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2節 恒星の大きさと質量

 

恒星の大きさ

 恒星の物理量は,一般に太陽を単位とする大きさ(太陽単位)で表すことが多い。太陽が

平均的な恒星であるためである。恒星の半径をr,太陽の半径をrとすると,太陽単位の

半径Rr/rで表される。EEをそれぞれ恒星および太陽が毎秒1cm2あたりに出すエネ

ルギー,TTをそれぞれ恒星と太陽の表面温度とすると,シュテファン・ボルツマンの法

則によって,

    

であり,太陽と恒星の光度をLLとするとL4π r2EL4πr2E

     

 

光度と等級の関係より,太陽と恒星の絶対等級をMMとして

     

 この式にT6000KM4.7〔等級〕を代入して整理すると

      

 

となる。したがって,恒星の半径も,絶対等級と表面温度の測定により求めることができる。

また,この式からわかるように,同じ絶対等級であれば,表面温度が低温の恒星ほど半径

が大きいことがわかる。いいかえると,明るくて表面温度の低い恒星は半径の大きな巨星

であり,逆に,暗くて表面温度の高い恒星は半径の小さい矮星である。

一部の近距離にある大きな恒星については,その大きさを干渉計を用いて直接測定す

ることができる。表IIIは干渉計で測定された恒星の視直径である。

 

◆連星とその質量

[実視連星]  北斗七星の「ひしゃく」の柄にあたる部分の端から2番目の星(おおぐま座ζ

)は,注意して見ると2つの恒星からできている。2つの恒星がごく接近して存在している

ものを二重星という。二重星では,実際は互いになんら関係がないが単に方向が偶然同じ

であるため二重星となったということはまれで,大部分はわれわれから同じ距離にあり,互

いの引力によって公転している。このように,物理的に関係のある2つの恒星を連星とい

い,望遠鏡で識別できる連星を実視連星という。連星の識別は,公転軌道のはっきりしな

いものでもエイトケンの検定式

     log 10ρ2.80.2m      (ρ2星の角距離,m;主星の等級)

を用いて簡単に行うことができる。現在,実視連星は約700個ほど観測されているが,なか

にはケンタウルス座のプロキシマのように,公転周期が40万年もあり,2つの星が大変離

れているものもある。

[分光連星]  2つの恒星がごく接近しているときには,大望遠鏡を用いても1つの星にし

か見えない。分光器を用いたスペクトルの観測により,初めて連星であることがわかるとき,

このような恒星を分光連星という。教図6では,分光連星を観測したときの2つの恒星の相

対位置と吸収線の周期運動の関係を図示している。

[ドップラー効果]  ドップラー効果は,1842年ドップラー(C.Doppler)によって発見され

た。光源と観測者が相対的に近づいているときには,光源から出る光の波長は,光源と観

測者が相対的に静止しているときにくらべて青いほうに,また光源と観測者が遠ざかってい

る場合には赤いほうにずれて観測される。光源と観測者の相対速度の視線方向の成分速

度をvとする。光に関するドップラー効果の式は,静止しているときの波長をλ0,運動して

いるときの波長をλとすると,

     

 

である。ここで,cは光の速度で,vcにくらべてずっと小さいときには,上の式は

     

 

となる。波長の変化を

Δλλλ0

とすると,

      

 

が得られる。速度vは近づくときを正,遠ざかるときを負にとってある。この式から,波長の

ずれが相対速度に比例することがわかる。また

       

 

とかき,このzを赤方偏移という。相対速度が光速にくらべて無視できない状況では,もとの

関係式を使わなくてはならない。

 ある恒星が太陽に対して静止しているときに0.5μmに観測されるべき吸収線が0.5001μm

のところに観測されたとする。Δλ0.0001μmであるから,

      

 

であって,秒速60mで遠ざかっている。

 

教図6 分光連星とスペクトル線のずれ

 図の(a)において,A星は視線方向に近づきB星は遠ざかるので,A星のスペクトルは青いほうに,B

のスペクトルは赤いほうにずれる。ずれの大きさは,A星・B星の公転速度をそれぞれv Av Bとすると,

ドップラー効果によってλAλ0v A/cλBλ0v B/cとなる。したがってλA/λBv A/ v Bである。ここで,公

転軌道半径をaAおよびaBとすると,公転周期は等しいので,

 2πaA/ v A2πaB/v B     aA/ v AaB/ v BaA/aBv A/ v B

したがって,公転運動の周期PλAλBの観測をすると,aAaBが求められる。さらに,ABは共通重心

のまわりで公転運動を行っているのでaAmAaBmBから,mA/mBaB/aAとなり質量の比が求められる。

 一方,ケプラーの第3法則からa 3/P 2G(mA+mB)/4π2であるので,mA+mBがわかり,mAmBを求める

ことができる。なお,このような方法で質量が求められるのは,視線方向が公転軌道面内にある分光連

星に限られる。

 

 

 [食連星]  1783年,イギリスのグッドリック(J.Goodrike)はペルセウス座の2等星アルゴ

ルが2日と20時間49分ごとに光度が3分の1に減り,数時間後,通常の明るさに回復す

ることを確かめた。その後,この星のスペクトルを撮影したところ分光連星であることが確か

められ,その光度変化は一方の星が他の恒星の前面を通過するために光の一部がさえぎ

られて起こることがわかった。このように,食を起こすために変光する連星を食連星または

食変光星という。その数は4000個以上も知られているが,変光の光度曲線によりいろいろ

なタイプに分類されている。なお,食変光星の光度曲線は,脈動変光星の光度曲線とは

明らかな違いがある。

 

◆連星の質量

 万有引力の法則によると,質量Mの太陽と,質量mの惑星の間には,その距離a2

乗に反比例し,質量の積に比例する引力fがはたらく。

          

 

 ここでGは万有引力定数である。また,惑星の軌道を円と考えると,惑星が半径a,公転

周期Pの公転運動をするためには,maの向心力を必要とする。したがって

             

となり,変形すると

            

となる。これが

       

 

で表現されたケプラーの第3法則である。これは片ほうの天体(惑星)の質量が無視できる

ほど小さいときに成立する。

 

片ほうの天体の質量が無視できないほど大きい値であるときは,図[のように,質量mA

天体Aと,質量mBの天体Bの共通重心Oのまわりを,半径がそれぞれa1a2の円運動

をする。したがって天体ABについて,それぞれ

       

となる。一方,aa1+a2であるので,a1a2を消去すると,

       

の式が得られる。このように,ケプラーの第3法則kは,mAmBのとき,すなわち太

陽と惑星,惑星と衛星のように,一方の質量が無視できる場合に成立する式である。

 

◆質量光度関係

 恒星の質量は連星の観測以外では直接求めることはできない。実視連星では観測によ

って軌道周期と軌道半径がわかると,ケプラーの第3法則によって連星の質量の和が求ま

り,軌道半径の比を使って,個々の星の質量を求めることができる。分光連星では両星の

視線速度と軌道面傾斜角がわかると,質量を求めることができる。

こうして求められた恒星の質量mと光度Lには教図9のような関係があり,これを質量光度

関係という。教図9からわかるように,両者を対数目盛りで表すと,ほぼ直線で近似され,

恒星の質量mと明るさLは次の関係にあることがわかる。

     log 10L3.5log 10m+定数  より  Lm 3.5

この関係を用いると,恒星の絶対等級を知ることによって,連星以外の恒星の質量も推定

できる。ただし,巨星や白色矮星ではこの質量光度関係が成立しない。

 

◆恒星の寿命

 恒星の放出するエネルギーの総量は核反応に関与する質量に比例する。これは核反

応によるエネルギーが反応前後の質量差に起因するからである。そして,核反応に関与

する質量は恒星の質量m10%程度である。したがって,恒星の1秒間に放出するエネ

ルギーが光度Lであることを考えると,恒星の寿命t

     t

となる。一方,質量光度関係から

     Lm 4

を使うと,

     

が得られる。つまり,恒星の寿命はその質量の3乗に反比例することになる。この場合,星

の寿命というのは主系列星に滞在する時間である。すなわち主系列星としての寿命は,質

量の大きい明るい星ほど短く,質量の小さい暗い星ほど長くなっている。

 

 

 








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