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1節 静電気

 

 静電気の発見と電気の語源

帯電列

電気には2種類しかないこと

 正電気と負電気の発見

用語「静電誘導」と「誘電分極」

誘電分極

はく検電器の取り扱い

 

 

 静電気の発見と電気の語源

コハク(琥珀)は,地質時代の植物樹脂(松やになどの粘り気のある液)が地中で化石化したもので,透明または半透明でつやがある。ウイスキーの色を「琥珀色」とよくいい,あの黄色っぼい色が代表的な琥珀の色であるが,もっと赤みがかったものや褐色のものもある。

紀元前のギリシャ時代よりコハクは装飾品として使われており,B.C. 600年にはタレスが,「動物の毛皮でこすると,特殊な状態となってごみやほこりを吸い寄せる」ことを発見したという。ふつうの力は何かの物体が接触して及ぶものであることを考えると,このコハクの力は不思議なもので,当時の人々が「精霊が宿っている」と考えたのも無理はないことであろう。人々は,コハクを身につけているとよいことが起こると信じていたという。

1600年,ギルバート(W.Gilbert1544-1603,イギリス)は電気的な引力と磁気的な引力の違いを挙げ,コハク以外にもダイヤモンド・水晶・ガラス・硫黄などで静電気が起こることを見いだした。電気を意味するelectricityという言葉も,彼が名づけたものである。

なお,electricityはギリシャ語のコハクを意味するがhlektron (英語ではelec-tron)から作られた言葉である。ただし,現在,electronは電子の意味である。

 

参考文献:金原寿郎「電磁気学(T)(裳華房)

 

帯電列(帯電系列)

エボナイトを毛皮でこするとエボナイトに負電気を生じるが,このとき毛皮の方には等量の正電気が起こっている。ガラス棒を絹でこすった場合も同様で,絹の方に負電気が生じる。このように,2種の物質をこすり合わせると,−方に正電気,他方に負電気が生じる。これは電子が移り渡っていくことを考えれば当然であるが,その電子が動く向き(どの物質からどの物質へ)は,実験的に決められており,したがって,2種の物質をこすり合わすと,どちらが正に帯電するかも決まっている。実験によると,次に挙げる物質の系列中の2つをとってこすり合わすと,左にあるものは正に,右にあるものは負に帯電する。

 

毛皮−フランネルー象牙−羽毛−水晶−フリントガラス−綿−絹−シェラック−ゴム−金属−イオウ−セルロイド−エボナイト

 

この系列を帯電列あるいは帯電系列という。プラスチックを用いた場合の帯電列は,

 

アクリル−スチロール−ガラス−毛皮−エボナイト−絹−ポリエチレン−塩化ビニル

 

である。ただし,摩擦電気は物体の表面で起こる現象であるから,同じ物質でも表面の状態に影響されることが大きい。この帯電列中の順位は,表面の状態により,また,温度や湿度により変わることがあり,必ずしも一定ではない。

 

電気には2種類しかないこと

帯電体どうしを近づけると,引き合う場合と反発し合う場合とがあるから,電気には少なくとも2種類あることがわかる。しかし,2種類しかないことは,実験事実によって初めてわかることである。

物体ABを互いに摩擦して帯電させる。他の帯電体をAまたはBに近づけたとき,どちらか一方とは反発し,他方とは引き合う。そこでこの帯電体は,ABのうち,反発したほうと同種類の電気をもつものと考えてみる。このようにして,いろいろな帯電体の電気をAと同種類,Bと同種類の2つのグループに分けてみる。このようなグループ分けをした後,実験をしてみると,それぞれ同じグループに属する帯電体相互の間では反発し合い,異なるグループに属する帯電体相互の間では引き合い,この関係の当てはまらないような例外的な帯電体は1つもないことが確かめられる。したがって,電気には,Aがもつ電気とBがもつ電気の2種類の区別しかないことがわかる。

 

 正電気と負電気の発見

1733年,デュ・フェイ(C.F.C.du Fay1698-1739)は,電気には2種類あり,同種のものがしりぞけ合い,異種のものが引き合うことを発見し,正電気に相当する電気を「ガラス電気」,負電気に相当する電気を「樹脂電気」とよんだ。

1750年,フランクリン(B.Franklin1706-1790,アメリカ)は,火花を電気という重さのない流体の流れと考えた(電気流体説)。彼は,あらゆる物体はそれぞれの持ち分だけ電気流体を含んでおり,それが過剰になったり不足した状態が「帯電した状態」であるとし,過剰な電気流体をもつ物体から他の物体にその流体が移動すると考えた。ここで,電気流体が過剰な状態を正,不足した状態を負とした。これが,正電気・負電気の始まりである。

 

用語「静電誘導」と「誘電分極」

「帯電体に近い側に異符号,遠い側に同符号の電荷が現れる」という現象は,導体に限らず,全ての物質で見られる。本来,静電誘導という用語は,外に現れてくる現象だけを指して使われるもので,現象が起こる物質が導体に限定されているわけではない。したがって,その場合,誘電分極は「不導体に起こる静電誘導である」ということになる。しかし,従来高校物理では,静電誘導という用語を導体に限って使うことが多かった。生徒に説明するときに,「導体なら静電誘導,不導体なら誘電分極」と並立させて示した方が理解が容易になるからであろう。

 

誘電分極

教科書p.755では,電界のもとで原子内の電子分布が偏る「電子分極」が示されている。これは,次の図(a)のようにも説明できる。同様な誘電分極には,イオン結晶の正負のイオンが電界によって平衡位置からずれる「イオン分極」がある。

なお,誘電分極には,図(b)のような,もともと少し正負に分極していた分子が,電界のために分極の方向をそろえる「配向分極」もある。

 

はく検電器の取り扱い

帯電した絶縁体を,はく検電器の金属板に接触させても,電気がはく検電器の方へ移りにくい場合がある。このとき,帯電体で金属板をこすって電気を移動させようとしてはいけない。摩擦によって新たに電気を生じることになるからである。この場合は,帯電体を金属板の縁から近づけ尖端放電を行わせると,電気ははく検電器に移動しやすい。

はく検電器を用いる実験では,絶縁が重要であるから,金属棒を支えている絶縁物に着いたほこりはよくとり除き,実験前によく乾燥させておくことが大切である。

はくがとれたら,スズはくなどを2枚の薄紙の間に挟んだままで,はさみで必要な大きさに切る。金属棒に少しだ液をつけ,そこにはくを押しつけると,だ液が接着剤のはたらきをする。

 








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