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第2節 波の重ね合わせ

 

波の独立性と重ね合わせの原理

定常波

波の反射と透過
自由端反射と固定端反射


 

波の独立性と重ね合わせの原理

 教科書p.1919の実験の他に,左のほうから山のパルス波を送り,右の方から谷のパルス波を送って,2つの波を衝突させる実験もしてみるとよい。波の独立性をより明確に確認できる。さらに,その観察を教科書p.1925と関連づけて指導することもできる。

 問5では,直線と直線の重ね合わせの図が問題になる。この図の描き方は,曲線波形の重ね合わせの図に比べると,たいへん簡単である。というのは,直線と直線の和は必ず直線になり,その求める直線を作図するには,ただ2つの点を決めればよいからである。

 一般に2つの波y1f1(xt)y2f2(xt)が同時に存在するとき実際に観測できる波yは,それらの単純な代数和

yy1y2f1(xt)f2(xt)

で表される波である。これを,波の重ね合わせの原理という。この原理が成り立つのは,波動方程式の解が次の性質をもつことと関係がある。すなわち,clc2が任意の定数であり,関数y1f1(xt)y2f2(xt)がそれぞれ波動方程式の解であるとき,関数c1y1c2y2もまた,その方程式の解である。いいかえると,関数y1f1(xt)y2f2(xt)で表される波が存在するとき,関数c1y1c2y2もまた物理法則を満たすので波として存在できる。波の重ね合わせの原理は,2つの波y1y2が同時に到来したとき,そこにはy1y2で表せる波が生じることを述べている。

 多くの場合に,この原理は実験事実を説明することができる。しかし,津波や衝撃波のように振幅の大きな波には,重ね合わせの原理は成り立たないことがわかっている。上に述べた波動方程式は,波の振幅が波長に比べて十分に小さいという近似を用いて導かれたものである。この近似が使えない場合,波動方程式は上に述べた数学的性質をもたなくなる(1「津波とソリトン」)

 

定常波

 波長・振幅の等しい2つの正弦波が,互いに逆向きに進んで干渉すると,定常波を生じる。2つの正弦波が互いに逆向きに進むとき生じる波は,一般に,

    

 

で表される。ここで,波の伝わる速さはであるから,波長が等しければ周期も等しくなる。さらに,振幅も等しく aa′ならば,上の式は

 

となる。

 この関数を1/8周期ごとにグラフで示すと,図1の波形を得る。グラフからただちにわかるように,これは,振幅2a,周期Tの定常波である。さらに,腹と節の間の長さはl/4に等しいこともわかる。

 

 次に,定常波のエネルギーの分布について考えてみよう。

 弦を右向きに進む進行波の場合(2) P点付近の微小部分は,これからしだいに速さを増すと同時に引き伸ばされていく。すなわち,P点付近の微小部分のエネルギーは,運動エネルギーdKも位置エネルギーdUもともにこれから増加する。これに対して,この波が定常波の場合(3)は,少し事情が異なる。P点の速さはしだいに増加していくが, P点付近の波形はこれからしだいにその傾斜がゆるやかになっていく。すなわち,運動エネルギ一dKは増加するが,位置エネルギーdUは,その微小部分の長さがもとの長さにもどっていくので,しだいに減少する。定常波の変位が最大になったとき (1の時刻1/4T),エネルギー密度は定常波の節で最も大きく,腹の位置で最も小さい。それから1/4周期の時間が経過し,定常波の変位が0になると,エネルギー密度は定常波の腹で最も大きく,節の位置で最も小さくなる。こうして,エネルギー密度の最大の場所と最小の場所の入れ替えが,1/4周期ごとにくり返される。

 

 

波の反射と透過

 媒質Tを進んできた波が媒質Uとの境界に到着すると,波はそこで透過波と反射波の2つに分かれて進む。媒質の境界で発生する透過波や反射波は,どのような波になるだろうか。入射波と透過波,入射波と反射波の関係を弦を伝わる横波について調べてみよう。

 

線密度r lの弦1と線密度r 2の弦22つの部分からなる1本の弦を,張力Tで張っておく。波は弦1を速さv1()で,弦2を速さv2()で進む。いま,弦1には右に進む入射波y1と左に進む反射波yrが同時に存在し,弦2には右に進む透過波ytがあるとしよう。それぞれの波を,ある任意の関数f1g1 f2を用いて一般的に

   y1f1(tx/ v1)ytf2(tx/ v 2)yrg1(tx/ v1)

で表すことができる。たとえば,関数yif1(tx/ v1)は,関数f1の形に関わらず波動方程式の解であり,x軸の正の向きに速さv1で平行移動する曲線を表している。そこで,弦1を右向きに進む入射波yiをこの関数で表すことができる。

1と弦2の境界点O(x0)で,これらの波が満たすべき条件は,

 

と書ける。弦1に現れる波は,入射波と反射波の合成波yiyrであり,弦2の上に現れる波は透過波ytそのものである。合成波と透過波は,境界点Oでなめらかに接続する。すなわち,境界点Oで,合成波と透過波は連続しており(条件@),ここで波形が折れ曲がることはない(条件A)。条件Aは

 

 

の関係を用いると,

 

となる。これを積分して 

を得る。@式とB式から,となる。ここで,Cは積分定数である。入射波がないときは,当然のことであるが反射波も存在しない。

いいかえると,f1 (t)0のときg1(t)0。したがって,積分定数Cは,C0である。また,波の速さvであるから,

 

を得る。これらの式は,時刻tx/v1あるいは時刻tx/v2においても成り立つので,

 

と書くこともできる。

 反射波と透過波の様子を,上のC,D式を用いて調べることができる。弦1と弦2の線密度の比r 2/r 1が変わると,反射波と透過波の様子も異なる。次の4通りの場合について,これを調べよう。

(1) r 2/r 10

 この場合,C式はg1(tx/v1)f1(tx/v1)となる。すなわち,反射波yrは,入射波の関数f1を用いてyrf1(tx/v1)と書ける。この波形は,入射波の関数yif1(tx/v1)の波形とy軸に関して対称である。というのは,入射波のxaにおける変位と反射波のx=−aにおける変位は等しいからである。この対称性を利用して,反射波の作図法を考えよう。まず,入射波は実際のところx0の領域(2)に存在しないが,弦1上の入射波形をそのまま延長して弦2の上にまで入射波形を考える。次に,弦2上のこの仮に考えた入射波形を,y軸について折り返すと反射波の波形になる。下の図は,反射波と仮想的な入射波の関係をパルス波について示している。これは自由端の反射にほかならない。

 

(2) r 2/r 11/4

 C,D式から,

 yrg1(tx/v1)(1/3) f1 (tx/v1)

 ytf2(tx/v2)(4/3) f1(tx/v2)

を得る。この場合の反射波yrは,(1)で考えた自由端の反射波の1/3倍になる。透過波ytの関数f1 (tx/v2)の波形は,入射波f1 (tx/v1)の波形をx軸方向にv2/v1倍引き伸ばしたものになる。なぜならば,関数f1(tx/ v2)における変位は,関数f1(tx/ v1)xaにおける変位と等しいからである。

 

 (3) r 2/r 1=∞

 C,D式から,

   yr=−f1(tx/v1)

   yt0

を得る。この場合,透過波は存在しない。反射波yrは,(1)で考えた自由端の反射波の−1倍になる。すなわち,反射波は自由端の反射波をさらにx軸について折り返したものになる。これは固定端の反射である。

 

(3) r 2/r 14

 

この反射波と透過波を関数f1が正弦関数の場合について描くと,図1のようになる。

 

自由端反射と固定端反射

 ウェーブマシンやばね(スリンキー)等を用いて,波の山が反射したとき,山として返るか,あるいは谷に変わるかを観察させる。実験を行う前に,結果を生徒に予想させるとよい。また,水波が壁面で反射するときはどうなるか,生徒に質問してみるのも,生徒の興味を喚起する上で効果がある。

 教科書p.19514を用いて,反射波の作図法を理解させる。教科書p.1967を解かせて,その理解を深める。

 正弦波の反射によって定常波が発生することは,教科書p.197例題1のような問題を解かせて理解させる。また,ウェーブマシンで,一端を自由にした場合と固定した場合のそれぞれについて定常波をつくり,腹・節の位置を観察させる。

 

 

 

 

 








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