トップ物理II 改訂版1 力と運動>第2章 円運動と単振動>2節 慣性力と遠心力

2節 慣性力と遠心力

 

ダランベールの原理

慣性力としての遠心力

加速度系での運動方程式

遠心力とコリオリ力

観測者が物体と同じ回転円板上にいる場合

非等速円運動

 

 

ダランベールの原理

1つの質点P(質量m)にいくつかの力    がはたらいて,質点Pが加速度をもつとする。運動方程式は,

…………………@

 

である。でないことは,次図(b)の矢の先端がの矢の始点についていないことからわかる。

 

 

ここで@を書き変えて,

…………………A

とすれば,は,ベクトル的に加えて,すなわち,つり合いにある力の系をつくることがわかる。つまり,1つの質点(質量m)にいくつかの力がはたらき,質点が慣性系に対して加速度をもつとき,これらのほかにというベクトルを仮想的な力として加えて考えると,全体の力の系はつり合いにある系をつくり,動力学の問題を静力学の問題に帰着させられる。これをダランベールの原理といい,という仮想的な力を慣性力とよぶ。

 

 

慣性力としての遠心力

一般に,遠心力はコリオリ力とともに回転座標系で現れる見かけの力として知られている。しかし,「慣性力としての遠心力」とは,ダランベールの原理を曲線運動している物体に適用した場合であると考えられる。

すなわち,曲線運動全般に関わる運動方程式

接線方向:maVFV

法線方向:manFn すなわち, 

 

より,

接線方向:FVmaV0

法線方向:Fnman0 すなわち, 

したがって,慣性力の接線成分が−maVであり,法線成分がである。これらのうち,法線成分は回転座標系における遠心力と一致するので,これを「慣性力としての遠心力」ということにする。なお,接線成分は等速円運動においては0である。

このような「慣性力としての遠心力」という高校での扱いは,一般的な扱いでの,観測者が物体と同じ位置にいて,物体と同じ半径,同じ角速度の円運動をしている場合にあたる。より一般的に,観測者が物体と同じ回転円板上にいて,回転中心からの距離が物体と観測者で異なるという場合については,別項で説明する。

 

加速度系での運動方程式

加速度運動する観測者に対する物体の相対的な加速度を考えることにより,慣性力を導き出せる。

質量mの物体に力がはたらいて,慣性系に対して加速度が生じているときを考える。この物体の運動方程式は,

である。慣性系に対して加速度で運動している観測者がいて,この観測者から物体を見たとき,物体の相対加速度である。よって,である。これを上の運動方程式に代入すると,

  ∴ 

これは観測者から物体を見たときの運動方程式である。すなわち,物体には力以外に見かけの力がはたらいている。これが慣性力である。

 

 

 

 

遠心力とコリオリ力

(xyz)系を慣性系S(xyz′)系を系Sに対して,一定の角速度ωで回転する座標系(S')とする。

質量mの質点Pに力がはたらいている場合を考える。

 

である。xytで微分すると,系Sからみた速度を(vxvyvz′)として,

 

さらに,tで微分すると,系Sからみた加速度を(axa yaz′)として,

 

また,系Sからみた力の成分を(FxFyFz′)とすれば,

 

さらに,運動方程式は

maxFx ……D

mayFy ……E

mazFz ……F

ここで,D×cosωt+E×sinωtに@,A,Bを代入すると

また,D×(sinωt) +cosωt に@,A,Cを代入すると

Fより,azazFzFz だから

G,H,Iより,系Sからみた運動方程式は次式のようになる。

 

J,K,Lをベクトルの式で表せば,P点の系Sでの位置ベクトルを

して,

 ……M

すなわち,一定の角速度ωで回転する回転座標系から物体を見た場合,実際の力のほかに,という力と,という力がはたらいているように見える。

は,回転軸(z)に垂直で回転軸の外方に向かうベクトルで,その大きさは,質点から回転軸までの距離をrとすれば,mrω2に等しい。すなわち,この力が遠心力である。

また,という力は,にもにも垂直な方向のベクトルで,その大きさは,回転座標系からみた物体の速さをvとすれば,である。この見かけの力をコリオリの力という。

コリオリの力を高校生向きに考えてみよう。

図のように,点Oを中心に一定の角速度ωで反時計回りに回転する摩擦のない円盤を考える。点Oから物体をの向きに速さvで投げ出したとき, OA1A1A2A2A3v として,慣性系からみると,物体は等速直線運動をするから,1秒後,2秒後,3秒後にはそれぞれ,点A1A2A3の位置まで移動する。

この物体を回転円盤上に静止した人が見ると,どう見えるであろうか。∠X1OX2=∠X2OX3=∠X3OX4ωとすれば,1秒後,2秒後,3秒後には,物体は点B1B2B3の位置に移動する。すなわち,物体の進行方向が右へ右へと変わるように見える。このように,遠心力だけでなく,にもにも垂直にはたらくコリオリの力の影響が出ている。

 

観測者が物体と同じ回転円板上にいる場合

一定の角速度ωで反時計回りに回転する円板上に,円板に対して静止する観測者O′と物体Pがある。中心Oから観測者O′までの距離をR,中心Oから物体Pまでの距離をr,観測者O′から物体Pまでの距離をrとする。

観測者O′は半径R,角速度ωの等速円運動をするため,円板上に固定したO′を原点とする座標系x′-yは,原点O′が円運動しながら原点Oの回りに角速度ωで反時計回りに回転する座標系である。

観測者O′から物体Pを見たときには,静止系から見て向心力となる力(の向き)以外に,図のように,観測者O′が加速度運動(等速円運動)していることによる慣性力mRω2(に平行)と座標系x′-yが回転していることによる遠心力 (の向き)がはたらいてつり合っている。このことから力Fを求めてみよう。

α,∠β とおくと,図より,

である。慣性力mRω2と遠心力の合力を,向きの成分とそれに垂直な成分に分けて調べてみると,

向きの成分:    (@)

それに垂直な成分:    (A)

したがって,は大きさがmrω2で,の向きであり,これはよく知られた結果と一致する。

先に述べた,観測者が物体と同じ位置にいて,物体と同じ半径,同じ角速度の円運動をしているという高校での扱いは,上記の検討で,r0Rrαβ0の場合に当たる。すなわち,慣性力mRω2と力がつり合っているということで,「慣性力としての遠心力」ということに一致する。

 

非等速円運動

生徒にとって興味深い円運動の例は,遊園地の宙返りジェットコースターの運動であろう。この運動で,物体の速さが地面からの高さによって変わることは力学的エネルギー保存の法則から容易に理解できるが,それが物体にはたらく重力の円(軌道)の接線方向成分によるということを理解するのは,そう易しくはない。あとに単振り子を学習する際に必要な内容でもあるので,できればここで簡単にふれておくとよい。

 

しかし,等速円運動として求めた向心力の式がなぜ,非等速の円運動でも使えるかについては生徒の疑問となるところである。微小な時間の間は速さを一定であると考えると教科書p.382と同じ関係が得られ,等速でない円運動でも運動の方向を変えるための力は等速円運動と同じ式で(ただし,ωvはそれぞれ瞬間の角速度,速度である)表されることを必要に応じて説明しておくべきであろう。

教科書p.46例題3では,最高点Bを通過するときを考えているが,発展的にコースターが最高点に達するまでの運動について扱うこともできる。この場合,人(質量m)に注目して,円の接線方向と半径方向のそれぞれに方向について運動方程式を考えると,次のようになる。(aは接線方向の瞬間の加速度)

接線方向:

半径方向:

 

ここで,物体にはたらく力が物体の運動に与える影響について,

・速度に平行な方向の力の成分は,物体の速さを変化させるが,運動の向きは変えない。

・速度に垂直な方向の力の成分は,運動の向きを変えるはたらきをするが,物体の速さは変えない。

ということを確認することもできる。生徒の実態に応じて,適切に指導することが望まれる。

 

 

 

 








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