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4節 ローレンツ力

 

ローレンツ力

ローレンツ力の反作用

ブラウン管のしくみ

 サイクロトロン

オーロラ

ホール効果

 

 

ローレンツ力

磁場中を運動する荷電粒子に作用する力   ローレンツ力という。常に速度ベクトルに垂直に作用するので,荷電粒子の軌道を曲げるが,仕事はしない。

なお,電場から受ける力も含めた  をローレンツ力ということもある。

 

ローレンツ力の反作用

力が2体力の場合はもちろん,多体力の場合でも,その力がスカラーポテンシャルから導かれる極性ベクトル量の場合は,孤立系の運動量と角運動量が保存されることを一般的に証明することができる(小野健一「作用・反作用について」物理教育Vol22No.3)。この2つの保存則の成立は,作用・反作用の法則が成り立つことと同等であると考えてよい。しかし,ローレンツ力は明らかに軸性ベクトルであるから,この場合にも作用・反作用の法則が成り立つかどうかは別問題である。

結論的にいえば,荷電粒子にはたらくローレンン力は,その粒子と周囲の電磁場および電磁場をつくっている源の電荷と電流を含めた全体を孤立系と考えると,この系について,作用・反作用の法則が成立している(小林稔「電気力学」p.97101,砂川重信「電磁気学」p.156160)

図に示したような場合を考えよう。紙面に垂直に裏から表へ流れる無限に長い直線電流Iが磁石から受ける力Fは図に示す通りである。一方,磁極は電流のつくる磁界からそれぞれF1F2の力を受けるが,これら2力の電流Iの位置に関するモーメントの和は0となる。つまり,F1F2の合力は,電流Iの位置にはたらいて,電流Iが受ける力と大きさおよび作用線が等しく,向きが反対となっている。つまり,電流が受ける力の反作用の力は,磁極にはたらく力であるということになる。ただし,この場合,磁極にはたらく力F1F2は,磁石の中心に対してモーメントをもつから,磁石はOの周りに回転して電流Iのつくる磁力線の方向と一致しようとする。

 

ブラウン管のしくみ

ブラウン管式のテレビでは,電波から赤,緑,青の三原色(RGB)の色信号を取り出し,赤,緑,青用の3本の電子銃に,それぞれの色の強度に応じた強さの電子ビームをブラウン管の画面に当てる。ブラウン管の面は,場所によって,赤と緑と青に光る蛍光物質で微細に塗り分けられている。その部分に正確に電子を当て,画面を光らせている。画面上では,各瞬間,赤緑青の各1点が光っているのみである。それを離れたところから見ると,赤緑青の強度によって様々な色となって見える。電子を当てる場所を移動させ,30分の1秒間で静止した画面を1枚描く。

水平方向と鉛直方向の2つの方向に電子の進む向きをコントロールするために,2組のコイルがつくる磁界を利用している。

 

 サイクロトロン

直線加速装置で陽子を加速しようとすると,円筒電極を非常に長くしなければならず,いろいろな困難を生ずる。1930年,ローレンス(E.O.Lawrence)は,荷電粒子を磁界中で円運動させながら,電界によって加速する方法を提案し,リビングストン(M.S.Livingston)とともに1931年に最初のサイクロトロンを建設した。

荷電粒子の質量をm,電荷をq,速さをv,磁束密度をB,軌道半径をrとするとき,rと周期Tは,それぞれ,

 

となる。TBq/mだけで定まり,rvに関係しないから,Aに等しい周期をもつ高周波電圧を向かいあった2つの中空電極(教科書p.142参考の図,これらをディーとよぶ)の間に加えれば,荷電粒子は半周期ごとに,電極間のギャップで加速されることになる。半径Rのディーの周辺に近い所では,荷電粒子のエネルギーは,となる。サイクロトロンの性能は,この値をMeV単位で表す。ローレンスが人工原子核破壊を行った最初のサイクロトロンは,直径はわずか28cmであり,1.2Mevの陽子を作ることができるものであった(1932)。その後,しだいに大きいものが作られた。ストックホルムのノーベル研究所の装置は,極の直径225cm,電磁石の質量は400t8.8MHzの高周波で,出力は重陽子では25MeVα粒子では50MeVであり,このとき必要な高周波電力は約60kWといわれている。

サイクロトロンは位相安定性がないので,高周波電圧の周波数は特に正確でなければならない。荷電粒子が加速されて光速に近づくと,相対論的な質量増加のために,その静止質量をm0とすると,回転周波数fは,

 

となり,磁束密度Bを増加して,が一定になるように調節するか,加える周波数をB式になるように減少させるかしないと,荷電粒子を加速できなくなる。たとえば陽子の場合,25MeV以上の出力を得ることが困難になる。この困難を解決するために,磁界を増大させながら電子を加速するのがシンクロトロン(synchrotron)であり,磁界を一定にして高周波電圧の周波数を変化させるのがシンクロサイクロトロン(陽子,重陽子など),磁界と高周波電圧の周波数の両方を変化させて陽子を加速する装置がプロトン・シンクロトロンである。

 

◆オーロラ

磁界に斜めに荷電粒子が入射したときは,磁力線に巻きつくようにらせん運動をする。このことがオーロラと関係が深いことを知らせ,学習の動機付けとしたい。

広義には,磁気嵐に先立って極冠地方におこる極冠グロー,大きな磁気嵐の最中に中緯度地方で見られる中緯度オーロラ(磁気緯度(磁北極と磁南極を結んで決めた緯度)が低い地域で見られるので「低緯度オーロラ」とよばれることもある),極光帯オーロラ,の3つのオーロラの総称である。普通は極光帯オーロラを指す。夜,地磁気緯度65°〜70°あたりで最もよく見える。

オーロラは,太陽の黒点の極大期に多発し,低緯度に向かって大きく展開する。主として太陽からやってきた高エネルギーの荷電粒子(太陽風,主として電子や陽子)のうち,地球の夜側(太陽に対して陰になる部分)に蓄えられたものが磁力線に沿って北極や南極に流れ込む。北極や南極では磁力線が地球に向かっているので,荷電粒子もらせん運動をしながら地上に向かって降りてくる。そのとき,荷電粒子が超高層大気中の酸素,窒素の分子,原子,イオンと衝突し,電子のエネルギー準位を上げる(励起)。その高いエネルギーの電子が低いエネルギーの状態に落ちるとき,余分なエネルギーが電磁波として放出されるのがオーロラの光である。最も強い光は酸素原子から出る黄緑色の光である。その他,酸素原子の赤色,窒素イオンや窒素分子の紫色や青色などがある。極光帯のオーロラでは,高度100120kmくらいの高さが一番明るい。

なお,荷電粒子は磁力線に沿った方向にらせん運動をしているため,磁力線を横切って動くことは難しい。そのため太陽風の荷電粒子では,地球磁気圏の内側に直接入り込むことができないが,太陽風の磁力線と地球の磁力線がつながると(磁力線再結合),太陽風の荷電粒子が地球磁気圏内に侵入できるようになり,地球に下りてくるのである。

 

ホール効果

電流の流れている導体板に垂直に磁界を加えると,両者に垂直な方向に電界を生じて起電力が現れる現象で,1879年,ホール(E.Hall1855-1928)によって発見された。ホールは,この実験により,金属を流れる電流のキャリアが負であることを示した。

図のように直交座標で,電流をIx,磁束密度をBz,ホール電界をEyとすると,EyRIxBzという関係が成り立つ。この比例定数Rホール定数といい,物質の種類,温度などによって決まる。電流のキャリアの運動が磁界によって曲げられることが原因である。運動方向の電界Exとホール電界Eyとの関係は,ホール角で与えられる。質量の大きいイオンでは認められず,電子電流の場合にだけ測定できる。Rはキャリアが電子ならば負,正孔ならば正なので,キャリアの種類の判別に利用される。

キャリアの電荷をeとし,体積密度をnとすると,キャリアがホール電界から受ける力とローレンツ力とがつり合って定常状態が保たれるから,キャリアの速度をvとして,

eEyevBz ……@

また,

IxnevS(Sは,x方向に垂直な導体板の断面積) ……A

@,Aより である。

 

y方向の板の幅をd,導体板の厚さをtとすると,Sdtであるから,

ホール起電力

 

となる。B式を用いて,キャリア濃度を求めることもできるし,また体積密度nが既知であれば,Bzを知ることもできるので,磁束計などにも利用されている。

B式より,金属の場合,R1/ne となるが,半導体の場合は,Rγ/ne(ただしγ1に近い定数で,γ3π/8 の関係がある)となる。

 

ホール定数R(300K)

Au

Cu

Fe

Pb

Ge

Si

0.72×10-4cm3/C

0.55×10-4

0.245×10-4

0.09×10-4

 2.5×106(絶対値)

  5×10(絶対値)

 

 

 

 








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