しく実験をして2年後に公にされたのが,今日いうところのボイルの法則である。ボイルの法則は,今では空気にかぎらず気体一般についてほぼ成り立つことが知られている。すなわち,温度が一定のとき,容器に閉じ込めた気体の体積は圧力に反比例する,または,pV=一定 と表されるものである。気体の状態をマクロに表すときの量として,圧力と体積と温度とがあるが,そのうち“温度を一定に保っで’圧力と体積の関係をみているのである。温度一定の一定値はいくらでもよいが,一定値は温度に比例して大きくなる。

一方,容器内の気体の質量が異なるものの間の関係はどうなるか。質量が異なるということは気体の物質量,つまりmol数が異なるということで,273Kの場合,1mol2molの場合を図示すると,下のようになる。体積を一定にすると,2molのときの圧力は1molのときの圧力の2倍,圧力を一定にすると,2molのときの体積は1molのときの体積の2倍というようになっていることがわかる。

 

 シャルルとシャルルの法則

ボイルの研究では空気の温度は一定という条件があったが,それでは空気ならびに他の気体の温度を変えるとどうなるか。これについてゲイ・リュサック(J.J.Gay-Lussac1778-1850,フランス)は詳しい実験を行った。1気圧のもとで気体の体積と温度の関係を調べた結果,一般に気体は1℃ごとに0℃のときの体積の0.00375倍だけ膨張すること(いわゆる気体の体膨張係数)を発見した。ところが,同じ結論はすでに1787年にシャルル(J.A.C.Charles1746-1823,フランス)が発見していたということがわかって,この気体の体積と温度の関係は普通シャルルの法則とよばれている。参考までに,スウェーデンの物理学者セルシウス(A.Celsius)がセ氏温度目盛りを公表したのは1742年で,このころにはようやく正確な温度測定ができるようになっていたと思われる。

シャルルは,フランス革命までは私設の立派な研究室をもって,十分な装置を使って実験しながら講義をしたので,大変評判がよかった。革命後はやむなく全設備を政府に寄付し,代わりにルーブルの中に研究の場を借りて,引き続いて実験物理の講義をしたが,他に並ぶものがなかったので,これまた評判であったといわれる。

ところで,1783年,彼は当時発見されて間もない水素を使って気球をつくり,パリに集まった数十万の見物人の前で彼自らも気球に乗って上昇した。その4年後にシャルルの法則は発見されたのである。

 

アボガドロの法則

ボイル・シャルルの法則から,理想気体の状態方程式にいたるときには,このアボガドロの法則が必要になる。

アボガドロの法則とは『同温,同圧のもとでは,すべての気体の同体積の中には同数の分子が含まれる』というものである。分子には,大きな分子や小さな分子,重い分子や軽い分子があり,その物理的・化学的性質は必ずしも同じではない。にもかかわらず,アボガドロの法則は,気体ならば,どんな気体でも種類によらずなりたつというところにその重要さがある。もっとも,実在の気体では多少この法則からずれるが,あらゆる気体でこの法則がほぼ成り立つということは,気体は液体や固体に比べて単純な関係が成り立つことを示唆するものである。

アボガドロの法則によれば,同温,同圧のもとでは,同体積の中には同数の分子が存在するのだから,同温,同圧のもとでは,気体の体積は分子数に比例することになる。分子数はモル数に比例するから,結局nmol〕の気体の体積は1molの場合のn倍になることになり,ボイル・シャルルの法則から理想気体の状態方程式が得られることになる。

 

ファン・デル・ワールスの状態方程式

実在の気体は,低温で圧力が高くなって,分子の密度が大きくなると,液体に近くなり,理想気体の状態方程式からずれてくる。実在の気体の状態をかなりよく説明するものが,以下に述べるファン・デル・ワールスの状態方程式である。

1877年,ファン・デル・ワールス(van der Waals)は,気体分子運動論の立場から,1モルの理想気体の状態方程式pVnRTから出発して,pVとに次に述べるような補正をつけ加えた。

分子論的に理想気体と実在気体とのずれを考えてみると,理想気体では分子の体積は無視しているが,実在気体ではそれを無視できないことがまず挙げられる。次に,理想気体では分子間力を無視しているが,ジュール・トムソン効果(高圧の気体を膨張させると分子間力に対して仕事をするため,温度が下がること)などから,分子間力が実在気体では無視できないことが挙げられる。

まず,実在気体の分子は,ある程度の大きさをもつから,分子と器壁との衝突,分子どうしの衝突は,分子の中心が接触しないうちに起こる。したがって,気体分子が自由に飛び回れる体積が容器の体積Vよりも減少するので,理想気体の状態方程式の体積VVb(b0で各気体に特有な定数)と置き換えることが必要になると考えられる。つまり,Vbの体積の空間内を,大きさのない理想気体分子が自由に飛び回っていると考えてもよい。

また,分子間力の影響は,壁に接した気体分子は,分子相互の引力のために,多少,内の方へ引かれるというかたちで現れる。そのため,実際に壁にかかる圧力は,理想気体の圧力よりも小さくなる。内側に引かれる力の大きさは引く方の分子の密度に比例する。一方,壁に接する分子の単位体積あたりの分子数も密度に比例するから,結局,壁の単位面積あたりに衝突する分子が内側に引かれる力の合力は密度の2乗に比例することになる。ところで,気体内部の分子は,周りの分子から一様に引かれるから分子間力がないのと同じとなり,それは壁に及ぼす圧力pよりも大きい。その差は,上述したことから密度の2乗に比例し,一定質量の気体の場合は体積の2乗に反比例するから,これを (a0で,各気体に特有な定数)とおけば,pVRTの理想気体状態方程式の圧力pの所に,実在気体分子の壁に及ぼす圧力をpとすると,pを代入しなければならない。

 

以上のことから,1モルの気体の状態方程式として

 

が得られる。

このファン・デル・ワールスの状態方程式は,完全には実在気体の実験結果と一致しないが,本質的には現象をよく説明してくれる。すなわち,上式を書き換えると,

 

となり,Vに関して3次式となる。この式を満たすVの値は一般に3つあるが,その3つとも実数であるか,その1つだけが実数で他は虚数であるかのいずれかである。Tを一定にしておいて,pに対するVの値をグラフに描くと,Tの値が小さい場合,図のような曲線Iが得られる。すなわち,pの値のある範囲で,V3つの実数解をもつ。Tの値を大きくしていくと,曲線はp軸に沿って上のほうに上がっていき,たとえば曲線IIのようになる。ここでは,V3つの値が曲線Iの場合より接近している。Tがある値Tcに達すると,p-V曲線がIIIのようになり,Vの値が全部一致してしまう(K)Tをさらに大きくしていくと,実数解はただ1つになってしまう(曲線IV)

実際の気体の曲線は,途中で図の水平の点線(液化の起こる部分)のように変化し,フン・デル・ワールスのS字を横にしたような曲線とは異なる(1節図1)。しかし,S字を横にしたような曲線は無意味ではなく,BEの部分とCGの部分は,それぞれ,実際に起こり得る不安定状態の過飽和蒸気(気体の一部が液化して液滴が発生してもよい条件であるにもかかわらず,すべてが気体のままで液化しない不安定な状態)と過熱液体(液体が沸騰してもよい条件であるにもかかわらず沸騰しない不安定な状態)とに対応している。

図の曲線IIIは,臨界等温曲線に相当すると考えられるので,これから,臨界温度Tc,臨界圧力pc,臨界体積Vcを,定数abで表すことができ,

 

となる。この関係を利用して,TcpcVcの観測データを用いてabを決めることができる。そうして決めたabをファン・デル・ワールスの式に代入すると,臨界点付近の気体の状態を比較的よく表すことができる。

臨界温度と臨界圧力

物質

臨界温度〔℃〕

臨界圧力〔気圧〕

374.1

218.5

アンモニア

132.4

112.0

二酸化炭素

31.1

73.0

酸素

118.8

49.7

空気

140.7

37.2

窒素

147.1

33.5

水素

239.9

12.80

ヘリウム

267.9

2.26

(「理科年表 平成20(丸善)」より)

 

van der Waalsの状態方程式

1節図1における凝縮点B付近の気体の状態は,理想気体の状態方程式から大きく外れる。下表は,凝縮点Bの近くのB'点とA点とにおける気体1molの体積と圧力を示している。A点のモル体積は0.20L/mol,その圧力の実測値は 53atmである。この体積0.20L/molに対して,理想気体の状態方程式は圧力121atmを与える。これは実測値のおよそ2.3倍にもなり,二酸化炭素の実際の状態A点は,理想気体の状態とは大きくかけ離れていることがわかる。また,同じ体積0.20L/molに対して,ファン・デル・ワールスの状態方程式は,圧力64atm,すなわち実測値のおよそ1.2倍の値を与える。B'(0.16L/mol)についても同様な計算を行ってみると,ファン・デル・ワールスの状態方程式に従う状態は,二酸化炭素の実際の状態に近いことがわかる。

 

t=21.5

 

 '

A点

モル体積

  0.16 L/mol

     0.20 L/mol


実測値 

   59 atm

        53 atm

理想気体

   151 atm 

      121 atm

ファン・デル ・ワールス

 66 atm

        64 atm

 

 

ここで,二酸化炭素についてのファン・デル・ワールスの状態方程式は,その定数abとを a3.59 L 2atm/mol2b0.0427 L /molに選んだ次の式を用いた。

 

さらに,31.1℃の等温変化における二酸化炭素(気体)の体積Vと圧力Pとの関係を,下表と下図に示した。圧力の測定値Pは下図のグラフから読みとった数値であり,圧力の計算値Pファンは上式のファン・デル・ワールスの状態方程式で計算した値である。計算値Pファンを測定値Pと比べてみるとわかるように,凝縮点付近の気体の等温変化は,大まかなところファン・デル・ワールスの状態方程式で説明できる。

 

t31.1

 

 

 

 

 








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