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3節 静電気

 

 静電気の発見と電気の語源

静電気の導入実験

帯電列

摩擦によって帯電する理由

 帯電体の正負を調べる実験

電気には2種類しかないこと

 正電気と負電気の発見

電界(電場)の定義

電気力線による静電気力の説明

電気力線を示す実験

人体を使った静電気の実験

電気盆

電気量の違いを調べる実験

 静電気の応用

絶縁体の導体化

用語「静電誘導」と「誘電分極」

誘電分極

はく検電器の取り扱い

静電遮蔽の実験

静電遮蔽

アース

尖端放電

電子レンジ


 

 静電気の発見と電気の語源

 コハク(琥珀)は,地質時代の植物樹脂(松やになどの粘り気のある液)が地中で化石化したもので,透明または半透明でつやがある。ウイスキーの色を「琥珀色」とよくいい,あの黄色っぼい色が代表的な琥珀の色であるが,もっと赤みがかったものや褐色のものもある。

 紀元前のギリシャ時代よりコハクは装飾品として使われており,B.C. 600年にはタレスが,「動物の毛皮でこすると,特殊な状態となってごみやほこりを吸い寄せる」ことを発見したという。ふつうの力は何かの物体が接触して及ぶものであることを考えると,このコハクの力は不思議なもので,当時の人々が「精霊が宿っている」と考えたのも無理はないことであろう。人々は,コハクを身につけているとよいことが起こると信じていたという。

1600年,ギルバート(W.Gilbert1544-1603,イギリス)は電気的な引力と磁気的な引力の違いを挙げ,コハク以外にもダイヤモンド・水晶・ガラス・硫黄などで静電気が起こることを見いだした。電気を意味するelectricityという言葉も,彼が名づけたものである。

 なお,electricityはギリシャ語のコハクを意味するがhlektron (英語ではelec-tron)から作られた言葉である。ただし,現在,electronは電子の意味である。

 

参考文献:金原寿郎「電磁気学(T)(裳華房)

 

◆静電気の導入実験

 簡単な実験を生徒にいろいろ行わせて,興味をよび起こしながら論理的な考察へと入っていくのがよいであろう。教科書の例以外の実験例を紹介しておく。

 ビデオテープのような薄いプラスチックのテープを30cmぐらいの長さに切りとったもの2本を重ね,上端を手で持ち,他方の手の親指と人差し指の間で,全体を数回軽くしごく。2本のテープは,両指の接触によって同種に帯電するので,互いに退けあって飛び離れる。

 また,セロハンテープをはく検電器の金属板に貼り付け,勢いよくはぎ取ると,検電器は帯電してはくが開く。

 1本の乾いた輪ゴムを引き伸ばして,はく検電器の金属板に触れるとはくが開く。輪ゴムを金属板に接触させたまま引っ張ると,はくはさらに大きく開く。次に,引き伸ばした輪ゴムを引き伸ばしたままで,アースした金属管にこすりつけて放電させた後,ゴムを収縮させてはく検電器の金属板に接触させると,開いていたはくが閉じる。輪ゴムは伸びるときと縮まるときとで反対符号の電気を帯びることがわかる。

 

帯電列(帯電系列)

 エボナイトを毛皮でこするとエボナイトに負電気を生じるが,このとき毛皮の方には等量の正電気が起こっている。ガラス棒を絹でこすった場合も同様で,絹の方に負電気が生じる。このように,2種の物質をこすり合わせると,−方に正電気,他方に負電気が生じる。これは電子が移り渡っていくことを考えれば当然であるが,その電子が動く向き(どの物質からどの物質へ)は,実験的に決められており,したがって,2種の物質をこすり合わすと,どちらが正に帯電するかも決まっている。実験によると,次に挙げる物質の系列中の2つをとってこすり合わすと,左にあるものは正に,右にあるものは負に帯電する。

 

 毛皮−フランネルー象牙−羽毛−水晶−フリントガラス−綿−絹−シェラック−ゴム−金属−イオウ−セルロイド−エボナイト

 

 この系列を帯電列あるいは帯電系列という。プラスチックを用いた場合の帯電列は,

 

 アクリル−スチロール−ガラス−毛皮−エボナイト−絹−ポリエチレン−塩化ビニル

 

である。ただし,摩擦電気は物体の表面で起こる現象であるから,同じ物質でも表面の状態に影響されることが大きい。この帯電列中の順位は,表面の状態により,また,温度や湿度により変わることがあり,必ずしも一定ではない。

 

摩擦によって帯電する理由

 異なる物質の表面を強くこすり合わせると,それぞれの物質を構成する分子が「触れ合う」距離に近づく。また同時に,表面の温度も上がる。この結果,触れ合う分子の中の電子が,移動することがある。この結果,摩擦電気が起こると考えられている。

 接触し合う異分子から,電子を奪い合う力の優劣は,金属で定義される仕事関数の大小で決まると想像される。しかし,アクリルや塩化ビニル,毛皮,絹の布,髪毛などは絶縁体で,仕事関数を定義することも,測定することも難しい。またこれらは,一般に高分子とよばれる長い鎖状の大きな分子が不規則に絡み合った構造をしており,分子の中の場所によって電子を引きつける力が異なる。また物質表面の状態や湿度によっても,仕事関数が変わる。これらの理由により,物質どうしをこすり合わせたときに,電子が移動する向き(帯電列)を,分子レベルの測定に基づき解明することは容易ではない。

 帯電列はおおむね仕事関数が低いとプラスに,高いとマイナスになっている。絶縁体では,分子の構造も帯電列を決める重要な要素になっている。分子内に電子が局在しにくい場合は電子が飛び出さず,マイナス側に,局在しやすいと電子が奪われやすく,プラス側になる。またアルカリ金属を含むガラスなどは,電子が奪われやすく,プラス側になる。炭素原子を中心に,共有結合で組み立てられているポリエチレンやテフロンは,電子を奪われることが少なく,マイナス側になる。

参考文献:「日本物理学会誌」(19934月号)

 

◆帯電体の正負を調べる実験

 棒状のネオンランプの一方の電極を手に持ち,もう一方の電極を帯電体に触れる。すると,人体を通して帯電体の電荷が放電される。このとき,ネオンランプの2個の内部の極板のうち,光るほうから電子が飛び出す。したがって,手に持った側が光れば帯電体は正,帯電体側が光れば帯電体は負ということになる。

 

電気には2種類しかないこと

 帯電体どうしを近づけると,引き合う場合と反発し合う場合とがあるから,電気には少なくとも2種類あることがわかる。しかし,2種類しかないことは,実験事実によって初めてわかることである。

 物体ABを互いに摩擦して帯電させる。他の帯電体をAまたはBに近づけたとき,どちらか一方とは反発し,他方とは引き合う。そこでこの帯電体は,ABのうち,反発したほうと同種類の電気をもつものと考えてみる。このようにして,いろいろな帯電体の電気をAと同種類,Bと同種類の2つのグループに分けてみる。このようなグループ分けをした後,実験をしてみると,それぞれ同じグループに属する帯電体相互の間では反発し合い,異なるグループに属する帯電体相互の間では引き合い,この関係の当てはまらないような例外的な帯電体は1つもないことが確かめられる。したがって,電気には,Aがもつ電気とBがもつ電気の2種類の区別しかないことがわかる。

 

 正電気と負電気の発見

 1733年,デュ・フェイ(C.F.C.du Fay1698-1739)は,電気には2種類あり,同種のものがしりぞけ合い,異種のものが引き合うことを発見し,正電気に相当する電気を「ガラス電気」,負電気に相当する電気を「樹脂電気」とよんだ。

1750年,フランクリン(B.Franklin1706-1790,アメリカ)は,火花を電気という重さのない流体の流れと考えた(電気流体説)。彼は,あらゆる物体はそれぞれの持ち分だけ電気流体を含んでおり,それが過剰になったり不足した状態が「帯電した状態」であるとし,過剰な電気流体をもつ物体から他の物体にその流体が移動すると考えた。ここで,電気流体が過剰な状態を正,不足した状態を負とした。これが,正電気・負電気の始まりである。

 

電界(電場)の定義

 電界はelectric fieldの訳語である。工学の分野ではfieldを「界」,理学の分野では「場」と訳すことが多い。「場の理論」などというのはこの類である。一般に,ある物理量が空間の各点の座標と時間の関数として,与えられるとき,この空間をその量のfield(界または場)という。

 さて,電界があるかないかは,そこに小さな電荷(試験電荷)をもちこみ,力が作用するかどうかを確かめればよい。そして,電界の強さは1Cあたりに作用する力の大きさで表す。ここで,試験電荷を小さな電荷とするのは,もしこれが大きければ,はじめの電荷分布が試験電荷の電界によって変わってしまうからである。

 

電気力線による静電気力の説明

 ファラデーは,電気力線が次に示すような性質をもったゴムひものような実体である,と考えることにより,電荷どうしの静電気力の向きや電気力線自身の分布の特徴をうまく説明できることを示した。

@ 電気力線自身には張力がはたらく(1本の電気力線はできるだけ短くなろうとする)

A 隣り合う電気力線間には斥力がはたらく(隣の電気力線とは互いに離れようとする)

 たとえば,2つの異符号の点電荷の間にはたらく静電気力と電気力線の分布は,次図のように説明できる。

 

電気力線を示す実験

教科書p.1512と同様に,電気力線の様子を示す実験を紹介する。直径1520cmのペトリ皿に四塩化炭素を入れ,その上に流動パラフィンを注いで,草花(小町草など)の細かい種子をなるべく均等にばらまく。すると,次の図(a)のように,種子が2つの液体の境界に並ぶ。

 

このベトリ皿に電極を入れて,1000V程度の高電圧を静電気もしくは交流で与えると,絶縁体の種子は誘電分極によって双極子となり,電界によって回転したり,互いの異極どうしがつながったりして,結果的に電気力線の方向に並ぶことになる((b))

 

 

人体を使った静電気の実験

(1) 感電実験に関する注意

 生徒に静電気の感電を体験させる実験は,生徒の興味を引くが,感電は不快感を伴い,場合によっては命にかかわることもあるので,十分な配慮のもとで行う必要がある。

 まず,心臓の弱い生徒,とくに心臓ペースメーカーを使用している者は絶対に参加させてはならない。また,手などに傷口がある生徒は,傷口が直接電極や他人に触れて電流の通り道になると,抵抗が小さくなり大きな電流が流れるので,やはり参加させないようにした方が無難である。同様な理由により,電極などの電流の通り道を口にくわえることも避ける。そして,実験に先立ち,若干の電気ショックを感じることを告げ,希望する者のみを参加させるようにする(いやがる生徒を無理に実験台にするべきでない)

(2) 百人おどし

 ライデンびんを摩擦電気で充電し,生徒に順に輪になって手をつながせ,端の一人にライデンびんの外面に触れさせ,もう一方の端の一人に放電さなどの金属でライデンびんの頭の電極に触れさせる。全員が電気ショックを感じ,ライデンびんにたまっていた電気の存在を実感できる。教師が輪の端の役をすれば,生徒の抵抗感は少なくなる。なお,体が机や壁に触れたり,足が直接床にさわっている生徒がいると,途中で電気がそちらに流れてしまい,電気ショックを感じない生徒が出てくる。ライデンびんは,発泡ポリスチレンカップや薄いプラスチック板などの表と裏にアルミニウムはくを貼って簡単に自作もできる。

 市販のライデンびんをバンデグラフなどの静電起電器で充電すると,かなりの量の電荷がたまり,それを直接人体に流すとたいへん危険である。湿度が高かったりして,摩擦電気では実験がうまくいかないときにやむなく用いるときは,充電した後に必ず放電さで1回火花放電させること。1回の放電では,まだライデンびんには十分な電気が残っており,感電実験を行うことができる。

(3) 人体に帯電させ,蛍光灯を光らせる。

 暗室にして,市販の絶縁台や,発泡ポリスチレンの板の上に,蛍光灯の端を持った生徒を立たせ,バンデグラフ起電器で帯電させる。風呂敷やOHPシートや学生服などで,はたいたり擦ったりして帯電させてもよい。その後,別の生徒に蛍光灯の他端に触れさせると,蛍光灯が放電で光る。

 

◆電気盆

 電気盆とは図のようなもので,導体D上に載った絶縁体Cを摩擦して帯電させる。

たとえば正に帯電したとすると,Dに現れる負の誘導電荷が,Cの正電荷を引き付けて逃げないように保つ。絶縁体Aの棒のついた導体BCに載せ,指で触れてアースすると,Bには負の誘導電荷が残る(BCの真の接触面積はわずかなので,CからBに直接移動する電荷は無視できる)

絶縁体Aを持ってBCから引き離せば,この電荷を任意のところへ移動させることができる。そして,この操作をくり返せば,いちいち摩擦電気を起こさなくても,何回でも静電気をとり出すことができる。とり出した静電気は,ライデンびんに蓄える。

 

 

◆電気量の違いを調べる実験

 帯電していない電気振り子に帯電体を近づけると,一度吸引されて帯電体に接触し,ただちに振り子の小球が反発される現象を観察できる。これは,小球に静電誘導が生じて帯電体に引かれ,接触して帯電体の電気の一部が小球に移るからである。

 また,帯電した小球が鉄製スタンドなどに触れると,電荷が逃げてしまい,再び帯電体に吸引される。場合によっては,帯電体と鉄製スタンドの間で小球がはじかれ合うような動きをすることもある。この現象自体は興味深いが,本来の実験目的だけを達成したいなら,小球が他のものに触れないような工夫をしておくとよい。

 なお,よく乾燥している日には,球全体に電荷が分布せず,帯電体に吸い付いたまま離れないことがある。このようなときには,小球がコルクであれば,あらかじめ食塩水をしみこませておいてから乾燥させたものを用いるとよい。また,発泡ポリスチレンの小球であれば,表面に墨を数回塗って乾燥させたものを用いるとよい。

 電気振り子を自作する場合は,コルクか発泡ポリスチレンで直径数mmの小球に仕上げる。ナイフでだいたいの形を作り,やすりで丸く仕上げて,突起部分がないようにした方がよい。球をつるす糸は,絹またはナイロンの細い糸を用いる。糸を支えるのは鉄製スタンドで十分であるが,スタンドから横に出す腕木をポリスチレン棒にすると,絶縁がさらによくなり,実験がうまくいく。

 

 静電気の応用

(1) 電気集塵

 発電・製鉄・冶金・ガス・硫酸・セメントなどの粉塵や煙霧の発生を伴う鉱工業では,それらのほこり・煙を除去するための集塵装置に,静電気を利用した電気集塵装置を広く使っている。

 電気集塵装置の原理は,ほこりを含んだ気体を高電圧をかけた電極の間に通し,ほこりを帯電させて一方の電極に集めるものである。電極の一方は直線状で,他方は円筒状・平板状であり,前者を放電電極,後者を集塵電極という。ほこりは放電電極の周りに生じるイオンによって帯電し,電極間の電界のために集塵電極に引かれてそこに付着する。集塵電極に付着したほこりは,機械的衝撃や水流によって除去する。

 現在の工場の煙突は煙が出ていないものが多いが,これはこの電気集塵装置のおかげである。

(2) 静電植毛

 布や紙などに,静電気力によって短い繊維を均一に植え付けることを,静電植毛といい,カーペット,電気あんかの表面など様々なところに利用されている。

 繊維ではないが,サンドペーパーの砂粒も同じ原理で紙に植え付けられる。下図で,糊のついた紙に砂粒が引き寄せられるとき,負に帯電した砂粒は空中で反発し合う。そのため,砂粒の分布は平均化され,どこか一箇所に固まらずに均一に紙につく。

 

(3) コピー機

 いろいろなタイプのものがあるが,静電気を利用する基本原理は同じである。ここでは,モーターで動かされる基板(AlCuでできている)の表面に2080mmの厚さで塗られたセレン化ヒ素のアモルファスの静電気を利用する乾式のタイプを説明する。複写は次のような過程で行われる。

 

 

T 荷電 電圧40008000Vの放電により,アモルファスをプラスに帯電させる。

U,V 露光と電気潜像 原稿に光を当て,その反射光がアモルファス上に像を結ぶようにする。原稿の白い部分からは反射光がやってくるが,黒い部分(すなわち文字)からは光がやってこない。そのため,アモルファスには文字像以外に光が当たる。セレン化ヒ素のアモルファスには光伝導性があり,光が当たるとキャリアが生じ,電気をよく通すようになる性質がある。したがって,アモルファス上の正電荷は,文字像部分を除いて逃げてしまい,文字像部分のみがプラスに帯電したまま残る。これが電気潜像である。

W 現像 マイナスに帯電させたトナー(スチロールの表面に炭素をまぶした粉末)を基板にふりかける。プラスの電気潜像にのみ,トナーは付着する。

X 転写 文字像のトナーを紙に接触させて写し取る。

Y 定着 加熱してトナーのスチロールを溶かし,紙に融著させる。なお,最近のアナログ式のコピー機では,教科書p.17の参考のように,電荷の正負が上とは逆になっている方式のものが主流になっている。

(4) 静電塗装

 スプレーガンによって吹き付け塗装するとき,塗料粒子と塗装する物体に異符号の電荷を与えて,静電気力によって塗料を物体に吸着させるもの。塗料の空間への飛散による損失の防止になり,空気や作業場の汚れが少なくなり,塗装が均一になる。自動車の塗装は,すべてこの方法である。

(5) 静電記憶

 情報を静電気的に記憶するもの。レーダーの受像管,テレビカメラの撮像管など,電気や光の入力信号を絶縁体上に電荷の形で保持し,ある時間の後に再び電気や光の出力信号として取り出す方式が多い。

(6) エレクトレット

 ふつうの絶縁体は,帯電体が近くにあるときだけ誘電分極を起こし,帯電体が遠ざかるとその分極は消えてしまう。それに対して,永久的な分極を保持し続ける絶縁体をエレクトレットといい,磁気における永久磁石(マグネット)に対応するものである。電位計,マイクロホンなどに利用されている。

 

◆絶縁体の導体化

(1) 帯電したはく検電器の金属板にマッチの火を近づけるとはくは閉じる。また,マッチの火で熱せられた空気だけを金属板に吹きつけても同様である。このことから,室温の乾いた空気は絶縁体であるが,炎や熱せられた空気は導体であることがわかる。

(2) ガラス棒をスタンドで支え,右図のように,ガラス棒に数cmを隔てて,別々に導線を巻きつける。100V用,100Wの電球をガラス棒と直列につなぎ,交流電源(100V)に接続する。

巻きつけた導線と導線との間のガラス棒の数cmの部分をガスバーナーで加熱すると,その部分が導体化して電流が流れ出し,電球がともるようになる。しばらくしたら,ガスバーナーでの加熱を中止しても,ガラス部分での多量のジュール熱のために灼熱し,やがて溶けてしまうまで電流が流れ続ける。ガラスは,高温の状態では,ナトリウムイオンや鉛イオンが移動できるようになり,導体化すると考えられる。

 

用語「静電誘導」と「誘電分極」

 「帯電体に近い側に異符号,遠い側に同符号の電荷が現れる」という現象は,導体に限らず,全ての物質で見られる。本来,静電誘導という用語は,外に現れてくる現象だけを指して使われるもので,現象が起こる物質が導体に限定されているわけではない。したがって,その場合,誘電分極は「不導体に起こる静電誘導である」ということになる。しかし,従来高校物理では,静電誘導という用語を導体に限って使うことが多かった。生徒に説明するときに,「導体なら静電誘導,不導体なら誘電分極」と並立させて示した方が理解が容易になるからであろう。

 

誘電分極

教科書p. 1916では,電界のもとで原子内の電子分布が偏る「電子分極」が示されている。これは,次の図(a)のようにも説明できる。同様な誘電分極には,イオン結晶の正負のイオンが電界によって平衡位置からずれる「イオン分極」がある。

 なお,誘電分極には,図(b)のような,もともと少し正負に分極していた分子が,電界のために分極の方向をそろえる「配向分極」もある。

 

はく検電器の取り扱い

 帯電した絶縁体を,はく検電器の金属板に接触させても,電気がはく検電器の方へ移りにくい場合がある。このとき,帯電体で金属板をこすって電気を移動させようとしてはいけない。摩擦によって新たに電気を生じることになるからである。この場合は,帯電体を金属板の縁から近づけ尖端放電を行わせると,電気ははく検電器に移動しやすい。

 はく検電器を用いる実験では,絶縁が重要であるから,金属棒を支えている絶縁物に着いたほこりはよくとり除き,実験前によく乾燥させておくことが大切である。

 はくがとれたら,スズはくなどを2枚の薄紙の間に挟んだままで,はさみで必要な大きさに切る。金属棒に少しだ液をつけ,そこにはくを押しつけると,だ液が接着剤のはたらきをする。

 

◆静電遮蔽の実験

 はく検電器の金属円板の上に,1cmぐらい離して目の細かい金網を置き,その上部から帯電体を近づけてもはくは開かない。

 金網製のかごの外面と内面に細い紙切れをとりつけて,バンデグラフ起電器とかごとをつなぎ,起電器をはたらかせると,外面にとりつけた紙切れは電界の方向を向くが,内面にとりつけた紙切れは垂れ下がったままである。

 また,静電界の遮蔽ではないが,日常生活に関係する電磁遮蔽の実験として次のようなものがある。

 小形のラジオを鳴らして,アンテナ部を下にしてステンレス製ビーカーの中へゆっくり入れていくと,途中から完全に音が消える。つづいてゆっくり引き上げると再び音が聞こえてくる。電界を伴う電波が導体であるステンレス製ビーカーの表面で遮断されるのがわかる。あらかじめ下図のように透明なガラス(不導体)のビーカーで同じことをやっておくと効果的である。

 

 なお,ステンレス製ビーカーに入れてもラジオの音が消えない場合は,金属のふたをする。ステンレス製ビーカーがない場合は,ラジオをアルミニウムはくで包むようにするとよい。

また,AM放送を用いて実験する。FMの場合は,電波が弱いと出力をカットする回路が組み込まれているので,遮蔽で音が聞こえないのか,その回路の機能で音が聞こえないのか,区別できない。

 

静電遮蔽

 内部に空洞のある導体では,外の帯電体による静電誘導によっても図(a)のような電界ができることはない。これでは,空洞内部の負電荷は正電荷よりも電位が低くなり,導体表面は等電位面でなくなってしまうからである。

 ところで,空洞内部に電荷がある場合には,図(b)のような電界が空洞に生じることになるが,この場合もこの電界は空洞内部の電荷によるもののみであり,導体外部の帯電体によってその電界が影響を受けることはない。

 なお,静電遮蔽は金網のようなものでも起こるが,もちろん網目が細かいほど十分な効果が観察できる。

  

 

 

アース

 地球は一つの大きな導体である。地球表面(地面)には地電流とよばれる電流がつねに流れているが,電車の近くや落雷地点の近くを除けば,地電流は微弱で,地球はほぼ静電気状態といってよい。つまり,地面はどこでも等電位である。

 よって,導体を地面につなぐと,その導体の電位は地球と同じになる。このことは実用上便利なので,電位の基準(0V)を地球の電位にとることも多い。電気回路では,回路中の複数の点がアースされている場合もあるが,この場合は,1本の導線や金属ケースなど容量の大きい導体を電位の基準として回路の一部に使っているのであり,実際には大地につながないことも多い。

 はく検電器に帯電体を近づけてアースしたとき,帯電体と同符号の電荷のみが失われるのは,原理的には図のようになるからである。帯電体と異符号の電荷は引力によって引き止められ,同符号の電荷は斥力によってできるだけ遠くに離れようとする。電極,はく,地球が1つの導体になるので,この導体の中の電界がどこでも0になるには,帯電体と同符号の誘導電荷は地球の(たぶん)反対側の表面に分布しなければならないのである。

 

尖端放電

 導体の表面は等電位面になるが,電荷分布が均等になるわけではない。帯電した電荷は,曲率半径の小さなところ,すなわち尖ったところほど多く集まる。このため尖ったところの近くは電界が強くなり,導体近傍の空気分子やほこりが静電誘導によって引き寄せられ,導体に接触して電荷をもらい,今度は同符号の電荷で反発して弾き飛ばされる。このようにして起こる放電を,尖端放電(または先端放電)という。高いビルなどの避雷針はこの尖端放電で,集まった電荷を放電して落雷を避けている。

 尖端放電の際,空気分子やほこりが弾き飛ばされるのに伴って,風が起こる。これを電気風という。電気風は,バンデグラフ起電器に針をつなぎ,その針にろうそくの炎を近づけてみると,炎が揺らぐので確認できる。また,起電器に図のような回転軸につけられた卍型の針(ハミルトンの風車という)をつなげば,電気風の反作用で勢いよく回転する。

 

電子レンジ

マイクロ波を出す装置がマグネトロンで,1921年にハル(アメリカ)によって発明された。電子レンジの内部にはこのマグネトロンがある。もともとはマイクロ波兵器として軍事用に開発され,日本の岡部金次郎によって,現在のような電子レンジの形に発展した。電子レンジは,第二次世界大戦の翌年(1946)に,アメリカで初めてマイクロウェーブ・オーブン( Microwave Oven)という名称で発売された。日本では1961年に販売され,現在は広く家庭に普及している。マイクロ波は,波長が1m1cm (周波数300MHz30GHz)くらいの非常に短い電磁波で,電子レンジでは周波数2,450MHz(2.45GHz)のマイクロ波が使われている。このマイクロ波を用いた加熱方式が,マイクロ波加熱である。

電子レンジの過熱は,このマイクロ波によるものである。食品は,その主成分の水をはじめとして誘電体でできており,その分子が高周波の電磁波によって激しく(1秒間に245,000万回も)振動・回転し,熱が発生する。その分子があれば,食品の内部も外部も同じように温まり,空気や容器は直接加熱されないので効率がよい。マイクロ波をむらなく食品に当てるために,レンジ内は金属の壁で包まれている。一般に電磁波は金属に反射する性質があり,それを利用してあらゆる方向から食品に当たるように工夫されている。また,マイクロ波は小さな穴を通り抜けられないので,扉の部分には網目状の金属板が使われ,中が透けて見えるようになっている。

最近はターンテーブルなどで,加熱むらをなくす製品が多い。電子レンジ内に食品を置くだけでは,マイクロ波の当たる部分にむらができるからである。また,食品や容器の形によっても加熱むらができる。これはマイクロ波による誘電分極の電界が細い部分に集中するためである。マイクロ波が角や細い部分に集中するこの性質は,エッジランナウェイとよばれる。したがって,食品を温めるには四角い容器よりも丸い容器の方が均一に温まる。

 

 








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