トップ物理II 改訂版2 電気と磁気>第2章 電流>2節 直流回路

2節 直流回路

 

電流計・電圧計の内部抵抗

分流器と倍率器

デジタル電圧計

起電力

電池の原理

キルヒホッフの法則

ホイートストンブリッジ

電位差計

コンデンサーの充放電

 

 

電流計・電圧計の内部抵抗

図のような回路を流れる電流Iを,内部抵抗rの電流計を用いて測定する場合を考える。流れている電流Iは,IE/Rである。電流計を直列につないだために,回路を流れる電流がI¢になったとすると,

であるから,I¢が測定しようとする値Iに等しいためには,1r/Rでなければならない。すなわち,内部抵抗rが外部抵抗Rに比べ,十分に小さい電流計を用いなければならない。

次に,下図のような回路において,AB間の電圧Vを,内部抵抗rの電圧計を用いて測定する場合を考える。抵抗が直列につながっているとき,各抵抗にかかる電圧はそれぞれの抵抗の値に比例するから,である。電圧計をAB間に並列につないだときのAB間の合成抵抗をXとするとである。また電圧計をつないだために,AB間の電圧がV ¢になったとすると,XR2は直列であるから,

となる。V ¢が測定しようとする値Vに等しいためには,R1R2/rRlR2に比べて十分に小さく無視できればよい。そのためには,内部抵抗rが外部抵抗RlR2に比べて十分に大きい電圧計を用いなければならない。

 

分流器と倍率器

一般に電流計の測定範囲をn倍に広げるには,電流計の内部抵抗rA 倍の抵抗をrAと並列に入れる。この分流器には,マンガニン線(Cu84%,Mn12%,Ni4)が用いられる。それはマンガニンの抵抗率の温度変化が小さいことと,Cuに対する熱起電力が小さいことのためである。また,電圧計の測定範囲をn倍に広げるには,倍率器として,電圧計の内部抵抗r0(n1)倍の抵抗をrAと直列につなげばよい。

 

デジタル電圧計

電圧を,入力抵抗が非常に高い電界効果型トランジスタを使ったアナログ・デジタル変換(AD変換)回路で測定し,デジタル表示する計器である。コイルや磁石,ばねなどを使った,旧来のアナログ方式の電圧計と対比し,区別するために使われる用語である。今は,ほとんど全てが,デジタル電圧計になっている。

短時間で変動する電気信号の電圧波形も,瞬時(ナノ秒程度)の電圧をくり返しサンプリングし,AD変換することで,デジタル化して記録することが可能になっている。これらの技術を駆使した,高速のデジタル・オシロスコープが広く使われている。

 

起電力

電気回路に電位差をつくり,電流を流そうとするはたらきを起電力(electromotive force)といい,EMFと略称する。起電力は電源の中で電荷を動かすはたらきだが,それは電界ではない。電源の正極は負極よりも電位が高いのだから,電源内部の電界は正極から負極に向かう向きであり,起電力はその電界に逆らって電荷を動かすはたらきなのである。

起電力には,熱起電力,電池の化学起電力,太陽電池の光起電力,発電機の誘導起電力,圧電気(ピエゾ電気)などがある。そして,それらには必ず源となる仕事またはエネルギーがある。たとえば,電池であれば化学エネルギーであるし,発電機であれば力学的仕事 (その仕事を電気エネルギーに変換するのは電磁誘導)である。

 

電池の原理

接触電位差 金属内では,自由電子は自由に運動している。もし,表面でも,同じようにどちらの方向にも力を受けなければ,この電子は金属外に飛び出してしまうはずだが,それはできない。これは,残された正のイオンが引き戻すからだと考えられる。このようにして,表面のところでは,正のイオンの並んだ面よりも電子のほうがわずかに外に分布していて,いわゆる電気二重層を形成し,層の外側は負に,内側は正に帯電している。したがって,金属内から外へ出るまでに二重層内で電位は急激に変化し,その様子は,図に示す通りであり,この段の高さは金属によって差がある。つまり,表面の電子を金属内部に引き戻そうとする効果は金属により異なっている。この効果の異なる2種の金属を接触させると,強いほうへ電子がより多く引き込まれる。その結果,一方が電子を失い他方が得る結果となって,前者が正,後者が負に帯電し,平衡状態に達する。このときできた電位差を接触電位差という。

 

 電極電位 接触電位差は,金属とこれに接する電解質溶液との間にも生じる。この電位差を電極電位という。簡単な例として,Znを純水に浸した場合を考えてみよう。水は有極性分子でできていて,その比誘電率はだいたい80程度の大きな値をもっている。しかし,完全な誘電体ではなく,ごくわずかに電離してH(ふつうはH3O)OHに分かれている。つまり,水自身がイオンによって電気を運びうる状態にある。Znを水に浸すと,その表面のZnの正イオンは水分子の作用を受け,相互の結びつきから離れて,水の中へZn2の形で入っていき,金属のZnは,しだいに負に帯電することになる。そして,Znを溶かそうとする水のはたらきと,水中のZn2を引き戻そうとする帯電Znのはたらきとがつり合ったところで,この現象は進行が止まる。そのときの電位差が,Znと水との電極電位とよばれるものである。

このことからわかるように,水の代わりにZnSO4の水溶液を用いれば,この電位差は小さくなる。それは,水の中に初めからZn2があって,Znが少し溶けようとすればたちまち平衡状態に達してしまうからである。また,水の中にH2SO4を入れても同じことで,水中のH (またはH3O)が帯電Zn極に引き寄せられて,その帯電を消してしまうからである。

Ptのように溶けにくい金属を,たとえばH2SO4の水溶液中に入れても,これが同じ電位になるとは必ずしもいえない。なぜなら,HSO42の動きまわる速さが異なるので,これらがPt極と衝突して,これに電荷を与える機会が等しくならないからである。

 

次に,陽極と陰極との間を導線でつなぎ,電池から電流を取り出す場合を考えてみる。この場合,電位の差によって,銅板から導線を通って亜鉛板に電流が流れるが,電荷を運ぶものは亜鉛から流れ出す電子である。この電子が亜鉛板から銅板に移動する結果,亜鉛板の電位は上がり,銅板の電位は下がる。電池の中では,亜鉛板のほうは,このため再び亜鉛が溶け出し,自由電子を遊離して銅板のほうに移った電子の不足を補い,接触電位差を保つ。また銅板のほうは,溶液中の陽イオンを引きつけて,これに負電荷を与えることによりその接触電位差を支える。そして,溶液を通して,陽イオンが銅板のほうへ,陰イオンが亜鉛板のほうへ向かって移動して電気を運ぶ。イオン化傾向は亜鉛のほうが水素より大きいので,溶液中のHは,亜鉛板から移動してきた銅板の電子に引きつけられてこれを中和し,H2になって銅板に析出する。したがって,陽極に正の電荷を与えるのは水素イオンである。すなわち,陽極では,

2H2(e―→ 2H ―→ H2

という反応により水素が発生する。ところが,この水素は,それ自身再び溶液中に溶け出そうとする傾向をもち,電池の起電力と逆の起電力を生じ,同時に,銅板をおおうことになり,水素イオンが陽極へ到達するのを妨げて,界面の抵抗を増大させることになる。これが,電池の分極作用である。

 

キルヒホッフの法則

1849年,キルヒホッフ(G.R.Kirchhoff1824-1887)が定常電流に関しての研究によりまとめた法則である。抵抗Rの代わりに,インピーダンスを用いれば,この法則は交流についても成立する。

1法則は,結合点における電流の連続性を表したものであり,第2法則は,閉経路についてオームの法則の一般化に相当するものである。

回路における各枝路を流れる電流を未知数とし,各枝路の数をn個,結合点の数をS個とすれば,第1法則を用いた式を(S1)個,独立な閉経路について,第2法則を用いた式を(nS1)個作れば,全体として独立な方程式が,未知数の数nに等しいだけ得られるから,連立方程式としてこれらを解けばよい。

1法則を用いた式を,結合点の数Sより1つだけ少ない(S1)個作れば,残りの結合点に関する式は,これら(S1)個の式を辺々加えると得られるから,第1法則についての独立な式は(S1)個である。

 

 

2法則を用いた式は,下図のように,各枝路を横切らないで○を書き込み,書き込めた○の数に相当するだけ,任意の閉経路についての式を作れば,その数は(nS1)個となる。理由は次の通りである。上図において,結合点から他の結合点に結線して枝路が1つ増加した場合,第1法則を用いた式の数は変らず,○が1つ多く書き込めるようになるから第2法則を用いた式が1個増す。これは未知数の増加1と一致する。次に,結合点から他の結合点でない任意の個所に結線すると,枝路が2つ,結合点が1つ増加する。そうして,第1法則を用いた式が1個,第2法則を用いた式が1個それぞれ増加するから,未知数の増加2と一致する。次に,結合点でない個所から他の結合点でない任意の個所に結線すると,枝路が3つ,結合点が2つ増加する。そうして,第1法則を用いた式が2個,第2法則を用いた式が1個それぞれ増加するから,未知数の増加3と一致する。

 

ホイートストンブリッジ

電気抵抗の値を正確に測定する技術は,1837年に開発された電信の技術的発達のために,研究され進歩した。1833年,クリスティー(S.H.Christie)が抵抗比較のために設計したものを,1843年,ホイートストン(C.Wheatstone1802-1875)の努力で実用化したのが,このホイートストンブリッジである。

教科書p.12116において,回路を閉じたとき,検流計Gの指針が振れなかったとすれば,R3/RxRl/R2の関係が成立するから,Rl/R2の値およびR3の値が既知ならば,未知抵抗Rxの値が定められる。R1R2を比例辺,R3を可変抵抗辺とよぶ。抵抗測定用として実用化されて広く使用されているのは,スライド線形ブリッジおよび局形ブリッジ(P.O.BOX)2種類である。

スライド線形ブリッジは下図のようなもので,一様な太さの一本の抵抗線または棒を用い,その中間にターミナルAを置き,全体を2つの部分に分け,教科書図16RlR2に相当する部分とし,中間のターミナルをすべらせて,Rl/R2の値を変え,標準抵抗R3を用いて抵抗を測定する簡単な装置である。

 

局形ブリッジは下図に示すようなもので,一種の抵抗箱である。P.O.BOX(post office box)という名前は,このブリッジが電信の発達に伴って発明されたことを物語っている。

抵抗線は,通常,マンガニン(Cu84%,Mn12%,Ni4)の二重絹巻線を用い,無誘導とするために,下図に示すように,“折り返し2列巻き”とし,その両端をエボナイト板aに取りつけた金属片bに連結する。したがって,金属片bの間のプラグを抜きさしして,比例辺および可変抵抗辺の抵抗を調節する。

 

電位差計

起電力の正しい測定は,電池の内部抵抗による電圧降下の影響を受けないようにするため,電池から電流を取り出さない状態で行わなければならない。

電池の起電力を測定する簡単な方法としては,下図のような回路がある。E0は,測ろうとする電池の起電力より大きな起電力をもつ蓄電池,は検流計,は電圧計,Rはすべり抵抗器である。スイッチKを閉じ,すべり抵抗器の接点を動かして,の振れがないようにすれば,Exの値がの指針によって直読できる。は精度が高いほどよい。

 

さらに精密な測定値を得るためには,電位差計(ポテンショメーターともいう)を用いる。これは上に述べた簡便法におけるの代わりに,一様な抵抗線を用いたものである。

なお,このとき使用する標準電池は,起電力の標準として用いるものであって,電流を取り出すのが目的ではない。したがってその取り扱いには細心の注意が必要であり,傾けたり衝撃や振動を与えたりしないようにすることはもちろん,電流を流さないように気をつけなければならない。

生徒実験で行う場合には,抵抗線ABにはメートルブリッジを用いるのがよい。

 

コンデンサーの充放電

コンデンサーを充電する場合,回路中の抵抗の大小に応じて充電が完了するまでに時間がかかる。放電の場合も同様である。このコンデンサーヘの充放電過程を調べてみよう。

図のような回路で,電池の起電力をE,抵抗をR,コンデンサーの電気容量をCとする。スイッチを閉じた瞬間を時刻0にとり,そこからの時間をtで表す。t0のとき,コンデンサーの極板上の電気量は0である。

 

さて,時刻tにおいて,回路に流れる電流をi,コンデンサーの極板上の電気量をqとする。この瞬間に,キルヒホッフの法則の式をつくると

 

一方,qは時刻0から時刻tまでの間に電流が運んできた電気量の総和であるから,

(2)(1)に代入して,両辺を微分すると,

初期条件は,t0のとき q0,これと式(1)より,t0のときである。これを式(3)に代入して,を得る。したがって,

となる。

電流はこのように指数関数的に減少して最終的に0となり,電気量はCEに近づく。ここで,定数RCは時間の次元をもつことがわかるが,tRCになると,指数関数部分が,e11/2.7 となり,ほぼ充電が完了したとみなしても差し支えがない。そこで,定数RCを「時定数」といい,コンデンサーの充放電がほぼ完了する時間の目安としてよく用いられる。

さて,この充電過程をエネルギー的に考察してみよう。まず,スイッチを閉じてから充電が完了するまでに電池がした仕事Wは,

この間に抵抗Rで消費されたジュール熱Qは,

 

最終的にコンデンサーに蓄えられたエネルギーUは,

 

となる。もちろんエネルギー保存QDUWとも矛盾しない。このように,充電過程においては,電池のした仕事のうち,コンデンサーに蓄えられなかった50%の部分は抵抗でジュール熱として消費されていることがわかる。このことは,R0としても同様である(実際には電磁波が放射され,一部はそのエネルギーにも使われる)

 

 

 








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