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1節 地球表面をおおうプレート

 

プレートの運動とプレート境界

 剛体の板とみなされるプレートが,平面上で相対運動を行うとき,その典型的な様式とし

て次の3種類がある(I)

 

(a) 2つのプレートが近づいてくる。

(b) 2つのプレートが離れていく。

(c) 2つのプレートがすれ違う。

この3種類の相対運動によってプレートの境界も3種類に分類され,それぞれ(a)衝突型ま

たは収束型,(b)発散型,(c)平行移動型とよばれている。

 それぞれの境界についていえば,(a)ではぶつかり合ったプレートが重なり合って盛り上

がるか,一方が他方の下に沈み込んでいかなければならない。(b)ではプレートの間にでき

たすきまが,下からわき上がる物質によって補充されなければならない((c)では物質が保

存されるからその必要はない)。こうして,(a)では造山帯および島弧−海溝系,(b)では海

嶺・リフト系,(c)ではトランスフォーム断層系が生じることになる。これら図Tに示した境界

は,典型的な例であって,プレートの連動方向は,プレートの境界と斜交することもある。

以上のようなプレートの運動は,そのまま球面上でもあてはまる。ただし球面上では,すべ

ての変位は球の中心を通るある軸のまわりの1つの回転体によって表されるので,2つの

プレート間の相対運動は,1つの回転中心(オイラー(Euler)の極)のまわりの回転運動で記

述される(図U)

 

◆海嶺(プレートが互いに離れていく境界)

 マントル深部から高温物質が上昇してきて海嶺を形成する。上昇してきた物質は圧力低

下によって融点が下がるためマグマが生まれる。このマグマは海底へ噴出して枕状溶岩を

形成したり,貫入岩となって新しい海洋底地殻を形成する(図V)

 マグマを放出した残りのマントル物質は,地殻下に超塩基性岩層をつくり,海洋底の拡

大とともに海嶺の両側に広がっていく。

 

◆トランスフォーム断層(プレートが互いにすれ違う境界)

 この概念は1965年に,ウィルソンによって提唱されたものである。海底の地磁気の縞模

様には大きなずれが見られる。それらの断層は,2つの沈み込み境界(海溝),あるいは2

つの付加型境界(中央海嶺など)の間を結び,ときには海嶺と島弧(海溝)との間を結ぶ場

合もある(図W)


この種の断層は,普通の断層とは異なり,末端で急に上記の海溝や海嶺に変化

(transform)する。そのため,この種の断層をトランスフォーム断層という。この種の断層は

海底だけでなく,陸上にも現れている(図X)。 

 

◆プレートの三次元構造と,そのダイナミクス

 これまでに述べたように,あたかも剛体のようにふる舞うプレートとその動きは,

地表に見られる多くの地球科学的事象をうまく説明することができる。プレートの

実態は――その三次元的な構造と動きはどんなものであろう。

[リソスフェアとアセノスフェアの考えの基礎] 地震波の走時曲線の解釈から地

球全体の層構造がわかってきた頃から,100kmくらいの深さに地震波の伝播速度が

遅い層があることがみいだされていた。その頃から,この層は岩石が部分的に溶解

しているために「やわらかく」なっている層であると考えられた。低速度層よりも

上部では温度が低く,したがって「かたく」そのために,プレートはあたかも剛体

のように振る舞うと考えられた。また,「ウッド合金」とか「氷と食塩」のように,

岩石よりはずっと低温で溶解が起こる物質での実験の結果では,ほんの少量の溶解

でも弾性波が減少することが示され「低速度層=部分溶解層」という考えを支持す

るようにみえた。

 上のような基礎から,冷えて固い表面の部分に対して「リソスフェア」という名

がつけられ,その下部のやわらかい部分に対して「アセノスフェア」という名がつ

けられた。三次元的に見たプレート(厚みを考えたプレート),すなわち「リソスフ

ェア」は,部分溶解したやわらかい「アセノスフェア」の上をスルスルとすべるよ

うに移動するという理解しやすいモデルができ上がった。このモデルの信頼性を高

めたのは地震波の表面波の分散(地震の表面波の波長の変化が地下の構造に関係す

)によって求めた「リソスフェア」の厚みの年代による変化という観測結果である。

「リソスフェア」の厚みが年代の平方根に比例して厚くなるという理論と表面波観

測の一致である。この理論によると,海底の地形が年代とともに深くなるという基

礎的な問題も解決することができる。

 以上に述べたモデルがこれまでの通説となっていたが,近年,観測の結果や岩石

実験と合わない事実がでてきた。それは,@地震波トモグラフィーという技術の進

歩によって,地球内部の地震波の速度の異常が細かくわかってきたこと,A高温・

高圧下での実験技術が進歩し,地球内部の物性,特に上部マントルの物性がよくわ

かってきたことである。

[プレート(リソスフェア)は核の表面まで沈み込む] 地震波トモグラフィーによ

って明らかにされたプレート(リソスフェア)のふる舞いのうちで最も重要な発見の

1つは,沈み込んだプレート(沈み込んだプレートはスラブと名前が変わる)が核の表

面まで達するという事実である。第2の重要な事実は,スラブは剛体のようにふる

舞うのではなくて,容易に変形するという事実である。日本海溝の「沈み込み帯」

のような,ユーラシア大陸の東側で沈み込んだプレートは,400600kmの深さで

折れ曲がり,しばらく停滞した後に,2900kmの深さまで沈み込むように見える。

一方中央アメリカでは,プレートは折れ曲がることなく600kmの深さを通過して

沈み込む。

 プレートが沈み込む深さの限界が明らかでなかった時代には,深発地震の深さの

限界がプレートの沈み込む深さの限界であり,このプレートの材料がやがて,中央

海嶺でわき上がるという対流が考えられたモデルもあるが,そのような対流運動は

現在の地震波トモグラフィーの結果からは見いだされていない。

 マントルの大規模な対流は,核に達するプレートの沈み込みと,大規模名ホットス

ポットによる,上昇運動である。 

[反射法によって求めたプレートの厚みは年代と関係なく約65kmである] 

1995年頃,爆破地震波の反射によって求められたリソスフェアの厚みは約65kmで,

厚みは年代と関係なくほぼ一定であった。低速度層は,地球全体に見られる構造で

あるが,地震波トモグラフィーにより地球内部の速度(温度)構造を求めてみると,

部分溶解している地域は中央海嶺の軸近くの下部というような限られた場所にしか

見あたらない。

[部分溶解によりマントル物質は「やわらかく」なるのでなく,かえって「かた

く」なる] 岩石の物理的性質の実験結果から,部分溶解は上部マントルの主な構

成物質であるかんらん石を「やわらかく」するのではなくて,かえって「かたく」

するという結果が得られた。それは,「固体の岩石」ととけた「液体の岩石」との接

触角(濡れ角)の違いのためである。とけた岩石が固体の岩石の面をよく濡らさない

(とけた部分が互いにつながらない)のである。少量の部分溶解では弾性波の速度の

変化もわずかであり,また粘性率もほんのわずかしか変わらないことが実験結果か

らも示された。もう1つ重要なことは,水(水素)は,固体よりもとけた岩石に入り

やすいという性質をもっている(このような性質をもつ元素はインコンパチブル元

素とよばれている。これに対して,かんらん石の主要元素である鉄,マグネシウム,

酸素,ケイ素のような,鉱物に容易に入る元素はコンパチブル元素とよばれる)。こ

のため,かんらん石の固体部分にとり込まれた水が「とけた部分」に移動すること

になり,かんらん石全体の性質としてはかたくなる。部分溶解はかんらん石をかた

くするのである。

[ホットスポット起源の玄武岩と中央海嶺の玄武岩とは性質が違う] 地震波ト

モグラフィーから見られるように,対流はマントル全体にわたっている。この対流

による攪拌によって,マントルはよく混じり合っていると期待される。ところが,

地表に到達する2つの主なタイプのマントルからの上昇流の上で採集された溶岩は,

異なった性質をもっている。ウラニウムやトリウムのような重い元素は,プレート

がひっぱられて拡大する中央海嶺から採集される溶岩では枯渇している。これと対

照的に,マントルの深い場所から上昇する熱い噴流によってつくられるハワイのよ

うな海洋性の島からの溶岩には,これらの元素は豊富であるように見える。この発

見は,これらの2つのタイプの上昇流がマントル内の異なった層から,混合するこ

となしにやってくることを示している。しかしながら,地震波で見たマントルの様

子では,沈み込むスラブという名で知られている冷たい下向きの沈み込みは,マン

トル全体を貫通している。この運動はマントルを攪拌し,どんな層構造でも,それ

を打ち壊すであろうと期待される。

 この,一見矛盾する証拠は,十数年にわたり,地球科学での「悩みの種」である。

このような,背景の下で,新しいモデルをつくるためにいまも地球科学者たちはい

そがしい。

 

 

 








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