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4節 電流

 

静電気と動電気の同一性を示す実験

 静電気と動電気の同一性を示す実験

電気回路の水流モデル

 オームの法則

金属中の電子の運動

 


 


 

 

静電気と動電気の同一性を示す実験

(1) 直流電源ではく検電器を開かせる。

 真空管用電源装置を用いて,図1のようにB電源の+端子をはく検電器の金属円板に,−端子をはく検電器の下に敷いた金属板または金属ケースに接続して,はくを開かせる。この方法は,静電気と動電気が本質的に同じものであることを,直感的に理解させる方法として意義がある。ただし,この方法は高圧の電源を用いるから感電に注意し,演示実験として行うのがよい。

 

(2) バンデグラフ起電機による蛍光灯放電管の点灯

 図2のように,1020Wの蛍光灯放電管をスタンドで支え,バンデグラフ起電機の両極間に入れて点灯させる。バンデグラフ起電機の球に細く切ったティッシュペーパーを貼り付けておけば,動電気で点灯する蛍光灯が静電気の移動で点灯することが理解できる。

 

(3) ライデンびんの放電による点灯

 起電器の両極をライデンびんの頭と外面につなぎ,ライデンびんを充電する。ライデンびんをとりはずし,図3のように放電さを用いて蛍光灯放電管に放電を行うと,瞬間的に発光する。これもバンデグラフ起電機同様,静電気と動電気の同一性を示すものである。

 

(4) 2つのはく検電器間の電荷の移動

 2つのはく検電器を1mほど離して置き,一方の検電器を帯電させる。次に,あらかじめ食塩水をしみ込ませた木綿糸(1m)の両端を絶縁棒で挟み,2つの検電器の金属板の上にのせると,開いていたはくが少し閉じ,帯電していなかった検電器のはくが開くのが見られる。動電気が金属中だけでなく,電解質溶液中でも起こる現象であることが理解できる。

 

 静電気と動電気の同一性を示す実験

 1800年に電気分解の現象が発見され,ボルタの電池によって水が酸素と水素に分解されることが明らかになったことにより,電池の作用とライデンびんの放電とが,本質的には同じものであることが証明された。静電気を蓄えたライデンびんからの放電電流が化学的な作用をもつことは,かなり前から知られており,キャベンディッシュ(H.Cavendish1731-1810)は,1781年にこの放電電流を用いて水が酸素と水素に分解されることを示していた。この現象とボルタの電池による水の電気分解を比較してその同一性を確かめたのである。そして,1801年には,ボルタの電池によってライデンびんを充電させることに成功し,また,電池の両極には反対の種類の電気が現れることも明らかになった。

 1832年に,ファラデー(M.Faraday1791-1867)は,静電気,動物電気,ボルタの電池からの電気,電磁誘導による電気が同一であることを確認する実験を行った。ファラデーは,これらの電気を導体に通したときの熱作用,化学分解,放電火花などを綿密に調べて,その差は量的なもので質的なものでないことを明らかにした。この研究で,静電気と電池からの電気との間の量的関係を確立しようとして研究を進め,電気分解についてのファラデーの法則の前半部分を得ることとなった。

 

電気回路の水流モデル

電気回路の学習において,よく生徒にみられる誤った概念は,「抵抗では電流が消費され,抵抗を流れるたびに電流は減っていく」とか「回路のスイッチを入れた瞬間に,電流を担うもの(電子)が非常な高速で電源から出て回路を1周する」というものである。このような誤った概念は,水流モデルで考えさせることにより直すことができる。また,電圧を水圧で,電流を水流でイメージさせることは,電圧や電流の意味を把握させやすくするであろう。さて,水流モデルで,ただの中空の管の粘性抵抗を電気抵抗にすると,(細いほど水流に対する抵抗が大きくなるのはわかるが)断面積の変化に対する抵抗の変化のしかたは電気抵抗とは異なり,断面積の2乗に反比例することになる。そこで,ここで考える「抵抗のある管」は,実際の電気抵抗がもつのと同じ性質,すなわち,同じ長さなら,断面積が変わっても流れの速さは変わらないような性質をもったものである。できれば,水流モデルは話だけでなく,実際に模型をつくって実験を行うことが望ましいが,その場合,「抵抗のある管」は管に網をつめたものを用意すればよい。網のつめぐあいを変えれば,抵抗の物質による違い(抵抗率の違い)のモデル実験にもなる。また,同じように網をつめた管を2本用意すれば,抵抗の直列接続や並列接続のモデル実験も行うことができる。

 

参考文献「電気回路学習のための水流モデルの製作と検討」福山豊,西和幸 物理教育Vol.38No.2

 

 オームの法則

 電流の強さは電圧と抵抗によって決まるという,現在のわれわれになじみ深いオームの法則は,オーム(G.S.Ohm1789-1854)によって1827年に提唱された。

 オームはその実験をするにあたって,初めは銅亜鉛電池を使用した。しかし,まもなく銅亜鉛電池から出る電流がきわめて不揃いであることに気づき,ビスマスと銅の熱電対に切り替えた。結果はきわめて良好で,「電流計の針がまるで止まってしまったかのように少しも動かない」ほど安定した電流が得られたという。

 下図にその装置を示す。aba¢b¢の部分がビスマスと銅の鑞接(ろうせつ,母材を溶融させず,融点の低い合金を溶かして接合すること)箇所である。AbAxに,a¢b¢Bxに入れて温度差を与え,電位差を発生させる。2つの小杯にはそれぞれ水銀が入っており,必要に応じて2つの小杯を導体で連結したり放したりする。つまり,スイッチの代わりである。電流の強さはねじれ秤で計る。これは電流の磁気作用により,磁針が回転することを利用し,その回転角から電流の強さを計ろうというものである。

 

オームは様々な長さの銅線を使って実験をし,次のような結果を得た。

   

 

 Xは電流の磁気作用の強さ,xは挿入した銅線の長さ,aは熱電対の起電力,bは回路の残りの部分の抵抗である。オームはa7285b20.25 として計算すると,上式がほぼ実験結果を満足することを示した。また,熱電対の両端の温度を融解する氷と室温(7.5)に変えて実験してみたが,どんな場合も上式は満足された。このことから,回路を流れる電流の強さ(Xに相当)は,起電力(aに相当)に比例し,回路の全抵抗(bxに相当)に反比例するというなじみのある法則が生まれた。

 オームの法則を理解するのに,「水モデル」を引き合いに出すことが多い。電流を水流にたとえ,電位差を落差になぞらえる考え方である。オームも電流と水の流れが互いに似通った現象であることを見抜き,それを念頭において電圧や抵抗といった概念を形成していったといえる。

 

金属中の電子の運動

 金属導線の中を電流が流れるのは,自由電子が,導線の各部分で金属の正イオンの電荷をちょうど打ち消すような密度を保ったままで,外部から加えられた電気力の向き(電界と反対向き)に流れることによる。電界による外からの力が加えられるにもかかわらず,電子の流れが加速されず,定常電流となるのは,個々の電子がなんらかの障害物から抵抗を受けているからである。金属中の自由電子の運動を正しく論じるためには量子論によらなければならない。これによると,規則正しい陽イオンの配列は自由電子の運動の妨げとはならず,格子欠陥や結晶の配列の乱れ,また陽イオンの熱運動が電子の運動の障害物となる。

 物理IIでは,そのような障害を古典力学的なモデルで扱い,オームの法則を導くが,物理Iではそこまで深入りしない方がいいであろう。

 

 

 

 








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