トップ地学II>第2部 プレートでおおわれた地球>第1章 プレートの動きと地球表層の変化>第2節 プレートの誕生と移動

2節 プレートの誕生と移動

 

海嶺でのプレートの誕生

[中央海嶺]  19世紀後半には大西洋の中央に山脈が存在することが知られており,

1940年代の終わりにはそれが全世界の海洋底に続く一大山脈であることが明らかにされ

た。これが後にプレートの生産される場所と考えられるようになった中央海嶺である。中央

海嶺では火山活動が活発であり,地殻熱流量も大きい。また,浅発地震の活動も活発で

ある。中央海嶺の下には地震波の伝わる速度が遅く,密度も小さい異常マントルの層があ

る。

 中央海嶺の地形断面を見ると,ゆっくり拡大している海嶺は斜面のこう配が急で起伏も

激しいのに対して,速く拡大している海嶺は一般にゆるやかな傾斜をもち,起伏もなめらか

である。たとえば,北大西洋の55°Nでの拡大の速度は1.0cm/年で,大西洋中央海嶺のな

かで険しい地形断面をもつ地域である。一方,南大西洋の30°Sでは,拡大速度が2.0cm/

年であり地形断面はなめらかである。

 東太平洋海膨ともよばれる東太平洋海嶺について見ると,南太平洋の17°Sでの拡大速

度は6.0cm/年で最もゆるやかな地形をもつ海嶺の1つである。

[中央海嶺の火山]  中央海嶺の中軸部では砕せつ性の堆積物はほとんどなく,玄武岩

質の枕状溶岩や火山砕せつ物が露出している。この玄武岩質岩石は深海性ソレアイトとよ

ばれているもので,次のような特徴をもっている。

 @ K2O が少ない (0.4)

 A Na2O 23

 B P2O5 が比較的少ない (0.25)

 C TiO2 が島弧ソレアイトより多い (0.8%〜2.0)

 D FeO/MgO の値は小さいが,マグマの分化が進むと0.72.2くらいに増加する。

[深海底]  海底表面から1020mの深さの堆積物をほとんど乱さずに採集するために

は,ピストンコアラーが用いられている。火成岩から地球磁場逆転の歴史が決められて間

もなく,太平洋・南極海・大西洋など各地の深海堆積物について自然残留磁気が測定さ

れ,正逆両向きの連続したパターンが続々と見いだされた。次ページの図\にその例を示

す。コアから知られる偏角は,最上層が現在と同じ向きに磁化しているとした相対的な値で

あるが,伏角は現在は北半球では下向き,南半球では上向きであるから,磁気赤道上で

ないかぎり,伏角からだけでも容易に正逆の判定を下せる。堆積物コアの磁化の正逆のパ

ターンは多くの試料について火成岩の磁化と絶対年代からまとめられた正逆の年表とよい

一致を示した。

 このように,堆積物コアの自然残留磁気を測り,正逆磁化の境界を求め,年代表と対比

することによってコアの各深さの年代を決めることができる。この方法を磁気層位学という。

地球磁場の逆転は全世界で同時に起こる現象で,しかも5000年か1万年以下の短い時

間で完了する。このことと微化石とを利用して,世界中どこのコアでも精度よく年代を決め

ることができるようになった。従来は堆積物中に含まれる微化石の同定によってその堆積

物の年代を決めていたが,この方法だけでは,緯度や海流系の違いや気候の差のため

に,地球上遠く離れた海域での対比はなかなか困難である。また,古地磁気の測定だけ

では,正逆はわかるが年代の新旧はわからない。両方法の発展によって,いまでは世界

の遠く離れた地域間でもくわしく対比できるようになった。

◆磁気異常の縞模様とテープレコーダーモデル

[磁気異常の縞模様] 図VIIに示すように,レイキャネス海嶺で,アイスランドの南西にあ

り,大西洋中央海嶺の一部分である。図VIIIの磁気異常は,1962年にラモント地質研究

(現在のラモント−ドハチ地質研究所)とアメリカ海軍海洋局との共同研究によって得られ

た地磁気のデータから描いたものである。黒色の縞は標準より地磁気が強い部分で,現

在の地球の北磁極と同じ向きの磁化,すなわち正の磁化をもった海洋底の岩石を表す。

黒色の縞の間の白い空自は標準より地磁気が弱い負の磁化をもった岩石を表し,それは

地球磁場の極性が現在と逆向きであった期間につくられた岩石である。海嶺の峰のところ

にあるリフト(裂谷)からわき出して冷え固まった玄武岩質の溶岩は,そのときの地球磁場の

向きに磁化し,それらが次々に押し出されて海嶺の両側に広がったことを示している。

 

 

IXは,北アメリカ西方海域の海底の岩石の年齢と海嶺の軸を示したものである。黒い

部分が最も新しく磁化した部分であり,それは海嶺の位置の中央部にほぼ一致している。

図中のBCはファン フーカ(Juan de Fuca)海嶺の軸,DEはゴーダ(Gorda)海嶺の

軸,CDはトランスフォーム断層である。

 

[テープレコーダーモデル]  海洋底の磁気異常の成因についてバイン(F.J.Vine)とマ

シューズ(D.H.Matthews)は次のような仮説を提唱した(1963)。すなわち,海洋底が拡大

する海嶺部で冷却固結した玄武岩は,そのとき熱残留磁気を獲得し,しだいに海嶺から

離れていく。地球磁場は逆転をくり返しているので,次々に生まれて拡大する海底の岩石

の磁化も縞状に反転したものになるというものである。海洋底の磁気異常についてのバイ

ンとマシューズによるこの考えは,テープレコーダーモデルともよばれている。

 さらに,バインとピットマン(W.C.Pitman)は,陸上の岩石からわかっていた地磁気の逆転

史と,東太平洋海嶺上の磁気異常の縞模様からわかる地磁気の逆転史をくらべた結果,

両者はバインとマシューズの仮説のとおり互いによく一致した。そして,縞模様の幅と年代

との関係から,東太平洋海嶺付近の海洋底は1年に4cmくらいの一定速度で拡大してい

ることを実証した(1967)

 

 

◆プレート運動の実測

[プレート運動の検証]  海嶺で生産された海洋底が海溝で沈み込んでゆくということ

は示されており,プレートテクトニクスで説明されていることの大すじは明らかにされてい

た。では,何をもってプレートテクトニクスの成立とするかというと,それはプレートが剛体の

ようにふるまうことの証明であったといえるだろう。プレートテクトニクスの骨子は,教図2

ように,地球は10あまりのプレートにおおいつくされており,それぞれのプレートは年間数

cm以下のスピードで動いているというものであるが,重要な点は,プレートは変形しない板

のようにふるまい,相対運動によるひずみはすべてプレート境界で解消し,プレート内では

変形が起こらないとみなすことができるということである。

 プレートが剛体のようにふるまうことを最初に証明したのが,マッケンジーとパーカー

(McKenzie & Parker1967)である。教図14はその論文からの引用であるが, 50°N

85°Wを極とするメルカトール図法により太平洋地域を示したものである。この極は陸のプ

レート(北アメリカプレートとユーラシアプレートの相対運動は非常に小さいのでいっしょに

扱かっている)と太平洋プレートの間の相対運動を示すオイラー(Euler)極であり,矢印は各

地点で起こった地震の発震機構を解析し,太平洋底の岩盤が陸のプレートに対して相対

的にどの方向に地震の際に動いたかを示したものである。この図では太平洋の海底が全

体として剛体のように移動していれば,その移動の向きはどこでも緯度線と平行になるは

ずであり(XI),この図において矢印がオイラー極に対する緯度線方向とほぼ平行になっ

ていることから,太平洋の岩盤がプレートのように変形しないで運動していることが証明されたわけ

である。

 

[プレート運動の記述]   教図14や図XIに示されたように,プレートが剛体として移動

していれば,その移動はオイラー極のまわりの回転運動として記述できるはずである。モル

ガン(Morgan)やルピション(Le Pichon)は,次のような方法でプレートの相対運動のオイラー

極を求め,プレートの剛体性が地球全体でなりたっていることを示した。

(1)  断裂帯(トランスフォーム断層)と直交する大円を利用する方法

   XIでわかるように,プレートの運動方向はトランスフォーム断層と平行であるから,ト

ランスフォーム断層と直交する大円を描けばオイラー極はその上にあるはずである。し

たがって複数のトランスフォーム断層の各点から直交する大円を描けば,それらの交点

がオイラー極である。図XIIの多くの大円が交わるところはこうして求めた太平洋プレート

と北アメリカプレートのオイラー極である。

 

(2)  拡大速度の変化を利用する方法

 図XI(a)を見ればわかるように,プレートの移動速度はオイラー極に近いところでは小

さく,離れるほど大きくなるはずである。オイラー極からの角距離を(90°θ)とすると,sin(90°

θ)に比例する。プレートの移動速度を地磁気異常の縞模様の幅などから求め,その変

化を最もうまく説明するオイラー極を求めることができる。

XIIIはアメリカプレートとアフリカプレートの相対運動のオイラー極を(1)の方法で求め

たものである。

 

 

 

このようにして各プレート間のオイラー極と角速度を求め,また未知のプレート境界での

相対運動を計算で求めたものが表IIである。たとえば,インドプレートとユーラシアプレート

が年間56cmで収束していることが計算で求められるが,ヒマラヤ山脈での造山運動が

活発であることと整合性があり,プレートが剛体としてふるまっているとして計算した結果が

事実とよく一致していてプレートテクトニクスの考え方が正しいことがよくわかる。

 

[プレート運動の実測] プレートの運動により,地球上の離れた2地点の距離の変化が

起こるはずである。2地点間の距離を時間をおいてくり返し測定することにより,プレート運

動を実測することができる。教科書に示されているVLBIのほか,SLRGPSなどが利用さ

れている。

[VLBI]  超長基線干渉計(Very Long Baseline Interferrometer)と訳されるこの方法は,クェ

ーサーからの電波の到着時刻の差と,クェーサーの方向から,2地点間の距離を求めるこ

とができる。日本には,茨城県の鹿島にVLBI局がある。北アメリカプレートに対する太平

洋周辺の各局のVLBI局の移動速度は,次の表III,および図XVのように求められてい

る。図XVは,太平洋プレートと北アメリカプレートのオイラー極を北極にとって描いたメル

カトール投影図で,各極の動きがよくそろっており,太平洋プレートが剛体としてふるまって

いることがわかる。この方法では,長期間の平均移動速度がわかるだけでなく,短期間で

の移動量が計測でき,プレートの周縁部ではプレートの動きが間欠的であることなどが,明

らかにされつつある。

 

 

 [SLR] 衛星レーザー測距(Satellite Laser Ranging)と訳されるこの方法は,人工衛星を利

用した位置決定法で,くり返し測定することにより,2地点間の距離の変化を知ることができ

る。

 測定の原理は次のようになっている。図XVIのように,観測地点と人工衛星の間のレー

ザーの往復時間から人工衛星までの距離を求める。3地点以上で同時に距離を測れば,

人工衛星の位置が決まるので,その位置を利用して他の地点の位置を決める。この方法

では,数千kmの距離を数cmの精度で測定することができる。表IV,図XVII1984

1988年の間の基線長の変化率を示したものである。ハワイが太平洋プレートの動きによっ

て,日本に近づいていることなどがわかる。

 

 

 

[GPS]  汎世界測位システム(Global Positioning System)と訳されるこの方法は,自動車用ナ

ビゲーションシステムとしておなじみの方法である。人工衛星を利用しての位置決定法で,

100km程度の距離の測定によく用いられる。位置のわかっている3個以上の人工衛星の

電波を受信して位置を決定するわけであるが,地殻変動の計測などにも広く利用されてい

る。

 

◆プレートを動かすカ

 プレート運動の原動力の問題は,未解決な部分が多い。今日,原動力が説明できない

がためにプレートの運動が疑問視されることはないが,ウェゲナーの大陸移動説は,大陸

移動の原動力が説明できないがために受け入れられにくかった。

プレート運動の原動力としては,一時マントル対流が重要視されてきた。プレートはマン

トル対流の流れにひきずられて受動的に動くという考え方である。しかし,海嶺がトランスフ

ォーム断層でずらされているなど,プレート境界はかなり複雑であり,それがすべてマント

ル対流を反映したものとは考えにくいなど,すべての原因をマントル対流に求めるのは無

理なようである。

プレートは海嶺で生産され,海溝で沈み込むが,深発地震面の存在からわかるように,

地下数百kmまで沈み込んでゆく。このような海洋プレートにはたらく力は,大まかに図

XVIIIのようになる。図XIXに示されるように,海溝の長いプレートがプレートの移動速度が

大きいことを考えると,沈み込んだスラブがプレートをひっぱる力(FSP)が重要であることがう

かがわれる。

 

 

 大局的には,プレートの運動は,マントル・地殻を含めての熱対流ととらえるのが適当で

あろう。

 

◆海のプレートの年代分布と海洋底の水深

 海のプレートは,海嶺で生産され,拡大していくので,海嶺からの距離に比例して年齢が

大きくなることが予想される。それを確かめるために,海洋底を掘削し,海洋底の年齢を直

接的に決めてゆくことが必要になり,DSDPODPなどの深海掘削計画がたてられた。

DSDP(Deep Sea Drilling Project);深海掘削計画,1968年〜,グロマー・チャレンジャー

(12000t)

ODP(Ocean Drilling Program);国際深海掘削計画,1985年〜,ジョイデス・レゾリューショ

ン号(18600t)

  海洋底の年齢決定の方法は次のようなものがある。

(1)  海洋底の玄武岩を採取しKAr法で放射年代を求める

    海底の玄武岩が海嶺で生産されてからの時間がわかる。

(2)  堆積物の最下層に含まれる微化石から年代を決める

    海嶺で生産された海洋底に最初に堆積した堆横物の年代がわかる。有孔虫・放散

虫・ケイ藻,石灰質ナンノ化石などが利用されるが,時代区分は非常に細かくなされ

ており,(1)の放射年代の測定より精度が高い。

(3)  堆積物の残留磁気を地磁気の逆転史と対比させる

   

 

現在から順に過去にさかのぼっていかなければならないが,ブルンヌ正磁極期と松山逆

磁極期の境界が73万年前というように,年代を特定することができる。

(4)  地磁気異常の縞模様を地磁気の逆転史と対比させる

   地磁気異常の縞模様は,船や飛行機に磁力計を積んで調査できるので,広範囲の

海洋底年齢が決定できる。ただし,いくつかの地点で海洋底を掘削し,(1)(2)の方法で

確認をとる必要がある。

XXは,大西洋において,海洋底の年齢が海嶺からの距離に比例していることを深海

掘削で確認した例である。

 なお,海洋底は海溝で沈み込んでしまうので,教図16にあるように最も古いものでもジュ

ラ紀のものである。同年齢の海洋底が直線的につながっていないのは,トランスフォーム断

層で海嶺がずれているためである。

 

◆プレートの動きと海山の列

 プレートの過去の動きは,次のようなものをもとに推定される。

@ 海洋底の年齢分布

A ホットスポットによる火山島列(ハワイ諸島の例)

B 古い造山帯の分布(→過去のプレート収束境界)

               (北アメリカのアパラチア造山帯の例)

教図17にあるハワイ諸島から天皇海山列にかけての,ホットスポットの直上でできた火

山島列の折れ曲がりは,4300万年前に,太平洋プレートの動きが北北西から北西に変化

したことを示しているが,このようなプレート運動の変化は決してめずらしいものではなかっ

たようである。プレート運動の変化は,大陸の衝突,海嶺の生成,海嶺の沈み込みなどが

原因となって起こると考えられる。

 

 

 








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