トップ物理I 改訂版>第1部 生活と電気>探究活動5 ラジオの製作

探究活動5 ラジオの製作

ねらい  ラジオはブラックボックスになっていて全く分からないものになっている生徒も少なくない。ラジオの原理は,コンデンサーや物理Uで電気振動回路等を学習しなければ理解できないことである。したがって,ここではラジオの原理を理解することがねらいではなく,このような身近なものを利用して,非常に簡単にラジオが製作できるということから,電波や物理全体に興味・関心・意欲をもたせるのがねらいである。

準備・方法  コイルは写真のフィルムケースや紙の筒などにエナメル線を30回程度巻いて製作する。コンデンサーは,ラップの芯にアルミはくを巻き,絶縁用にポリエチレンの袋をかぶせたものを作る。これをAとする。次に,別のポリエチレンの袋の中にアルミはくを入れたものを作る。これをBとする。教科書の図のように,Bを筒状にしてAにかぶせ,コンデンサーとする。アルミはくをポリエチレンの袋に入れ,平板状にしたものを2つ用意して,それを重ねてコンデンサーとしてもよいが,極板間距離が変化しやすく電気容量が不安定で,放送局の周波数に合わせるのが難しくなる。

 シリコンダイオードはゲルマニウムダイオードよりも順方向の電圧を大きくしないと電流が流れないので,電波の弱いところでは受信しにくくなる。ダイオードはゲルマニウムダイオードを用いるほうがよい。

 普通に販売されているイヤホンはコイル式でインピーダンスが小さく,クリスタルイヤホンよりもずっと大きな電流が流れないと聞こえない。電気部品を販売している店で,今でもクリスタルイヤホンを販売している店がある。ゲルマニウムラジオのキットを販売している店もある。

 放送局の出力と放送局のアンテナからの距離にもよるが,地方の放送局では,10km程度離れた場所で,アンテナ線の長さを20m以上にしないと聞こえない。アンテナ線の先に耐電圧の十分なコンデンサーを接続して,コンセントに差し込むという方法もあるが,感電に注意する必要がある。アースを付けた方が感度が上がる。

考察 共振周波数f は,

 

(Lはコイルのリアクタンス,Cはコンデンサーの電気容量)

 

である。

 コイルの巻き数を増やしたり,断面積を増やしたり,鉄心を入れたりするとLが大きくなる。コンデンサーの2枚のアルミはくの向かい合う面積を増やしたり,2枚のアルミはくの間隔を縮めたりするとCが大きくなる。同じ周波数にしたいときは,Lが大きくなるときはCを小さくしてLCの値を同じにすればよい。

 自作のコンデンサーやコイルと抵抗値の分かっている抵抗器を用いて発振回路を組み,オシロスコープで測定すると,コンデンサーの容量やコイルの自己インダクタンスを測定できる。

発展1  インターネットの検索の欄に,「鉱石ラジオ」と入力して検索すると,鉱石ラジオに関するホームページが出てくる。

 ダイオードと同じような整流作用をするものはいろいろある。ただ,鉱石の表面に2本の針状の電極を押し付け,整流作用が起こる場所を見つける必要がある。また,電極を押し付ける強さによっても整流作用が左右されるのでなかなか大変であるが,見つけられたときの感激が大きい。あらかじめ,ダイオードで放送が受信できるLCの状態に調整してから,ダイオードを鉱石に変える実験をするとよい。

 整流作用をするものには次のようなものがあり,鉱石のセットを数千円で販売しているサイトもある。

黄銅鉱,黄鉄鉱,閃亜鉛鉱,紅亜鉛鉱,方鉛鉱,輝水鉛鉱,カーボランダム,ジンサイト(合成鉱物)

この中で,方鉛鉱や黄鉄鉱が比較的よいようである。

 その他,金属の錆の部分に整流作用があるという報告もある。カッターナイフの刃とシャープペンシルの芯でダイオードの代用になるという報告もある。

発展2 簡単な回路のものから製作し,トランジスタなどを追加して,受信性能を高めたり,スピーカーから音を出したりする研究を行ってもよい。図1はその一例である。図2は,可変容量式コンデンサーと,検波器も自作した例である。フィルムケースに太さ0.1mmのエナメル線を30回巻いてコイルとし,200cm2程度の金属板2枚の間にOHPシートをはさんでコンデンサーとした。ダイオードには炭素棒(シャープペンの芯でも可)と木綿針を接触させた。アンテナとアースを設置し,コンデンサーの対向面積を調節すると選局できる。このとき,木綿針と炭素棒の接触を微妙に調節すると音を大きくすることができる。ダイオードの材料は導体なら何でもよく,釘,銅線,アルミ板等が利用できる。これら2種類の導体を接触させることにより,点接触ダイオードが構成されたものと考えられる。

 受信感度は都会と山間部ではずいぶん異なる。電波が特に強いところでは,クリスタルイヤホンとダイオードを直列につないだだけで放送が聞こえることもある。アンテナの長さや設置方法,アースについても研究することができる。

 教師は『今の時代にラジオなんて』と心配しがちだが,『電池がないのに音がするのは不思議だ』と,生徒の興味・関心は結構高い。受信感度を高める工夫をし,コイルやコンデンサーなどの値を試作しながら決定していくと,電気回路の学習効果を高めることが可能になる。コンデンサー,コイル,ダイオード,電気共振,電波等について実際的な教材である。

 現代は電気の分野ではICなどブラックボックスになっているものが多い。低コストで電気現象の基礎理解にふさわしい教材を見つける工夫が必要である。

参考 ダイオードのはたらき

 AMの電波信号は,図3(a)に示されるように,交流電圧から構成され,電圧は接地電位の上下に数百kHz以上の高い振動数(搬送周波数)で振動する。振動数は各局で決まっているが,電波信号の振幅を,音楽などの音声の振動(交流電圧の振動数よりもはるかに低い振動数)に応じて変動させる。これを変調(振幅変調)とよぶ。搬送周波数はイヤホンではとらえることができない。イヤホンはこの交流信号の平均値(振幅)の変動に追随するのがやっとである。ところが,ダイオードを使わないと,電圧の平均値は0である。これは,アンテナの電圧が正負同じ振幅で振動し,平均すると,波形の正負が互いに打ち消すからである。ダイオードを用いることにより,電圧の正の部分のみがイヤホンにかかることになり,振幅の変動(音声)に応じてイヤホンが振動し,音が出ることになる。

参考文献:福井孝昌『簡単に製作できるゲルマラジオの紹介』

           (理科ニューメディア通信22号,199011月)

    鬼塚史朗『手づくりラジオ』(啓林No.27719925月)

    ポール・G・ヒューエット『物理のコンセプト3 電気と光』(共立出版)

 

 

 

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2009 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.