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5節 電気振動と電磁波

 

電気振動

共振回路の実験

電束電流

電磁波

電磁波の伝わる速さ

 へルツの実験

電磁波の種類と性質

 

 

電気振動

抵抗のない電気振動回路では,電圧の関係から,

 

コンデンサーから流れ出る電流iを正とすると,だから,これを代入して,

 

 

(1)式は,振動を表す微分方程式であり Q=Q0sin(ωtα) とおくと,

であるから,(1)式に代入して,

 

 

さて,電気振動をエネルギーの立場から考えると,コンデンサーに蓄えられるエネルギーは,

 

コイルに蓄えられるエネルギーは,

 

また,であることから,が成り立つ。すなわち,電気振動という現象は,コンデンサーの静電エネルギーと,自己誘導によるコイルの電磁エネルギーとの交互変換の現象ということができる。これは,水平方向で振動するばね振り子が,運動エネルギーと弾性力による位置エネルギーとの交互変換であるのと類似している。すなわち,ECELに対応する。

 

共振回路の実験

教科書p.17426のように,RLC直列回路に加える交流の周波数fを変化させて電流の振幅を測定する実験では低周波発信器を用いる。このとき,周波数fを変化させると低周波発信器の出力電圧が変化することが少なくない。データをとるときに注意を要する。また,オシロスコープではなく,交流電圧計や交流電流計を用いる場合,その内部インピーダンスの影響に注意する必要がある。さらに,交流の周波数が高くなると,交流電圧計や交流電流計では正しい値を示さなくなることがあるので注意を要する。オシロスコープでは内部のインピーダンスが大きく,また,よほど周波数が大きくならない限り正確な電圧が表示されるので,そのような注意は必要ない。

RLC直列回路では,インピーダンスZであるから,

 

ωL1/ωCとなるときZが最小となり,VeZIeより,電流Ieが最大となる。

すなわち,共振周波数f0は,ωf0より,f0となる。

なお,直列共振の状態になると,コイルやコンデンサーにかかる電圧は電源の電圧をはるかに超える電圧になることが多く,特にコンデンサーの耐電圧に注意を要する。電源電圧よりも大きな電圧が発生することに生徒は驚く。導入実験に用いるのも悪くない。このことは以下のようにして分かる。インピーダンスZの式の両辺に電流の最大値I0を掛けると,電源の電圧V0を表す次の式が得られる。

すなわち,コイルの電圧の最大値VL0とコンデンサーの電圧の最大値VC0は,弱めあう関係にあるのである。直列回路では電流Iは共通に流れるが,その電流に対してコイルの電圧は位相が90°進み,コンデンサーの電圧は90°遅れる。すなわち,コイルとコンデンサーの電圧は位相が180°ずれているのである。よって,コイルの電圧が正で最大()の瞬間,コンデンサーの電圧は負で絶対値が最大()となっている。共振状態ではωL1/ωCだから,I0ωLI0C,すなわち,VL0VC0で,コイルの電圧とコンデンサーの電圧は各瞬間で完全に打ち消しあうことになり,コイルとコンデンサーの電圧の和は完全に0となっている。このとき,電源の電圧の最大値V0V0VR0となり抵抗の電圧の最大値VR0に等しくなる。共振のときの電流の最大値I0は I0V0/ZV0/R となり,コイルやコンデンサーの電圧の最大値は,

 

となるので,Rが小さいときはコイルやコンデンサーの電圧の最大値VL0VC0が電源の電圧の最大値V0りも大きくなるのである。

 

電束電流

図のような回路があって,導線の矢印の向きに電流iが流れているとしよう。電流は周囲に磁界をつくる。そこで,閉じた経路C1についてアンペールの法則を適用すれば,

 

i≠0だから,C1中の点PにおいてHS(P)≠0である。次に,Pを含むもう1つの閉じた経路C2を図のように選んでアンペールの法則を適用する。C2で囲まれた中には電流はないから,

 

である。C2Pを含む水平成分の長さをΔlとし,Q点での磁界の成分を互HS(Q)とする。コンデンサーの極板間距離は十分小さく,導線は十分長い直線状であるとすれば,C2の鉛直方向の辺での磁界の成分HS0であろうから,上式は

HS(P)ΔlHS(Q)Δl0    HS(Q)HS(P)≠0

となる。そこでQを通る第3の閉じた経路C3を考え,アンペールの法則を適用する。

 

HS(Q)≠0であるから,和の左辺は0でなく,したがってid≠0となる。ただしidは曲線C3の囲む面を通過する電流があると仮定した場合の値である。このidはコンデンサーの極板間の電流であるから,明らかに電子の流れによるものではない。

そこで,このidの正体を考えよう。コンデンサーの極板間電界はで与えられる。一方,コンデンサーに流れた電流をiとすれば,

 

であるから,極板間の空間では電界の時間的変化によってidの電流が流れているものとみなせば,導線を流れる伝導電流iと,極板間を流れる電流idとが連続することになり,またidによって周囲に磁界がつくられることになって,すべては都合よく運ぶことになる。このように,電界の時間的変化が原因になって生じると考えた電流を電束電流または変位電流とよぶ

 

 

電磁波

マクスウェルによって行われた電束電流idの導入は,当初は純粋に数学的なものであった。先に,電磁誘導の現象において,変化する磁界が空間に電界を誘導することを学んだ。そして今また,電束電流の導入によって,電界の時間的変化が磁界を生み出すことを知った。すなわち,電荷や伝導電流の分布のない自由空間においても,電界や磁界が互いに時間的に変化すれば,それらは空間を伝わって存在することができる。これが電磁波にほかならない。

電荷分布や伝導電流分布のない自由空間でのマクスウェルの方程式は,

 

 

である。の関係を@にほどこし,

およびB式を代入する。A式についても同様

の演算をすると,

 

の波動方程式が得られる。ただし,は,真空中を

伝わる電磁波の速さである。

この計算の途中で,もし電束電流がないものとすれば,波動方程式は出てこない。すなわち,電束電流の存在は電磁波にとって本質的なものであることがわかる。

電磁波は真空中を伝搬する。古くに考えられたエーテルは不必要なものであることがわかった。だが,このことの認識の過程は苦難に満ちたものであった。

 

電磁波の伝わる速さ

いま,図のように,z軸の正の向きに伝わる電磁波があるとする。電界の方向をx軸,磁界の方向をy軸とする。図において,場所AとBにおける電界と磁界の空間的変化をΔEΔHとする。

E(B)E(A)ΔE (>0)

H(B)H(A)ΔH (>0)

次に,微小な時間Δtだけ経過したとき,A点における電界と磁界の時間的変化は,図より近似的に,それぞれ−ΔE,−ΔHであることがわかる(時刻ttΔtにおける平面電磁波の波形の微小部分は平行とみなせる)

E(tΔt)E(t)=−ΔE,  H(tΔt)H(t)=−ΔH

そこで,電界に垂直な閉じた経路ACDBA(から見て反時計回り)について考える。長方形の幅をΔz(>0),長さを単位長にとる。長方形の部分の電界の時間的変化によって生じる電束電流は,

 

である。したがって,その周りにできる磁界を,経路に沿った成分をHSとすれば,

Σ(HSΔs)H(A)×ACH(B)×DB{H(A)H(B)}×1=−ΔH

だから,アンペールの法則により,

 

次に経路ABC´D´A(から見て反時計回り)について,電磁誘導の法則を適用する。回路に発生する誘導起電力Vは,

 

で与えられ,SΔz×1VΣESΔs だから,

VE(B)×BC´E(A)×D´AΔE×1

 

@Aの両辺をΔtで割って,

 

よって,

 

ここで,は電磁波の伝わる速さであるから,

 

 

 へルツの実験

イギリス,エディンバラ生まれの物理学著マクスウェルは,33才の1864年頃ファラデーの電磁場に対する考察を数理的にまとめた4つの電磁気学の基礎方程式を確立した。彼は数学的理論に堪能な人であったから,この方程式に簡単な操作を加えると電界と磁界それぞれについての波動の式が得られることに気がついた。このように波動の式が得られるということは,空間を波動となって伝わる電界と磁界の波が存在し得ることを示す。これが,彼が電磁波の存在を予言したといわれるところのものである。この波動の式の理論的研究から,電界と磁界の波は互いに直交する平面内の振動であり,波の進行方向はの方向となるから横波であり,進行速度はであること,ならびに,この速度は光の速度cに等しいことがわかった。こうした経過から,電磁波と光は本質的に同じものではないかとの議論が始まることとなった。

この電磁波の存在を実験的に確認したのがハンブルグ生れで30才のへルツであった。これについての論文は18871890年に発表されており,どの論文をもって電磁波の存在が確認されたかについては,研究者によって見解の相違がある。

初め,彼は図のような装置で火花間隙に高い電圧をかけて放電を起こさせることによって電磁波を発生させた。左右の端にある四角い導体板は電圧が上昇するにしたがって,それぞれ正負に帯電し火花間隙間には大きな電圧がかかる。これは電気容量Cの存在を意味する。十分高電圧になって放電が始まると,火花放電の状態ではその部分の空気の電気抵抗は十分小さいので大きな電流が瞬間的に流れ,このとき電流の回りには磁束線が生じる。これは。この短い直線状の回路にもインダクタンスLがあることを意味し,このLCで決まる振動数の電気振動が起こり,電磁波が発生する。しかし,蓄えられた正負の電荷は放電により速やかに消失するので,この電気振動は1回の放電の持続時間だけで終わる。次に再び充電が始まり同じことがくり返される。

ヘルツは,マクスウェルの予言から,この電磁波は光の性質をもつものと期待し,放物面鏡で反射させて平行光線を作り,反射,屈折などの実験を試みたが,初期の実験では波長が長すぎて(45m)成功しなかったようである。そこで,彼は装置の寸法を小さくして,直進,反射(2m四角の金属板を用いて),屈折(辺の長さ1.2m,頂角30度のピッチでできたプリズムによる),偏り(縦横2m8角形枠に銅線を3cm間隔で多数平行に張ったものを用いて)などを確かめた。この場合は,電磁波の波長は最初の実験の10分の1以下であったと述べられている。このような一連の実験により,電磁波の存在が確認されたということができる。

 

電磁波の種類と性質

 








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