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1節 恒星の放射

 

星の明るさ

 ヒッパルコス(Hipparchos)は,最も明るい約20個の星を1等星とし,肉眼で見える一番暗

い星を6等星として,その間を5等分するような等級を用いた。19世紀になってハーシェ

(J.F.Hershel)は,1等星の明るさは6等星の明るさの約100倍にあたること,また等級が

等差数列であるのに対して,明るさは等比級数となっていることを明らかにした。現在使わ

れている星の等級は,等級の差が5のとき,明るさが100倍になるように定められている(

グソンの定義)。すなわち1等級の明るさの差は100倍である。等級m1m2の星の明るさ

L1L2とすると,

 

 

今日では,星の明るさは光電装置や写真乾板を用いて測られるが,同じ星でも,測定

手段によって等級は異なる。人間の目による等級を実視等級とよび,一般には人間の目

に近い色感度をもった測光系で測られることが多い。

 

◆恒星の表面温度

 天体のなかで,連続スペクトルを放出する典型的な例は太陽である。太陽のような恒星

の出している電磁波は,前述のように,物体を熱した際に出る電磁波である。電気ストーブ

や電気ごたつが赤っぽく光っていたり,溶鉱炉中の高温の鉄塊が白っぽく輝いて見えるの

は,それぞれの温度に対応した電磁波を放出しているためである。

 高温状態のストーブや鉄からのスペクトルは,同じ温度にしておいてもまったく同じでは

ない。物質の特性による違いが存在する。しかし,その違いは全体の振舞いの共通性から

すると,わずかな違いでしかない。

 物体を熱したときに出る電磁波の共通な性質を扱うために,状況を理想化して熱平衡状

態にある完全黒体というものを考える。普通は物体に光が入射すると,一部は反射し一部

を吸収したり透過したりする。黒っぽい物体ほど光を吸収しやすく,反射の割合が小さい。

完全黒体とは,入射する光を反射することなくすべて吸収する理想化された物体のことで

ある。このとき注意すべきは,「吸収する」というのは,外部から入射する光を完全に吸収

するという意味である。後述するように,黒体自体が光を放射することを許さないという意味

ではなく,有限の温度の黒体からは電磁波が放射される。

ある物理系を考えその系と周囲との間に熱のやりとりをさせないよう,また物質を出入りさ

せないようにして孤立させる。たとえば,温度の異なる金属片を2つ接触させて,周囲を断

熱材でおおったものを考えてもよい。それを長時間放置しておくと,金属片は同じ温度とな

り,それ以上の変化は起こらない。また,たとえば断熱壁で囲まれた容器の内部に仕切り

を入れ,仕切りの両側に異なる温度の異なる種類の気体を入れ,ある時刻に仕切りをはず

す。この状態で長時間放置しておくと,容器の内部の温度は一定になるとともに,異なる気

体の分子の分布も一様化する。このような状態は巨視的に見ると変化のない状態である。

このような熱的につり合っていてそれ以上変化のない状況を,熱平衡状態という。熱平衡

状態にある物質は,温度・圧力・化学組成等の少数の物理量のみで指定できる。

 熱平衡状態にある完全黒体からは,その黒体の温度のみによって定まるスペクトルをも

った電磁波が放出される。この電磁波を黒体放射といい,そのスペクトルを黒体放射分布

とか,最初にこの分布を導いたプランク(M.Planck)の名をとってプランク分布という。またそ

のスペクトルが黒体放射スペクトルである。

 黒体放射分布の特徴は,温度と波長(あるいは振動数)を指定すると強度が一意的に定

まることである。このことは波長と強度から温度が一意的に定まることをも意味する。実際,

黒体放射分布の強度を波長の関数としてグラフをかくと,温度の違う分布はお互いに交わ

ることがない。

 また,温度の違う分布をくらべると,強度の最大となる波長は温度と反比例していて,最

大の強度を与える波長をλμm〕,温度をTK〕とすると,

λT2900

となっていて,これをウィーンの変位法則という。低温の黒体放射と高温の黒体放射をくら

べると,強度の最大となるのは低温のものが長い波長で,高温のものが短い波長となって

いる。恒星は高温状態の気体であり,輻射は内部にほぼ閉じ込められている。これは,光

は恒星内部で物質と何度も相互作用をするために,直進して表面から抜け出ていってしま

わないことを意味していて,不透明であるという。したがって,恒星からの光はほぼ表面か

ら出ていて,しかも黒体放射であると考えてよい。恒星の色はその表面温度に対応する黒

体放射の可視光の波長範囲での強度の最大付近の波長に対応する色なのである。した

がって,恒星の色の違いはその表面温度の違いであるといえる。青い星は表面が高温で

あり,赤い星の表面は低温なのである。

 なお,黒体放射分布は波長ではなく振動数について表現することもある。その場合には

強度の最大値を与える振動数は上記のウィーンの法則の波長には対応しない。

 

◆放射エネルギーと表面温度

 黒体放射をする物体の単位面積からは,温度の4乗に比例したエネルギーが単位時間

あたり放出される。これをシュテファン・ボルツマンの法則といい,

 EJ〕=σT 4     (σ5.67×10 -8)

と表される。このときの温度を有効温度という。したがって,この式を使うと天体の有効温度

を知ることができる。放射が完全な黒体放射であれば,ウィーンの変位法則から求めた温

度と,この有効温度は一致する。しかし,現実の天体では完全な黒体とは限らないので,こ

れらの温度は一般には一致しない。

 

 

◆恒星の連続スペクトルと色

 恒星の連続スペクトルは,黒体放射と一致していない。水素の連続吸収や吸収線などに

よって,黒体放射から少しずれている。

 恒星の連続スペクトルをすべての波長にわたって測定する必要がない場合,目的に応じ

て適切な波長域を選び,その波長域での光の強さを測定するものにジョンソンの3色測光

がある(I,図II)U等級は,水素の連続吸収波長域にあり,そのための減光を反映す

る。これらの等級間の差,BVUBを色指数といいBVは恒星の色・温度を示す指

標になる。BVUBは,ともに表面温度104Kの白い星(A0)でその値がちょうど0

になる。ここでの温度は恒星を黒体と見なした場合の温度に相当し,星の有効温度とよば

れる。星の色は,色指数の小さいものほど青く,色指数の大きなものほど赤い。

 

 

◆恒星のスペクトル型

 スペクトルの分類は,19世紀末〜20世紀初めにかけて確立されたハーバード分類を基

礎にしている。初めはバルマー線の強さをもとにAB……などの記号を用いたが,後にな

って,恒星の表面の温度に対応していることがわかり,スペクトル型を温度に対応させて次

のように並べた。

 

 スペクトル型の中で,高温側にあるスペクトル型を早期型,低温側を晩期型という。このス

ペクトル型はさらに09の数字により細分され,A0A1……A9のように表される。数字

の小さいほうが高温側である。早期型の星は一般に青っぽく,晩期型になるほど赤っぽく

見える。

 

 一般にある状態の元素がつくる吸収線の強さは,ある温度で極大になる。その温度より

高温では元素が電離しやすくなり,低温ではより低いエネルギーレベルになっているので

弱い吸収線になる。一方,電離は温度だけではなく,自由電子の数密度にも関係する。

すなわち,同じ温度では圧力(電子圧)が小さいほうが電離しやすくなる。これは,吸収線の

強さが,温度だけではなく,圧力の影響も受けていることを示している。巨星などは電子圧

も小さいため,同じ温度の主系列星にくらべて吸収線の強さも異なってくる。

 

HR

HR図は,ヘルツシュプルング(E.Hertzsprung18731948)とラッセル(H.N.Russell

18771957)の頭文字をとって名づけられたもので,本質的には縦軸に恒星の明るさ

を,横軸に表面温度をとって,個々の恒星がその図表上でどの位置にくるかをプロットした

ものである。恒星の明るさは,単位時間に放出されるエネルギーであるが,実際には,わ

れわれは限られた波長域のエネルギーしか測定できないので,観測量からHR図をつくる

場合は,可視光線のエネルギー領域(λ0.50.6μ)で測定した実視絶対等級を用い

る。また,恒星の表面温度も,われわれは直接観測で知ることはできない。しかし,恒星の

表面温度は恒星の色やスペクトル型と密接な関係をもっている。したがって,恒星のスペク

トル型が観測されている場合は,横軸に表面温度の高い順に並べられたスペクトル系列

OBAFGKMをとって恒星の温度のかわりにする。

 一方,スペクトル型のかわりに色指数(BV)を用いる場合もある。恒星の表面温度が高く

なるにしたがって,星の色は赤から青白色になる。これは,V級に対してB等級が小さく

(明るく)なることを示すから,温度が高いほどBVが小さくなる。このような,横軸にBV

を用いた図を色−等級図とよんでいる。色指数は,暗い星でも観測できるので,特に星団

などの場合はHR図のかわりに色−等級図を用いている。

 

 

 

 








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