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第1節 力

 

力の三要素

教科書における力の図示の方法

フックの法則

力の合成と分解

力のつり合い

作用・反作用の法則

作用・反作用と力のつり合い


 

力の三要素

 中学校で,力を図に表すには,力の大きさに比例した長さの矢印で表すことや,力がはたらいている点を作用点ということを学んでいるが,力の作用線は学んでいない。

 力に関しては中学校で学んだことの理解が十分でない生徒も多いが,いろいろな場面で力のつり合いを考えたり,次節で学ぶ運動の法則をさまざまな状況に適応していく中で理解が深まっていくという側面もある。よって,導入段階では中学校で学んだことを復習しながら,重要な点を一つひとつ確認していくことが大切である。

@物体を変形させたり,支えたり,動きを変えるはたらきを力という。

A力には,筋肉による力,重力,摩擦力,静電気の力,磁石の力などがある。

B力はN(ニュートン)を単位として測る(中学校ではNしか学ばず,kgwは学ばない)

C力は矢印の長さと向きで図示し,力のはたらいている点を作用点という。

D物体に2つの力がはたらいても動かないとき,2力はつり合っているという。この2力は,同一直線上にあり,逆向きで大きさが等しい。

 なお,作用・反作用の法則は中学校では学んでいない。

 

教科書における力の図示の方法

 運動方程式を正しく使うには,物体にはたらく力を正しく図示することが必要である。教科書での力の図示の仕方について説明しておきたい。

 

 

 質点の力学では,物体にはたらく力はすべて1 (重心を選んだと考えるとよい)を作用点とする力の矢印で表すのが本来である。しかし,それではその力がどういう力かが一目ではわかりにくい。そのため,中学校でもしていたような,力を及ぼす相手がわかるようなかき方をする。高校では,2物体間の作用・反作用を考慮し,2物体それぞれの運動方程式を立てるということがある。このとき,一対の作用・反作用の作用点を同じ点にすると,どちらの力がどちらの物体にはたらく力かがわかりにくい。これを明確にするため,2物体の接触面を少し離してかくことにした。こうして,作用点を向かい合うようにそれぞれの物体の中にかくことによって,どちらの物体にはたらく力かが一目でわかる。また,どの2力が作用・反作用の関係にあるかが一目でわかる。

 

なお,教科書の図では,さらに剛体のつり合いを学習する以前でも,できる限り,剛体のつり合いの条件を満たすように作用点を選んである。

 

フックの法則

 現行の学習指導要領では,フックの法則が中学校での学習内容から削減されていることを意識した指導が求められる。実験を通して,ばねの弾性力の大きさがばねの伸びに比例することを体験的に学ばせるとともに,ばねの性質がばね定数によって表されることを理解させる。また,ばねの弾性限界についても説明しておくことが望ましい(教科書p.77脚注)

 教科書の実験を行う際,弾性力の大きさは,質量1.0kgの物体にはたらく重力の大きさを9.8Nとして(教科書p.76脚注),つるしたおもりの質量から計算させるとよい。

 

力の合成と分解

現行の学習指導要領では,力の合成・分解が中学校での学習内容から削減されている。数学の授業進度にもよるが,ここで初めて平行四辺形の法則を学ぶ生徒もいると考えられる。従来,中学校では (教科書p.78実験2)のような実験を行い,かなりの時間をかけて指導していた内容であるので,ベクトルのとり扱いに対する習熟の程度を見ながら,作図方法などについても,従来よりていねいに指導することが必要となろう。

 実験2を行う場合,ばねはかりを水平に引いて用いるので,正しい値を指すように,あらかじめ目盛りの0点を調節しておくこと。また,ばねはかりを引くときは水平方向に引くようにする。また,この実験は後に学ぶ「3力のつり合い」につながる重要な実験であるので,ぜひ行っておきたい。

 力の分解に関しては,三角比を用いて,力のx成分,y成分を求めることができるように記述した(教科書p.795)が,生徒の実状にあわせた指導がなされることが望ましい。

 

力のつり合い

 現行の学習指導要領では,力の合成・分解が中学校での学習内容から削減されているため,「3力のつり合い」は,従来よりも生徒の理解が進みにくいと考えられる。まず,中学校で学習した「2力のつり合い」の復習から始め,「力がつり合う」とは,「複数の力がはたらいているが,全体としては力のはたらきがない状態」であることについて認識を深めるよう指導するのがよい。

 ベクトルや三角比については,生徒の実状を踏まえて適切に扱うこと。「3力のつり合い」では,教科書にはないが,小さな金属製のリングを3方向からばねはかりで引いてつり合わせ,理論(作図)と実験(ばねはかりの読み)を比較するなど,実感を持って学習できるようにすることが望ましい。

 

作用・反作用の法則

 この法則については,次の点に留意しながら,生徒の実状に応じて指導をされたい。

(1) 力はそもそも2つの物体間の相互作用である。たとえば2物体AB間で及 ぼし合うものである。その力の大きさをfとすると,このことを,「AからBに大きさfの力がはたらき,同時に,BからAに同じ大きさの力がはたらく」といい換えることができる。は同じ大きさで向きが逆であるから,である。この2力を作用・反作用という。

(2) 作用・反作用には因果の関係は考えられないから,2力のどちらを作用とし,反作用とするかの区別はできないが,便宜上,区別する場合がある。

例:机上におかれた物体が机を押すと,反作用として机の垂直抗力が物体にはたらく。

(3) この法則は物体が静止してつり合っているときだけでなく,一方が他方を押し ながら動いているときでも,また,互いに引き合って近づきつつあるときでも成り立つ。

 なお,作用・反作用の法則を簡単,明瞭に表す実験は多くない。よく見かける右図のものは,2力のつり合いとの区別がむずかしいので,例として挙げることは慎重に行いたい。これを作用・反作用とみなすためには,相手の「ばねはかり」に引かれている「ばねはかり」という物体を考えることになる。これは,ばねはかりは物体なのかそれとも力の大きさを測る道具なのか,さらに自分が相手を引く力(弾性力)を測るのか,それとも相手が自分を引く力を測るのか,という混乱の原因となる。生徒の実状にもよるが,初歩の段階ではばねはかりは力の大きさを測る道具であるということに徹したほうがよい。もちろん,十分に慣れた段階では,正しく作用・反作用であることを説明できる。

 

作用・反作用と力のつり合い

 はたらいている力が作用・反作用の関係にある2力なのか,それとも力のつり合いの関係にある2力なのかの判定は,生徒の理解がなかなか進まないところである「何から何にはたらく力」,「何から何が受ける力」,「何が何を押す(引く)力」というように力を表す練習をした上で,「AからBにはたらく力」と「BからAにはたらく力」は作用・反作用の関係にあり,つり合いはある1つの物体にはたらくいくつかの力の間の関係であることを指導するとよい。

 

 

 

 








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