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1節 電磁誘導の法則

 

 電磁誘導に関するファラデー以前の研究

磁束と磁束密度

 ファラデーの電磁誘導の発見(1)

 ファラデーの電磁誘導の発見(2)

レンツの法則

電磁誘導のいろいろ

誘導電界

べータトロン

 

 

 電磁誘導に関するファラデー以前の研究

電流が磁石に力を及ぼすというエルステッド(Oersted)の発見(1820)は,たちまち科学者のあいだに大きな興奮を呼び起こし,多くの人々がこの現象の研究にとりかかった。

アンペール(Ampère)は,次のことを見いだした。電流の流れている環状の導線は,地磁気による力を受けて,そのコイル面を磁気子午面と垂直にしようとする。このように閉じた回路が磁石と同じように振る舞うことから,アンペールは,磁石の中にはその全体にわたる大きな環状電流が存在しているのではないかと考えた。

フレネル(A.Fresnel)は,磁石を微小な円電流の集まりと考えると,経験事実に合致することを示唆した。こうして,アンペールの分子電流説が生まれた。

1820年の秋には,アラゴー(Argo)とデーヴィー(Davy)が,それぞれ独立に電流の磁化作用を発見した。すなわち,電流を流したコイルの中に鉄の棒を置くと,それが磁石に変わるという現象である。アンペールの分子電流説によると,この現象は,コイルの中の電流が鉄の中に分子電流を引き起こすことを示している。そうだとすれば,磁石の中の分子電流が磁石を取り巻くコイルに電流を引き起こすことを期待できる。このような推測に基づいて,アンペールとフレネルはいくつかの実験を行った(1820)。そのうちのあるものでは実際に誘導電流を生じたのである。しかし,アンペールもフレネルも,実験中に見られたことを正しく解釈し,その現象が生じるための条件を確定する方向に進むことはできなかった。彼らは,静止した磁石または定常的な電流による誘導電流の発生を期待していたからである。

また,1820年には,ドイツのシュヴァイガー(Schweigger)とポッゲンドルフ(Poggendorff)がエルステッドの発見を利用した電流検出器をつくった。それは,導線を何重かに巻いたリングの中央に小さな磁針を置いただけのものであるが,その後かなり長くMultiplikatorとよばれて重宝された。

1824年に,アラゴーは,磁石をつるしてその下で銅板を回転させたところ,磁石がそれについて回ることを見いだした。逆に,磁石を回すと銅板がそれにつれて回転した。また,この実験に関連して,アラゴーは,金属の上部では磁針の振動が著しく早く減衰することを発見した。これらの現象は全く説明がつけられず,その当時の人々にとっては不思議な異常な現象と思われた。

参考文献:広重徹『物理学史II』(培風館)

.ダンネマン(安田徳太郎訳)『大自然科学史6』(三省堂)

 

磁束と磁束密度

ファラデーの電磁誘導の法則には,普通,次のようにマイナスの符号がついている。

 

このマイナス符号は以下のように考えられる。

コイルの面積Sをベクトルと考え,面に垂直な向きに面積ベクトルの向きをとる。そうすると,磁束Φは磁束密度とコイルの面積との内積となる。すなわち,とのなす角をθとすれば,

ΦBScosθ

このとき,磁束密度が場所によって異なる場合は面全体で積分する。

ここで,コイルの面に垂直な向きは2通りありうるが,右手系でコイルの面の向きを定める。すなわち,まずコイルに沿って回転するときの正の向きをどちら向きかに定め,その向きに回転したときに右ねじが進む向きをコイルの面の向きと定める。コイルを流れる電流や起電力の向きも,コイルに沿って正の回転の向きなら正,逆向きなら負と定める。

磁束密度と面積のなす角θ90°未満ならΦは正,90°を越えたら負となる。このように符号をとれば,レンツの法則より,ファラデーの電磁誘導の法則にはマイナスの符号がつくことになる。

しかし,高校生に面積の向きを考えさせるのには,多少,無理がある。教科書では「コイルの面に立てた右ねじの進む向きの磁束を正とし,右ねじを回す向きの起電力を正とする」という表現にしてある。

この定義を高校生に記憶させるのも悪くないが,ファラデーの電磁誘導の式は絶対値で考えさせ,誘導起電力の向きはレンツの法則で考えさせるほうが分かりやすい場合もある。

 

 ファラデーの電磁誘導の発見(1)

1821年に,ファラデーは,『電磁気の歴史的概観』を書いた。その準備として,彼は調べている本の筆者達が述べている実験を注意深く繰り返した。

18241228日に,ファラデーは第1の着想の実験を行った。それは磁石に針金を巻くとそこに電流が誘導されることを期待したものであったが,成功しなかった。その理由は磁石が弱く,また,検流器が鋭敏ではないからであり,より改良する必要があるように思われた。ファラデーは検流器の改良も試みた。

18251128日,ファラデーは第2の着想の実験を行った。帯電体が導体に静電気を誘導するように,電流の流れている針金に隣接してもう1本の針金を置き検流器につなげば,この針金に電流が誘導されるのではないかということであったが,もちろん実験は成功しなかった。誘導電流を初めて発見したのは1831829日であった。1つの鉄の環に2組のコイルを巻き,一方を電池につなぎ,他方を検流器につないで,電流が得られないかを試みた。その結果,電池と接続するとき,あるいは,接続を切るときに,検流器の磁針が瞬間的に振れることを見いだしたのである。ファラデーはこの誘導電流が,1次コイルの電流が定常的な間は生じないことを確認した。また,コイルに磁石を近づけたり離したりするとコイルに電流が流れるのを実験したのは,同年107日であった。

電磁誘導の現象の特徴を明らかにするために,ファラデーは装置の組立をいろいろ変えて実験を行った。それらの実験は,1839年にロンドンで出版された

Experimental Researches in Electricity』の中で説明されている。図は,それらの実験の中のいくつかを示している。

当時謎とされていたアラゴーの実験(1824)を,ファラデーは銅板に誘導された電流と磁石の間の力によって,完全に説明することができた。磁石の近くで回転する銅板に誘導電流が生じることを,ファラデーは図(e)の実験で確かめた。図の銅板の直径は約30.5cm,厚さは約0.5cmで,円板の縁とその軸(真ちゅう製)ヘは摩擦接触具を装置し,これと検流器をつないだ。円板を一定の速さで回転させると検流器の磁針は一定の振れを示し,回転を速めると磁針の振れも大きくなった。また,回転を逆にすると,磁針の振れも逆になった。ここで初めて,瞬間的でない持続的な誘導電流を得ることができたのである。

参考文献:『バークレー物理学コース2 電磁気(下)』(丸善)

F.ダンネマン(安田徳太郎訳)『大自然科学史7』(三省堂)

 

 

 ファラデーの電磁誘導の発見(2)

ファラデーは誘導電流の法則を決定しようととりかかり,この目的のために,磁場の状態を表す新しい方法を案出した。学者たちは,紙の上に鉄くずをばらまき,下から磁石を当てて,鉄くずが示す曲線を観察することで磁力を表す方法に長い間慣れていた。ファラデーは磁力線(lines of magnetic force),つまり,各点における方向が磁気強度(magnetic intensity)の方向と一致する曲線,という考えを案出した。鉄くずが紙の上で示す曲線は,紙の上から離れないという条件のもとで可能なかぎり,この曲線と類似する。

ファラデーは,これらの磁力線によって全空間が満たされていると考えた。すべての力線は閉じた曲線であり,その経路のどこかでそれが属する磁石を通過する。したがって,空間に小さな閉曲線をとったとすると,この曲線と交差する力線は自分自身につながる管状の面を形成するはずである。このような面は力管(tube of force)とよばれる。力管から,磁気強度の方向に関する情報だけではなく,その大きさに関する情報も得られる。というのは,磁気強度の大きさと力管の断面積の積は力管のいたるところで一定だからである。この結果にもとづいてファラデーは,全空間を力管(この積が定まった値をもつような)によって区分する考えをいだいた。簡単のために,これらの管のおのおのを「単位力管」(unit line of force)とよぶことにしよう。そうすると,場の強さは単位力線が離散しているか集中しているかによって示されるので,任意の点で力線の方向に垂直に置かれた単位面積の中を通過する力線の数で,その点における磁場の強さを測定できるのである。

ファラデーは,次のような場合に回路中に電流が誘導されることに気づいた。すなわち回路に隣接する電流の強さが変化した場合,あるいは磁石を回路のそばにもってくる場合,あるいは他の電流か磁石がそばにあるときに回路自身を動かす場合である。すべての場合に,誘導は回路とその付近にある磁力線の相対運動によるということが最初からわかった(18311124日,英国王立協会における発表)。この依存性の厳密な性質が,その後長い間続いた実験の主題であった。

1832年にファラデーは,同じ条件のもとで異なった針金に誘導される電流は,その針金の伝導度に比例することを発見した。すなわち,誘導とはある起電力がつくりだされることであって,それは針金の性質にはよらないで,針金と磁気曲線の交わり方による,ということがわかったのである。この起電力は,針金が閉じている(したがって電流が流れる)場合でも,針金が閉じていない場合でも生成されるのである。

問題は,起電力がどのように針金と磁力線の相対運動に依存するかということである。ファラデー自身の言葉を借りると,この間に対する答えはこうである。「針金が磁力線をある方向に横切ると,針金はそれが横切った力線で表される力の量を積算する」。そこで「回路の中で動かされる電気量は,横切った力線の数に等しいのである」。事実,誘導された起電力は,針金が単位時間あたりに横切った単位磁力線の数に比例する。

これは電磁誘導の基本原理である。ファラデーは疑いもなくこの発見の全栄誉を受ける資格がある。しかし,この時期における電気理論の進歩を正しく理解するためには,ファラデーの原理に含まれているすべての概念が同時代の人々に明らかになり,なじみ深いものとなるのには多くの年月を要したということを銘記しておく必要がある。さらにその間,他の観点から誘導電流の法則を定式化する試みがなされ,成功した。彼と同時代のノイマン(F.Neumann1798-1895)は,遠隔作用の観点から,アンペールの解析の助けを借りて,電磁誘導の法則を演繹的に導いた。ノイマンはあるポテンシャル関数を用いて誘導電流の解析的な取り扱いに成功した。このポテンシャル関数は,ファラデーの近接作用の立場で解釈すれば,閉回路の中を通り抜ける磁力線の数とその閉回路を流れる電流の積を表す。

また1834年には,レンツ(E.Lenz1804-1865)によって,誘導電流の向きを与える法則が発見された。それは次のようにいうことができる。「導体の閉回路が磁界中を動くときに誘導される電流は,その電流に作用する力が回路の運動を妨げる向きに流れる。」

参考文献:EDMUNDT T.WHITTAKER(霜田光一,近藤都登訳)

『エーテルと電気の歴史』上(講談社)

 

レンツの法則

1834年にレンツが発見した法則は「誘導を起こす電流または磁石が被誘導電流に及ぼす電気力学的作用は,誘導が相対運動によって起こされた場合には,つねにこの運動を阻止するようにはたらく」というものである。が,電流が増減したり磁極の強さが増減した場合は,それを距離の増減,すなわち,相対運動に置き換えて考えることができる。したがって,次のような表現に言い換えることができる。「誘導電流は磁束の変化を妨げる向きに発生する。」

 

電磁誘導のいろいろ

固定したコイルのそばで磁石を動かすときにコイルに誘導電流が流れる。磁石を固定してコイルを動かしてもコイルに誘導電流が流れる。磁石の代わりに電流を流したコイル(電磁石)を用いても同様の結果が得られる。すなわち,コイルと磁界との間で相対的な動きがあれば,電磁誘導が起こる。

また,2つのコイルを固定しておき,一方のコイル(1次コイル)を流れる電流を増加させて磁界を強くしても,他方のコイル(2次コイル)に誘導電流が流れる(相互誘導)

コイルが1個だけの場合で,そのコイルを流れる電流が増減してもそのコイル自身に電磁誘導が起こる。これが自己誘導である。

磁界の強さが一定でも,コの字形の回路に導体棒を乗せ,導体棒を動かしてコイルの面積を増減させても電磁誘導が起こる。これは,磁束の時間変化でも説明できるが,ローレンツ力でも説明することができる。

以上の電磁誘導は,結局,コイルを貫く磁束の時間変化で表すことができる。

しかし,磁界中で円盤を回転させたとき,円盤の中心と周縁部との間に起電力が発生することは,磁束の時間変化では説明できない。これは,ローレンツ力によって説明できる。

電磁誘導を考えるときは座標系に注意する必要がある。コの字型の回路に乗せた導体棒に誘導起電力が発生する現象は,教科書のp.141にあるように,コの字形の回路がなくても,導体棒が磁界を横切って運動するだけで導体棒に起電力vBlが発生する。導体棒中の電荷が磁界からローレンツ力を受け,導体棒が帯電するためである。これは,地上(磁界に対して静止した座標系)から見た説明になる。このとき,導体棒の中には正の電荷から負の電荷に向かう静電界ができている。

しかし,導体棒とともに動く座標系から見ると,導体棒は静止しているから磁界からのローレンツ力ははたらかない。しかし,現実には電荷の移動が起こって帯電する。このときは,観測者に対して磁界が移動しているので,空間全体に電界ができたと考えるのである。電荷は,その電界から力を受け,導体棒が帯電したのである。このような電界は誘導電界の一種である。この誘導電界は,地上から見たときの静電界とは逆向きである。

なお,導体棒の速さvがあまり大きくないときは,動く導体棒に固定した座標系からみたときの誘導起電力の大きさもvBlと考えてよい。

参考文献:中山正敏著,物理学OnePoint26,「電磁誘導」,共立出版,1984

 

誘導電界

電磁誘導の法則は,ある閉じた回路を貫く磁束が時間的に変化するとき,この回路に起電力が生じ,電流が流れるというものである。このとき,この閉じた回路を銅線で,あるいはまた,同じ太さと長さのニクロム線でつくって実験してみると低抗の大きいニクロム線の回路はそれに相当して電流が少ない。このことは早くから実験で確かめられていた。つまり,起電力が生じることが根本であって,その結果オームの法則に支配される電流が流れるのである。

一口にコイルを貫く磁束が時間的に変化するときといったが,このことが起こるのは,次の(a)(b)両図のような場合が考えられる。

 

 

(a)図の場合は,棒磁石の極が1巻きのコイルに近づく場合であり,磁束線はこのコイルを横切る。これに対して,(b)図の場合は1巻きのコイルの真中を十分大きい環状ソレノイドコイルが通っている。このソレノイドコイルは,その外部には磁束は存在しないから,ソレノイドコイルを流れる電流が変化したとき磁束は変化するが,この変化はソレノイドコイルの中だけで起こり,磁束線が1巻きのコイルを切ることはない。この事情は理想的な変圧器を考えても同様である。理想的な変圧器では磁束は鉄心の中を通るだけであるから,2次コイルの場所を磁束線が通り過ぎるということはない。それでも磁束の変化に対応して誘導起電力は発生する。

(a)図の場合は,起電力が現れることは1巻きのコイルと磁束線との相対運動を考えてローレンツ力から議論しても説明できるが,(b)図の場合はコイルが磁束線と出会わないから,これでは説明できない。しかし,それでも,このコイルはその中心部だけで磁束が変化すれば,それに応じて電磁誘導の法則の示す起電力を生ずる。電磁誘導の法則はこの(a)(b)両図の場合をひとまとめにして表現している。

さて,初めに述べたように,電磁誘導は1回りの回路について起電力が決まるので,流れる電流は回路の抵抗が大きくなると段々少なくなる。抵抗を極限まで大きくすると,電流は無限に小さくなる。しかし,この回路には起電力の値は一定で存在する。もしコイルの抵抗を無限に大きくして最後に絶縁物にしてしまったときに,突然この起電力が0になるとは考えられない。おそらく1巻きのリング状の絶縁物でも,それに沿って電流を流そうとする力がはたらくと考えるのが自然である。しかも,このとき,(b)図の場合と考えればこのリング状絶縁物の場所には磁束線のようなものは一切存在しないから,ローレンツ力をもち出すことはできず,この絶縁物中には円周方向に電流を流そうとする電界が存在するとでも考えるほかに方法がない。このようにして生まれたのがこのケースの誘導電界の概念と考えられる。もちろん,この絶縁物の直径はどのようなものを考えるのも自由であるから,この誘導電界は図のリングだけにとどまらず,異なる半径でもよく,この空間すべての場所に考えられる。このような誘導電界は,1940年にアメリカでベータトロン加速が実現したことにより,実際に確認されたといえる。

電磁気学の重要法則は,電磁場中での電荷にはたらく力(ローレンツ力)を示す式,,これは,ある意味では電界と磁界を定義している式であるが,これとマクスウェルの4つの基本的な方程式ですべての電磁気現象を説明できると考えられている。この中のは,磁束密度の変化する所には渦巻くような電界が現れることを述べている。この電界が誘導電界である。しかし,この電界の中で試験電荷(test charge)にはたらく力は,その仕事がある経路で1周積分して0にならないから保存力ではなく,したがって静電界で初めて定義できる電位をこの場含は考えることはできない。しかし,電磁誘導を起こしている回路に電圧計をいれると針は振れる。これは電圧計を含む回路に電流が流れるからで,誘導電界に静電位が定義できないという話とは別のことである。

大学の入試問題などを見ていると,(a)(b)両図の場合の電磁誘導で電流が流れる場合や,短い導体棒の中でローレンツ力で電荷に力がはたらく場合などに,誘導電界によってこのような現象が起こるとして考えさせる問題があるようである。これはキャリアにはたらく力を誘導電界の作用とみなすだけのことで,とくに難しい概念がいるわけではない。このような場合に生徒が戸惑うことのないように指導しておくことも必要であろう。

 

べータトロン

マクスウェルの方程式で電磁誘導の法則を表す式は, と書ける。この式は磁束変化のあるところに電界が現れることを示している。この原理を基に,磁束密度を変化させ,それによって生じる誘導電界を利用して,電子を加速する装置がベータトロンである。ベータトロンの構造は図のようなものである。変圧器における2次コイルの代わりに内部が真空のガラス管を置いたものといえる。空洞の周辺に置かれたコイル(1次コイルに相当)に交流を流すと,2次コイルの代わりに置かれたガラス管の内部に誘導電界が生じる。1次コイルに相当するコイルの電流の強さが0から増大していく1/4周期の間は,それによって発生した空洞内の磁界の増加にともなって,ガラス管の内部に一定方向の誘導電界が発生する。この誘導電界によって,ガラス管中の電子を加速する。電子は質量が小さいため,1/4周期の間に管内を数十万回転させることができ,最終状態に達する。誘導起電力が10V程度であったとしても,回転により10MeV以上のエネルギーになっている。しかし,これは電子が加速されても,ガラス管内の一定の半径の円軌道を回転している場合である。これを満たす条件は次のように求められる。

いま,円軌道内の全磁束Φが時間Δtの間にΔΦだけ変化したとすると,1周あたり誘起される起電力の大きさはだから,誘導電界の強さはとなる。運動量をpとすると,

 

 

Φ0のとき,p0とすれば

 

  軌道上の磁束密度をB(rt)とすると,だから,

 

mvpeBr ……A

@,Aより, したがって, 

 

すなわち,円軌道上の磁束密度B(rt)は,つねに円軌道内の磁束密度の平均の1/2でなければならない。

これまで述べてきた原理,条件のもとで,電子が加速できることは,1928年ヴィデロー(Wideroe)が大学院生の時代に発見した。しかし,電子がドーナツ状のガラス管中を数十万回回転する間には,残留ガスに衝突して軌道をはずれるため,電子が軌道をはずれたときもとに戻る条件を,1941年にカースト(Kerst)が発見して初めて実現した。

 

 

 

 








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