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第2節 音波の性質

 

音波の回折と反射

鳴き竜探し

音の屈折

音波の干渉実験

うなり


 

音波の回折と反射

われわれが室内で聴く音は,音源から球面状に広がって耳に入る直接音だけではない。音源を出た音波は,部屋の壁や床で反射をくり返しながら進み,家具などで回折する。これらの音波は,いろいろな方向に進み重なり合って,室内に満たされる。このような音(残響音)も耳に入る。残響音の持続時間(残響時間)は壁や床などの反射率,空気の音波吸収などによって決まる。コンサートホールの設計では,残響時間をどのくらいにするかが重要なポイントとなる。

 

鳴き竜探し

 天井がかまぼこ型(ドーム型)になっているコンクリートの通路を歩いていると,突然,足音がポーンと大きく響くところがある。このようなよく響いた位置で立ち止まり,手をたたくと,音が反射をくり返して,鳴き竜が聞こえる。コンクリート製校舎の階段踊り場でも鳴くことがよくある。よく鳴く位置を見つけるのは少し難しいが,普段から,気をつけて周りの音を聞きながら注意深く行動していれば,すぐに鳴き竜を探すことができる。

 

音の屈折

 光と異なり,音の場合には屈折率という物理量は定義されていない。したがって,音速の逆数が屈折率と同じ意味を持つことを,十分に理解させる必要がある。逆に光では,屈折率の逆数がその媒質中の光速に比例している。

【空中の異常伝搬】 高校物理では,音の屈折は夜間と昼間とで音の伝わり方が異なる原因として扱われていることが多い(p.218)。これは,高度によって音速が連続的に変化する場合の例である。特に冬の夜間は,上空に向かった音は屈折して下方に曲がり込み,地表で反射して再び上空に向かう。つまり,屈折と反射にはさまれた音のチャンネル(導波路)ができるので,非常に遠くまで届くのである。逆に昼間の砂漠では地表付近の空気が高温になるので,音は上空に向かって消えるため,声が遠くに届きにくい。

【音のレンズ】 音速が不連続に変化する例として,二酸化炭素を詰めた風船が音のレンズのはたらきをするという実験がある。二酸化炭素中の音速は約275m/sであり,空気より小さいので風船は凸レンズとなる。風船の前で話をすると,裏側のある地点に声が集められることが観測される。二酸化炭素の代わりにヘリウムのように空気より音速の大きい気体を入れると,屈折の向きが逆になるので風船は凹レンズのはたらきをするはずである。イルカの頭部は丸くなっているが,あの中には油脂でできた音のレンズが入っている。油脂は海水より音速が小さいので,頭部が凸レンズのはたらきをする。イルカはこれを通して指向性の鋭い超音波を出し,エコーを聞いて前方を警戒する。

【海中の音のチャンネル】 海面近くは太陽で暖められて水温が高く,音速が大きい。また深くなると水圧の影響で再び音速が大きくなる。したがって,図のように水深約1000m付近に音速が最小になる層が存在する。音がこの層から外れても屈折で戻ってくるのでチャンネルとなり,音波が層を中心として上下にうねりながら数1000kmも伝わる。最近ではこのチャンネルを利用して,例えば日本からアメリカ西海岸まで音を伝搬させ,それから海洋構造や海流の状態を調べる海洋音響トモグラフィーの技術が進んでいる。地球温暖化のモニターとしても利用されている。また,海中に出した音波は近距離であっても届かないシャドウゾーン(死角)ができることがある。ソナーによる潜水艦探知のとき,このことが重要となる。

 

海中の音のチャンネル

 

音波の干渉実験

(1) 2つのスピーカーによる干渉

 音源として,2つのスピーカーを水平に離しておき,そこから出る音の干渉の様子を調べるために,長い棒の先にマイクロホンをとり付けたものを,空間中で移動させる。音の強さに応じて,ランプの明るさが変化するようにしておくと,ランプの明るさから干渉パターンを見ることができる。カメラのシャッターを開放にして写すと,2波源から出る水波の干渉と同じようなパターンが現れているのが見える また,校舎の屋上にスピーカーを2個持って上がり,1000Hz(無歪)程度の音を出しておいて,節線または強め合う線を地面に描かせるとよい。壮大な双曲線がみごとに得られるので,生徒の喜びと驚きは大きい。

          参考文献:鬼塚史朗「音の干渉」(物理教育Vol.33No.41985)

 

(2) 複スリットによる干渉

 10000Hzの正弦音波を出しているスピーカーの前方約10cmのところに,反射板(厚さ約1mmのアルミニウム板,高さ20cm,幅5cmのもの1個,幅15cmのもの2個,いずれも台つき)で複スリット(スリットの幅1.5cm)をつくる。このスリットの前方20cmの直線上でマイクロホンを移動させ,音の強さの分布を調べる。音の場合にも,光波のヤングの実験と同様の現象があることがわかる。

(3) 発光ダイオードによる干渉の視覚化

 発光ダイオードは,安価で直観的なメーターとしてすぐれている。これを垂直に1列に並べたもの(発光ダイオードアレイ)にコンデンサーマイク(密度変化に反応している)をつけて,音波の強度を帯グラフで表示することができる。

 図1は装置の全体像で,30cm離して置いた2つのスピーカーから振動数10kHzの音を出しておき,その前面22cmの位置でコンデンサーマイクを,0.51cm/sの速さでスキャンしながら,発光ダイオードアレイを音の強さ(密度変化の大きさ)に応じて下から順に発光させ,カメラを開放にして撮影する。図2は,スピーカーから出る音を同位相にしたとき,図3は逆位相にしたときの干渉パターンである。同位相のときは中央部分で最も音が強く,逆位相のときは中央部分で音が消えていることがわかる。

 

うなり

 いま,次式で表される2つの音波が同一方向に進んでいるとする。

 

これらの重ね合わせによる合成波の式は,

       

 

となる。この式を書き換えて,

       

 

とすると,これは振動数がで,振幅が

 

 (ただし,f1f2とする)の波であると考えることができる。

 いま,媒質中の1(x=一定)を考えると,この点を通過していく合成波の振幅は,1秒間に回の割合で最大値2aとなり,同じく回だけ最小値−2aをとる。しかし,合成波のエネルギーはA2に比例するから,その値が最大になるのは,1秒間にf1f2回となる。音のエネルギーが最大のときに,音は最も大きく聞こえる。すなわち,うなりの回数fは,1秒間にf1f2回となる。

 このような結果が導けるのは,Aが波の振幅とみなせるということが前提である。そのためには,yの激しい振動数に比べてAがゆっくりと変化しなければならない。つまり,yの振動の数周期の時間の間では,Aの変化は無視できて一定値とみなし得ることが必要である。すなわち,重なり合う2つの波の振動数が互いに接近していて,その差Dff1f2がもとの振動数f1f2に比べて無視できるほど小さいことが必要である。人の耳はDf56Hzのときはうなりとして感じるが,Dfがそれ以上大きくなると,濁った不快な音として感じるだけである。

 参考文献:足利裕人「表計算ソフトによるデータの活用」

       (啓林 高理編 No.2801992)

 

 

 

 








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