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第3節 音源の振動

 

弦の振動

弦を伝わる横波の速さ

気柱に生じた定常波の密度変化の視覚化

開口端における音の反射

楽器の原理

試験管笛

 


 

弦の振動

弦に生じる波は,定常波であるので,その波の式は

という形をしている。波動方程式

 

へ代入して

 

となる。ここで,kw/vとおくと

 

という形の方程式となる。この方程式は,単振動の運動方程式であるので,一般解は,

ここで,弦の両端がx = 0x = Lにおいて固定端となっているので,

     f (0) = f (L) = 0

を代入すると,Csin (k0 )= 0だから

f (0) =Ccosa cos (k0 ) = 0

よって,Ccosa = 0だから

f (x) =Csina sin(kx) = Asin kx ……E

つぎに,x = Lでの条件から,

      f (L) =Asin(kL)= 0

となる。この式を解いて,                                         

      kL = np        n =123 ・・・ ……F

k =2p / lを代入して

     L = n(l/2)

となり,長さLの弦の中に半波長が整数個入る定常波が導かれる。

 

長さLの弦にできる定常波は,

yAsin(npx/L)coswt  ……@

という式で表される。@式はn =123 ・・・に対してcoswt=±1を実線で表すと下図のようになる。各時刻における弦の形状は,この実線の間を往復する。右図のような振動のタイプを固有振動のモードという。

弦の各モードの固有振動数はwnpv/Lだから,@式は

yAsin(npx/L)cos(npvt/L) ……A

弦をはじいたときに生じる振動はA式の1つのモードだけではなく,一般には,いくつかのモードの重ね合わせである。

y=ΣAn sin(npx/L)cos(npvt/L) ……B

というような振動になる。このうち,A1 A A ・・・に比べて大きいので,B式のn =1とした振動数の音が主として聞こえる。

参考文献:「基礎物理学シリーズ 波動」川村清著 東京教学者

 

弦を伝わる横波の速さ

 探究活動2「弦を伝わる横波の速さの探究」(p.264)においてを実験的に求めさせている。高校生を対象にして,弦を伝わる波の速さがで与えられることを導くには,いくつかの方法がある。以下にそれを紹介しておこう。

@ 弦を伝わる横波がx方向に速さvで伝わるとき,これと同じ速さで同じ向きに 運動する観測者がこれを見ると,波形の山にあたる弦の微小部分ABは一点O を中心として,逆向きにvで運動する等速円運動として観測される。弦の張力を S,線密度をrとし,弦にはたらく重力の影響はないものとする(波の振幅が小さいと仮定する)AB部分を等速円運動させる力は2SsinDq2SDqであるが,これが向心力の役割をしている。円運動の半径をR, ABDlR2Dq として

 

A 運動量と力積の関係を用いる方法

 いま,手を一定の速さuで上に動かすとしよう。短い時間Dtの間に手もとが uDtだけ上に動くとき,ひもの上向きの運動はひもに沿ってuDtだけ先に伝わる。それで,すでに動きだしたひもの部分は一直線になる。この部分の傾きをqとすると,qが十分小さいかぎり,sinqtanqu/vとみてよい。

 さて,直線部分のひもは静止または等速運動をしている。加速されるのは,そ のつど静止状態から等速運動に移り変わる部分だけである。Dtの間に新たに加 速される部分BCの長さはvDtである。その質量は,単位長さあたりの質量(線密度)rとするとrvDtである。それで,Dtの間のBCの上向きの運動量の増加はruDtuとなる。一方,ひもはつねにSの力で引かれているとすると,部分BCに上向きに加わる力の成分はSsinqSu/vである。それゆえ,運動量の変化が力積に等しいということからとなり,これから

 波の伝わる速さvとなる。

 

◆気柱に生じた定常波の密度変化の視覚化

 ADコンバータを用いて,閉管の箱に生じた定常波の密度変化の様子を視覚化することができる。図1に装置の構成を示す。目盛り付きガイドレールの一端には,マイク位置の検出用に多回転ポテンショメーターを設置し,この軸を回転することにより,軸に巻き付けた糸がマイク台を動かす。マイク台にはロー

ラーをつけ,移動時の摩擦音を減らす。アンプ部にはマイクの感度調整回路と,マイクおよびポテンショメーターの電源が内蔵されている。

周囲の物体の反射の影響を受けやすいので,机や壁から数十cm以上離し,周囲にグラスウールを敷きつめる。また,低周波発振器から出力される波形をオシロスコープでモニターし,正弦波からのずれを監視する。

17℃における開口部の縦横20cm,長さ80cmの直方体の箱で作った閉管の,37倍音の測定結果を図2に示す。閉端部の節の位置で密度変化が極大,開口部など腹の位置で密度変化が極小になっていることがわかる。

参考文献:足利裕人「音の単スリット回折と気柱内定常波の強度分布の測定」

                 (物理教育 Vol.38No.21990)

 

開口端における音の反射

 空気柱の中を伝わってきた音波が開口端にきたとき,入射波の一部は反射する。管口付近の管の内と外とを考えるとき,一見媒質が異なるわけでないから,入射波がたとえその一部であってもこの場所で反射されるのは,ちょっと考えると不思議な感じがする。媒質は変わらないけれども,端のところでは振動に対する条件が不連続的に変わっており,そのような場所では一般に反射が起こることが,直観的にはわかりにくいからである。

 次のような説明をすれば,生徒はかなり納得するだろう。

 まず,管の閉じた端について考える。管の中をたとえば右向きに密のパルスが進んでいるとしよう。この波が閉じた端に当たると,空気の圧力が局部的に上がり,そこは密となる。ところが右は行き止まりであるから,左方へ伝搬する。つまり,閉じた端では密は密で反射する。

 これに対して,開口端の場合は次のようになる。密のパルスが管内を右向きに進んできて端が開口部であると,このパルスは“スポン”と大気中に飛び出してしまう。そうすると勢いあまって右端の管内の空気は少し圧力が低くなる。この低圧部すなわち疎が次に管内を左向きに進行し始める。すなわち,開口端では密が疎になって反射する。

あまり物理的に厳密ではないが,直観的でわかったような気分になるところがよい。

 

楽器の原理

 教科書では波動としての音波の基礎的な性質を扱っているが,この音の物理の最も身近な応用が楽器であろう。しかし,人類はこのような学問をまったくもっていなかった太古の時代から,すでに精巧な楽器を作り,美しい音楽を演奏していたのである。当時の楽器職人は,少なくとも波長と音程の関係,振幅と音の大きさ,共鳴や高調波などの物理的知識は,経験を通じて正確に理解していたに違いない。

 一般に楽器は以下のような3つの機能を備えている。

(A)音を出す。 (B)音程を決める。 (C)特有な音色にする。

 ギターのような弦楽器の例では,弦の振動が空気に伝わって音になり,同時にその固有振動数が音程を決める。その音が胴で共鳴し,独特の音色となる。またバイオリンでは弦の振動は駒を介して胴に伝わる。つまりAおよびBは弦,Cは胴が受けもっている。ピアノのように弦の長さが決まっているものやギターのようにフレットのあるものは,あらかじめ調律された音階(ふつうは平均律)でしか演奏できないが,三味線やバイオリンなどは自由な音程が出せ,純正律で弾くこともできる。

 管楽器ではマウスピースが上記の(A),管が(B)(C)を受けもつ。フルートや日本の横笛では空気の流れが角に当たってできる乱流が音を出し(エッジトーン),クラ

リネットのようなリード楽器では薄い板(竹や葦)の振動が音源となる。また,トラ

ンペットなどの金管楽器は唇自体を振動させる。それらの音は一般に広い周波数成分を含むが,管の中に送られてその長さで決まる成分のみが共鳴して音程が決まり,管の太さや形状,材質などで音色が決まる。管の長さはふつう途中の穴を押さえて変えるが,トロンボーンのようにスライドさせて連続的に調節するものもある。しかし,1オクターブの音階を吹くとき途中で高周波の共鳴を使うので,ド,レ,ミ,ファの順番に管の長さが短くなるわけではない。

 ドラムなどの打楽器では(B)の部分はあまり重要でないが,2次元的な弦である膜(太鼓の皮)の固有振動モードと胴の共鳴で快い音になる。

 最近では電子楽器も多い。エレキギターを例にとると,まず弦の振動で音程を決め(上記(B)),電磁誘導を利用したピックアップでその振動を電気信号に変換し,増幅などの処理によって音色を決め(上記(C)),最後にスピーカーで音波に変換する。シンセサイザーでは音程そのものも電気的に決め,信号処理で音色を合成した後スピーカーに送る。電気的に楽音を作る場合には(A)(B)(C)の順番より(B)(C)(A)の方がやりやすい。

 

試験管笛

 試験管立てに試験管を数本並べて,音階になるように水を入れると,楽器のサンポーニャのように演奏ができる。この際,試験管に水を多く入れて気柱を短くすると,音が出にくくなるので注意が必要である。試験管の歌口の角度をうまく調節すれば,大きな音がしっかり出る。

 

 








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