トップ物理II 改訂版1 力と運動>第2章 円運動と単振動>4節 万有引力

4節 万有引力

 

 天動説と地動説

惑星等についての定数

中心力と面積速度

 ニュートンの万有引力の発見

万有引力の法則

 キャベンディッシュの実験

大きさのある物体間の万有引力

太陽系の多体問題

地球の形と遠心力

 無重力状態

重力と無重力状態・無重量状態

アインシュタインの等価原理

万有引力による位置エネルギーと重力による位置エネルギーの関係

宇宙速度

 

 

 天動説と地動説

天体の運動,ことに惑星の運動は,人類の文明の夜明けから人々の興味をそそった。人々が惑星の運動をどのようにして理解してきたかということは,おそらく科学史の中でももっとも興味深いところであろう。

(1) プトレマイオス(トレミー)の説

ギリシア人は,人間が宇宙の中心にいると考えることを好んだので,人の住むこの地球が宇宙の中心にあると確信していた。彼らにとって,球は完全な形であったから,地球ばかりでなく,太陽も星もすべて球であり,また,その軌道も完全な円であって,地上からの距離に応じて,それぞれ階級の高い天球の上にあるものとしたようである。恒星はもっとも高い恒星天に固定され,地球からの距離の順に,月,水星,金星,太陽,火星,木星,土星がそれぞれの天球に固定され,地球を中心に天球とともに回転すると考えた。

紀元後150年ごろ,アレキサンドリアのプトレマイオス・クラウディオス(トレミー)という天文学者は,そのころの天文学や物理学の本を集め,『アルマゲスト』という本を著し,地球を中心とした宇宙の構造を考え,星の運動を正しく,また詳しく説明した。彼の宇宙論は,それ以前の学者の宇宙観と当時の科学を総合したもので,それ以後1500年以上もの間,まったく正しい権威あるものとして通用していたのである。

プトレマイオスの宇宙の構造は,上の図のように表される。水星や金星の搬送点は,いつでも太陽と地球を結ぶ線上にあって,太陽とともに地球を回り,火星,木星,土星は太陽よりも遠くにあり,周転円の動径を太陽と地球を結ぶ直線に平行に保ちながら,地球を中心とした軌道を回っていくというのである。このとき,惑星の描く軌跡はエピサイクロイド曲線といって,順行と逆行がループ状に連なる曲線である。このような軌道を考えれば,惑星の複雑な運動も,ほぼ完全に説明されるのである。

今日のわれわれの言い方ですれば,ギリシャ人たちは惑星の運動を,地球に固定した座標系に関して考えていたといえるが,正確に天体の運動を述べようとするほど,ますます複雑な構造を考えなければならなかった。

 

 

(2) コペルニクスの説

プトレマイオスの天動説をくつがえし,太陽が中心であって,地球も含めてすべての惑星がその周りを回るという地動説を唱えたのは,コペルニクスであった。1473年ポーランドに生まれ,牧師であった彼は,当時勢力の強かった教会をはばかって,その発表をためらっていた。1543年に『天球の回転について』という本を出版し,その中で,太陽の周りに水星・金星・地球・火星・木星・土星がこの順にめぐり,月は地球の周りをめぐると述べようと決心したが,その本の印刷の完成を見ないうちに,コペルニクスは死んだ(1543)

地動説はコペルニクスが初めてではない。実は,すでに紀元前3世紀ごろ,ギリシアの天文学者アリスタルコスによって述べられており,コペルニクスは,神学修業のためルネッサンスの発祥地イタリアに留学中,この説を図書館の蔵書の中から発見したのである。

コペルニクスの『天球の回転について』には奇妙な序文が添えられていた。すなわち,「この地動説は単なる1つの仮説にすぎない。仮説は現象とうまく合うための方便で,真実とは限らない」という意味の言い訳である。これは,印刷の世話人が法王の手前を心配して,勝手に書き入れたものであった。この序文のせいか,法王庁はすぐにこの本のとがめだてをせず,1616年ガリレイ問題が起こったとき,初めて禁書処分にした。

(3) ガリレイの説

1610年,ガリレイは自分の作った望遠鏡で木星の衛星を発見し,金星や水星が月のように満ち欠けをすることや,また,恒星が望遠鏡で見ても点にしか見えないほど遠方の星であることを知り,コペルニクスの地動説を強く支持するようになった。しかし,当時の教会が,地動説は聖書の教えに反するものとして禁止し,ガリレイを激しく圧迫して,その説を否定させたのは有名である。

(4) ケプラーの法則の発見

これについて興味のある方は,ぜひ朝永振一郎著「物理学とは何だろうか()(岩波新書)の第1章第1節「ケプラーの模索と発見」の一読を薦めたい。そこには,朝永調のみごとな語り口で,ケプラーを題材として物理学の進め方の具体例が示されている。以下ではその要約を試みよう。

当時28歳のケプラー(J.Kepler1571-1630)が,師ティコ・ブラーエ(Tycho Brahe1546-1601)のもとに到着した頃(1599),ティコの研究室では当時全くの謎とされていた火星の動き方が中心問題とされ,数学的な能力の抜群であった新任の彼がそれと取り組むこととなった。答えを知っているわれわれとは異なり,ティコのデータは教科書p.5818のようなもので,コンピュータなど全くない時代に手計算でこれから火星の楕円軌道を導き出すことは並大抵のことではない。問題を難しくしているのは(当時すでにコペルニクスによって見いだされていたことだが),太陽の周りを公転している地球から,同じく公転している火星を観測したときの火星の方向を表す図18のようなデータだけしかないこと(もちろん地球の公転の仕方が正確にわかっていればずっとやさしいのだが,それも未知なのである),さらにもっと難しいことには,距離に関するデータ(太陽−地球,太陽−火星等)が全くなく,地球から見た火星と太陽の方向という角度のデータしかなかったのである。ただし,地球と火星の公転周期がそれぞれ365日と687日であることはすでに知られていて,それだけ経過すると,地球も火星も太陽に対してそれぞれもとの位置に戻っていることを足がかりとすることはできた。

ケプラーは,火星の軌道運動を求める仕事をまず先人のやり方,つまり太陽を中心として地球も火星も「一様な回転」をして円運動をするものと仮定して計算し始めた。そして,彼は火星の軌道面と地球の軌道面の間の角度1を精密に決め,さらにこの両平面内の交線の上に太陽が乗っていることを,観測値を用いた計算で確かめた。これは,太陽は火星の軌道面上にあると同時に地球の軌道面上にもあることを示し,太陽が火星と地球の両方に共通した運動中枢であることを意味するものと,彼は正しく解釈した。次に,彼は上記のような距離に関するデータの不足からやむを得ず軌道の形は円で,太陽はその中心点にあり,運動は等角速度であるという,プトレマイオス流の作業仮説を用いて複雑きわまる計算を数年間実行して,ほぼ目的に到達した。だが,角度にして8分だけティコのデータと食い違っていることに気づいた。ケプラーの学問的良心は,このわずか8分という誤差を許さず,それまでの数年間の仕事の不成功を宣言して,一からやり直すことにした。

彼は,今度は一様な円運動の仮説を捨てて,ティコのデータだけから正しい火星の運動を推論する厳密で幾何学的に巧妙な方法を考え出した。その詳細は省略するが,彼は,火星,地球,太陽が一直線に並ぶ「衝」という点を土台にして,地球と火星の既知の公転周期を巧みに用いて,まったく幾何学的な推論によって,角度についてのデータだけから,まず,地球の運行速度を衝における太陽と火星の距離(未知)を単位として計算することができた。その結果は,地球の軌道は円とみなしてよいが,太陽はその中心にはなく,そこから半径の0.018倍だけずれた点にあること。さらに,遠日点と近日点における地球の速さは,そのときの太陽・地球間の距離に逆比例していることを発見した。この最後の事実から,彼はこの関係は遠日点,近日点以外でも成立しているものと考え,ついに今日でいう第2法則,面積速度一定の法則を最初に発見した。次に彼の方法で太陽を原点とした火星の極座標を計算して,火星の位置を示す数個の点が円の上に乗っていないことを発見した。そこで,円でないとどんな曲線を用いるべきかがわからず,まず卵形曲線を考えたが,これでは面積速度一定を満たせないことがわかった。その後いろいろ曲線の形について試行錯誤をしたあげく,ついに火星の軌道は楕円であり,太陽はその焦点にあるという第1法則を,計算の数値のジャングルの中から読みとることに成功した。こうして第2法則が先に,第1法則が次に見つかったのである。火星について成り立つことは他の惑星についても成り立つと考えるのは自然な推論であった。この結果を,彼は「新しい天文学」(1609)という著書にまとめた。第3法則を発見したのはさらに10年後の1618年のことであった。第1,第2の両法則は,地球と火星,そして他の惑星の運動と11つの運動の追究によって得られたのに対し,第3法則は,すべての惑星の運動を比較することによって得られたものであり,これもティコのデータの正確さがあったればこそであった。ケプラーは,ティコに弟子入りする前にも,この種の関係を得ようとしたことがあったが,その時代は不正確なデータを土台にしたために,失敗したのであった。第3法則を発見したとき(161838),彼は17年間の努力が確実に実ったことを確信した。つまり,このように明快な法則に従って惑星が回転していることは,彼にとって,宇宙の創造主である神のみわざの偉大さを示すものと映った。彼は翌年,この発見を「世界の調和」(1619)という著書の中にまとめて発表した。

ケプラーの3法則は,ティコ・ブラーエが行った持続的・系統的な天体観測による多量で精度の吟味された信頼できる観測データに基づいていたという意味において,近代物理学の意味で初めての自然法則であったといえよう。ケプラーが,惑星運動が円ではなく楕円であることを見いだしたことは,その外的な原因としての太陽による引力の問題にいきつかざるを得ない。こうして,ケプラーの法則は,ニュートンによる万有引力の発見を準備するものとなった。

1この角度はきわめて小さいので,ふつうの計算では地球と火星が同じ平面内にあるとしてよい。

 

 

惑星等についての定数

 

 

赤道半径

質量

自転周期

軌道半長軸

公転周期

離心率

T2/r3

 

km

kg

〔日〕

rkm

T〔年〕

e

〔年2/天文単位3

水 星

2440

3.302×1023

58.65

5.79×107

0.2409

0.2056

1.000

金 星

6052

4.869×1024

243.02

1.08×108

0.6152

0.0068

1.000

地 球

6378

6.047×1024

0.9973

1.50×108

1.0000

0.0167

1.000

火 星

3397

6.419×1023

1.026

2.28×108

1.8809

0.0934

1.000

木 星

71492

1.899×1027

0.414

7.78×108

11.862

0.0485

0.999

土 星

60268

5.686×1026

0.444

1.43×109

29.458

0.0555

0.995

天王星

25559

8.685×1025

0.718

2.88×109

84.022

0.0463

0.995

海王星

24764

1.025×1026

0.671

4.50×109

164.774

0.0090

0.995

冥王星

1137

1.472×1022

6.387

5.92×109

247.796

0.2490

0.993

1738

7.348×1022

27.3217

3.84×105

27.3217

0.0549

-

太 陽

696000

1.989×1030

25.38

-

-

-

-

 

1天文単位=1.49597870×1011m

 

出典:2004年版「理科年表」より

 

中心力と面積速度

1つの質点Pにはたらく力の方向が,つねに空間内の固定された1定点Oと質点Pとを結ぶ直線上にあり,かつその力の大きさが2OP間の距離rのみの関数である場合に,この力を中心力とよぶ。中心力によって運動する物体に関する一般的な法則や理論を知っておくことは重要である。というのは,自然に見られる多くの力は中心力であり,この力で多くの自然現象が説明できるからである。たとえば,太陽の周りをめぐる地球の運動も,水素原子核の周りをめぐる電子の運動も,原子核によるα粒子の散乱現象も,中心力に基づく現象である。

中心力による物体の運動については,次のようにいえる。

(1) 質点が中心力を受けるときは,質点は平面運動を行う。

(2) 質点が中心力の作用を受けて運動するとき,力の中心Oに関する面積速度は一定である。

(3) 中心力は保存力である。

(2)の証明 ニュートンの導き方 プリンキピアにあるニュートンの説明では,下図のように,一定の非常に短い時間の間隔ごとの位置変化を考える。時間の間隔をΔtとする。力の中心をSとし,AからはじまってΔtごとの質点の位置をBCDE,……とする。

AからBまで力がはたらかないで等速直線運動を行い,ABだけ動くとする。Bを過ぎても力が依然としてはたらかなければ,Δtの間にABに等しいBcを動いてcに到達する。実際には,BBSの向きに中心力(力にΔtを掛けた力積)がはたらく。そのため,Bを通った後のΔtの間にcに着く代わりにCに着くとする。BSの向きの力(力積)によるのであるから,cCBSに平行である。したがって,

SBC=△SBc

BcABであるから,△SAB=△SBc

それゆえ,△SBC=△SABとなる。図にV点をとったのは,Bで質点に加わる力積だけによる質点の変位BVに平行にこれに等しくcCをとるためである。

このようにして,

SAB=△SBC=△SCD=……

が得られる。

 

 ニュートンの万有引力の発見

ニュートンは,大学を卒業して間もない24歳の頃,16651666年にイギリスでペストが大流行して大学が閉鎖され,故郷の田舎に帰っていた約1年半の間,独力で微積分法と,光と色の新しい理論と,万有引力の法則という3つの大発見を成し遂げていた。のちに1666年は驚異の年とよばれるようになった。この年,彼は月にまで及ぶ重力について考えはじめ,まず,ケプラーの第3法則をその手がかりとした。もっとも彼は,この法則を学生時代のノートブックの中程に「哲学的諸問題」と題される45項目の中の宇宙論,運動論に関する項目で「太陽からの主惑星の平均距離はそれらの回転周期の1.5乗に比例することに注意せよ」と書いている。そのころまだ一般に受け入れられていなかったケプラーの考えを「カロリーナ天文学」という本から学んだらしい。彼は,このケプラーの法則から,惑星をその軌道に保持する力は,惑星がその周りを回っている中心からの距離の2乗に逆比例しなければならいことを導き出したという。

そのときの彼の議論の進め方は,本質的には教科書に書かれているものと同じである。1666年頃に,彼はこの考えで,月をその軌道に保つのに必要な力と,地球表面における重力を比較して,それらがほぼ同じ式で表されることを見いだした。つまり,惑星をケプラー運動させている力が逆2乗則に従うとすれば,それと同じ力が地球から月にも,また地球上の物体(たとえばリンゴ)にもはたらいているとして計算が合うことを確かめようとした。彼の論旨を今日流に表現すれば,およそ次のようなものであった。

図において,月Mが地球Eの回りを等速円運動しているとする。もし地球が月を引かなければ,軌道の接線方向に1秒間にvだけ進む。しかし実際には地球の引力のためにMBに沿って進む。これは,月が1秒間にABだけ地球に向かって落下したことに相当する。軌道の半径をRとすると,円に対する接線の定理から,

AM2AB(AB2R)2RAB

月の速さvは当時知られており,Rもわかっていたし,落下距離が時間の2乗に比例することもわかっていたから,AB (上の計算ではt1としてある)そして,ニュートンは地上でリンゴの落下距離xと比較して,g(ただし,rは地球の半径)におよそ等しいことを確かめた。

 

ところが,この一致は「かなりよく一致」してはいるが,どうしても正確に一致させることはできなかった。それは,ニュートンが当時の知識に基づき,緯度1度を60マイルとして計算したからであって,実際には69.5マイルであったためである。ニュートンは,月を軌道に保つ力はこの微小な不一致のために,重力の他にデカルトの渦巻き(宇宙はエーテルが満たし,エーテルの渦巻きが惑星を動かしている,というもの)も影響しているのであろうと考えて,それ以上追究せず論文にして公表もしなかった。これはペストを避けて故郷で一人孤独で思索し計算したときのもので,この計算は,羊皮紙に書かれた母の貸借契約書の裏面に書かれている。よく引用される「庭のリンゴの木陰に座って黙想していたとき,リンゴが落ちたことから思い至った」という話で,おそらく1666年の晩夏から秋のことであろう。このようないきさつでこの発見は公表されなかった。こうしてニュートンが動力学の研究に戻るのは,それから13年後,フックの刺激によってである。1679年にフックと激しい文通をすることになるが,この最初の手紙の中で皮肉にもフックがフランスのピカールの新しい測地線の測定値を知らせてきて,これに基づく地球半径の正確な値を用いて,月の運動についての重力の逆2乗則の検証が今度はうまくいったのである。しかし,いずれにしろフックの挑戦がニュートンに彼の力学を完成させ,それを「プリンキピア」(1687)にまとめあげて発表させる原因となったことは確かである。

参考文献:島尾永康「ニュートン」(岩波新書)

吉仲正和「ニュートン力学の誕生」(サイエンス社:ライブラリ科学史1)

フント「思想としての物理学の歩み()(吉岡書店)

 

万有引力の法則

惑星に外から何の力も作用しないものとすれば,運動の第1法則に従って,その惑星は永久に静止しているか,あるいは等速度運動をするはずである。ところが,惑星は太陽の周りを回っており,永久に太陽系から飛び去ってしまうことはない。そこで,ニュートンはケプラーの法則から,宇宙の中のあらゆる物体は,互いに引力で引き合っているという万有引力の法則を導き出したものである。

ニュートンの万有引力の法則は,ケプラーの3つの法則から求められ,逆にニュートンの万有引力の法則と運動方程式から,ケプラーの3つの法則のすべてが得られるから,ケプラーの法則とニュートンの法則とは同等のもののようにも思える。

しかし,ケプラーの法則は,惑星の運動の関係を示すものに過ぎないが,ニュートンは太陽と惑星との間ばかりでなく,地球と月との間にも,地球の一塊の石の間にも,このような引力がはたらいていることを洞察し,さらに推し進めて,一般に,宇宙に存在するいかなる2つの物体間にも,この万有引力が存在していることを推論した点が大切である。すなわち,ニュートンの法則は,その根本を捉えた本質的に原理的な法則であって,惑星の運動以外のものにも適用できるという点で,はるかに意味が重大である。

太陽と惑星,地球と月,地球と地上の物体との間に,それぞれはたらく力が同じ性質の力(万有引力)であるということを,ニュートンはどのように推論したのであろうか。教科書p.5960の内容を,もう少し詳しく高校生向きに解説してみよう。

(1) 太陽と惑星の間にはたらく力については,高校生向きに円運動の場合について考えてみよう。惑星の質量をm,公転周期をT,公転半径をr,角速度をωとすれば,円運動から,a2r (2π/ T) 2,ケプラーの第3法則より, T 2kr3(kは比例定数),運動の第2法則より,maFが成り立つから,太陽が惑星を引く力Fは,次式のように表されることになる。

F ……………@

 

(2) 木星の周りを回る4つの衛星,土星の周りを回る5つの衛星に関して,ケプラーの第2法則,第3法則の成り立つことが,観測結果からわかっていた。このことから,木星や土星が,それらの衛星に及ぼす力が,@式の力と類似の式で表されることがわかる。この場合のmは,衛星の質量を表す。

(3) 月についても,観測結果から,ケプラーの第2法則の成り立つことがわかっていた。また,地球が,月など他の物体に及ぼす力が距離の2乗に反比例することは,次のようにして説明された。

月が等速直線運動をせず,地球の周りを,ほぼ等速円運動しているのは,地球の引力F1がはたらくためと考える。そのため,地球に向かって落下する加速度a1は,月の質量をm1とすれば,運動の第2法則より,

F1m1 a1        ……………A

となる。一方,月の公転半径をr1,公転周期をTとすれば,a1は,月が円運動しているとして,次のようになる。

 ……………B

 

また,地表近くで,リンゴなどの質量m2の物体を落下させたときの加速度a2は,地球上での重力加速度gに等しく,物体にはたらく地球の引力(重力)F2とすれば,運動の第2法則を用いて,

F2m2a2m2g     ……………C

A,B,C式より,

……………D

 

 

ここで,gr1Tの観測結果を代入すると,D式の値は約602(=3600)となる。

一方,地球の半径(地球の中心から地表の物体までの距離)r2として,F1F2が@式で表されるような力であると仮定すれば,

 ……………E

 

 

当時知られていたr1r2の値を代入すると,E式の値も約602となり,D式の値と一致する。すなわち,地球が月を引く力と,地球が地表の物体(リンゴなど)を引く力は,@式と同様な式で表されることがわかる。この場合のmは,月や,地上の物体である。

(4) 惑星(質量m)が太陽(質量M)に@式で表されるような力で引かれているならば,作用・反作用の法則によって,太陽も惑星に同じ力で引かれていなければならない。したがって,F (k1k 2は比例定数)

 

この式より,G(Gは,太陽にも惑星にもよらない定数)

 

したがって,次式を得る。

F   ……………F

 

(5) ニュートンは,F式の力が,太陽,惑星,衛星,地上の物体など,あらゆる物体間ではたらくと考えた。この万有引力を考えることにより,太陽が土星や木星に及ぼす力と,木星と土星との間にはたらく力との比を求め,土星や木星の摂動を説明しようとした。また,太陽が月に及ぼす力と地球が月に及ぼす力との比を求め,月の摂動も説明した。

その他,地球や木星を回転楕円体と考えて,極半径と赤道半径の差を説明し,彗星の軌道の予測をし,潮の満ち干の理論を述べ,太陽,地球,木星,土星の質量の比を求めた。

 

 キャベンディッシュの実験

実験室内で2つの物体の間にはたらく万有引力の大きさを測定することは,大変難しいことである。地上の物体間にはたらく万有引力は非常に小さいから,できるだけ物体間の距離を小さくしなければならない。しかし,あまり距離を小さくすると,万有引力よりずっと大きい力ではたらく分子間力などの影響がでてくる。また,わずかな床の振動や空気の動きにも測定は影響を受けよう。

ニュートンの没後4年目に生まれたキャベンディッシュ(H.Cavendish1731-1810)は,万有引力定数Gを初めて測定した。宇宙の根元的な力である万有引力と電磁気力がともに距離の逆2乗則に従うことは,空間が3次元であることと密接に関連しているようで,何か深い意味があると思われる。ニュートンは,太陽と惑星に関するケプラーの法則や,月の公転周期などを万有引力の法則から説明することに成功したが,このような万有引力の法則の間接的な証明でなく,実験によって2物体間にはたらく万有引力の大きさを直接に測定できれば万有引力定数の値がわかり,それによって地球や太陽の質量も決めることができる。ニュートンの段階では万有引力定数の数値は何でも構わなかったものが,キャベンディッシュの実験によってその絶対的な値が決まり,これは天体のように直接質量を測れないものの質量の絶対値を与え得るので,科学の進歩にとって決定的な一歩を意味した。

ところで,キャベンディッシュその人はイギリスの科学者の中で最高の金持ちだが,金銭には無関心で,ただそれによって自由に研究に打ちこめることだけを喜んだという。彼はたいへんな変わり者で,一生独身で過ごし,自分のした研究の多くを発表しなかった。1771年頃から電気力についての実験をし,クーロンがその法則を発見した1785年の10年ほど前に,今日「クーロンの法則」とよばれているものにたどりついていたようである。1870年キャベンディッシュの本家からケンブリッジ大学に物理学の研究所をつくるための寄付があり,これが有名なキャベンディッシュ研究所となる。その初代の所長がマクスウェルであり,彼がキャベンディッシュの遺稿を整理して出版したものの中に,上記のクーロンの法則等が含まれていた。なお,このキャベンディッシュ研究所は,今日まで世界のトップ・レベルの研究所として名を成し,20名近くのノーベル賞受賞者を出している。

クーロンはねじりばかりとよばれる精密なはかりを用いてクーロンの法則を直接的に証明したが,その約10年後の1798年,同様なねじりばかりを用いてキャベンディッシュは,万有引力定数を測定した。図のように,距離rを隔てた質量Mmの間の万有引力によって生じる偶力による糸のねじれの角度θ0を図の鏡による光の反射から測り,Mのないときの自由振動の周期Tとから万有引力定数Gを定めることができる。結果のみを書くと,

 

を得る。キャベンディッシュの得た値はG6.754×1011Nm2/kg2であった。

この値から計算した地球の平均密度は5.5g/cm3という値で,地表の岩石の平均密度2.8g/cm3よりうんと大きく,彼がおそらく地球の中心部に地表より重い何物かが存在することに気づいた最初の人であったろう。なお,近接物体の影響などは,この実験がMをもってきたために生じた万有引力による平衡点からのずれを測定するもので,たとえ近くに別の重いものが存在していたとしても,その影響は直接には効いてこないし,間接的な影響があったとしても距離の逆2乗で弱くなることにもよって,それは上記の有効数字よりさらに数桁下に関与するのみと考えられる。

その後,Gの測定はさらに100年以上にわたって本質的に似たような手段で行われてきた。現在の値は6.67259×1011であるから,キャベンディッシュの値の誤差は約1.2%ということになる。

参考文献:Newton別冊「世界の科学者100人」(教育社)

山本義隆「重力と力学的世界一古典としての古典力学」(現代数学社)

A.H.フック「重力と地球」(共立出版社・モダンサイエンスシリーズ)

 

 

大きさのある物体間の万有引力

質量分布が球対称である物体からの万有引力は,全質量がその中心に集中した質点として取り扱える。このことは,万有引力による位置エネルギーから,次のようにして初等的に証明できる。

密度ρが一定な半径Rの球殻の中心Oから距離rの点Pに質点mがあるとき,この球殻と質点mの間にはたらく万有引力の合力を考える。球殻の質量Mは,M4πR2ρである。いま,Oを頂点として,OPとなす角がθθΔθをなす円錐が球殻を切る部分を考えよう。

 

このリング上の部分の質量は

2πR sinθRdθρ2πR2sinθρ

sinθdθ

 

であり,Pからはどの部分も(が無限小ならば)等しい距離rPQにある。そこで,このリングと質点mの間にはたらく万有引力の位置エネルギーdUを求めると,

……(1)

 

PQOに余弦定理を用いて,

rPQ2 (θ)r2R22rRcosθ ……(2)

このrPQ2 (θ)のを式(1)に代入して,0からπまで積分すれば,球殻と質点との万有引力による位置エネルギーUが求められる。

 ……………(3)

 

(2)θで微分すれば,

2 rPQd rPQ2rRsinθ  

 

また,rPQ2(θ0)r2R 22rR(rR) 2rPQ2(θπ)(rR) 2より,

 

 

 

となる。rRのときは,U(r)は,rに無関係な定数であり,力はUrで微分したものだから,球殻内の質点には力ははたらかず,球殻外の質点に対しては,中心Oにある質量Mの質点との万有引力の関係が得られる。

質量が一様に分布した球殻内の質点には万有引力が(クーロン力でも同じ)全く力がはたらかないことは,直観的には次のようにして導ける。

一様な球殻内の点Pに質点mがあるとする。Pを頂点とする無限小の立体角をもった無数の円錐面を考える。今,そのような円錐面の中の向かい合った2つの円錐が球殻を切り取る部分の面積をdSAdSBとする。dSAdSBは,同じ立体角の切り取る部分だからその面積はrPA2rPB2に比例する。もちろん,dSAは一般にPAと斜めに交わるが,その斜めの角度がABで等しい。ゆえに,dSAdSBの部分の質量はrPA2rPB2に比例する。一方,(dSAdSBの部分の単位質量が別に及ぼす万有引力は1/ rPA21/ rPB2に比例する。したがって,dSAdSBの部分がmに及ぼす万有引力の合力は0となる。こうして常に向かい合った部分の及ぼす万有引力が打ち消しあうから,結局,球殻の中では万有引力の合力は0である。

 

 

この論旨を見れば,結局3次元空間の中の面の面積が2次元であることの2が,逆2乗則の2とバランスしていることが理解できよう。

参考文献:喜多,宮武,徳岡,山崎,幡野著「基礎物理コース・力学」(学術図書出版)

 

太陽系の多体問題

ある惑星Aの運動を考えるとき,その運動の本質を決めるのは太陽からの万有引力である。仮に世界に太陽と惑星Aしか存在しないとすれば,この2体問題は正確に解けて,ケプラーの法則に従う運動をすることになることはよく知られたとおりである。ところが,太陽系では,その全質量の99.866%が太陽に属するが,太陽以外の惑星等が及ぼす影響は,小さいとはいえ0ではない。これら他惑星からの引力を摂動力という。太陽と惑星AB3つの天体が互いに万有引力を及ぼし合いながらの運動を3体問題とよぶが,昔からよく知られているように,3体問題は(特殊な例外の場合を除いて)正確には絶対に解けない。そこで,Aの運動に対するBの小さな摂動力を考慮して,3体問題を近似的に解く努力が19世紀から20世紀にかけての天体力学の主要な課題であった。この摂動計算法が,のちの量子力学の発展にもかなりの役割を果たした。摂動力はきわめて微弱であるが,何億回も公転しているうちには影響がなくはない。3体問題は,解析的には解けないが,今世紀の後半に入ってからは,コンピュータを用いて数値的にその軌道を計算して求めることが格段の進歩を遂げた。昔の摂動計算によるものよりは,近い未来についてははるかに詳しく正確な軌道を求めることができるようになった。その結果わかってきたことは,3体問題では最終運動といわれるある種のパターンに落ちつくらしいということである。しかし,いわゆるカオス的なこと,つまり,微小な初期条件の差から大きな目に見える変化が生じうるので,正確には,遠い未来には何が起こるかは何ともいえないというところではないだろうか。もちろん人類の歴史のような数万年ぐらいでは,諸惑星はおとなしくケプラー運動を繰り返すといえるだろうが,数億〜数十億年先となると,コンピュータでも追いつかないらしい。たとえば,地球の自転は潮汐摩擦によってしだいに遅くなり,1日の長さが10万年に1秒の割合で長くなり,その間に月は地球から200km遠ざかり,1月の長さが30分伸びるといったような変化が生じるといわれる。もちろん数億年を考えれば,かつて恐竜を絶滅させたような何か(木星に衝突したシューメーカ

ー・レビすい星のような)が地球にぶつかってくるという確率もあるだろう。

参考文献:堀源一郎「太陽系」(岩波新書)

 

地球の形と遠心力

地球が自転しているために生じる遠心力によって,地球の形が赤道が膨らみ,極が扁平な回転楕円体状となるだろうことは,すでにニュートンが彼一流の幾何学的な複雑な計算の結果として予言していた。それは,当時対立していたデカルトの渦動圧力によって縦長のメロン状となるという説と逆のものであった。ニュートンは,理論的に地球の扁平率が1/230となることを求めたが,その後,オイラー,ラグランジェ,ラプラスらによって発展させられた解析力学によっても1/231で,その値はほとんど変わらなかった。ただし,これらの計算は,地球を質量分布の一様な液体と仮定して得られたものである。それに対して,ホイヘンスは,逆の極端なモデルとして,地球の全質量がその中心に集中している場合を考え,1/578という扁平率の値を得た。一方,実測の結果は1/298で,両者の中間の値であった。これは,地球の実際の密度分布がこの2つの仮定の中間であって,地球の中心部に存在する鉄を主成分とする核の存在によるものである。また,液体としての粘性,固体としての弾性等多くの要素も絡んでくる。

歴史の話に戻すと,地球が赤道方向に膨らんだ回転楕円体状であるか,縦長のメロン状であるかは,極の近くと赤道の近くでの緯度1度あたりの子午線の長さを比べてみればよい。ところが,当時の実験の精度では,なかなかはっきりせず(緯度1秒あたりで約1%の相違しかない),完全な決着がついたのは,ニュートンの没後10年ほど経過していた。なお,上記の扁平率の値は,地球の半径という当時では正確に測りにくい量で表しているが,極と赤道における重力加速度gPgeを用いると,密度分布が一様な液体モデルの場合には,(gPge)/ geと表せる。

今日,人工衛星を用いて得られた扁平率の値は,1/298.257となっている。ただし,月や太陽の潮汐の効果によって,この数字の末尾はいくぶん不確かである。

参考文献:山本義隆「重力と力学的世界(7)(現代数学社)

坪井忠二「重力 第2版」(岩波全書),「理科年表」(丸善)

 

 無重力状態

万有引力が物体の質量mに比例しているため,教科書p.66にあるように,地球を回る人工衛星の中では無重力状態になる。これを地上から見ると,重いカプセルも中にいる人間も,同じ速さで同じ軌道上を回ることになるので,カプセルに対して人間が浮いているように見える。これをカプセル内の人間が見れば,万有引力と遠心力がつり合って,人間やカプセルに力がはたらいていないように見える。

地表付近の重力の場合も同様なことが起こる。重い飛行機も,中に乗っている人間も,はたらく力が重力のみの場合は,全く同じ放物線を描いて飛ぶことになる。このことを利用して,宇宙飛行士の無重力訓練が行われている。実際には,飛行機にはたらく空気の抵抗力を無視することができないので,その空気抵抗力を打ち消すだけの推力で飛行機を飛ばせる。その結果,飛行機にはたらく力は重力だけの場合と同じになり,内部の人間は飛行機に対して浮かんだようになる。

たとえば,大型の輸送機を使い,高度約7300mから上昇角45度で約8500mの所まで急上昇した後,エンジンの推力を急に落とし,空気抵抗力を打ち消す程度の推力にする。すると,飛行機は放物線を描いて飛ぶことになる。このような方法で,1回につき約30秒ほど無重力状態を作り出すことができる。

 

重力と無重力状態・無重量状態

高校物理では,教科書p.62で述べているように,「重力は万有引力と遠心力の合力」であり,物理Iで述べたように,「重力の大きさのことを重さあるいは重量という」。重さ・重力という用語は,小学校,中学校でも用いており,そこではプリミティヴな感覚でこれらを捉えている。重力は,物体を地表に対して静止するように支えるとき,その支える力と大きさが等しく,逆向きの力のことであり,その大きさが重さである。いろいろなケースを問題にしなければこの定義で十分である。しかし,たとえば,水中の物体は水の浮力を受け軽くなるというが,これは重さが小さくなるというプリミティヴな感覚ではないのか。それならば,空気中では空気の浮力がはたらいているから,「重力の大きさを重さという」という定義に問題が出てくる。

次に,地球自転による遠心力を加えたものを重力というなら,地球の周りを等速円運動する宇宙船の中では,万有引力に宇宙船の等速円運動による遠心力を加えたもの(0になる)を重力といわなければならない。綱の切れたエレベーターの中では,その位置での万有引力と遠心力の合力に慣性力を加えたもの(0になる)を重力と考えなければならない。これが無重力状態であり,重さも0であるから,無重量状態でもある。

宇宙船の中で起こっている現象は,以前は無重力状態といわれていたが,無重量状態というべきであるとの議論があり,無重量状態といういい方がかなり使われるようになってきた。この考え方は,「無重力状態というと地球から十分に離れていて,地球の重力が作用しなくなったように誤解される。重力がなくなったわけではなく,重力と遠心力がつり合っているだけだ。したがって,無重量状態というほうが適切だ。」というものであるが,ここでいう重力とは万有引力のことで,高校での重力の定義と一致していない。注意を要するのは,大学の研究者を中心に,万有引力のことを重力といういい方がよくされるということである。万有引力定数のことを重力定数ということもある。重力質量といういい方も同様のものである。この点,英語では,引力(gravitation)と重力(gravity)はかなり厳密に使い分けられている。物理教育関係の各種の用語集を見ても,無重力状態と無重量状態がそれぞれの主張のもとに掲げられているし,国語辞典,マスコミも同様である。

参考文献:平成5年度全国理科教育大会(福岡大会)研究発表資料集p.20

または,日本理化学協会研究紀要Vol.20(1993)p.8川内 正

「生徒を混乱させる重力,重さの指導」

 

 

アインシュタインの等価原理

アインシュタインは,一般相対性理論をつくる出発点として,この等価原理と一般相対性原理を用いた。それは,ニュートンの運動方程式maFの左辺に現れる加速されにくさとしての慣性を表す慣性質量m1と,万有引力の法則Fの中に現れる重さ(重力質量) mGの同一視から出発したものである。両者は概念としては異なる(つまりそれを測る実験法が原理的に異なる)から,両者の単位は本来別々であっても構わないから,両者が等しいというのは正しくなく,両者の比がすべての物体について共通であるというべきである。以下ではこのことを単純に両者は等しいということにする。そこで,等価原理とは,

『慣性質量と重力質量とは本来同一のもので,慣性系に対する加速度によって生じる慣性力と重力とは,力学的には原理的に区別できないものである。』と表現できる。アインシュタインは,この原理を有名なひもの切れたエレベータの中での無重力状態の出現という思考実験で考えついたとされている。このような自由落下している加速度系や,エンジンを停止している人工衛星の内部は無重力状態になっている。しかし,地球や太陽による(真の)重力は場所によっても時間によっても変化するから,全時空にわたって完全に重力を消しうる加速度系は存在しない。よって,慣性力と重力との同等性は,時間,空間的に限られた狭い領域に対してのみ成り立つのである。そこで等価原理は, 『適当な基準系(局所慣性系という)を採用すれば,任意の世界点の近傍のごく小さい領域で重力の効果を消し去ることができる。』と表現することもできる。そして,このような局所慣性系には特別なものがなくすべて同等なもので,物理法則は同じ形で与えられるとの仮定を広義の等価原理ということもある。このように,慣性系間のローレンツ変換に限って議論をしていた特殊相対性原理を,重力を含ませると必然的に加速度系まで考察しなければならなくなり,特殊相対性原理を拡張して,『すべての物理法則は,任意の座標系において,いつも同じ形で表される。』という一般相対性原理に近づくことになる。

もともと等価原理は重力質量と慣性質量の同等性の実験的検証を土台としている。これは有名なエートベッシュの実験(1896)で,106程度の精度で,さらに最近(1973)では1012の程度の精度でそれが確かめられている。このような直接的検証でなくとも,この原理を土台とした一般相対性理論の予言がますますよく実験と合うという事実(たとえば1993年度のノーベル賞は連星パルサーによる一般相対性理論の予言する重力波の存在を間接的ながらはっきりと実証した重力研究に与えられている)からも,さらに確実性を増したといえよう。

中野董夫「物理学入門コース9・相対性理論」(岩波書店)

「物理学辞典」(培風館),「理化学辞典」(岩波書店)

 

 

万有引力による位置エネルギーと重力による位置エネルギーの関係

地球の半径をR,質量をMeとし,質量mの物体が地面および地上hの高さにあるときの万有引力による位置エネルギーをそれぞれU0およびUとすると,

 

 

 

となる。そこで,教科書p.63(33)により,GMegR2ゆえ,代入してGMeを消去し,また,hRとして,と近似すると,

 

 

となる。したがって,hRのとき,すなわち地面付近では,UU0mghとなり,われわれが重力による位置エネルギーとよんでいるものは,UU0にほかならないことがわかる。

 

宇宙速度

(1) 第1宇宙速度 水平方向に打ち出した物体が,地球表面すれすれに回る人工衛星となるための速度で,物体の質量をm,地球の質量をMc,地球の半径をR,第1宇宙速度をv1とすると,円運動の運動方程式により,

 

(2) 2宇宙速度 地表から打ち上げた物体が地球の引力を振り切って無限遠に脱出する速度で,その速度をv2とすれば,

v2=√2v111.2km/s

いずれの宇宙速度も,地球に対する速さであるから,実際のロケットの打ち上げは,なるべく低緯度の所で東向きに行い,地球自転の線速度を利用している。

(3) 軌道の離心率e 第1宇宙速度v1と第2宇宙速度v2の中間の速度v0で物体を水平に打ち出した場合,物体は地球を1つの焦点とする楕円軌道を描く。楕円の半長軸をa,半短軸をb,楕円の中心から焦点までの距離をae(e離心率という)とおくと,b2a2a2e2の関係が成り立ち,e0なら円となる。

物体の力学的エネルギーをEとすれば,発射するときの速度をv0として,

E

 

 

となる。このEを用いると,離心率eは,

 

となることが知られている。ここで,v1v0v2のときは楕円であるが,

v0v1のとき,Eで,e0となり円軌道となる。

v0v2のとき,E0で,e1となり,これは放物線軌道となる。

v0v2のとき,E0で,e1となり,これは双曲線軌道となる。

 

 

(4) 第3宇宙速度 第2宇宙速度以上の速度で打ち上げた物体は,速度がそれほど大きくなければ,太陽を回る人工惑星となってしまう。太陽の引力を振り切って太陽系から脱出するのに必要な最低の速度v3を第3宇宙速度という。その値は16.7km/sである。地球の公転軌道上で,第2宇宙速度と類似の計算を太陽に関して行うと,太陽からの脱出速度は,地球の公転速度29.78km/s (42.11km/s)となる。地球の引力の影響を考慮すると,物体に16.7km/sの第3宇宙速度を与えると,地球の引力圏(地球の引力が優勢な半径92.4kmの範囲)の出口で,地球の公転速度の方向に,地球から見て12.33km/sの速度となり,地球の公転速度と合わせて,42.11km/sの脱出速度が得られる。

 

◆楕円軌道・放物線軌道・双曲線軌道

万有引力を受ける物体に対する運動方程式は,ベクトルで表現すれば,

 

 

となる(この微分方程式の解き方は,たとえば先に引用した喜多他著「基礎物理コース『力学』」(学術図書出版,1974)等に詳しいので省略する)。この解は,離心率をe,角運動量をL,力学的エネルギーをEとして,

 

 

で与えられ,式(2)が軌道の形を与える。この式は,極座標で表した2次曲線の式であり,離心率eによって,

E0のとき,e1で,双曲線

E0のとき,e1で,放物線

E0のとき,e1で,楕円

となる。

(2)で,e1ならcosφ0=−1/eを満たす角φ0が存在するから,そこでr→∞となり,上のφ0が漸近線の方向を与える双曲線を表し,e1ならば,cosφ=−1,つまり,φπの方向でr→∞となるのだから,これは放物線を表すことになる。また,e1ならば,式(2)の分母が0となるようなφは存在しないから,あらゆるφの方向に対して有限のrが存在し,2次曲線の中でそのような曲線は楕円であることがわかる。

 

 

 

 








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