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2節 電流がつくる磁界

 

 電流の磁気作用の発見の意義

アンペールの法則とビオ・サバールの法則

円形電流がつくる磁界

無限に長い直線電流による磁界

ソレノイドの内部における磁界

 

 

 電流の磁気作用の発見の意義

1785年のクーロンの法則の発見以来,磁気に関するみるべき発見はしばらくなかった。1799年にボルタの電池が発明され,電池が両極を持っている装置であることから,電池と磁石の類似を考えて,1800年代の初期に電池をつり下げて磁石のように両極が南北を指すかどうかを調べたり,電池に磁石を近づけて力がはたらくかどうかを調べた実験がある。

1820年,エルステッド(H.C.Oersted1777-1851)は,磁針に平行に導線を張って電流を流すと磁針がふれ,電流を反対向きに流すと磁針のふれも反対になることを発見した。この直線電流による磁界の発見について,エルステッドは「電流は針金の中に閉じ込められていないで,同時に周りの空間に広がる」と述べている。エルステッドの発見は,電磁気学の歴史にとって画期的なことであった。それまで電気と磁気とはよく似ているが,あくまでも別々の現象であると考えられてきたのに対し,両者の間に密接な関係のあることを初めて明らかにしたからである。エルステッドの発表は,1820721日であったが,それがデンマークからパリに伝えられたのが同年911日であったから,当時としては異例の速さである。エルステッドの発見の報は,アラゴー(F.Arago1786-1853)らによって,各国でただちに追試された。同年918日には,アンペールが電流相互間の力を明らかにし,1030日には,ビオ・サバールの法則が発表された。

 

アンペールの法則とビオ・サバールの法則

アンペールの法則は,アンペール(A.M.Ampère1775-1836)によって確立されたもので,定常電流の閉回路がつくる磁界を決める法則である。「閉回路を縁とする任意の曲面に磁気二重層を考え,その単位面積当たりの磁気モーメントが曲面の法線方向を向き,大きさが定常電流の大きさIに比例してμ0Iに等しいとすれば,定常電流がつくる磁界Hは,この磁気二重層がつくる磁界に一致する。また,磁界の方向は,電流方向を右ねじの進行方向にとれば,その回転方向に一致する。」後半は,電流がつくる磁界の方向を表す。いわゆる右ねじの規則の部分は,アンペールの法則とよばれることもあり,1826年に,アンペールによって明らかにされた。アンペールの法則は,「磁極および閉電流がつくる磁界の中で,任意の道すじに沿って単位の磁荷を一周させるのに要する仕事は,この道すじを縁とする任意の面を貫く電流の総量に比例する」と言い直しても同じことである。すなわち,電流の周りの閉曲線を任意にとり,その微小部分dsの接線方向の成分をHsとすると,

である。積分は閉曲線全体について行う。

アンペールの法則を電流が閉じていない場合に拡張することにより,マクスウェル(J.C.Maxwell1831-1879)は,@式の右辺に変位電流を加えて,マクスウェルの基礎方程式の1つに変形した。

ビオ・サバールの法則は,1820年,ビオ(J.B.Biot1774-1862)とサバール(F.Savart1791-1841)が共同研究の結果として発表した。任意の形をした導線を流れる電流がその周囲につくる磁界を決める法則である。「電流の大きさをI,回路の微小要素をd,その微小要素から磁界を計算すべき点に向かう位置ベクトルを,計算すべき磁界ベクトルをとすると,

 ……A

 

である。」この法則の内容はアンペールの法則と一致する。

ビオとサバールは,もともと,電流の微小要素Idsによる磁界への寄与を考え,その寄与を電流全体にわたって合成したものがHとなると考えた。A式の大きさだけをとり出して考えると,図において

 

で与えられる。

ビオ・サバールの法則の意義は,積分形で与えられたアンペールの法則を,物理の他の法則と同様に微分形で表現したところにある。アンペールの法則からビオ・サバールの法則を導く手順にはいろいろあるが,いずれも高校物理の範囲を超える。

 

円形電流がつくる磁界

円の半径をa,その中心をOとする。まず,Oからbの距離にある軸上の点Pにおける磁界の強さHを,ビオ・サバールの法則を用いて計算しよう。電流の微小要素dsが点Pにつくる磁界dHを求める。

dHを軸方向に垂直な成分dHxと,軸方向の成分dHyとに分解すると,図において,点Qが経路上のすべての点をとるとき,dHxは全体としては打ち消し合う。したがって,dHyだけについて計算すればよい。B式において,φπ/2だから,

 

したがって,P点の磁界H

 ……C

 

特に,円の中心Oの磁界H0は,C式でb0とおいて,

H0I/2a ……D

 

 

無限に長い直線電流による磁界

磁界は直線電流をとり囲んで同心円状となるから,直線から距離aの点での磁界の強さをHとすると,半径aの円周に沿って,アンペールの法則@を適用すると,

……E

次に,ビオ・サバールの法則Bを用いて計算してみる。図において,

 

したがって,

 

 

ソレノイドの内部における磁界

図のように,電流をとり囲む長方形の回路ABCDAに沿って,アンペールの法則@を用いて計算する。CD部分での磁界は0であり,BC部分とDA部分では磁界の方向は道すじに垂直であり,また,長方形がとり囲む電流はn0×Iであるから,

……F

次に,ビオ・サバールの法則@を用いて軸上の点の磁界を計算してみる。次図のように,ソレノイドの半径をa,長さをl,単位長さ当たりの巻数をnとする。ソレノイドの微小部分dyndy個の円形電流からできているとすると,これに電流Iが流れるため,P点に生じる磁界dHは,C式を用いて,

 

図から明らかなように,yacotθ

ゆえに,

dy=−acosec2θ=−(a2y2)1/2cosecθ

となる。したがって,

 ……G

 

無限に長いソレノイドによる磁界Hを求めるには,上式で,θ1→0θ2πとおいて,

HnI

 

 

 

 

 

 

 

 








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