トップ物理II 改訂版1 力と運動>第2章 円運動と単振動>3節 単振動

3節 単振動

 

単振動と等速円運動

単振動の式,初期位相

単振動の基本的理解

単振動の例

単振り子の解析(変位のとり方)

単振動の力学的エネルギー

 

 

単振動と等速円運動

単振動がどんな運動かがよくわかるようにと,よく知られた等速円運動を用いてイメージ化をする場合には十分に注意が必要である。「等速円運動の正射影は単振動である」と簡単にいってしまうが,この表現では,物体が単振動するという観点が薄れてしまい,等速円運動を横から見た様子を単振動というと思う生徒も多い。等速円運動する物体を横から見たときの運動と全く同じ運動を,物体が一直線上でするとき,この運動を単振動というのである。この観点を見失わないようにしておかないと,誤解したまま先に進むことになり理解が不十分になる。「等速円運動する物体を横から見たときの運動と同じ運動を物体が一直線上でするときが単振動である」なら,「等速円運動する物体の速度の正射影は,単振動する物体の速度と同じである」し,「等速円運動する物体の加速度の正射影が単振動する物体の加速度と同じである」のだろうということを強調して進めたい。

得られた式から,単振動では振動の両端で速度は0で,振動の中心では加速度が0になることや,加速度と変位は符号が逆であることがわかるが,これらは振動という運動の本質として予測できることであることも,どこかで指導しておくとよい。

 

単振動の式,初期位相

教科書p.4849(14)(16)(17)を覚えて,すべての単振動がいつもこれらの式で表されると思いこむ生徒も多い。一般的には,初期位相を考える必要があるのだが,そのような式を導入段階で扱ったのでは敷居が高すぎて,かえって理解の妨げともなる。

基本的な問いなどを扱った後,「この3つの式は,変位xxAsinωtと表されるように時刻t0を決めた時の式なので,そうでなければ,当然違ってくる。」ということにふれておくことが必要だろう。この場合,伸ばしたばね振り子から手を静かに放した瞬間をt0とすれば,変位を表す式は,xAcosωtなどとなるという例から理解させることができる。

さらに,教科書p.50参考『初期位相』の式A,B,Cのようになる場合もあることにふれておくとよい。

 

単振動の基本的理解

振動現象の原理を理解させるには,次の2点をおさえておくとよい。

@物体が振動するためには,つねにつり合いの位置に戻そうとする力(復元力)が必要であること。

Aつり合いの位置に戻っても,物体には慣性があるので,通り過ぎてしまうこと。

この2つから,単振動の周期Tが,復元力の比例定数Kや,物体の質量mと,どのような関係にあるかについても,およその理解が可能である。

・復元力の比例定数が大きいほど,つり合いの位置に戻すはたらきが強いので,周期は短くなる。

・物体の質量が大きいほど慣性が大きく,運動状態は変化しにくいので,周期は長くなる。

単に,単振動の周期の公式Tを覚えるのではなく,このように物理的な実感をもって数式を見ることが理解を深めることにつながる。

単振動の学習では,数式の扱いが複雑になりやすく,そこでつまずく生徒も多く見られることから,生徒の学習状況を見ながら,物理現象の本質が理解されるよう,適切に指導することが重要である。

 

単振動の例

演習問題の題材にもなっているが,次のような単振動の例を紹介することで,ばね振り子や単振り子だけでなく,様々な現象の理解に役立つことがわかるとともに,生徒の興味を増すことができる。

 

単振り子の解析(変位のとり方)

単振り子の運動を扱うとき,近似の仕方と変位のとり方が何通りか知られている。正確にいえば変位のとり方が何通りかあり,それに応じて近似の仕方が変わるということである。

教科書に示したものは質点振り子(振れの角が小さいとは限らない)としての扱いの中で振れの角が小さいとするものである。変位は軌道に沿って,すなわち円周に沿ってとり,加速度も円周に沿った運動の加速度となっている。詳しく示すと,次の〔解法1〕である。

〔解法1〕 図のように,接線方向にτ軸,糸の方向にn軸をとって考えると,おもりの速度をVとして,

τ方向: ……@

 

n方向: ……A

が成り立つ。ここで,円の弧の長さをxとすれば,xであり,

 

だから,@式でと近似すれば,次式を得る。

 

なお,変位の大きさを点Oからの距離と取る(下図)方法もあるが,変位と接線加速度が同一直線上になく,あまり物理的に筋の通ったものではない。この場合は,「弦の長さ≒弧の長さ」とした上で,上記〔解法1〕と同じ近似を用いる。

生徒がよくする間違いは,運動方程式に表れる-mgsinθが,重力mgと張力Sの合力であると思うことである。v0のとき以外は,Smgcosθはつり合っておらず,重力mgと張力Sの合力はmgsinθに等しくない。mgsinθは合力の接線方向の成分である。別のいい方をすると,θは最大の振れの角ではなく,振り子が運動中のある状態での振れの角である。

別の方法を次に〔解法2〕として示す。

〔解法2〕最下点を原点にとり,水平方向にx軸,鉛直上向きにy軸をとると,

x方向:max≒−Ssinθ  y方向:may≒−Scosθmg

また,yllcosθである。ここで,θ0として,cosθ1とおくと,

y0  ∴ ay0 Smg

したがって,

max≒−mg sinθ≒−mgθ

これと似た方法で,次の方法は表面上は近似をしていないので,高校生向きと思われそうであるが,変位と加速度が同一直線上になく,物理的に筋の通ったものではない。

最大の振れの角は微小なので,物体は水平な直線上を動くとする。変位がxのときの振れの角をθとすると,である。物体を動かしているのは,重力mgと張力Sの合力の接線方向の成分である。したがって,運動方程式は,

ma=−−mgsinθ

 

同様に変位を水平な直線上にとり,重力mgと張力Sの合力が水平方向になり(合力の見方が物理的に誤り)としたり,あるいは, (合力の見方が物理的に誤っていて,かつxのとり方で〔解法1〕との混同がある)とするのも,高校生にわかりやすくした工夫のようであるが,物理的には誤りである。

 

単振動の力学的エネルギー

教科書では水平ばね振り子を例にとって説明してあるが,鉛直ばね振り子で単振動の力学的エネルギーを考える場合,ばねの弾性力による位置エネルギーの他に,重力による位置エネルギーを考えなければならない。この場合,生徒には,弾性力による位置エネルギー1/2kxkはばね定数であり,xはばねの自然長からの伸びまたは縮みであることを確認する必要がある。

しかし,教科書p.55脚注で示したように,どのような単振動でも力学的エネルギーは教科書p.56(28)の形で表される。ただし,その場合,の項を「復元力による位置エネルギー (K:復元力の比例定数,X:つり合いの位置からの変位)」と理解しておくことが必要である。鉛直ばね振り子の場合でいうと,物体にはたらくばねの弾性力と重力の合力が復元力であり,教科書p.53(25)から,復元力による位置エネルギーはとなることがわかる(k:ばね定数,x:つり合いの位置からの変位)

この復元力による位置エネルギーの考えを使うと,単振り子の場合はKであるから,力学的エネルギーは,

 

と表される。この式の第2項は,重力による位置エネルギーの近似として

 

とするよりも意味が明確である。というのは,単振り子の運動を「一直線上の往復運動」と近似して考える立場からは,物体の高さに変化はないので,重力による位置エネルギーは考えられないのである。

このように,弾性力による位置エネルギーを,復元力による位置エネルギーに発展させて理解することにはメリットもあるが,逆に,両者の区別が十分できないために混乱させることもある。生徒の実状に応じて,誤解のないように指導することが大切である。

 

 

 









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