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探究活動4 円筒レンズの製作と焦点距離の測定

 

ねらい 身近な素材を用いて円筒レンズを製作し,レンズの焦点距離を求める。また,レンズの作用が異なる媒質間の屈折率と境界面の形によって決まることを調べ,さらに,液体中の気体レンズの作用についても実験を行い,レンズのはたらきと性質についての理解を深める。

 生徒に円筒レンズを実際に製作させ測定実験を行うことは,レンズについての生徒

の理解を深めるとともに,科学を探究する態度を養う上で有効である。実験を簡単に行うには,丸底フラスコや太い試験管を使えばよい。丸底フラスコを水で満せば,丸底部分の直径を焦点距離とする凸レンズとして利用できる。また,空の丸底フラスコを水槽に沈め空気レンズとして用いれば,焦点が半径の半分だけ外側の位置(3r/2)にある発散レンズとなる。一方,太い試験管では円筒レンズとなり,焦点距離は丸底フラスコと同様になる。

 

実験1 円筒レンズの製作と焦点距離の測定

目的 身近な素材である無色透明ビニル板を使って円筒レンズを製作し,レンズの作用を確認する。また,製作したレンズの焦点距離を測定する。

準備 無色透明なビニル下敷き,定規,コンパス,ナイフ,けがき針(千枚通し),接着剤,紙やすり,スリット,レーザー光源装置(平行光線の光源),蛍光剤,砂糖水,食塩水

方法 @ 完成図のように,下敷き上に設計し,けがき針などを用いて,図を正確に描く。レンズの曲率半径は 50 100 mm 程度がよい。

A けがき針などで描いた図面をナイフの先で強く傷つけ,折り曲げて切りとる。紙やすりでなめらかにしておく。 

B まず,曲面(円筒面)に使う部分を湯に浸して目的の曲率が得られるまで曲げ,急冷し形を整える。次に,背面と側面の板を各面が直角に左右上下が対称になるように接着し,最後に円筒面を接着する。また,熱した針金で上面に小孔2個をあけておく。

C 内部を水で満たし,レーザー光線などの平行光線を使って,レンズを通過した光の収束や発散の様子を観察する。

D レンズの背側にスリットを当てて,図のように太陽光線を垂直に当てて,レンズの焦点距離を測定する。このとき光の分散も見られるので,色収差のことについても,説明を加えておくとよい。

 

実験2 屈折率の違いによるレンズの作用(液体中の空気レンズの作用)

目的 円筒レンズを用いて,液体中の空気レンズの作用について調べる。

準備 円筒レンズ,大きめの水槽,スリット,レーザー光源装置(平行光線の光源),蛍光剤,白色ビニル板

@ 円筒レンズの小孔をセロハンテープでふさいでおく。

A 蛍光剤を入れた水槽にレンズを浸し,平行な光線を使って光の進路を確認する。

B 図のようにして,焦点距離を測定する。

 

考察 @ 媒質の屈折率とレンズの作用との関係はどうなっているだろうか。

解説  薄肉(薄い)レンズでは,レンズの屈折率をn,左右の凸面の焦点距離をR1R2として,レンズの焦点距離fは,である。

 実験に用いたレンズは厚肉レンズであるから,レンズの主面からの距離を補正する必要がある。主面または主点について補正を加えることで測定値が,レンズの焦点距離に関する上の式を十分に満たすことがわかる。

 レンズの式の導出は容易で実験も視覚的に測定ができることから,課題研究に向くと思われる。

考察 A 水を入れたレンズと水中の空気レンズでは焦点距離に違いがあるだろうか。

解説 薄肉レンズでは,主面がレンズの中央に近似して計算できるので,焦点距離に差は出ないが,実験で用いた厚肉レンズにおいては,主面の位置を無視することができない。このため,レンズの中心から焦点距離を測定した場合,空気中で水を入れた凸レンズの測定値よりも,水中で空気を入れた凸レンズの測定値が長くなる。このことから,レンズの主面の位置について考察させるとよい。ただし,扱いは定性的な範囲にとどめるように留意したい。

発展 @ コップや試験管など,身近なところに円筒レンズの材料がある。それぞれの焦点の位置や焦点距離を求めてみよう。

解説 コップや試験管を用いて同様な実験を簡単に行なうことができる。円柱状のコップや太い試験管を使えば焦点が一直線上にできる。この場合,コップを水で満せば,コップの断面の円の直径を焦点距離とする凸レンズとなる。また,空きのコップを水槽に沈め空気レンズとして用いれば,焦点の位置が円の半径の半分だけ外側 (3r/2)である発散レンズとなる。ただし,細い試験管では焦点の位置がわかりにくいため注意が必要である。

発展 A 丸底フラスコに水を満たすと,そこの球形部分が球形レンズとなる。この場合,凸レンズの焦点と焦点距離を求めてみよう。

解説 丸底フラスコを水で満せば,丸底部分の直径を焦点距離とする凸レンズとして利用できる。また,空の丸底フラスコを水槽に沈め空気レンズとして用いれば,焦点が半径の半分だけ外側の位置(3r/2)にある発散レンズとなる。

 丸底フラスコやコップ,試験管などに屈折率の異なる水溶液を入れると焦点距離が変化する。試験管を用いれば,屈折率による焦点距離の測定実験も容易になる。

参考文献:藤岡由夫編「三訂増補 物理実験事典」(講談社,1973)

 

 

 








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