トップ地学II>第2部 プレートでおおわれた地球>第1章 プレートの動きと地球表層の変化>第4節 大陸の分裂と移動

4節 大陸の分裂と移動

 

ウェゲナーの大陸移動説

 大陸移動説の起源は17世紀にさかのぼるといわれているが,近代地球科学にそれをも

ち込んで,新しい地球観の確立に先駆的役割を果たしたのはウェゲナー(A.Wegener

18801930)である。彼が最初に大陸移動説の考えを思いついたのは,他の科学者と

同様に,大西洋をはさむ両岸の海岸線の形の相補性に気づいたときであった。その当時

得られていた地質学・古生物学・生物地理学などの研究成果は,諸大陸の過去における

つながりを示唆するものを多く含んでいた。これらをまとめて,彼は1915年に「大陸と海洋

の起源」と題する本を出版した。

[ウェゲナー以前]  当時の地球科学者たちは地球収縮説を支持していた。これによる

と地球はとけた状態でつくられ,現在はしだいに冷却し収縮している。そのような過程を経

FeNiのような重い元素は地球の中心部に沈んで核を形成し,SiAlのような軽

い元素は表面に浮き上がってかたい地殻を形成したと考えられた。地球が収縮する間に

起こる表面の圧縮によって山脈がつくられた。それはちょうど,りんごが乾いて収縮すると

きに皮にしわが寄るのと同じである。より大きいスケールでは,収縮によってつくり出された

圧力が表面のある部分を崩壊させ,また沈降させた。このようにして海ができた。そして,

他の地域は高い部分にとどまって大陸となった。地殻の鉛直運動は可能であるけれども,

表面に平行な運動は不可能であると考えられた。したがって,大陸と海底とは相互に入れ

かわることが可能であった。大陸の一部は周囲にくらべてより速く沈降し,そのために海進

が起こった。それと同時に海底の一部が現れて乾いた陸地となった。同種類の植物や動

物の化石が離れた大陸でみつかっていたが,これについては,かつてそれらの大陸をつ

なぐ陸橋があったと考えることによって説明され,それらの陸橋はその後沈んで海底となっ

た。堆積物が層をなしていることから考えて,海進や海退がくり返し起こった。海底が沈降

したために海退が起こり,また大陸の侵食による堆積物が海底を部分的に埋めたために

海進が起こったと考えられた。

 しかし,この考え方には多くの矛盾点があった。地球表面の数多くの特徴を説明するの

に地球収縮モデルではあまりにも偶然的要素が多すぎた。なかでも特に顕著な例は,大

西洋をはさむアフリカと南米との対応であった(ウェゲナーはその対応を示すのに海岸線

よりもむしろ大陸棚の端を用いたが,それは大陸的なブロックと海洋的なブロックとの境界

にあたるという点で意味があり,現在でもこの境界が用いられている)。もう1つは,山脈の

分布であった。山脈は狭い曲線状の帯の部分に集中している。もし山脈が地球の収縮に

よって生じたものとすれば,乾いたりんごの表面のしわのように,地球表面上に一様に分

布しているはずである。

[古生物学的・生物学的証拠]  大陸をこえて広がる化石および現生生物の分布もま

た,ウェゲナーの考えを支持していた。次ページの図XXIXに示すように,ミミズの科であ

Lumbricidaeは日本からスペインにかけて分布しており,さらに大西洋をこえて東部アメリ

カにも分布している。ある種のカタツムリ(ガーデン・スネイル)も大西洋北部の両側に分布

している(南ドイツ・アイスランド・グリーンランド・北米大陸東部など)。そのほか,スズキやイ

ガイについても同様の分布が見られる。これらはメキシコ湾流がその移動を助けたというだ

けでは説明がつかず,過去に北大西洋の両側が陸つづきになっていたと考えなければな

らない。

 

 オーストラリアの陸上動物群は特に興味深い。このなかには有袋類および単孔類のよう

な特別な哺乳類が含まれており,それらの動物群はスンダ列島の動物群とは完全に区別

される。オーストラリアのほかには,有袋類のいる主な場所は南アメリカである。フクロネズ

ミのある種は北アメリカにも棲息する。北アメリカおよびヨーロッパでは化石となった有袋類

が知られている。しかしアジアでは発見されていない。その他,ペルム (二畳)紀からトリア

(三畳)紀にかけての動物分布から,マダガスカル島を通じてインド半島と南アフリカが

陸地でつながっていたことが確かめられた。

以上のような分布の特徴は,かつてはこれらの大陸をつないでいたが後で沈んだと考え

られる陸橋によって説明されていた。しかしウェゲナーは,地球物理学的根拠に基づいて

これを否定した。それはアイソスタシーの原理に反する。陸橋をつくる物質は海底をつくる

物質より軽いために,沈むことができないからである(この当時すでに,重力測定が世界各

地で行われており,アイソスタシーの概念が確立していた。海上においても,ベニング・マ

イネス(F.A.Vegning Meinesz)が潜水艦による重力測定に成功し,海洋底においてもアイソス

タシーのなりたつことが確かめられていた)。さらに,ウェゲナーは生物の類似を説明する

ためには,これらの大陸が同様な気候区や環境にあったとしなければならないと考えた。

大陸を結ぶ陸橋があったとしても両大陸の気候区や環境があまりにも異なっているため

に,これらの地域に同じような生物群が存在するとはとうてい期待できないであろう。一方,

かつて両地域が接合していたとすれば気候区や環境は似たものであったはずであり,生

物相の類似性をうまく説明できると考えた。

[地質学的証拠] 地質学的証拠もまた同様である。たとえば,古い岩石の大きいブロック

が大西洋をはさんでアフリカ西岸と南米東岸に見られ,これらの大陸をうまくつなぎ合わせ

るとそれらのブロックもつながってしまう。この地域の詳細な研究は南アフリカの地質学者

デュ・トワ(A.L.Du Toit)によって行われた(XXX)。彼は,

1) 両ブロックとも,最も古い岩石は互いによく似た先カンブリア時代の結晶質岩石とデボ

ン紀以前の褶曲した堆積物である。

2) 海成のシルル紀およびデボン紀の地層が,上述の古い岩体の上に不整合にほとんど

乱されないでのっている。それらは海岸線に斜めに走る広い向斜を埋めている。それは互

いにアフリカ側(シェラ・レオネと黄金海岸の間)から南米のアマゾン川河口部の下の分布

地に続くような位置にある(XXX左上部)

3) 南部では,主として硬砂岩・スレートおよび石灰岩からなる先カンブリア時代後期およ

び古生代初期の地層が,アフリカ側でも南米側でも海岸近くに分布し,ともに花こう岩の貫

入を受けている。

4) このようなさまざまな類似性は,その地層が海成・大陸成・氷河成・火山成いずれの場

合にも認められる。

などのことから,この種の特別な関係を単に偶然であるとは考えられないと指摘した。ウェ

ゲナー自身もこの重要性に着目し,両大陸のつながる確率のきわめて高いことを自著に述

べている。

  以上の結果を総合して,ウェゲナーは大陸の起源に関する広範な理論をうちたてた。

彼によれば,地球上のすべての大陸はかつては1つに集まって,原始的な超大陸をつく

ていた。彼はその超大陸をパンゲア(ギリシア語で「すべての大陸」を意味する)とよん

だ。

これが約2億年前に分裂を開始し,図XXXIに示すような変遷を経て今日にいたったの

である。

 

◆大陸に見られる古地磁気の記録

[残留磁気]  岩石中の強磁性を示す鉱物は,岩石中に0.15%ぐらい含まれている鉄・

チタンの酸化物,鉄の硫化物や水酸化物などの微少鉱物である。このなかでも残留磁気

に有用なのは鉄・チタンの酸化物である。この鉱物は,岩石ができたときの周囲の磁場を

よく記録しているので,岩石の磁化を測定して,岩石ができた当時の地磁気の方向や強度

を求めることができる。いわゆる岩石の自然残留磁気(以下NRMと略す)が磁場の化石で

あることを利用するのである。

 強磁性鉱物を,キュリー点以下に磁場の中で冷却すると強い磁気を獲得する。これは熱

残留磁気(TRM)とよばれ,火山岩のNRMの原因である。また,赤鉄鉱を350℃で還元し

て磁鉄鉱をつくると強い残留磁気が生じる。これは結晶成長にともなってTRMと同様に磁

化が固定されるためと考えられ,化学残留磁気(CRM)とよばれる。水中に堆積した堆積物

も弱い残留磁気を獲得する。これは堆積残留磁気(DRM)とよばれ,沈殿する強磁性粒子

の磁化が磁場の方向にそろうものが多いために生じると考えられる。

[古地磁気学から見た大陸移動]  一般に,学界に論争をまき起こした大陸移動説

は,19301940年代にはほとんど下火になってしまった。その主な理由は,固体地球の

上を大陸が移動するための原動力についての合理的な説明がなされなかったことであっ

た。しかし,1950年代後半になると,古地磁気学の分野で大陸の移動を説明する証拠が

現れた。岩石がもつNRMは強さと方向(伏角,偏角)をもつベクトル量であり,その方向

は,岩石の生成時におけるその岩石採集地点の地磁気の方向を示す。世界各地で,い

ろいろな時代の岩石について,NRMの方向が得られたとき,各データが双極子磁場の方

向を示すものとみなすと,その時代の極,すなわち古地磁気極の位置を算出することがで

きる。

 1つの地点あるいは剛体とみなせる1つの大陸上で,種々の地質時代の岩石の残留磁

気を測定し,それぞれの時代の古地磁気極を推定すると,極移動曲線が求められる。

27は,欧州大陸および北米大陸についてこのようにして求められた極移動曲線であ

る。もし地磁気の双極子仮説が正しいとすれば,2本の極移動曲線は一致すべきである。

しかしそれらは,観測誤差の範囲をこえて,系統的にずれているように見える。これらは大

西洋が閉じるように両大陸を移動させると,ほぼ一致する。このようにして,大陸移動説を

支持する証拠が地質学や古生物学からの推論とは別に独自に得られたのである。

 今日では海洋底の資料などから海洋底や大陸の移動をより直接的に論じられるようにな

ったが,海底のデータを用いることのできない中生代以前の大陸移動については,こうし

た極移動曲線など古地磁気学からのデータが重要な位置を占めている。

教図27 オルドビス紀中期〜ジュラ紀初めまでの北磁極の移動経路

十分に長い時間について平均すると,地球の磁場は双極子による磁場成分が圧倒的に大きく,双極子

の位置は地球の中心に,またその軸は地球の自転軸に一致するというのが双極子仮説である。この仮

説が正しいとすると,いろいろな地質時代の岩石についてNRMを測定して古地磁気極の位置を算出

し,それらを年代に従って結ぶと見かけの極移動曲線が得られる。図はヨーロッパおよび北アメリカの岩

石から得られた2つの極移動曲線であり,緯度に沿って38°動かすと両者は1つの曲線となり両大陸が

近接していたことを示している。

 

◆大陸の分裂と大西洋の拡大

[大西洋の歴史]  大西洋は大西洋中央海嶺を中心に拡大しているが,その拡大が始

まったのは南大西洋で13000万年前,北アメリカとユーラシア大陸の完全な分離は

8000万年前である。以上のことは,海洋底の年齢分布を調べることにより明らかになった

が,それ以前のことは海洋底には記録されていない。

教図29 大陸の分裂と大西洋の拡大

大西洋の両岸では海洋プレートの沈み込みが起こっていないので,大陸に最も近い,最も古い海洋底

の年齢が,分裂を開始した時期を表している。現在の大西洋がどのように形成されたかは,このようなこ

とから明らかにされた。

 

 しかし,1966年にカナダのウィルソン(J.T.Wilson)は,それ以前の大西洋のプレートの動き

に関して次のような考えを発表した。

 古生代の前期には古大西洋(Proto-Atlantic)があり,沈み込み帯が存在し収束していた。

やがて両側の大陸が衝突し海洋は消失した。このようにして超大陸(パンゲア)が生まれた

が,中生代中頃に分裂して大西洋の拡大が始まった。

ウィルソンがこのような古大西洋を考えたのは,カンブリア紀のサンヨウチュウなどの浅

海性動物群が,奇妙な分布をしていたからであった。この時期のサンヨウチュウは大きく2

つの群に分けられるが,その境界線が図XXXIIのようにアパラチア山脈の中軸部を通っ

ていたのである。サンヨウチュウは海底表面をはいまわっており,深い海を泳いで渡ること

はできなかったと考えられる。したがって,現在アパラチア山脈となっている部分に,カン

ブリア紀には広く深い海があったと考えなくてはならない。

 また,アパラチア山脈は造山帯の構造をもっているが,これはプレートの収束境界でなけ

れば形成されないものである。現在の大西洋西岸は海洋プレートの沈み込みが起こって

いない境界であり,アパラチア造山帯を形成するためには,古大西洋の西岸での海洋プ

レートの沈み込みを考えなくてはならない。このときアパラチア造山帯の北の延長部として

形成されたのが,グリーンランドからスカンジナビア半島にかけて分布するカレドニア造山

帯である(p.9026)

 以上のようにして,ウィルソンは古大西洋の存在とその収束を推定したわけである。

 

◆大陸の衝突と山脈の形成

[ヒマラヤ山脈]  教図31のように,インド・オーストラリアプレートの一部として北上して

きたインド大陸は,4000万年前にアジア大陸に衝突した。図XXXIIIに示したように,両大

陸の間にあったテーチス海のプレートはアジア大陸の下に沈み込んでいた。

 

 

2つの大陸が衝突した場合,両方の大陸が同じように変形するわけではない。図

XXXIIIに示されるように,インド大陸は一見ほとんど変形していないように見えるのに対し

て,アジア大陸は広範囲にわたり大きく変形し,衝突境界で最も大きく変形した部分がヒマ

ラヤ山脈となっている。これは,衝突前にアジア大陸の下に海洋プレートが沈み込んでい

たために,アジア大陸の縁辺域が島弧(陸弧)となっており,衝突前から造山帯となってい

たことと関係があると考えられる。ヒマラヤ,チベットの地殻は厚さが6070kmもあり,通常

の大陸地殻の2倍ある。これは,アジア大陸の地殻の下にインド大陸の地殻がもぐり込ん

だためと考えられる。

[アルプス山脈]  アルプス山脈を初めとするヨーロッパのアルプス変動帯は,図

XXXIVのようになっているが,これは,北上してきたアフリカプレートがユーラシアプレート

に衝突してできたものである。図XXXVは現在のプレート配置であるが,南北の収束は続

いており,地中海に沈み込み帯が存在している。

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 








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