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1節 可視光線による観測

 

宇宙における観測

 地上の物質や現象を調べる場合と違って,天体を対象とするとき,天体からの情報は一

方的に伝達されるものを受動的に測定するしかない。そこで,何をどのように測定すると十

分な情報を集めることができるかが大きな問題となる。そのとき観測や測定の技術的な制

約から限られた情報しか集められないことが多い。歴史的には,その点で最も制約がなか

ったのが可視光線を観測することであった。そこで,観測はもっばら可視光線でなされ,

「目に見える」宇宙のデータが蓄積され,「見える」宇宙が理解されてきた。最近では技術

の進歩にともない,電波・赤外線・紫外線・]線・γ線といった可視光線以外の波長の電磁

波でも観測がなされるようになり,可視光線で「見ていた」宇宙と大きく違った宇宙像が得ら

れるようになってきた。また,電磁波以外にも,ニュートリノという素粒子による観測がなさ

れたり,重力波という時間空間のゆがみの伝播を測定しようと精力的に研究が進められて

いる。

 

◆可視光線

20世紀の後半になるまで,天体に関する人類の知識は主として可視光線によって獲得

されてきた。それは,人間が「目」で見たり観測したりすることの当然の反映である。可視光

線とは,人間の目で見ることのできる光である。この可視光線は,電磁波といわれる電磁

気的な波である。波を特徴づけるのは,振動数・波長・波の速度・波の位相,および波の

振幅である。可視光線は,波長が4000オングストローム程度から8000オングストローム程

度の波長の電磁波である。可視光線より波長の長いものが赤外線であり,さらに長くなると

電波という。

 可視光線より短い波長の電磁波が紫外線で,さらに短い波長になるとX線,γ線とよばれ

る。 

 

可視光線を含めて電磁波を定量的に扱う場合には,普通はその波長と強さが問題にさ

れる。波長を指定する場合には振動数を与える必要はない。先にあげた光の属性のうち,

振動数と波長と速度の間には

   波長×振動数=波の速度

という関係があり,電磁波の速度は秒速30万キロメートルで一定である。そのため,振動

数か波長のいずれかを指定することで,もう一方は自動的に定まってしまう。一方,電磁波

の強さは光の場合は明るさといってもよく,1秒間あたり1cm2あたりのエネルギーである。

 可視光線では,波長あるいは振動数は光の色と関係している。太陽光線をプリズムに通

すと,虹の七色に分かれる。太陽光線はもともと異なる波長の光を含んでいる。プリズムは

異なった波長の光を異なった角度だけ曲げるために,それぞれの波長の光が分かれて見

えるようになる。このことから,ある波長の光はある色に対応しているといえる。4000オング

ストロームは紫で,8000オングストロームは赤の光なのである。可視光線の範囲外にあっ

て赤よりも長い波長領域の電磁波は赤外線と名づけられるわけだし,同じく可視光線の範

囲外で紫より短い波長の場合には紫外線となる。

 

◆天体望遠鏡

 望遠鏡は大きく屈折型と反射型に分けられる。屈折望遠鏡は対物部と接限部にレンズを

用いる。接眼レンズに凹レンズを用いるものをガリレイ式,凸レンズを用いるものをケプラー

式という。ガリレイ式は視野が狭く高倍率が得にくいので天体望遠鏡には使用されていな

い。倍率は対物レンズと接眼レンズの焦点距離の比で決まる。レンズを使った光学系で

は,波長ごとに屈折率が異なるため色収差が現れる。これを避けるためには,単一のレン

ズではなく,屈折率にくらべて分散力の小さなガラス(たとえばクラウンガラス)の凸レンズと,

屈折率にくらべて分散力の大きなガラス(たとえばフリントガラス)を使った凹レンズを組み合

わせた,複レンズのような色消しレンズを用いる。ただし大きなレンズをつくることは大変む

ずかしいので,大型望遠鏡には使われない。

 

 

 一方,反射望遠鏡はレンズではなく鏡の反射を用いて光を集める。対物部には凹面鏡

を使用する。鏡には色収差がないことが利点となる。凹面鏡としては球面鏡が考えられる

が,球面鏡では軸に平行な光線が焦点に集まらない。これを球面収差という。そこで,普

通は放物面鏡を用いる。放物面は軸に平行な光線を焦点に集めることができ球面収差が

ない。

この凹面鏡で反射された光の集め方はいろいろある。焦点そのものに集める場合,直

接焦点という。ニュートン焦点は45°に傾けた平面鏡で入射光に対して直角にとり出す。カ

セグレン焦点は主鏡の焦点の手前に凸面鏡をおき,主鏡中央にあけた穴から光をとりだ

す。このカセグレン式の光を平面鏡でさらに反射させて,望遠鏡の極軸の中に導く方式が

クーデ焦点といわれる。その他の方式では,望遠鏡の姿勢によって観測装置の位置を変

えなくてはならないのに対し,クーデ式では測定装置を望遠鏡の姿勢と無関係に同じ場所

におくことができる。

 天体は日周運動をするので,望遠鏡で観測するには天体を追尾しなくてはならない。そ

のため,地軸に平行に極軸をもち,それに垂直に赤緯軸をもたせ,自動回転するという赤

道儀式が多く使われる。

 普通の反射望遠鏡の視野は程度である。それは,光軸の近くでなければよい像は得

られず,斜め方向からの光の像が悪くなるためである。広い視野を観測するのに,1930

にドイツのシュミット(B.Schmidt)がシュミットカメラを考案した。それは,主鏡には球面鏡を用

い,その曲率中心部に入射絞りをおき,そこに特別な曲率をもった補正レンズをとりつけた

ものである。曲率中心に入射する平行光はその入射の方向によらず,曲率中心から半径

の半分の位置の球面上に集まることを利用し,補正板で球面収差を補正したものである。

もちろん,写真フィルムは球面に曲げる必要がある。このシュミットカメラは広視野で明るい

光学系になっている。

 望遠鏡の性能はその分解能と集光力である。分解能は遠方の2つの物体を識別する

際,見分けることのできる最小の角度をいう。これは使用する電磁波の波長λと望遠鏡の

口径Dを使って,

となっている。この理論的な分解能を実現するのはむずかしい。地上の望遠鏡では大気

のゆらぎが存在したり,反射鏡には熱的なゆがみが起きるからである。集光力は望遠鏡の

面横に比例する。したがって,遠方からのわずかな光をキャッチするためには,口径の大

きな望遠鏡が必要となる。大口径の望遠鏡をつくるのは天体からの光を多く集めるためで

ある。そのとき問題となるのは,望遠鏡で集めた光をすべて利用できているかということで

ある。従来の写真乾板を使ったものでは,入射光に対する効率は0.2%程度というもので

しかない。そこで,最近ではCCD(charge coupled device=電荷結合素子)という半導体を用

いることで効率が70%をこえるものもあり,集めた光をほぼ完全に利用できるようになって

きている。

 また,分解能を上げるためには,大気の影響を除く必要がある。そのための方法として

2つ考えられる。1つは望遠鏡を大気圏外におくことである。これは人工衛星に大型の

望遠鏡をのせることで実現できる。実際,1990年には口径2.4mのハッブル望遠鏡が打ち

上げられた。この望遠鏡には,鏡面の形が計画どおりになっていなかったというトラブルも

あったが,計算機を使った修正を利用することで,地上の最大口径の望遠鏡でも得られな

かった分解能の高い写真を数多くとることに成功している。衛星にのせる望遠鏡で問題な

のは,打ち上げ能力の問題から,あまり大きな口径のものにできないことである。

 もう1つの方法は,大気の動きに対してすぼやく鏡面を調節することにより,大気中を伝

わってくる波の位相の乱れを修正するという「適応光学」(adaptive optics)で,最近建設され

たり現在建設中の大口径望遠鏡に使われたり使われる予定になっている。この技術を使う

と,地上でも分解能の高い画像を得ることができる。したがって,衛星に積めないような大

口径の望遠鏡をつくることで,さらに高い分解能を実現できる。実際,ハワイ島のマウナ・

ケア山にある日本の「すばる」望遠鏡は口径8.2mの1枚の反射鏡をつくり,その反射鏡を

大気のゆらぎを消し去るように「適応光学」によって微調整する方式をとる。マウナ・ケアは

大気が安定し,晴天の夜が多く観測地としては世界で最良の場所であるとされている。

 世界的にも大型の望遠鏡が建設中であったり,建設が予定されたりしているものが多

い。その際,大口径の反射鏡をつくるのに,1枚の反射鏡でなくいくつかの小型の反射鏡

を合わせて大口径にしようとする方法もある。たとえば,アメリカのケック望遠鏡は,1.8mの

六角鏡36枚を用いて直径10mの反射鏡をつくった。

◆天体の観測

[小惑星や彗星の軌道] 惑星の公転軌道は楕円であるが,個々の惑星について考える

と,軌道半径が異なるだけでなく,その形も違う。

 楕円は2定点からの距離の和が一定な点の集合であり,この2定点を楕円の焦点とい

う。ケプラーの第1法則は,その焦点の1つに太陽が位置することを示している。楕円の中

Oと焦点S(太陽の位置)との距離をaeとおくとき(0e1)eを離心率といい,これが

楕円の形を決めるパラメーターとなる。ここでaは軌道の半長軸であり,太陽と惑星の平均

距離に等しい。地球についていえば,aの値は約1.5×108kmで,この距離を1天文単位

(A.U.)という。離心率eの大きなものほど,楕円の形はより偏平なものになる。惑星の離心

率は一般に小さいが,離心率の最も大きな冥王星では0.25ほどになる。なお,太陽が楕

円軌道の焦点Sにあるとき,太陽から最も近い軌道上の点Pを近日点,最も遠い点Q

遠日点という。

 

 

 








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