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1節 電流

 

金属中の電子の運動とオームの法則

抵抗の温度変化

導体の抵抗率と温度係数

 電気エネルギーの利用と研究の歴史

 超伝導

 超伝導

 

 

金属中の電子の運動とオームの法則

金属導線の中を電流が流れるのは,自由電子が,導線の各部分で金属の陽イオンの電荷をちょうど打ち消すような密度を保ったままで,外部から加えられた電気力の向き(電界と反対向き)に流れることによる。電界による外からの力が加えられるにもかかわらず,電子の流れが加速されず,定常電流となるのは,個々の電子がなんらかの障害物から抵抗を受けているからである。金属中の自由電子の運動を正しく論じるためには量子論によらなければならない。これによると,規則正しい陽イオンの配列は自由電子の運動の妨げとはならず,格子欠陥や結晶の配列の乱れ,また陽イオンの熱運動が電子の運動の障害物となる。教科書p.110では,これら障害物による抵抗を,あたかも空気の抵抗のように考えて古典論的に取り扱い,オームの法則を導いている。

また,個々の電子の運動を完全に古典論的に取り扱い,同様の結論を導くモデルも考えられるので,紹介しよう。

金属中の自由電子は,全体としての流れの速さvよりも109倍もの速さで熱運動をしている。つまり,実際には,電子と陽イオンとの衝突から次の衝突までの軌道はほとんど直線になる。いま,長さlの導線に電圧Vがかけられ,EV/lの電界が生じているとしよう。電子はこの電界によって加速される。電子の質量をm電荷をeとすれば,加速度はで,電子が衝突せずに直線運動できる時間Dtの終わりにはの速さに達する。初速度を0とすれば,この間の平均の速さはとなる。すなわち,eEに比例し,mに反比例する。この電子が次の衝突を行うと,全く乱雑な方向にはね返され,電界により加速された効果を失い,再び加速が始まる。衝突直後の電界方向の平均の速さは0とみなせる。

ところで,電子にはDtの長いものや短いものがあるのでそれらを平均した時間をτとすれば(τは約2.5×1014s),熱運動の速さが全体としての流れの速さvよりはるかに大きいので,τは,温度に依存するが電界E には関係しない。このτを用いるとvは,と表されるので,電流Iは,

となり,オームの法則が説明できる。

なお,平均の速さがとなってとならないのは,tより短いものは起こる回数は多いが,実際に進む距離が短いため,vに対する寄与が少ないからである。Dtの分布を考慮すると,上記の単純な議論で出てくる1/2という係数はなくなる。そして,となるから,温度が高いと電子は陽イオンと衝突しやすくなって,tが小さくなり,rが大きくなることも説明できる。

参考文献:ファインマン「ファインマン物理学U」(岩波書店)p.248

 

抵抗の温度変化

セルシウス温度tでの抵抗率rは,0℃での抵抗率をr0とすれば,rr0(1atbt2),または,rr0(1atbt2gt3)で示されるが,bgの値はaに比べてきわめて小さい。たとえば,白金は0℃と630.5℃の間において rr0(10.0039t0.00000058t2)である。したがって,ふつう rr0(1at)で十分である。このa抵抗率の温度係数という。

aの非常に小さな物質としては,コンスタンタン(Cu55%,Ni45%の合金),マンガニン(Cu84%,Mn12%,Ni4%を基本組成として微量のFeSiを含む合金)などがあり,精密電気機器の抵抗や標準抵抗などに用いられる。aの値は,コンスタンタンが2×105/K(20100)で,マンガニンの高級品で(5〜+10)×106/Kである。

抵抗率が温度とともに変化する理由は,古典論によれば,電子が結晶格子(金属イオン)の間を縫って動くとき,結晶格子を形成する陽イオンに衝突散乱されるために電気抵抗が生じるのであるから,温度が高くなれば陽イオンの振動が強まり,電子が導体内を通過する際に,衝突散乱を受けることが多くなるためと考えられている。また,量子論によれば,理想的に周期的な結晶格子中では,電子は全く散乱を受けないが,格子の熱振動によって周期性が乱されることが,電気抵抗およびその温度変化の原因と考えられている。したがって,合金の抵抗は一般に大きく,また,純金属の抵抗は絶対温度にほぼ比例して増加する。

 

導体の抵抗率と温度係数

おもな導体の抵抗率と温度係数の値は,下表の通りである。通常,抵抗率の温度係数a0℃,100℃間の平均値を扱うが,参考のために0℃,300℃間の平均値も算出した。両者の値が異なるほど,抵抗率の温度変化は直線からずれている。なお,金属の温度係数aはほぼ0.004K1〕で,この値が理想気体の体積膨張率1/273K1〕に近いが,これは固体電子論で理論的に説明されている。

半導体や絶縁体では,抵抗率が温度上昇とともに減少することが多い(a0)。それは,温度の上昇に伴って,伝導帯に上がる電子の数が増えるからである。しかし,温度上昇とともに格子振動は増大する。低温ではキャリアの増大の影響のほうが大きいが,高温になると格子振動の影響のほうが大きくなり,温度係数は正となる。

 

 電気エネルギーの利用と研究の歴史

デービー(H.Davy)1801年にカーボンアーク灯を発明した記録がある。これが電灯の最古のものとされ,1876年には,街路照明として用いられるようになった。エジソン(T.A.Edison)1878年に白金線電球を作ったのが,白熱電球の起源である。またエジソン自身が1879年にフィラメントを炭素線に変えてから実用に供せられるようになった。クーリッジ(Coolidge)1911年に,タングステンの粉末を固めて高熱にし,細線にしてフィラメントをコイル状に巻き,タングステン電球を発明した。ラングミュア(I.Langmuir)は,電球内に窒素ガスを封入した。

ジーメンス (E.W.Siemens)1866年に電磁誘導を利用した発電機を完成してから,多量の電気エネルギーが生産でき,熱および光として実際的に利用されるようになった。

電流の熱作用に関しては,ジュール(J.P.Joule 1818-1889)による研究が重要である。ジュールは,電流が流れるときに導体内に生じる熱量を精密に調べ,1840年の論文中に,ジュールの法則を発表している。その後ジュールは,約40年にわたり熱の仕事当量の測定についての実験を続け,1843年には誘導電流によって,1845年には気体の膨張,圧縮の際の発熱量を測り,さらに,1847年には羽根車で水をかき回すことにより,熱の仕事当量を測定している。ジュールのこのような研究は,ファラデーが多種多様の実験を通じて得た自然の単純性の信念―熱,光,磁気,電気,化学親和力は,ただ1つの力が,その現れる形の異なっているために区別してよばれているものではないか―に刺激され,熱的,電気的,化学的,および機械的効果の相互関係を追究してなされたものであった。エネルギー保存の法則の確立の基礎となっている点において,重要な意義をもつものである。

 

 超伝導

1908年に,オランダのカマリング・オネス(K.Onnes)によってヘリウムの液化が成功すると,3K以下の極低温における現象の研究が活発に行われ,新しい現象が次々に発見された。その代表的なものが液体ヘリウムの超流動と金属の超伝導であった。1911年に,オネスは水銀の電気抵抗が4.2K付近で完全に0になることを明らかにし,この現象を超伝導(superconductivity)と名づけた。

1933年,ドイツのマイスナー(W.Meissner)とオクセンフェルト(R.Ochsen-feld)は,超伝導体を磁場内で転移温度以下に冷却したとき,あるいは超伝導になってしまった物質に磁界を加えたとき,磁界は完全に超伝導体から排除されることを発見した。これをマイスナー効果 (完全反磁性)という。

1935年,ロンドン(F.London)は,超伝導は,「巨視的な大きさまで量子力学が成立して顕在化している例」であることを示し,超伝導電子の運動が互いに相関関係をもつとした。また,1957年バーディーン(J.Bardeen),クーパー(L.N.Cooper),シュリーファー(J.R.Schrieffer)らにより,超伝導現象が量子力学的に解明されるにいたった(BCS理論)。その結果,永久電流,マイスナー効果,磁束量子,ジョセフソン効果などの特異な現象が説明できるようになった。

1987年,ミュラー(K.A.Müller)とベドノルツ(J.G.Bednorz)は,金属ではなくセラミックスが超伝導を示すことを発見した。それが発端となって,高温超伝導の研究が進み,転移温度が液体窒素温度(77K)を超え,1993年には133.5Kという水銀系酸化物超伝導体が出現した。

 

 超伝導

超伝導の特徴は,永久電流,マイスナー効果,ジョセフソン効果,磁束の量子化である。超伝導体でつくった回路を臨界温度以下に冷やして電流を流しておくと,電流による発熱がなく永久に電流が流れる。コイルの電線に超伝導体を用いれば,大電流を流しても発熱がないので,非常に強力な磁界をつくることができる。このような超伝導磁石は,すでに加速器やNMR(核磁気共鳴nuclear magnetic reso-nance;磁界の中に置かれた原子核が特定の周波数の電磁波を吸収する現象で,物質中の原子の状況を調べる手段として広く利用されている)MRI(核磁気共鳴映像法magnetic resonance imagingNMRを利用して体の断層(CT(Computed Tomography))画像を得る方法)で用いられている。ただし,磁界が強くなると超伝導状態が壊れてしまう物質が多いので,現在実用化されているのは,ニオブとスズの合金かニオブとチタンの合金だけである。マイスナー効果は,超伝導体の上に置いた磁石が反発力で浮上する実験で示すことができる。また,ジョセフソン効果は,2つの超伝導体にはさまれた薄い絶縁体にトンネル効果による電流が流れ,電流が小さい領域では超伝導体間に電位差が生じない現象である。これは微小磁場の測定装置に用いられるSQUID(超伝導量子干渉素子superconducting quantum interference device)に応用されているし,スイッチ速度と低消費電力で超大型コンピュータへの利用が期待されるジョセフソン素子(ジョセフソン効果を利用したスイッチの組み合わせでつくるコンピュータの論理素子)の研究もされている。

なお,超伝導は,工学やマスメディアでは超電導と書かれることが多い。

 

 

 

 

 

 








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