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3節 恒星の距離

 

年周視差による距離の測定

 [恒星までの距離]   恒星までの距離を求める直接的な手段は,年周視差すなわち三

角視差による方法である。

 

年周視差p"の恒星までの距離をr,地球と太陽の平均距離をaとすると,

 

   

 

 角θが非常に小さいとき,sinθθの関係が成立する(θ;ラジアン)p"をラジアンに換算す

ると,p /206265となる。したがって,

   

となる。ここでa1〔天文単位〕を代入すると

    

が得られる。また,年周視差が1"のときの距離が1パーセクなので,上の式に代入すると,

1パーセク=3.26光年が得られる。このことから,上の式をパーセク単位にすると,

      

という式が成立する。

 太陽に最も近いケンタウルス座αC(プロキシマ)の年周視差は0.75"であり,この恒星ま

での距離は約4.3光年,または1.3パーセクとなる。

 年周視差の測定精度は1/100秒程度なので,この方法で距離を測定できる恒星は,数

十パーセクの範囲内にあるものに限られ,それより遠い星については,別の間接的な方法

で求めざるを得ない。

 [絶対等級]  恒星を年周視差0.1",すなわち10パーセクの距離においたときの見か

けの等級を絶対等級といい,これに対応する明るさを絶対光度という。いま,m等級の恒

星の見かけの明るさをLm,その絶対等級をM,絶対光度をLMとすると,明るさと距離の関

係か

       

さらに,明るさと等級の関係から

     

となり,この2式より

      

すなわち

  mM5log 10 r5 または mM=−55log 10 pとなる。ここでpは角度の秒で表し

た年周視差である。この,mMを距離指数とよび,この値が大きいほど距離が遠い天体

になる。

太陽の絶対等級Mは,m=−26.7r〔パーセク〕を代入すると,M4.9となる。

 

HR図を用いた方法

[分光視差]

 

 HR図からわかるように,同じスペクトル型であっても,主系列星と巨星では明るさが異な

っている。しかし,恒星のスペクトル中の線スペクトルは,主系列星や巨星,超巨星で異な

っている。巨星や超巨星では大気の圧力が小さいため,電離度が大きくなったり,スペクト

ルの線の幅が狭くなるというような特徴がある。そこで,同じスペクトル型の恒星を,スペクト

ル線の幅や強さの違いで分類することで,絶対光度を推定することができる。この分類を

光度階級という。光度階級はIからVIIまであり,次のように分けられている。

Ia;非常に明るい超巨星    IV;順巨星

Iab;明るい超巨星       V;主系列星

Ib;普通の超巨星       VI;準矮星

II;明るい巨星         VII;白色矮星

II;普通の巨星

こうして,恒星のスペクトル観測によって,スペクトル型,光度階級がわかると,恒星の絶

対等級を推測できる。したがって,年周視差を測定できないような遠い星でも,スペクトル

観測が可能であれば,絶対等級と見かけの等級の関係から視差を求めることができる。こ

のようにスペクトル観測によって求められる視差を分光視差とよんでいる。

 

◆脈動変光星と周期光度関係

 恒星のなかには光度の時間変化を示すものがある。光度の変化が周期的な変光星に

は,食連星のように連星の軌道運動によるもの,パルサーのように回転に同期した周期的

変光を行うもの,恒星の脈動によって変光するものがある。この最後のグループに属する

恒星を脈動変光星という。

 脈動の原因は恒星内部の不安定性にある。特に,恒星の大気中には電離した領域があ

り一種の相変化があることが不安定をひき起こす。脈動変光星で重要なのは主として3

のグループで,ケフェウス座δ型・おとめ座W型・こと座RR型である。ケフェウス座δ型と

おとめ座W型をあわせてセファイドということもある。

 セファイドが重要なのは,1912年にハーバード天文台のリーヴィット(H.Leavitt)が,マゼラ

ン星雲中にあるセファイドの変光周期と平均光度の間に11の関係があることを発見し

たことにある。この関係を,周期光度関係という。周期光度関係の光度の絶対値のゼロ点

は,シャプレー(H.Shapley)が恒星の固有運動の観測から定めた。この関係を使うと,脈動

変光星が観測されるかぎり,観測しやすい周期の測定から絶対等級がわかり,見かけの等

級との比較から距離を決定できる。したがって,宇宙のかなり広い範囲までの距離決定に

重要な手段が見いだされたことになる。

 この関係を使って,ハッブル(E.Hubble)はそれまでに距離の確定していなかった「渦状星

雲」までの距離を求め,それらがわれわれの銀河の外にあって,銀河系と同程度の大きさ

の系であることを示した。しかし,バーデは1950年にセファイドには2種類あって,光度が

12等級異なっていることを明らかにした。種族Iに属する古典的セファイド(ケフェウス座

δ)が,種族IIに属するおとめ座W型よりも明るいのである。

 ケフェウス座δ型変光星は種族Iの恒星で,銀河系に700個以上存在する。分布が銀

河面上であるため,星間物質による吸収を受けやすいので,銀河系での距離を推定する

のには使いにくい。変光周期は170日,変光範囲は0.12等級である。この型の変光

星は明るいので,1000万光年程度の距離まで決定できる。

それに対し,おとめ座W型変光星は種族IIであって,球状星団中やハロー,比較的銀河

の中心部に分布する。変光はケフェウス座δ型とよく似ているが,絶対光度が1.5等級ほど

暗い。周期は245日,変光は0.21等級である。

 こと座RR型変光星は種族IIに属すので,球状星団中やハロー,比較的銀河の中心部

に分布し,星団型変光星ともいわれる。変光周期は1.5時間〜1日で,変光範囲は12

等級以下である。この変光星は絶対等級が0.6等級前後で一定と考えられるので,球状

星団の距離を調べるのに使用される。現在までに4500個以上みつかっている。数十万光

年までの距離決定に用いられる

 

 

 

 








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