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探究活動1 重力加速度の測定

 

ねらい 単に重力加速度の大きさを測定するということではなく,精度の高い結果を得ることを目標の一つにして実験を行う。3つの方法を示しているが,それぞれの方法について,わずかな注意・工夫が実験の精度に影響する。

よって,どの実験方法を行った場合でも,基本的な操作や処理を理解した後に,「この実験の精度(誤差)はどれほどか,どうすれば精度を高めることができるか」という考察を行い,再度,工夫して実験を行わせる。これにより,生徒がより主体的に工夫して実験にとり組むことが期待できる。さらに,実験結果についての発表・討論を行い,互いの実験精度の違いやその原因などについて考察を深めることをねらいとする。

 

<実験1> 記録タイマーを用いる方法

準備・方法 記録タイマーを用いて落下の加速度を測定すると,テープの走行抵抗のため,加速度の値は重力加速度よりも小さくなる。走行抵抗の影響を小さくするには,おもりを重くし,テープがタイマーに絡みつかないように,テープの丸まりを減らし,また,教科書の図のように,あらかじめテープをまっすぐ引いておき,はさみで切ってスタートさせるというような工夫が考えられる。

 しかし,以上のような工夫は最初からすべて教える必要はなく,いろいろな重さのおもりや道具を用意しておき,生徒が自分たちで考え,発見する経験をさせたい。

処理 得られたテープから加速度の値を正しく求めるという作業は,初めて経験する生徒にとっては,かなり困難な作業である。生徒はいくつかの問題点に突き当たる。

@打点間隔から速度への換算 打点の時間間隔が1/50s(あるいは1/60s)であることだけを与えても,後の処理はなかなか進まない。距離を速度に置き換える際,2打点ごとの距離そのものが2/50s(あるいは2/60s)を単位時間とした速度になっていることや,それを後の作業のしやすさのためにcm/sという単位に換算することに気づかせたい。この作業は,単位を単なる付け足しとしか認識しないことの是正の機会でもある。

Av-tグラフの作成 1/25s(あるいは1/30s)ごとの速度を縦軸に,時刻を横軸にとってグラフを描く。このとき,データをグラフ上のどこに表すのがよいかを生徒に考えさせることが大切である。通常,中央時刻にとるように指導することが多いが,時刻間に横棒を引くという考え方もある。これは,得られた速度が,「この間,一定の速さであったと考えた場合の速さ(平均の速さ)」であることによる。等速度運動,等加速度直線運動の場合,一定時間の間の平均の速さと,その時間の間の中央時刻における瞬間の速さは一致するが,それ以外の運動では,この両者は一致しない。

よって,横棒を引くというのはそれなりに妥当な方法である。

 また,中央時刻にとらずに,初めの時刻,あるいは終わりの時刻にプロットしてグラフを描いても,得られる加速度の大きさには影響しないので,プロットの仕方には過度にこだわる必要はない。これには,次の項目で説明することも関係している。

Bv-tグラフが原点を通らない理由 プロットされた点がきれいに一直線上に並んでいるのに,無理にグラフの原点を通るような直線を引こうとする生徒がいる。これは,自由落下が速度0から始まる運動であることを意識しすぎていたり,自分が行った操作(落下の原点を自分で決めたこと)の意味が十分理解できていないことが原因である。記録テープ上の,"真の"時刻0の付近では,打点が隣の打点と重なって正しく読めなかったり,スイッチを入れてから落下運動が始まるまでに記録された打点と落下した直後に記録された打点の区別がしにくい。よって,打点間隔が規則的に広がり始める元となっている打点を,落下の原点(時刻0,落下距離0)とせざるを得ないのである。このことから,v-tグラフの横軸にとる時刻は,落下運動が始まった瞬間をt0としているわけではないので,普通,グラフは原点を通らず,グラフのv→0への外挿により,落下し始めた時刻を知ることができる。

データ例 おもりの質量 250g

 

 

 

 

 

 

 

 

 

g9.56 m/s2

  

回帰分析の結果s

Y切片

0.237455

Y評価値の標準誤差

0.002699

R2

0.999986

X係数

9.564732

X係数 係数の標準誤差

0.014637

 

おもりの質量が重い方がよい結果が得られる。

  おもりの質量を変えて調べてみるとよい。

 

 

 

 

考察 摩擦などに十分配慮しないで実験すると,重力加速度の値が8m/s2程度でしか得られないこともある。また,v-tグラフを描く際に直線の引き方に問題があったり,直線上の2点を選んで傾きを求めるのに目盛りの読み方が雑であると,まれに重力加速度の値が9.8m/s2を超えることもある。生徒は単純に,9.8m/s2に近い結果が出ることがよいことであると考えやすいので,「実験の精度(誤差)」について考えるように指導することが必要である。

 また,考察を進める中で,グラフの直線の引き方や目盛りの読みとり方とは無関係に,データから回帰直線の傾きを求めるための数学的方法(最小2乗法)があることや,その処理が表計算ソフトを用いれば簡単に行えることを示すとよい。

発展  コンピュータを活用して,加速度の値を求める場合,常に「正しい」結果を出してくれると考えることには問題がある。例えば,実験にミスがあり,v-tグラフが直線にならないような場合でも,コンピュータは機械的に結果を出してしまう。

このような場合,グラフからデータを吟味し,一部のデータを省くなどして,計算し直す必要がある。このように,コンピュータの使用に際しては,その特性を理解し,目的に応じた使い方ができるよう,機会を見つけて指導することが必要である。

 

<実験2> ストロボ写真を用いる方法

準備・方法 より高い精度で重力加速度の値を得るため,記録テープを使わずにストロボ写真によって落下運動を記録する。

 いちばんの問題は,写真から落下距離を読みとるところにある。写真の中に細かい目盛りが写れば良いが,それが読みとれるような明瞭な写真を撮ることは簡単ではない。1mのものさしを同時に写し込んでおき,印画紙上での1cmが,実際の何cmに相当するかを換算する方法も用いられる。

 最近では,デジタルカメラで撮影した写真を,その場でプリントするといった方法も可能であるので,教科書の写真を使うのではなく,ぜひ実際に写真撮影する経験をさせたい。

処理 得られたデータから結果を出す手順は,記録タイマーを用いる方法と基本的には同じである。ストロボの発光間隔を調節しながら,何枚か写真を撮ってみるとよい。写真上の距離を実際の距離に換算することによって,測定の誤差も大きくなるので,できるだけ正確に測定することが大切である。

データ例 おもりの質量 200g 発光間隔1/20 s

 

g9.61 m/s2

 

考察 加速度として,9.8m/s2にかなり近い値が得られる。この方法で,より実験の精度を高めるにはどうすればよいかについても考えさせたい。

発展 同じ方法を用いて,落下させる物体の質量や大きさ等による落下の加速度の違いを調べ,空気抵抗の影響を調べる実験へとつなぐこともできる。

 また,実験方法として,落下する物体の運動をビデオ撮影し,コマ送りによって分析することもできる。物体の位置(落下距離)の測定をどのようにして行うか,工夫して行ってみるとよい。

 

<実験3> アトウッドの器械を用いる方法

準備・方法・処理 アトウッド(17461807)が実験を行った装置そのものを再現するのではなく,定滑車を使い,物体の落下運動を遅くして,簡単な道具・方法で重力加速度を求める実験である。

 軽くてよく回転する滑車に糸をかけ,糸の両端に質量Mの等しいおもりをつるす。一方に,質量mの小さなおもりを付け加える。手を離してから重い方のおもりが20cm落下するまでの時間をストップウオッチで測定し,等加速度直線運動の式から加速度を求める。

 2つのおもりの運動方程式を立て,その2式から重力加速度を2つのおもりの質量とおもりの加速度で表す式を求める。この式に,実験結果から得られた加速度の値を代入し,重力加速度の値を得る。

 

データ例

・おもりの質量  200g210g

20cm 落下する間の時間

 10回の測定の平均値  1.51s

・重力加速度の大きさ

 ga(Mm)/(Mm)=2L(Mm)/t2(Mm)

  =2×0.20m×(0.210kg0.200kg)÷1.51s2÷(0.210kg0.200kg)

 g7.19 m/s2

 

考察 実験装置にもよるが,重力加速度の値としては,実験12に比べて小さい値になりやすい。その原因としては,滑車の摩擦や慣性モーメントの影響が考えられる。滑車の摩擦を減らす工夫をするとともに,両側のおもりの質量や質量差,落下させる距離等を変えながら,より実験の精度を高めるにはどうすればよいかについて考えさせたい。

発展 アトウッドが行った実験について調べてみると,実験装置や方法に様々な工夫がされていたことがわかる。現代では多くの便利な実験用の器具があるが,そうでない時代においても,工夫によって高い精度で実験を行っていたことを知るとともに,自分で装置を工夫することの大切さに触れてもらいたい。










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