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4節 波の反射と屈折

 

反射波・屈折波の波面形成を演示する実験

ホイへンスの原理

ホイへンスの原理を用いたシミュレーション
波の反射

波の屈折

 


 

反射波・屈折波の波面形成を演示する実験

 小球を多数個,水面に浮かべ,それらを直線上に等間隔で配列する。小球のそれぞれに上下振動を与えると,円形波がそれぞれの小球を波源にして水面上を伝搬する。今,これらの小球すべてに,同じ振動を同時に与えたとしよう。それぞれの円形波は,広がりながら互いに干渉し,直線状の波面を小球の列と平行に形成する。

 さて,全く同一の振動をすべての小球に与えるのであるが,同時に与える代わりに,小球の列の端から次々と順を追って与えていくとどうだろうか。振動の始まる時刻が,ある時間ずつ遅れていくのである。ここで,この振動は単振動である必要はなく,パルス状のものでよい。小球の列を振動が伝わる速さをuとし,水面を円形波が進む速さをvとする。速さuが速さvより大きいならば,この場合にも直線状の波面を観察できる。各小球を出発したそれぞれの円形波は,干渉によって平面波を形成する。しかし,その波面は小球の列と平行ではなく,ある角qを成している。

 下図において,左端の小球が円形波を出すとこれに少し遅れて,2番目の小球も同じ円形波を出す。このように,小球は列の端から順を追って同じ円形波を次々に生み出して行く。それぞれの円形波は,波の独立性により,互いに影響を受けることなく速さvで進む,i番目の小球が振動を始める時刻には,それぞれの円形波は図に示した大きさに広がっている。しかし,これらの円形波はほとんど目につかず,実際に観察できるのは,図中の太線で示した直線波である。

 

 平面波のこのような発生過程は,反射波や屈折波が媒質の境界において素元波から形成される過程と同じである。ホイへンスは,『光に関する論述』の中で,作図を用いて平面波のこのような発生過程を説明した(この文献はダンネマンによって引用されている)。従来の学習は,この作図が主な教材であった。ここで述べる演示実験は,ホイヘンスの作図と合わせて用いることにより,ホイへンスの原理の直観的理解を促すものである。

 次の図は,実験装置の全体を示している。おんさ用打棒Aで,ウェーブマシンの金属棒Bを軽くたたくと,棒Bに連結した水面上の振動子Cが振動する。棒Bが振動しているのであるが,この振動はウェーブマシンの板ばねを介して隣の棒B¢に伝搬し,それに連結する振動子C¢の振動をひき起こす。こうして,水面上の振動子にパルス状の振動が,隣から隣へと次々にひき起こされていく。このとき水面上に発生する波を,水波投影装置でスクリーンD上に投影して観察する。

 

 明確な直線波を得るには,実験を行う前に,小球(振動子C)をそれぞれのしかるべき位置に並べる作業が必要である。すなわち,@振動子を金属棒の両端に取りつけて,ウェーブマシンのバランスをとること。A小球の列がウェーブマシンの中心線と平行になるようにすること。B小球の高さを,それが水面に軽く触れるように調節すること。これらの調整は,主に金属棒Bと振動子Cを連結する管Eの伸縮操作で行う

 これらの調整を正確に行えば,明確に平面波の発生過程を観察できる。

    参考文献:池山繁成「反射波・屈折波の波面形成を演示する実験」

         (啓林高理編・物理地学1987 No.277)

         F.ダンネマン(安田徳太郎訳)「大自然科学史 5(三省堂)

 

ホイへンスの原理

 波の進み方を一般的に説明するのに,大変便利な考え方がホイへンスの原理である。ホイへンス(C.Huygence1629-1695)は,この原理を次のように表現した。

 「波面上の各点は第2次波(小球面波)の波源と考えられる。それからある時間たった後の波面はこれらの小球面波の包絡面である。」

 すなわち,ある時刻の波面を知って,その時刻からある時間がたった時刻での波面を知るには,初めの波面の各点を中心として仮想的な2次波(小球面波)を考え,このように考えた2次波がある時間後重なり合って形成する面(包絡面)が新しい波面になっていると考えればよい。

ホイへンスの原理に従って,球面波の伝わる様子を描くと下図のようになる。

 

波源P0から出た波は球面波として伝わり,ある時間たった後には球面Sまできているとする。Sの各点を新しい波源とする球面波を描き,この前面の包絡面S¢が新しい波面となる。通常2次波(小球面波)は,どの方向にも同様に伝わるように描くか,あるいは前面の半球面だけを描く(教科書p.20421)。ホイへンスの原理では,2次波の強さの方向による違いを考えないから,S¢¢のような包絡面も存在するはずである。波の進行方向と反対方向に波はなぜ逆行しないかについて,この原理では説明できない。

 フレネル(A.J.Fresnel1788-1827)は,この困難を解決するために,第2次波の伝わっていく方向による違いを考えに入れた。

 右図でP0を波源として球面波が伝わり波面Sが形成されたとする。S上の1点をQとする。P0Qの方向がこの球面の波面の法線方向である。Qを新しい波源とする2次波の球面波がこの法線方向とcの角をつくる方向で生じる擾乱(じょうらん)の振幅はcによって違うが,フレネルはこれをK(c)という係数で表した。cを傾斜角,K(c)を傾斜因子とよぶ。フレネルはK(c)について,c0のときのK(0)が最大で,cp/2のときのK(c)0c p/2のときK(c)0と仮定して議論を進めた。後にキルヒホッフ(G.R.Kirchhoff1824-1887)は,波動の満足する微分方程式の立場からフレネルの議論に数学的基礎を与え修正した。それによると

    K(c)1cos c

となる。この比例式が成立すると,確かにc0ではK(c)は極大であるが,ではフレネルの仮定したようには0とならず,cpK(c)0となる。

 このことを考えに入れて,1図を描きなおしたのが3図である。3図では,振幅の大きさを2次波球面を表す線の太さで表している。幾何学的には後方包絡面が考えられるが,この包終面上では振幅が0になるので,実際は後方に伝わる波面は存在しないことになる。

 ホイへンスの原理を使って,波の反射・屈折の法則を説明できる。2次波の干渉を導入したフレネルの理論は,回折の現象を説明するのに十分なものである。キルヒホッフの理論は,フレネルの理論に数学的基礎づけを与えたもので,フレネルの理論で傾斜因子の形を仮定し,不十分な形で導入してあったのを正確な形に直したものである。フレネルの考え方とこれを厳密化したキルヒホッフの理論は,ホイヘンスの原理だけでは説明できなかった後進波がなぜ存在しないかということを説明している。       参考文献;原島鮮「物理教育覚え書き」(裳華房)

 

ホイへンスの原理を用いたシミュレーション

 ホイへンスの原理を用いて素元波を重ね合わせ,リアルな波の屈折や反射を表現することができる。各素元波には1周期分の断面をもたせている。屈折の図では,媒質U中での波の広がる速さが遅くなり,屈折した射線に垂直な波面が見られる。反射では,壁に反射する前後の入射角と反射角が等しくなっている。

参考文献:足利裕人「シミュレーションソフトの活用」

                     (啓林高理編・物理地学1993 No.291)

 

波の反射

 水波投影装置の水槽で,直線波を直方体のブロックで反射させ,反射波を観察させる。反射開始から反射終了までの時間は短く,波面の変化は複雑である。入射波が反射波に変わっていく様子を,単に目で見ただけで把握させることは難しい。波面が変化していく過程を,作図によって予測させておき,その後で,予測を確かめるためにもう一度観察させるとよい。できればビデオに撮影してコマ送りで見せたい。反射の法則は,スクリーン上に置いた細い直線の棒で確かめることができる。その棒を予測した反射波の波面の上に置き,実際の波面がその棒と重なるかどうかを見るとよい。

 

波の屈折

 水波投影装置の水槽で,直線波を水深の異なる境界で屈折させ,屈折波を観察させる。屈折率を大きくするには,水の深浅の差を大きくすればよい。入射角を大きくすると,屈折開始から屈折終了までの時間が長くなる。その上に,屈折波の波面が大きく折れ曲がるので印象に強く残る。屈折波の他に回折波が現れて観察を妨げるので,回折波を弱くする工夫が必要である。

 周期的な波を屈折させる場合は,振動数が低いほど屈折率は大きくなる。波の周期が媒質Iと媒質IIで同じになることを確かめるには,回転式ストロボスコープで水波を止めて見るとよい。深い水と浅い水の両方で波は止まって見える。

 

 








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