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探究活動1 磁気記録の実験

 

ねらい 磁気記録の実際に触れることで,物理法則が情報処理などの日常生活に役立っている一例を知る。

準備 プリペイドカードは,鉄道用の磁気記録カードがよい (磁気記録式でもテレホンカードは鉄粉模様が出ない。SUICAなどのICカードは不可)。この実験をした後は鉄粉がとれなくなり,再使用できなくなるので,使用済みのものを使う。

 鋼板は,硬鋼より軟鋼がよい。軟鋼の方が透磁率が大きいし,加工もしやすい。幅は10mmでなくてもよい。実験で用いる磁気テープの幅より大きければ十分である。あるいは,電気コードを壁に止めるステップルを3個束ねて鉄心としてもよい。

方法と結果 Tの実験は簡単にでき,意外な隠された情報が現れるので,感動も大きい。

 Uの実験は,着磁器を製作する必要がある。軟鋼板の両端をやすりで尖らす。折り目の部分の内側にあらかじめ帯鋸かやすりで溝をつけておけば,折り曲げがしやすい。半分折り曲げてからコイルを巻き,その後で最後まで折り曲げるとよい。

 着磁器を磁気テープに押し当て,電流を流すと磁気記録できる。鉄粉で確かめる場合は,重ねたガーゼでこした細かな鉄粉を用いる。これを数箇所で行い,テープレコーダーで再生すると,磁気記録したところで「ボッ」と雑音が聞こえる。鉄粉をまいて,磁気記録が確認できない部分でも,雑音は十分聞こえる。

発展 @ テープレコーダーやVTRの記録のしくみ

 音声テープもVTRも基本は同じである。磁気テープが,消去ヘッド,録音ヘッドとよばれる2つの電磁石に接しながら一定の速さで走る。

 録音時には,まず消去ヘッドから出る磁力線によって磁気テープ上の残留磁気が消去される。次に,録音ヘッドに音声電流が流され,その強弱に比例して磁気テープが磁化される。録音ヘッドは,310μmという極めて狭い隙間を持ち,その間に生じる磁力線で磁化が行われるので,高密度に情報が記録される。

 再生時には,消去ヘッドは作動しない。磁気記録されたテープが録音ヘッドのそばを通ると,電磁誘導のために録音ヘッドに記録された信号に応じた誘導起電力が生じ,これを増幅してスピーカーから音声を得る。

 音声用のカセットテープでは幅3.8mmの磁気テープに音声信号を記録するだけであるが,VTRの場合は12.6mm幅の磁気テープに図のように音声情報と画像情報を分けて記録し,4つの記録ヘッドによって記録・再生を行う。

:自作した磁気記録のヘッド

 

A アナログ信号とデジタル信号の違い

 音声の強弱をグラフ化すると,たとえば図の実線のようになる。音の強さは時々刻々連続的変化する。このような信号をアナログ信号とよぶ。これに対し,非常に短い時間(サンプリング時間)の間の値を平均化し,この値を01を用いた2進数の信号で表したものがデジタル信号である。デジタル信号では信号の値はサンプリング時間毎に不連続に変化する。

 デジタル信号のメリットは,雑音に強いことである。アナログ信号では,処理中に外部から来る電磁波の影響を受けて信号が変化してしまうが,デジタル信号ではそれがない。また,コンピュータ等で直接制御できることも,デジタル信号の大きな利点である。

注意 磁気記録の実験に関連して,カード等の偽造犯罪などにも触れておきたい。磁気ヘッドを用いて磁気カードを偽造したり改ざんしたりすることは,場合によっては犯罪にあたる。また,コピーしやすいデジタル信号の利点を悪用すれば,著作権等の侵害等も可能となる。科学技術を悪用することのないよう,倫理観を育てたいものである。

 

 

 

 








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