トップ物理II 改訂版2 電気と磁気>第3章 電流と磁界>1節 磁気力と磁界

1節 磁気力と磁界

 

 磁石と磁気に関する歴史

磁気に関するクーロンの法則

磁界と磁力線

 地磁気

 

 

 磁石と磁気に関する歴史

磁石に関する知識はかなり古く,わが国の文献では続日本書紀に「和銅6(713)近江国より磁石を献ず」とあるのが最古のものである。ここでいう磁石とは,天然産の磁石で,磁鉄鉱(Fe3O4)のことである。そのころには吸鉄性だけが知られており,それゆえに珍重されていた。この吸鉄性鉱石は,元来,中国で発見されたものと考えられている。マグネットという名称は,小アジアのMagnesiaという所で磁鉄鉱が発見され,ギリシア人がこれをマグネスとよんだことに起因する。磁石の指南・指北性は,ずっと後世になって知られたもので,中国において宋時代,すなわち12世紀のことである。

磁石に関する近代科学的研究は,ギルバート(W.Gilbert1540-1603)1600年に発表した論文『磁石について』に始まる。この論文においてギルバートは,当時得られていた磁石についてのすべての知識を集め,それに,彼自身の行った多くの実験を加えている。ギルバートの功績の1つは,地球を1個の磁石と考えたことで,伏角に関する理論もこの中に含まれている。もう1つの功績は,磁石の分割に関する実験を行い,分割面には必ず一対の磁極が現れ,どんなに分割しても電気の場合のように単独の磁極をとり出せないことを発見したことである。

磁気に関するクーロンの法則は,1785年にクーロン(C.A.Coulomb1736-1806)が電気に関するクーロンの法則に続いて,明らかにしたものである。

 

磁気に関するクーロンの法則

磁石の極は,細長い棒磁石においては,その全長を2lとすれば,中心から5l/6のところにある。したがって,両極間の距離は5l/3となり,実際の磁石の長さ2lよりl/3だけ短くなる。

さて,電気の場合と同様に,距離rをへだてた磁気量m1m2の間ではたらく力をFとするとき,クーロンの法則

 

が成立する。

SIでは,磁気量の単位にウェーバ〔Wb〕を用い,真空の場合,

 

である。ここに,μ0は真空の透磁率で,μ04π/107である。

 

なお,磁気量については深く立ち入らない。磁極の強さを表す量という程度にしておく。

 

磁界と磁力線

磁場を表す量としてHBがある。磁界のところでは,EHに対応させる(EH対応)か,EBに対応させる(EB対応)か,議論の分かれるところである。真磁荷が存在しないこと,高校で主として学習する電流が磁界から受ける力や電磁誘導の分野では磁束密度Bが主体となること,磁場を表す量がHB2つも登場するのは生徒の混乱を招きやすいという理由で,EB対応を推進する人も少なくない。議論の末,教科書では,結局,EHに対応させることとした。

小学校から学習してきた磁界というものが登場しなくなるのは学習上の連続性が失われること,しかし,磁束密度Bを磁界と呼ばせることには抵抗があること,また,静電気の学習と対比させることにより磁界の理解がしやすいのではないか,さらに,磁性体を考えるときは磁界も考える必要がある,というような理由からである。

そこで,電気のところの電界Eに対応した量として磁界Hを考え,電気力線に対応したものとして磁力線を考える。

まず,正電荷qに対応して正磁荷(N)mを考える。次に,単位正電荷が受ける力から電界Eを定義した,すなわち,式で電界を定義したのと同様に,単位正磁荷が受ける力から磁界Hを定義する。すなわち,式で磁界を定義する。

正電荷(または無限遠)から出て負電荷(または無限遠)へ向かう電気力線を考えたと同様に,正磁荷(または無限遠)から出て負磁荷(または無限遠)へ向かう磁力線を考える。電気力線とは,その接線の方向が電界の方向を表すように引いたものである。それと同様に,接線の方向が磁界の方向を表すように引いたものが磁力線である。電気力線で成り立った関係は磁力線でも同様に成り立つ。

真空中では,磁界Hと磁束密度Bは全く同じような量を表すことになる。しかし,磁石などの強磁性体が登場すると,HBは全く異なるものを表すことになる(磁束密度Bと磁界の強さH」のところを参照)

高校では磁性体のことはあまり扱わない。電流が磁界から受ける力や電磁誘導などでは,磁界Hよりも磁束密度Bを中心に扱うことになる。したがって,磁界や磁力線については深入りしないほうがよい。

 

 地磁気

ギルバートは,地球を1つの大きな磁石と考えた(1600)。この磁石としての地球の磁気を,地磁気あるいは地球磁気という。

地表は地球磁場になっており,地表に磁針を置くとN極は北を指し,S極は南を指す。しかし,この方向は地理学的北極と南極には一致しない。地磁気の場合には,NS線が地表に会する点sを地磁気の北極,nを地磁気の南極といい,時間とともに変化している。地球磁場の変化には,地球外部の影響で生じる短周期変化と地球内部の原因による長年変化がある。また,太陽面の活動の影響で不規則な急激な変化が地球的な規模で生じることもある。この現象を磁気嵐といい,数時間の短いものから数日に及ぶ長いものもある。この磁気嵐により,無線通信の電波は乱され,高緯度の所ではオーロラが見られる。

地球磁場発生の解明は,まだ完全にはなされていないが,地球核の対流運動等が磁場の中で行われているために誘導電流が生じるのが原因とするダイナモ理論が一般的に受け入れられている。

ある地点での磁場の様子を知るためには,偏角,伏角,水平磁力(水平分力)を知る必要があり,これを地磁気の三要素という。偏角とは,磁気子午面(地球磁場の方向を含む鉛直平面)と地理学的子午面とのなす角のことで,地理的子午面に対して東または西に何度偏っているかで表す。日本では偏角は全て西に偏っている。伏角とは,磁気子午面内に,重心を通る水平軸のまわりに自由に回転できる磁針を置いたときの,磁針の水平面となす角をいう。磁針が水平面に対して傾くことは,地球磁場が水平面に対して傾いていることを示している。そこで,この磁場を水平方向と鉛直方向の成分に分解し,前者を水平磁力,後者を鉛直磁力という。

各地の地磁気の三要素の値は表のとおりである。

 

 

偏角(W)

伏角

水平磁力(nT)

北見

8°49.6′

57° 9.7′

26637

浜松

6°35.8′

48° 5.6′

30799

広島

6°41.8′

48°21.1′

31594

沖縄

4°14.8′

37°23.8′

35163

(参考:2001年版,理科年表より)

 

 

 

 

 









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