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1節 音波

 

音とは

スピーカー

音の速さ

媒質の変位と媒質の密度変化

音の波形

音の強さ

おんさ

マイクロホン

音の三要素

超音波
可聴音と超音波

 


 

音とは

 空気中を音が伝わるとき,音の進行方向に沿って空気の粒子(空気の微小部分)は振動している(縦波:longitudinal wave)。その振動の振幅や粒子の速さは,きわめて小さな値である。また,音波によって,空気は断熱的に膨張と収縮をくり返す (疎密波,圧力変化の波)。その圧力変化もまた,非常に小さな値である。たとえば次の表に示したように,圧力変化(音圧)の最大値はふつうの大きさの音でも,およそ102Paである。これは大気圧(1atm105Pa)に比べて,非常に微小な圧力変化であるといえる。また,空気の振動の振幅は,およそ108mである。この値は,酸素分子の大きさの数10倍程度であり,音波の波長に比べてきわめて微小な変位である。

 

1 平面正弦音波(1000Hz,空気中20℃,1atm)

大きさの目安

音圧レベル

音 圧

圧縮度

粒子速度

変 位

dB

Pa

m/s

m

人が音として聞く最大音

120

2.8×10

2.0×104

6.8×102

1.1×105

ふつうの会話音

60

2.8×102

2.0×107

6.8×105

1.1×108

人が聞きとれる最小の音

0

2.8×105

2.0×1010

6.8×108

1.1×1011

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に,音による空気の圧力変化をもう少し具体的に調べてみよう。

(1) 実効音圧

 音波が伝わっているときの,ある場所(xyz),ある時刻ts〕における空気圧をPPa,音波がくる前の空気圧をPsPa(静圧:static pressure)としよう。

音波による圧力の変化分

PPsp( xyzt )

は,瞬時音圧(instantaneous sound pressure)とよばれている。ある場所の瞬時音圧は,圧力0Pa〕を中心に正と負の値を交互にとりながら刻々と変動する。変動が周期性(周期Ts)をもつとき,音圧の平均値

   

 

は,時間に無関係な一定値となる。この2乗平均音圧Peは,実効音圧(effective sound pressure)とよばれている。交流理論において,電流の実効値は瞬時値の最大値の1/2倍であった。正弦音波の場合は,音圧が単振動するので交流と同様に,音圧の実効値も瞬時値の最大値(波高値:crest value)1/2倍となる。また,マイクロホンと交流の計器を用いると,実効音圧を測定することができる。

(2) 音圧レベル

1で見たように,われわれがどうにか聞きとれるほどの小さな音の実効音圧は,およそ105Paである。これに対して,耳が聞こえなくなりそうなすさまじい音の実効音圧は,およそ102 Paである。このように,われわれが聞くことのできる音の音圧の値は,きわめて広い範囲にわたっている。実効音圧Peの大きさを手頃な数値で表す目盛りとして,音圧レベルLpが用いられる。

 音圧レベルの単位はdB(decibel)である。ここで,Pe0は基準とする実効音圧であるが,空気を伝わる音に対しては

    Pe02×105 Pa

の値をとるのがふつうである。音圧レベルを用いると,われわれが聞くことのできる音の実効音圧に0130の範囲の数値を対応づけることができる。

(3) 音の大きさのレベル

 われわれの聴覚が捉える音の大きさは,主として音圧レベルによるが,音圧レベルを音の大小感覚と単純に対応づけることはできない。たとえば,音圧レベルが同じであっても,振動数が異なれば違った大きさの音に聞こえる(下図)。音の大小感覚を数値化したものが,音の大きさのレベル(loudness level)である。単位にはホン(phon)を用いる。音の大小感覚を測る“ものさし”として,1000Hzの純音を用いる。すなわち,いろいろな大きさの平面正弦音波(1000Hz0130dB)を,音の大きさを測る基準とする。ある音の大きさを測定するには,その音と同じ大きさに聞える基準の音を探す。いま仮に,基準の音圧レベルがLdB〕であるならば,その音の大きさのレベルはLphon〕であると定める。なお,騒音レベルの表現に用いられるホンは,ここでいうホンと関係はあるが同一ではない。両者を区別するため,後者をフォン,音の大きさのレベルをホンとすることもあり,その逆の場合もある。騒音レベルの測定の基準は,日本工業規格JIS8731に示されている。

 グラフ上の曲線は,同じ大きさに聞える純音の振動数と音圧レベルを表している。

たとえば,500Hz55dBの純音は1000Hz60dBの純音と同じ大きさに聞える。純音に対して,われわれの耳は振動数のある範囲に敏感であり,それより振動数が大きくなっても,また逆に小さくなっても聴力は減少する傾向がある。

 

 

スピーカー

 スピーカーは振動電流を空気圧の変動に変換して,音波を生み出す装置である。ダイナミック・スピーカーが最も広く用いられている。下図は,このスピーカーの原理を示している。紙製のコーンaにコイルbを取りつけ,そのコイルを磁石の磁極cc¢c¢¢の間に置く。コイルbに電流を流すと,電流は磁界から力を受ける。電流が振動すると,コイルbはその軸方向に振動し,紙コーンa全体に振動を引き起こす。こうして,紙コーンaに接触する空気に圧力の変動が生じ,音波が発生する。この他に,コンデンサー型,クリスタル型,マグネット型のスピーカーがある。

 

音の速さ

 われわれの聴覚が捉えることのできる音波は,振動数2×104Hz以下の振幅の小さなものに限られている(可聴音)。この可聴音の音速Vは,音の振幅や振動数と無関係である。

 音速Vを表す式は,音波の波動方程式から得られる。流体を伝わる可聴音の波動方程式は,流体が粘性をもたず均一で十分に広いものとすると,

 

と書ける。ここで,pは流体の圧力の音波による変化分である(音圧)。音波によって変化する流体の圧力を,関数P(xyzt)で表し,音波がくる前の流体の圧力をPsと置くと,音圧ppP(xyzt)Psで与えられる。また,rは流体の密度を表し,cは流体の体積弾性率を表すものとする。流体の微小部分(流体粒子)の体積vは,音波によって変化する。音波による体積の増加分をDvとすると,流体の圧縮度は−Dv/ vと書ける。これは,音波による圧力の増加分p(比例する。その比例定数が体積弾性率cであるから,

 

が成り立つ。このA式と,流体粒子についての運動方程式を組み合わせると,波動方程式@を得る(1)

 平面音波がx軸方向に進む場合,その波面はx軸に垂直な平面である。1つの波面上で音圧pは等しいので,この場合,音圧pは,pp(xt)と書ける。こうして,平面音波がx軸方向に進む場合の波動方程式は,@式より

 

となることがわかる。

 音波の音圧波形は,横軸にx座標をとり,縦軸に音圧pをとったグラフで表すことができる。いま,波形はx軸の正の向きに一定の速さVで進むものとし,時刻0秒の波形がある関数pp(x)で表されるものとする。波形はt秒間にVtだけ平行移動するので,時刻t秒の波形は,関数pp(xVt)で表される。この関数pは,その形にかかわらず,であるならば,方程式Bを満足する。すなわち,方程式Bの解は速さで伝搬する波動である(2)。より一般的な方程式@についても,同じことがいえる。このようなことから,流体を伝わる可聴音の音速Vは,流体が均一で十分に広く,粘性がない場合,

 

となる。この式を見るとわかるように,音速Vは音の振動数や音の振幅に無関係である。

 次に,C式を用いて,空気を伝わる可聴音の音速を求めよう。ここに,1つの問題が生じる。空気の微小部分の体積vが音波によって変化するとき,その変化は等温変化であるのか,あるいは,断熱変化であるのか。ニュートンは,理論的に空気中の音速を求めた最初の人であるが,その計算において,等温的体積変化を仮定した(3)。すなわち,ボイルの法則より Psv(Psp)(vDv)であるから,体積弾性率cはA式を用いて

     

 

となる。ただし,2次の微小量は無視した。したがって,音速VはC式よりとなる。標準状態(273K1.013×Pa)の空気の場合,c1.293kg/m3,Ps1atm1.013×105Pa〕であるから,V279.9m/s〕を得る。ニュートンの理論値は,測定値 V331.5m/s〕の85%に満たないものである。彼は測定値との食い違いを説明できなかったが,気体の性質についての知識は当時まだ不十分であったことを考えてみるべきであろう。その後,数学者のオイラーやラグランジュもこの間題を検討したが,解決にはいたらなかった。およそ100年の後,ラプラスがこの間題を解決した。彼は,音波による空気粒子の体積変化は断熱過程であると考えた。気体の比熱比をgとすると,

   Ps vg(Psp)( vDv) g

であるから,体積弾性率cはA式を用いてとなる。したがって,音速VはC式より

 

となる。空気の比熱比はg1.402であるから,標準状態の空気を伝わる音速に対して,D式は V331.5m/s〕の値を与える。

 気体の分子量をMとし,微小部分の気体の量をn molとすると,

 

Ps vnRTであるから,D式はさらに,

 

と書ける。この式からわかるように,気体を伝わる可聴音の速さVは,温度Tのみに依存し,圧力Psに無関係である。0℃のときの音速をV0とすると,

   

 

と書ける。空気の場合,V0331.5m/s〕であるから,温度t℃の空気を伝わる可聴音の速さは,次式となる。

V331.50.61t                 ………E

 D式を標準状態のヘリウムガスに適用すると, r0.1785kg/m3〕, g1.66より,V970m/s〕を得る。また,C式を水温20℃の真水に適用すると,r0.9982×103kg/m3〕,c2.22×109Pa〕であるので,V1490m/s〕を得る。

                  参考文献:(1)小橋 豊「音と音波」(裳華房)

                      (2)有山正孝「振動と波動」(裳華房)

                      (3)F.S.Crawford「波動()(丸善)

 

 

 


媒質の変位と媒質の密度変化

 媒質内に下図のような円柱を考え,その円柱を占める媒質をMとし,Mの体積をvとする。平面音波がx軸正の向きに伝わるとき,媒質Mの体積vはどのように変化するだろうか。音波がくる前には,媒質Mは,図中の破線部の円柱を占めていたものとする。2つの底面ABは,x軸に垂直であり,その面積をSとする。また,面Aの位置をx,面Bの位置をxDxとし,AB間の間隔Dxは,音の波長に比べて十分に小さいものとする。音波がくる前の,媒質Mの体積v0v0S Dxである。平面音波が到着すると,媒質の各点はx軸と平行に振動を始める。平面音波はx軸方向に進むので,その波面はx軸に垂直な平面となる。したがって,ある時刻にx軸に垂直な平面の上にある媒質は,すべて位相がそろっており,完全に同じ動きをする。こうして,音波はA面上の媒質を,ある時刻tにはA¢面上に変位させ,B面上の媒質をB¢面上に変位させる。それぞれの変位を,関数x(xt)x (xDxt)で表す。時刻tの媒質Mの体積vは,円柱A¢B¢の体積に等しいので,

   

 

となる。これから,

 

を得る。ここで,関数x (xt)は,つり合いの位置がxである媒質の時刻tの変位を表している。また,この関数は下図のような変位波形のグラフを与える。このグラフの傾きは,@式より,媒質の膨張度に等しいことがわかる。

時刻が経過し,変位波形が平行移動していくとき,波形の傾きは,微小区間[xxDx において,0→正→負→……と変化する。この変化に伴って,媒質Mの体積はv0→膨張→v0→収縮→……と変化する。このとき,媒質Mは微小区間[xxDx]の周りで振動する。しかし,その振幅は,通常の音波ではきわめて小さく,媒質Mは常に微小区間[xxDx]にあるといってさしつかえない。初めに掲げた図の,音による変位x( xt)x(xDxt)は,実際のところきわめて小さいものである。

媒質Mの質量をmとすると,時刻tの媒質の密度r ,音波がくる前の密度r0である。密度変化の割合は,媒質Mの膨張度

十分に小さい量であるので,

   

 

と書ける。@,A式より,密度の変化rr0

   

 

となる。教科書p.194参考の図が,この式に従っていることはただちにわかる。

 次に,媒質が理想気体である場合について考えよう。音波がくる前の気体の圧力をPsとし,圧力の音波による変化分(音圧)pとする。気体Mの体積vは音波によって断熱的に変化するので,この気体の比熱比をγとすると,

Psv0g(Psp)vg        ………C

が成り立つ。C式から,圧力変化の割合p/ Psは,

   

 

と書ける。したがって,気体の圧力の音波による変化分pは,@式より

   

 

となる。音圧pと密度変化rr0の関係は,B式とD式より

   

 

と書ける。ところで,理想気体中での音速Vであるから,

    

 

 以上より,音波を表す3通りの波形の間の関係を,下の図にまとめることができる。

 

音の波形

 音波が伝わるとき,空間の各点で,空気の圧力は微弱ながら変動する。音の波形は,この変動をマイクロホンで検出し,オシロスコープ画面上に表示したものである。マイクロホンの振動板にかかる空気の圧力が音波によって変動すると,振動板が振動して微弱な起電力が発生する。この起電力によって,オシロスコープの偏向板に振動電圧を与えると,画面上に音の波形が現れる。

 音の波形を,コンピュータのディスプレイ画面上に出力できる。マイクロホンに発生する電圧をAD変換器で刻々と数値化し,コンピュータに記憶させ,そのデータをグラフ化する。グラフの横軸に時間を,縦軸に電圧をとると,音の波形を得る。

 波形の中で最も単純なものは,正弦曲線の波形pp0sin(2ftq )で,この波形の音を,正弦音波または純音とよぶ。おんさの音は純音とみなすことができる(教科書p.2153)。振幅や振動数fの異なったいくつかの純音を同時に出して,音の波形をオシロスコープで見ると,その波形は非常に複雑である。逆に,波形の複雑な1つの音は,多数の純音の和に分解することができる(音響分析)

 バイオリンの音の波形は,教科書p.2153にあるように,複雑ではあるが周期性をもっている。このような周期性をもつ音は,とくに,基本音とその倍音の和に分解することができる(倍音構成の音)。すなわち,周期をTとすると,音の波形は

 

 

で表される。ここで,m1の項は基本音,その他の項は倍音を表している。このように音を振動数ごとに分解したものを音のスペクトルという。音のスペクトルはスペクトラム・アナライザーという周波数分析器で表示することができる。図はバイオリンの音のスペクトルで,基本振動数の192Hzの音とその整数倍の振動数を持つ倍音が現れている。グラフの横軸は成分となる純音の振動数fを表し,縦軸はその成分の振幅pmを表している。

 バイオリンの音は,上でみたように明確な周期Tをもっているにもかかわらず,振動数 等の純音の集まりである。このような音はどの高さの音に聞こえるのだろうか。一般に聴覚の問題は複雑であるが,バイオリンのような倍音構成の音は,基本音の高さ,すなわち振動数の純音と同じ高さに聞こえる。

図説 バイオリンの音のスペクトラム・アナライザー表示。

 

音の強さ

 波は,その波の進む向きにエネルギーを運ぶ。波はどのようにしてエネルギーを

運ぶのだろうか。その仕組を考えながら,ここでは,音波の進む向きに垂直な単位

面積を通して,単位時間に運ぶエネルギーを求めよう。

 理想気体の中を,平面音波がx軸の正の向きに伝わる場合を考える。x軸に垂直な平面Aを考え,その面積をSとする。面A上の気体粒子は,すべて位相がそろっているので,x軸方向に全く同じ振動をする。そこでA面は,これらの気体粒子にぴったりと付着して,音波がくるとその媒質と一体になって振動するものとする。A面の振動の中心の位置をxとおこう。その位置からの時刻tにおけるA面の変位を関数x (xt)で表す。これは,位置x,時刻tにおける音波の変位にほかならない。

 さて,A面の左側の気体がA面の右側の気体に,微小時間Dtにする仕事量DWを求めよう。まず,左側の気体が右側の気体を押す力について調べる。この力は,A面上の気体の圧力Pを用いて,PSで表せる。圧力Pは,A面上の気体粒子の圧力にほかならない。気体粒子はA面に付着して動きながら,断熱的な収縮と膨張をくり返す。したがって,その圧力Pは音波によって時刻とともに変化する。音波がくる前の圧力(静圧)PSとし,音波による圧力の変化分(音圧)pとすると,A面における圧力Pは,PPSpと書ける。ここで,音圧pA面の振動中心の位置xと時刻tの関数であるから,pp(xt)と書ける。また,A面の微小時間Dtの移動距離は,A面の変位xを用いてただちに,と書くことができる。以上より,求める仕事量DWは,

 

書ける。さらに,音圧pはD式で与えられるので,これを代入して,次式を得る。

 

次に,話を正弦音波に限って,単位時間・単位面積あたりの仕事量を求めよう。音波によるA面の変位x であるから,F式より

     

 

を得る。この関数は,時刻とともに周期的に変化するが,1周期Tについて時間平均をとると,第1項の寄与は消えて

 

を得る。こうして,G式から,A面の左側の気体が右側の気体にする仕事は,平均すれば正の量であることがわかる。すなわち,音波は波の進む向きにエネルギーを運ぶことになる。ところで,音の強さJW/m2〕は,音の進む向きに垂直な単位面積を通して,単位時間あたりに運ばれるエネルギーであった。これはG式にほかならないから,

 

となる。

気体中の音速V であるから,音の強さIは,

         

となる。

 

おんさ

 おんさは,純音(単一振動数の音)に近い音が簡単に出る手軽な音源として,古くから用いられている。おんさを槌で打つと,U字形の金属棒に横振動(たわみ振動)が生じる。その基本振動は,下図のように,U字形の湾曲部に節をもち,両端が互いに近づいたり離れたりする定常波に対応している。U字形の金属棒には,基本振動の他に,もっと振動数の高い固有振動(上振動)も励起される。その固有振動数は,基本振動数をf1とすると,f1 6.25 f117.50 f1,……で表される。これを見るとわかるように,上振動と基本振動で,振動数の間に大きな隔たりがある。このことが,おんさの重要な特徴である。一般に,振動体が一定時間に失うエネルギーは,振動数が高くなるほど大きくなるので,上振動は基本振動に比べて速く減衰する。この傾向は,おんさの場合にとくに顕著で,打たれたすぐ後に基本振動数の純音に近い音を出すことができる。さらに上振動の励起を抑えるために,槌を軟らかいゴムにする(槌が固いとキーンという高い振動が残る)ことや,打つ場所を第1上振動の節(おんさの自由端から少し離れた所)近くにする注意も必要である。

 

マイクロホン

 マイクロホンは,音波による空気圧の変動を振動電流に変換する装置である。

(1) ダイナミック型マイクロホン(ムービング・コイル方式)

  軽い振動板aにコイルbをとり付け,そのコイルbを磁石の磁極cc¢c¢¢の間に置く。振動板aにかかる空気圧が音波によって変動すると,振動板aが振動するので,コイルbも磁界の中で振動する。こうして,コイルbに振動する誘導起電力が発生する。他にリボン状の金属はくを動かすリボン(ヴェロシティ)方式があるが,衝撃や風圧に弱く,ムービング・コイル方式が圧倒的に多い。

 ムービング・コイル方式は,軽くて頑丈で最も一般的なマイクロホンである。安定した力強い音が特徴で,ライブ・ステージの定番となっている。

(2) コンデンサー型マイクロホン コンデンサーの極板の片方が振動板になっている。これが音波によって振動すると,極板間の間隔が変動し,コンデンサーの電気容量が変化する。あらかじめ,コンデンサーに直流電圧をかけておくと,音波による電気容量の変動にともなって振動電流が発生する。

 高い周波数に敏感で,歯切れのよい音が特徴だが,精密な構造と大きな振動板で

風圧に弱く,現在ではスタジオ録音用に使用されている。

(3) クリスタル型マイクロホン ある種の結晶(水晶やロッシェル塩など)の薄い板を2枚の電極ではさみ電圧をかけると,板の厚みが変わる(圧電効果またはピエゾ効果)。交流電圧をかけると,板は厚みの方向に伸縮振動をする。これと逆の現象も起きるので,それをマイクロホンに利用する。すなわち,音波によって板面に加わる圧力が変動すると板は伸縮振動をする。この振動に対応して,極板間に振動電圧が発生する。

 小型軽量・低コストで一時普及したが,耐久性など問題があり今は少ないが,この

原理はエレクトリック・アコースティック・ギターに利用されつつある。

(4) カーボンマイクロホン 1877年にエジソンが発明し,電話の送話器に用いられている。炭素粉に加わる圧力が,音波によって変動すると,炭素粉の電気抵抗が変化する。あらかじめ炭素粉に直流電流を流しておくと,音波による電気抵抗の変動に対応して電流が振動する。

 雑音が多いので録音の現場からは姿を消したが,故障が少なく,音質をあまり気にしない電話機では長いこと使われていた。

 

音の三要素

 音の大きさや高さが,音波の振幅や振動数で決まることは,オシロスコープで確認できる。たとえば,おんさの音の波形をオシロスコープで観察させる。波形の振幅の減少とともに,音は弱くなる。また,サイズの異なるいくつかのおんさを鳴らして,おんさを音の高い順に並べる。次に,それらの音の波形をオシロスコープで見せて,それが振動数の大きさの順になっていることを確認させる。

 音色の違う音は,その波形が異なる。これもオシロスコープによって確認できる。

 

超音波

 超音波の発生と検出

 人間の聴覚で聞くことができる音はふつう20kHz以下で,これを可聴音というのに対し,それ以上の音を超音波という。気体や液体では縦波,固体中では縦波と横波が伝わる。超音波の発生には圧電現象がよく用いられる。水晶やニオブ酸リチウムなどの単結晶を結晶軸に対してある特定の方向に切り出し,下図のように両面に電極を蒸着する。それに交流電圧を加えると逆圧電効果によって結晶板の厚さが変化し,その周波数で振動する。結晶板に接した媒質中にその振動が伝わり,超音波が発生する。また,そのような結晶の素子に超音波が当たると振動が起き,正圧電効果を通じて交流電圧を生じるので,超音波を検出することができる。近頃では単結晶のほか,圧電性のあるセラミックス(ジルコンチタン酸鉛,チタン酸バリウムなど)や高分子膜(ポリフッ化ビニリデン),半導体薄膜(CdSZnOなど)も多く用いられ,1010Hz以上の超高周波音波も扱えるようになっている。

 

 数10kHzの低い超音波を強力に発生させる場合には,圧電とよく似た磁歪現象を利用することがある。ニッケルフェライトなどの磁性材料をコイルの中に入れて静磁場と交流磁場を同時に加えると振動を始め,超音波が励振される。また数10kHzの空中超音波なら犬笛などを用いて流体力学的に発生させることもできる。

超音波の応用

 超音波には「波長が短いため光線のような鋭い指向性をもつ」という特長を生かした情報のキャリアとしての応用と,「強力な振動パワーを運ぶ」ことを利用したエネルギー的応用とがある。前者の代表はソナー,魚群探知,測深などの海中音響機器で,超音波を短いパルス波にして水中に送り,潜水艦や魚群などで反射された波を受信する。送波の方向とエコーが帰ってくるまでの時間とからレーダーと同じ原理で物体の位置を決める。また,エコーの振幅から物体の大きさや種類を推定できる。超音波キャリアに音声信号で変調をかければ水中電話になる。海中では電波はほとんど届かないので,このように超音波が唯一の情報手段となる。超音波パルスを体内に送り,臓器,胎児,がん細胞等からのエコーを受信して診断に使う医療機器も非常に普及している。X線より人体に対する害が少ないことが大きな利点である。

 エネルギー的応用としては,水中の強い振動を利用した超音波洗浄,かくはん,加湿器などの霧化,金属棒の振動を局部に当ててプラスチックやアルミをつける超音波溶接,ガラスの穴開けなどがある。

 

可聴音と超音波

 ピエゾセラミクスの板などに高周波の交流電圧をかけると,板が振動して超音波が発生する。超音波は波長が短いので可聴音のように回折で広がることなく,レーザーのようにまっすぐ進む。下の写真は水槽の底から水面に向かって発射された10MHz(波長約150μm)の超音波が,水面で反射する様子を示している。超音波の鏡,プリズム,レンズなども実用的に利用されている。教科書p.2164は胎児の超音波映像である。超音波はX線に比べて人体に対する害が少ないので,診断装置として広く普及している。

水中を上方に進み,水面で反射する超音波のシュリーレン写真

 

 

 

 








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