トップ物理I 改訂版>第2部 運動と力>探究活動4 運動のシミュレーションと実験に関する探究

探究活動4 運動のシミュレーションと実験に関する探究

 

ねらい 運動方程式に実際の数値を代入して,微小な時間間隔Δtごとに加速度,速度,位置を求め,運動が時々刻々変化していくようすを実感させる。ここでは,フックの法則に従う力を例にとって運動のシミュレーションを行いv - tおよびx - tグラフを描く。Δtを十分小さくとることにより,運動のシミュレーションがしだいに正確な結果を与えることを確かめさせる。また,ばね定数や質量などのパラメータを変えることにより運動が変わることを見る。さらに,このシミュレーションの結果を実験で検証する。表計算ソフトでは,時間のとり方,ばね定数と質量の比を簡単に変更でき,またグラフを描くのも容易なので,コンピュータの利点,能力について理解を深めることができる。

                                

<シミュレーションによる確認>

準備・方法 コンピュータ,表計算ソフト

時間をΔtごとに区切り,0123……nと番号を付け,n番目の時刻nΔttnと表す。時刻tnの速度vn,位置xn,加速度anは,時刻tn-1の速度vn-1,加速度an-1,位置xn-1,およびxnを用いて, vnvn-1an-1Δtxnxn-1vn-1Δtanと与えられる。

 コンピュータを使うときは,時間間隔Δt を自由に変更できるようにしておく。表計算ソフトはグラフを簡単に描くことができるものを用意する。

 

 

データ例 表計算ソフトの使用例

(1)計算式

 

A

B

C

D

E

1

n

t

v

x

a

2

 

Δt=0.02s

v0 =0 cm/s

x0 = 10cm

k/m= 4.0cms-2

3

4

0

=$B$3*A4

 =C3

 =D3

  =$E$3*D4

5

1

=$B$3*A5

  =C4+E4*$B$3

  =D4+C4*$B$3

  =$E$3*D5

6

2

=$B$3*A6

  =C5+E5*$B$3

  =D5+C5*$B$3

  =$E$3*D6

7

3

=$B$3*A7

  =C6+E6*$B$3

  =D6+C6*$B$3

  =$E$3*D7

8

4

=$B$3*A8

  =C7+E7*$B$3

  =D7+C7*$B$3

  =$E$3*D8

 

(2)計算例

i)k/m=4.0Δt =0.02のとき

 

A

B

C

D

E

1

n

  t

 v

 x

  a

2


 

Δt=0.02s

v 0 =0cm/s

x0 =10cm

k/m=4.0cms-2

3

4

0

0.00

  0

 10

40

5

1

0.02

0.8

 9.98

39.9

6

2

0.04

1.6

 9.95

39.8

 ……

……

 ……

 ……

43

39

0.78

20.63

 0.1199

 −0.479

44

40

0.80

20.64

0.2926

 1.1707

 ……

 ……

 ……

 ……

63

59

1.18

14.79

7.43

 29.7

64

60

1.20

14.19

7.72

 30.9

 

 

(3)グラフ表示

 

v - tおよびx - tグラフ

 

考察 ばねの弾性力を受けておもりが行う運動では加速度が一定ではなく,平衡の位置からの距離によって変化する。この場合,運動方程式から運動を時間の関数として求めるのは,等加速度運動の場合のように簡単ではない。しかし表計算ソフトを用いれば,運動を上で述べたように数値的に求めるのは比較的簡単である。

1)Δtを十分小さくするにつれて,シミュレーションがより正確になることを理解させる。

 ばねの復元力のもとでは,運動は時間変数tについて周期的な三角関数で与えられる単振動となる。単振動は生徒はこの段階では未習である。ここでは周期性についてはふれず,おもりが平衡の位置(自然の長さ)x=0を通過するときに,速さが最大になるのをシミュレーションでみる。平衡の位置を通過する時刻T0=π/(2ω)=3.1415/4=0.785…s で,最大の速さV0=ωx0=20cm/sである。

Δt=0.20.10.02sに対して,V0= 27.4,−23.4 ,−20.6cm/sとなり,Δtがより微小になるにつれ厳密な値に近づく。Δt=0.20.1 sの場合を以下に示す。

 

 

 

2) 上のシミュレーションをmを一定にとって,kを大きくして行き,V0 の値の増加をみる(仮説1)

また逆にkを一定にして,mを大きくして,V0 の値が小さくなるのを確かめる(仮説3)Δt1/50sに選んだシミュレーションでは

k/m=16.08.02.01.0s-2V0=42.6,−29.6,−14.5,−10.2cm/s

となる。

厳密な値は,各々−40.0,−28.3,−14.110.0 cm/sである。

 

<実験による検証> 

準備・方法 力学台車,記録タイマー,記録テープ,セロハンテープ,スタンド,C型クランプ,れんが(おもり用),つるまきばね,ものさし,台はかり

データ例 1)ばね定数の測定

ばねに加えた力F(gw)と伸びx(cm)の測定例

F

20

40

60

80

100

200

x

2.1

4.9

7.8

10.0

13.5

27.6

 

これより,ばね定数はk=6.95N/m。ここでは100gw200gwの時の値よりΔF/Δxとして求めた。伸びが0の状態でも,力が0でないばねの場合は,ばね定数は,力Fと伸びxのグラフの傾きから決める方がよい。

2)台車とおもり(れんが)の質量の合計mを測定すると1.74kgであった。これからk/m=4.0s-2で,シミュレーションと同じパラメータになった。

3)このつるまきばねにつないだ,力学台車をばねの自然の長さの位置から10cm程度のびた位置に置き,静かに手をはなす。ばねが自然の長さになったときの台車の速さを記録タイマーで測定する。

考察

 シミュレーションによるV0の結果と,実験による実測値は一般には一致しない。この理由は実験では,記録タイマーを用いて平衡位置を通過する際の速度を測定すると,テープの走行抵抗のため,速度の値はシミュレーション値よりも小さくなるからである。

実施方法

 教科書に示したシミュレーションと実験的検証の両方を行うことが望ましいことはいうまでもないが,グループあるいは個人でいずれか1つの方法を選び,発表討論を通して,互いの実験精度の違いやその原因などについて考察を深めるのもよい。

発展

教科書p.101C空気抵抗がはたらく場合」で,抵抗力fが速さv1乗あるいは2乗に比例するときの雨滴の落下をシミュレーションで調べる。速さが時間とともに終端速度vtへ近づくようすを調べ,教科書p.10229のような曲線が得られることを確かめる。

 

 

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2009 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.